大村秀章・愛知県知事へのリコール署名をめぐる地方自治法違反(署名偽造)事件で、名古屋地検は17日、元常滑市議の男性(53)ら男女7人を不起訴処分にし、発表した。地検はこれまでに運動団体事務局長ら3人を起訴したが、7人は関与の程度や反省の態度などを考慮して起訴猶予とし、一連の捜査は区切りを迎えた。 名古屋市でも偽造 関与の程度などで起訴猶予 他に不起訴となったのは、田中被告の妻(59)▽事務局員の女性(55)▽佐賀市での偽造作業を請け負ったとされる広告関連会社の下請け会社代表(36)▽同社社員(48)▽美容外科医・高須克弥氏の秘書で「高須ホールディングス(HD)」の当時の役員の女性(68)と女性社員(51)。 高須HDの2人は名古屋市内、他の5人は佐賀市内で偽造に関わった疑いが持たれていた。 また、高須氏から同法違反(署名の自由妨害)容疑で告発された映画評論家の町山智浩氏、精神科医の香山リカ氏、ジャーナリストの津田大介氏ら4人は嫌疑不十分で不起訴とした。 起訴された3人のうち、事務局長の田中孝博被告(60)は公判中。次男(29)と広告関連会社元社長の男性(39)は一審・名古屋地裁で有罪判決を受け、元社長は控訴している。地検は3人について、起訴した71筆分の偽造署名以外にも捜査をしていたが、起訴分以外について同日起訴猶予とした。 「愛知事件」の解明は遠く リコール署名偽造事件で、7人が不起訴処分(起訴猶予)になった。 名古屋地検の幹部は「犯罪自体は認められる。ただし起訴はしないということ。関与の程度や反省の度合いなどを考慮した」と説明した。 署名の偽造は、主に佐賀市と愛知県内で行われた疑いがあった。 複数の関係者によると、「愛知事件」の舞台となったのは、名古屋駅近くにある「高須ホールディングス(高須HD)」が入る建物だ。 2020年10月、運動団体を率いた美容外科経営高須克弥氏の女性秘書(68)が、高須HDの従業員らに指示し、署名を偽造したとされる。 秘書は偽造署名が書かれた署… この記事は有料会員記事です。残り370文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
東京都、時短要請解除 会食は「4人以内」「2時間まで」に協力依頼
東京都は17日、新型コロナの対策本部会議でまん延防止等重点措置が解除される22日以降の対応を決めた。4月24日までを「リバウンド警戒期間」とし、認証を受けた飲食店には営業時間の短縮と酒類提供の制限とも解除したうえで、利用人数を「同一テーブル4人以内」、滞在時間を「2時間以内」とするよう協力を依頼する。非認証店には酒類提供を午後9時までとするよう協力を求める。 都内に約12万ある飲食店のうち、都が感染対策などを確認した認証店は約10万8千店(11日現在)ある。今回の依頼はいずれも新型コロナ対応の特別措置法に基づかないもので、罰則はない。全員検査で陰性が確認された場合は人数、滞在時間とも制限を求めない。 都は人数と滞在時間に制限を設けたのは専門家の助言を踏まえた対応だと説明。「2時間」の制限は「飲食が2時間超になると感染リスクがかなり高まるという国立感染症研究所のデータを参考にした」という。 小池百合子知事は会議後の会… この記事は有料会員記事です。残り228文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「飛鳥美人」に会える施設、奈良・明日香村に整備 2029年度まで
清水謙司2022年3月17日 20時30分 「飛鳥美人」などで知られる高松塚古墳(奈良県明日香村)の極彩色壁画(国宝)の保存や公開に向け、文化庁の「古墳壁画の保存活用に関する検討会」が17日、東京都内で会合を開き、新たな施設を2029年度までに村内に整備する方針を示した。 壁画は石室内部に描かれ、21日に発見50年を迎える。04年にカビなどによる劣化が判明。石室ごと解体して墳丘から取り出し、修理を別の場所で進めて20年3月に完了した。 この日示された基本構想案によると、新施設の予定地は村内にある国営飛鳥歴史公園の一角。施設内に設けられる保存管理室は公開のための観覧ゾーンも備えるものとしている。 これまで壁画は仮設の修理施設の作業室に安置され、年数回限定公開されてきた。今後は展示環境が整った新施設で公開する考え。壁画保護のため、年間の公開日数は限定する予定だ。 関連資料を集めて博物館などの機能も持たせる。座長を務める和田晴吾・兵庫県立考古博物館長は「飛鳥の文化を発信する拠点の一つになれば」と話した。 文化庁は将来的に壁画を古墳内に戻す方針を変えておらず、新施設はその調査研究の拠点にもしたいという。新年度以降は新施設の基本構想を具体化する作業に入る。(清水謙司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
教え子と一緒にコロナ給付金詐欺 容疑で元中学教諭を逮捕 大阪府警
2022年3月17日 20時30分 新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金をだまし取ったとして、大阪府警は、兵庫県尼崎市西長洲の古物商、岡田則人容疑者(35)ら男4人を詐欺容疑で逮捕し、17日に発表した。大阪府東大阪市教委によると、岡田容疑者は2015年まで東大阪市立中学校の元教諭で、元教え子と詐欺行為をしたとみられ、いずれも容疑を認めているという。 河内署によると、岡田容疑者ら4人は、2020年6~7月、20代の男子大学生=同容疑で書類送検=が個人事業主で、コロナで収入が減ったと偽って給付金を申請し、中小企業庁から給付金100万円をだまし取った疑いがある。 署によると、逮捕された4人のうち2人は岡田容疑者の中学校の元教え子。卒業後に再会して持続化給付金の不正受給を計画し、知り合いの元税理士(42)と共謀。知人の大学生らの個人情報を集め、偽の確定申告書などを作成した上で給付金を申請したとみられる。 20年10月に男子大学生が署に出頭したことで事件が発覚。供述などから、府警は岡田容疑者らがほかにも不正受給を重ねていたとみて調べている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
泣きやむと思い…布団で幼児巻いた母に判決 悲劇生んだ子育てとは?
当時2歳の長男の全身を敷布団で巻いたなどとして、暴行罪に問われた30代の母親の判決公判が17日、東京地裁立川支部(新井紅亜礼裁判長)であった。 判決などによると、被告は20年、東京都内の自宅で泣きやまない長男の全身を敷布団で巻き、約50分後に呼吸がないことに気づき110番通報した。その後長男は死亡した。警視庁は殺人容疑で逮捕したが、検察側は暴行罪で起訴した。 母親は公判で「長男が落ち着くと思って布団で巻いた。そのときは悪いこととは感じていなかった。母親として完璧とは言えないけど、精いっぱい子育てした」と訴え、無罪を主張していた。 死亡した長男を布団で巻いたのは、「子育て」なのか「暴行」なのか。記事の後半では、行き過ぎた子育てを防ぐための考え方を専門家に聞きました。 母親 「精いっぱい子育てしていた」 判決は、長男の身長(約80… この記事は有料会員記事です。残り956文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戦時下、障害者はどう生きたか 聞こえぬ耳、伝える空襲体験
77年前、日本の都市は相次いで無差別爆撃にさらされた。空襲で計7千人以上が死亡した神戸には、その悲惨さを手話で伝え続ける聴覚障害者の男性がいる。戦争は立場の弱い人たちを、より困難な状況に追い込む。戦火に追われるウクライナ市民の姿に、当時の記憶が重なる。(井岡諒) 深いしわが刻まれた男性の手の動きを、子どもたちは一心に見つめていた。両手を素早く上下させ、77年前の神戸に雨のように降り注いだ焼夷(しょうい)弾を表した。 神戸市内の小学校で、空襲体験を手話で伝える山村賢二さん=2022年1月21日午前10時13分、神戸市灘区、井岡諒撮影 「女性の髪は焦げて縮れ、肩は血でべったりとぬれていました」。1月下旬、神戸市内の小学校で山村賢二さん(90)=神戸市灘区=が語る惨状を、手話通訳が翻訳していった。 山村さんは1932年、神戸市生まれ。幼い頃に病気で聴覚を失い、父の勧めで兵庫県立聾啞(ろうあ)学校(当時)に進学した。2人で行った銭湯で手話を交わす子どもたちを見かけたのがきっかけだった。 神戸大空襲の当時は13歳だった。父は敵機を知らせるサイレンに気付かない息子をいつも気に掛けて、「絶対に離れてはダメだ。しっかりつかまっていろ」と守ってくれた。 聞こえぬ空襲警報 通学途中に警報が出たことも。駅員がメガホンで何かを叫び、乗客が慌ただしく動き始めたことで警報を察し、ホーム下に潜り込んだ。 1945年3月17日。新開… この記事は有料会員記事です。残り2014文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 空襲1945 あのとき、日本中が戦場だった。東京・大阪・福岡など各地の写真300枚や映像、データマップで惨禍を伝えます。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
祭り好きだった娘へ、ライバルへ「見てるか」 郷土芸能守る父、仲間
現場へ! 「生きた証」その後④ ボーナスをもらうとお祭りのたびに母親に餅代、煮しめ代を渡し、気遣いする子でした。(「生きた証(あかし)」2016年度版) 岩手県大槌町の小林一成さん(82)が7年間の仮設住宅暮らしの末、元の小鎚神社前に再建した自宅。床の間に、地元の郷土芸能・城内大(だい)神楽(かぐら)の獅子頭が八つ並ぶ。東日本大震災の津波で流されたがれきの中から見つかった一つを見本に、東京・浅草の職人の元に持ち込んで作ってもらった。祭りになれば、50人以上いる保存会員の老若男女がかぶり、神社で演舞したり町を練り歩いたりする。 その獅子頭を、次女の秀子さん(当時38)が額の中から見下ろす。「いまだにどこかにいるような気がして」と小林さんは言う。 大槌町では1286人の震災犠牲者のうち3分の1が見つかっていない。中でも秀子さんは、どこで被災したのかさえわからない。震災当日の午後、内陸の盛岡市に入院していた母の和子さん(78)の元から大槌町に戻ると告げて、車で出発したのが最後だった。持っていた携帯電話の場所だけでも確かめたいと、小林さんは電話会社に問い合わせたが「親子でもプライバシーの関係で教えられない」と断られた。 お祭り好きで明るく、家族思… この記事は有料会員記事です。残り785文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
停電に備え発電機 選ぶポイントや使い方は? 福島県沖の夜間地震
16日深夜に起きた福島県沖を震源とする最大震度6強の地震の影響で、各地で停電が起きた。そんな時、役立つのが発電機だ。これから購入しようとする際に頭に入れておきたいことや、使用時の注意点を取材した。(井上道夫) 発電機には出力や燃料の違いなど様々なタイプがある。選ぶ際のポイントはなにか。発電機メーカー、ヤマハモーターパワープロダクツ(静岡県)に聞いた。 家電製品の起動時の電力を調べる 最初に定格出力。定格出力とは、その発電機が安定して出力できる電力を指す。大きければ大きいほど、使える電気製品の種類の幅が広がり、数も増える。電気製品の中には動き始めるときに必要な電力(起動電力)が、消費電力よりも大きいものがあることにも留意しよう。たとえば家庭用冷蔵庫には、消費電力の4倍の起動電力が必要な製品もある。使用する電気製品とその数を考え、その起動電力の合計よりも、大きな出力の発電機を選ぶ。 各家電の起動電力の目安はヤマハ発動機のサイト(https://www.yamaha-motor.co.jp/generator/select/)に掲載されている。 パソコンやマイクロコンピューター制御の電気製品を使う場合、インバータータイプの機種を選ぶとよい。このタイプは、家庭にあるコンセントからとれる電気と同等の質の電気を出力できる。 ガソリン燃料は長時間使用可 カセットガス燃料はカセットコンロでの使用も 発電機の燃料は大別してガソリンとカセットガス(ボンベ)。ガソリン式のメリットは、ガス式より長く連続運転できること。出力900ワット程度の機種で比べると、使う電気量にもよるが、ガソリン式は2・5リットルの燃料タンクを満杯にすれば、4~10時間程度使える。これに対し、ガス式はボンベを2本入れて約1時間。時間あたりの発電コストもガソリン式の方が安い。 一方、カセットガスは取り換えが簡単。また、カセットコンロの燃料にも使える。コンロがある家庭では、災害への備えの基本となる「日常生活の中で使うものを少し多めに買っておく」という考え方に合致する。 電気の周波数にも要注意。東日本と西日本では異なる周波数で電気が供給されている。東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツ。電気製品によっては使える周波数が決まっている。発電機側で周波数を切り替えられるタイプもあるが、どちらかの周波数の電気しか出力できないものもあるので注意が必要だ。 エンジンのかけ方も機種によって違う。一般的なのは、「リコイルスターター」と呼ばれるロープを引っ張って始動させるタイプ。慣れれば簡単だが、力を入れるタイミングにちょっとしたコツが必要だ。機種によっては「セル」という装置がついており、車のようにかぎを回すだけでかけられるものもある。 価格は出力やタイプによって異なる。記者が調べると、定格出力約2千ワットのタイプなら、ホームセンターなどで5万円程度で買える。インバータータイプで出力1800ワットの製品は13万~15万円程度。セルつきの上位タイプは出力2800ワットで20万円を超えるものもある。 室内での使用は厳禁 発電機使用時の注意点は? 発電機の製造会社が会員となっている一般社団法人日本陸用内燃機関協会は、室内では発電機を絶対に使わないよう注意を促す。 ガソリン、カセットガスを燃料としてエンジンを動かす発電機からは排ガスがでる。有害な一酸化炭素が含まれている。室内や車内、倉庫での使用は避ける。また、排気が人家に入りそうな場所でも使わない。 発電機の燃料として使うガソリンの運搬・保管には、消防法令の基準を守って作られているガソリン携行缶を必ず使う。ホームセンターなどで買える。20リットルの容量のもので4千円程度。灯油用のポリエチレン容器は使えない。揮発性が高いガソリン向けの仕様になっていないからだ。 ガソリンスタンドは、ガソリンを携行缶に入れて販売する場合、客に運転免許証などの提示を求め本人確認をすることや、使用目的を確かめることなどが義務づけられている。また、セルフ式のスタンドであっても、客自ら携行缶に入れることは禁止されている。必ず従業員に入れてもらう。 購入後は、携行缶を直射日光や高温の場所に置かない▽周囲に火の気がないことを確認▽発電機にガソリンを入れる際は、携行缶のフタを開ける前に発電機のエンジンを止める▽携行缶のふたを開ける前にエア(ガス)抜きをして内圧を下げる▽さらに携行缶を使わない時は、フタやエア(ガス)抜きに使う調整ねじを確実に締める――といった注意が必要だ。 カセットガスの注意点は、大手メーカーの岩谷産業によると、使用期限が保管状況によって異なる点だ。容器がさびていないことを確認し、製造日から7年以内を目安に使い切ってほしいという。同社の製品は、缶底に製造日が印字されている。 ◆この記事は2019年10月3日、同9日に朝日新聞生活面に掲載した「発電機 選び方のコツは」「発電機 安全に使うには」をもとに、再取材し、構成したものです。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
珍しい「雨氷」に囲まれ走る花咲線、根室で道東の美を集めた写真展
幻想的な「雨氷」の景色の中を疾走する北海道の花咲線(根室線釧路―根室間の愛称)の車両など、北海道東部各地の美を写した写真展が、北海道根室市の道の駅スワン44ねむろで4月1日から開かれる。 市観光協会主催による毎年恒例のフォトコンテストで、応募作236点から入賞した23作品を展示。根室市の元漁協職員、田塚不二男さん(74)の最優秀賞は、ライトアップされた同市の明治公園の赤レンガサイロと花火の共演を鮮やかに描き出している。 明治公園のサイロと花火を撮影した田塚不二男さんの最優秀作品=2021年3月、根室市観光協会提供 また、同市の建設業、鈴木一雄さん(49)の優秀賞は、昨年3月に起きた「雨氷」下の花咲線を撮影したものだ。 雨氷は零度以下でも凍っていない状態の雨が、物に付着することで氷結し、物が氷に包まれたように見える珍しい現象だ。鈴木さんは同市の昆布盛駅付近の木立を走り抜ける車両を、透明感あふれる色調で活写した。 透明な氷が樹木に付着した「雨氷」に囲まれて走る花咲線を撮影した鈴木一雄さんの作品=2021年3月、根室市観光協会提供 鈴木さんは花咲線沿線の風景を写真に収めつつ、「夢空間☆花咲線の会」代表として花咲線の応援活動も続けている。11日を最後に厚岸町の糸魚沢(いといざわ)駅が廃止になった時も、新旧2代の駅舎の写真とイラストを組み合わせたポストカードを駅で配布した。 糸魚沢駅周辺では、明治3(… この記事は有料会員記事です。残り423文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「キレイなもんや」一転、街は廃墟と化した 体験記にみる神戸大空襲
神戸をB29の編隊が襲ったあの日、いったい何が起きたのか。「神戸空襲を記録する会」が作成した「神戸空襲体験記 総集編」から再現した。 3月17日 「いっぺん、上がってきて見んか、キレイなもんや」。炎に追われる少し前、父に誘われて2階の物干し台に出た落合重信さんは、高取山の方向で花火のような焼夷(しょうい)弾の光が散るのを眺めていた。 宝塚の航空機工場で働いていた横田正造さんの職場では連日、各都市の空襲のニュースが流れていた。10日に東京、12日に名古屋、13日には大阪が次々と壊滅的な被害を受けていた。 就寝直後に警戒警報のサイレンでたたき起こされた。「今夜はやられるかもしれない…と予感した」 まもなく、空襲警報がけたたましく鳴り始めた。B29の爆音も響いていた。「夜空を望むと照明弾が投下され、それに地上からの探照灯がさまざまに交差してはまばゆく真昼のように光りわたった」 兵庫区の長屋に住んでいた原田憲司さんも照明弾の輝きを見た。頭上ではB29の大編隊が旋回していた。 米軍機から神戸港一帯に降り注がれる焼夷弾の雨=1945年6月5日、米軍撮影 外に出ようとした瞬間、天井でバリバリと音がした。「焼夷(しょうい)弾が一発、斜めに畳につきささり、すごい早さでグルグル回転し、白熱の火粉をまき散らしている」。一目散に家から飛び出した。 無数の焼夷弾が降り注ぐ中、狭い路地では右往左往する大勢の人たちの悲鳴と怒号が入り乱れていた。たちまち炎は広がり、立ちこめる煙で見通しが利かなくなった路地をひた走った。 当時6歳だった西村欣也さんは母、祖父、妹の3人の家族と別れて、安全な場所を探し回った。兵庫駅前の広場にたどり着くと、突然気を失った。足に爆弾か焼夷弾の破片が突き刺さったようだった。 3月17日の空襲で一面焼け野原となった兵庫駅付近。焼け出された人たちがぼうぜんとたたずむ=1945年3月19日、朝日新聞大阪写真部・平谷一登撮影 翌日、母を待っていた西村さんのそばに、将校のような男性が近付いてきた。「お母さんのところへ連れていってあげるから」と声をかけられ、トラックの助手席に乗せられた。 「これはお母ちゃんと違う」。無残な傷を負って横たわる目の前の女性が、きれいだった母とはどうしても重ならなかった。 母は力の無い声で、祖父と妹がいなくなった理由を教えてくれた。生き残ったのは母と自分だけだった。 6月5日 トアロードの近くで医院を営んでいた北義保さんは午前5時ごろ、警戒警報のサイレンで目が覚めた。 枕元のラジオのスイッチをひ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル