西田理人2022年1月12日 17時00分 昨年末にNHK・BS1で放送されたBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不適切な字幕があった問題で、番組の密着取材を受けていた映画監督の島田角栄さんがコメントを出した。取材対象者から、「五輪のデモに参加したとの発言はなかった」と指摘し、字幕について「不本意かつ残念」と述べた。 NHK大阪拠点放送局が制作した同番組は、東京五輪の公式記録映画を製作する河瀬さんらに密着したドキュメンタリーで、昨年12月26日に放送(同30日に再放送)された。 島田さんは映画製作チームの一員として、競技場の外でコロナ禍の苦しみや五輪反対を訴える市民らを取材していた。番組では、島田さんが話を聞いた男性について、テロップで「五輪反対デモに参加している」「お金をもらって動員されていると打ち明けた」と紹介。だが、実際には男性がデモに参加した事実は確認できておらず、NHKは「不確かな内容だった」と陳謝していた。 島田さんのコメントの主な内容は次の通り。 NHK BS1スペシャルで放送されました「河瀬直美が見つめた東京五輪」の番組内容に対し、NHK大阪より公式コメントが出されましたので、本件に関して島田個人としてコメントさせて頂きます。 五輪反対デモに参加しているとされた男性は、島田が取材対象を探す中で出会った方で、その場で取材を申し込み、後日、公園でのインタビューをさせて頂きました。 「五輪のデモに参加した」という主旨の発言は無かったにも関わらず、オンエアされたテロップを見て、島田自身たいへん驚いたというのが経緯です。また、当該男性の取材映像を、事前に河瀬直美監督にお見せした事実はありません。 当該番組は、公式記録映画の取材過程をNHKが独自に取材され、編集されましたので、被取材者である島田への最終的なチェックもなく、島田自身、全体を把握出来ぬまま、放送に至りました。 公式映画チームとして取材した内容と異なるテロップが流れてしまった事は、不本意かつ、たいへん残念でなりません。(西田理人) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
駅前ビル、固定資産税の滞納19年 テナント撤退相次ぎ、赤字で閉館
北海道滝川市は道内のほぼ中央に位置する。札幌を経て旭川に向かうJR函館線と道東に向かう根室線が分かれるなど、交通の要衝として発展した。しかし、近隣の炭鉱の閉山などで人口は1983年の約5万3千人をピークに減り、少子高齢化の影響もあって現在は約3万9千人になっている。 JR滝川駅前の商店街「ベルロード」は約550メートルにわたってアーケードが続き、市外からも買い物客が集まった往時のにぎわいを伝える。だが、歩いてみるとシャッターが下りた店が多く、商店街にあったデパートも経営に行き詰まり、2015年に清算された。 昨年3月には、駅前にある地上4階地下1階の「たきかわスマイルビル」が閉鎖された。駅前再開発によって1986年にオープンし、90年度から2000年度までは黒字経営が続いた。 しかし、主要テナントだったスーパーが03年に撤退するとテナントの撤退が相次ぎ、赤字基調になった。同年からは滝川市に納める固定資産税の滞納が続いている。 昨年の土地・建物の評価額は計約10億4千万円。これをもとにかかる固定資産税と都市計画税は年間約1866万円だった。これまで滞納によってたびたび市から土地・建物の差し押さえを受け、昨年1月の滞納額の累計は約3億5千万円にのぼる。 テナント料や管理料では、従… この記事は会員記事です。残り744文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
側溝覆う「グレーチング」の盗難増加 対策しても「まだまだ無防備」
会員記事 浅田朋範、渡辺七海2022年1月12日 13時00分 昨年11月、奈良県天理市でグレーチングを盗んだとして、ブラジル国籍の男(24)が窃盗容疑で天理署に逮捕された。県内では金属窃盗事件が増加傾向で、うち側溝を覆う格子状のグレーチングの被害が多いという。背景に、盗みやすさなどが見えてきた。 逮捕容疑は、天理市内の私有地から長さ約1メートル、幅約30センチのグレーチング34枚(時価計23万8千円相当)を盗んだというもの。 この男が盗んだグレーチングを売ったとみられる天理市内の金属買い取り店を訪ねた。約1400平方メートルの敷地には買い取った自転車や鉄製品が積み上がっていた。 「盗品ではないか」疑い… 40代の女性店主によると、7年前に開業し、現在従業員は8人。店に出入りするのは建物の解体業者ら顔なじみが多いという。 この男が同店を訪れたのは昨夏ごろ。黒い軽自動車で訪れた。500キロほどのグレーチングを約3万円で買い取ったという。 グレーチングを持ち込む客は珍しく、初めて見る顔だったことから、盗品ではないかと疑った。免許証のコピーに加え、車のナンバーもひかえた。その日のうちに天理署から「近くのグレーチングが盗まれた。売りに来た人はいないか」と連絡があった。 1年に10回ほど盗品を疑うような買い取り依頼があり、警察からの問い合わせも年に3回程度あるという。店主は「容疑者が逮捕され、次の被害が防げて良かった」と話す。 「道に現金が落ちているようなもの」 県内で金属くずを売買する業… この記事は会員記事です。残り935文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
金の延べ棒4本、3千万円相当だまし取られる 80代女性
田中紳顕2022年1月12日 13時30分 警視庁は12日、特殊詐欺の手口で、東京都港区のひとり暮らしの80代の女性が金の延べ棒約4キロ(約3千万円相当)と現金60万円をだましとられる被害に遭った、と発表した。 麻布署によると、女性の自宅に7日午後11時ごろ、息子をかたる男の声で電話があった。電話の人物は「印鑑などが入ったかばんをなくしてお金をおろせない。お金を貸してくれないか」などと言った。男は息子の名前や職業を把握していた。女性は話を信じ、自宅に金の延べ棒を保管していることを伝えた。 約1時間半後、息子の職場の関係者を名乗る若い男が自宅に現れた。電話をつないだままにしていた「息子」から「代わりに渡してくれ」と言われ、女性は金の延べ棒と現金を若い男に手渡した。 1時間ほど後、女性が息子に電話をかけて被害が発覚したという。 こうした被害を防ぐため、警視庁は、電話に出ず、留守番電話機能を使う▽録音メッセージで用件を確認してかけ直す▽親族を名乗る人物から電話で現金を求められたらいったん電話を切り、普段から使っている電話番号にかけ直す――などを呼びかけている。(田中紳顕) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
愛知・リコール署名偽造、元広告関連会社長に有罪判決
山下寛久2022年1月12日 13時45分 愛知県知事へのリコール署名偽造事件で、地方自治法違反(署名偽造)罪で在宅起訴された広告関連会社元社長の山口彬被告(39)=名古屋市昭和区=の判決が12日、名古屋地裁であった。山田耕司裁判長は懲役1年4カ月執行猶予4年(求刑・懲役1年4カ月)の判決を言い渡した。 山口被告の起訴内容は、リコール運動団体事務局長の田中孝博被告(60)=同罪で公判中=らと共謀し、2020年10月下旬、佐賀市でアルバイトに愛知県内の有権者の署名計71筆を書き写させ、偽造したというもの。 検察側は、山口被告がアルバイト集めや作業場所の確保、進捗(しんちょく)状況の伝達などを担ったと主張。山口被告側は起訴内容を認め、全面的に捜査に協力したなどとして罰金刑を求めていた。最終陳述では「たくさんの方に迷惑をかけ、謝罪したい」などと述べた。 リコール運動は19年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」がきっかけ。慰安婦を表現した少女像や、昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品に抗議が殺到。展示内容を批判した河村たかし・名古屋市長と、展示の可否を公権力が判断することは検閲だと主張した大村秀章・愛知県知事が対立した。20年6月、美容外科経営、高須克弥氏(76)を会長にリコール運動団体が発足した。 県内の大半の自治体では同年8月から2カ月が署名活動期間とされ、11月に約43万5千筆が提出されたが、その後「書いた覚えのない署名がある」などの声が相次いだ。愛知県選管が調査したところ、約83%に当たる約36万2千筆に無効の疑いがあったという。検察側が公判に提出した証拠によると、佐賀市での署名の書き写しのアルバイトには同年10月下旬の約10日間に延べ約1千人が参加したという。(山下寛久) 名古屋地裁 市名が印刷され、同じ町名が並ぶ、似た筆跡の署名簿(画像の一部を加工しています) 愛知県知事リコールの署名簿=2020年11月、名古屋市中区、小林圭撮影 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
浪人したのに第1志望×、でも大学の授業は面白かった 今は校長に
入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。 校長から受験生へ:吉祥女子中学・高校・赤沼一弘さん 受験シーズンが迫ってきました。最後の模試で思うような結果が出せず、焦っている人もいるでしょう。でも絶対に諦めないで。付け焼き刃では挑めませんが、入試当日に、それまで積み重ねてきたものを発揮できればいいんです。まだ伸びる、まだやれると言い聞かせて、本番まで、足りないところを補う勉強を続けて下さい。 当たり前ですが、受験は受けなかったら落ちることすらありません。たとえ不合格になったとしても、自分が目指し頑張ってきた結果なら、その体験はその後必ず生きるし、生かしていくべきだと思っています。 私自身、浪人しても第1志望の大学に入れず、大学入学後もくすぶっていた時期がありました。でも、大学の授業は受けてみたら面白かった。受験のための勉強とは違い、時間をかけて考えたり調べたりする過程にワクワクしました。それまでは興味のなかった倫理や憲法などの一般教養科目も、一番前の席に座って一言一句聞き逃さないよう聞いたものです。 大学院に進むと、同じ研究室には優秀な先輩がいて、刺激を受けました。必死になればなるほど、彼には研究では勝てないと分かり、また卑屈になっていたとき、その先輩に言われたんです。「自分のためになるわけじゃないのに、なんでそんなに楽しそうに後輩に教えられるの?」って。教員になるか研究者になるか悩んでいた頃で、その一言に背中を押され、今に至ります。 本校は「社会に貢献する自立した女性の育成」をモットーにしています。 社会に貢献し、自立した存在になるためには、自分の考えを持ち、正しく表現すること、多様な知識を習得し、それらを活用して教養を深めることが肝要です。うまくやるより、試行錯誤を重ねながら得られた結果を受け止めて改善策を探ってほしい。本校の理科の授業で、伝統的に実験を重視している理由も、そこにあります。 勉強だけではありません。吉祥祭や運動会などの行事は、学年を超えて生徒が企画・運営する一大イベント。予期しない変化に対応する柔軟性を身につけるとともに、他の人の意見を理解して協働できるようにもなる格好の機会です。 「コロナ禍の中でも、どうにかして開催したい」と生徒から声があがり、その都度一丸となって最善を尽くしました。一昨年は、実施できそうな運動会の種目やルールを生徒が決め、1カ月半にわたって、平日の昼休みに細切れで競技を実施。そして連日、録画・編集した映像を校内で放映しました。棒を媒介にした非接触型のムカデ競走でタイムを競い合うなど、斬新なアイデアが挙がり面白かったです。昨年は更に一歩前進。平時のように6学年が集う壮大なものにこそなりませんでしたが、何回かに分けて、八王子と吉祥寺のキャンパスで開催し、盛り上がることができました。 一つのものを成し遂げようと、生徒たちが知恵を絞っている姿を見ていると、リーダーは、育てるものではなく、自然と生まれるのが正しいんだなと感じます。得意なことがそれぞれ違う者同士が集まっているから、先頭に立つ人、それを支える人が場面によってコロコロ変わる。人と交わるなかで、どんどん失敗したっていい。これこそが学校の醍醐(だいご)味です。 卒業するときに「この学校でよかった」と思えるようにするのは、皆さん自身です。目の前の受験はゴールではなく、そこから道は始まります。「何かを知りたい」という素直な欲求は、内側から芽生えてくるものですから。私たち教員はそんな皆さんを全力でサポートします。(聞き手・川口敦子) ◇ 〈あかぬま・かずひろ〉1966年、東京都生まれ。都立日比谷高校、東京理科大卒。東京工業大大学院後期博士課程中退後、94年、吉祥女子の理科教員に。進路指導部長を経て、2021年から校長を務める。 ★吉祥女子中学・高等学校 ・所在地:東京都武蔵野市吉祥寺東町 ・創立:1938年 ・生徒数:中学795人、高校777人 ・合格実績:東京大2人、京都大3人、東京工業大2人、一橋大7人、慶応義塾大44人、早稲田大80人 ・長年にわたり、中学3年生を対象にカナダ語学体験ツアーを実施している(現在はコロナの影響で、実施学年を調整し再開を目指している)。放課後に教養を深める目的で、芸術や語学の課外授業を設けており、希望者は中学1年生から専門の先生に習うことができる。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
電子地図でどこでも一目で 都道府県バラバラの避難所情報を集約
県をまたぐ大規模な災害が起きた時に、これまで各都道府県がばらばらに集約していた被害や避難所の情報をオンラインで共有し、電子地図上で一目でわかるようにする取り組みが進んでいる。首都直下地震などに備え、被災地以外から必要な支援が、より速やかに届くようにするのがねらいだ。 まもなく発生から27年になる1995年の阪神・淡路大震災では、被災自治体の職員が電話やファクスなどで集めた断片的な情報を、災害対策本部などでホワイトボードや地図に書き込んで集約していた。 その後、各自治体は被災情報をオンラインで集約するシステムを整備してきたものの十分に活用されず、2011年の東日本大震災などでも多くの自治体は、これまでと変わらず手作業で情報を集約。刻々と変化する状況に対応できないことが課題になっていた。 16年の熊本地震では、国立… この記事は会員記事です。残り593文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
上野動物園の双子パンダ、一般公開はじまる 3日間限定
2022年1月12日 10時34分 上野動物園(東京都台東区)で昨年6月に生まれた双子のジャイアントパンダ、オスの「シャオシャオ(暁暁)」とメスの「レイレイ(蕾蕾)」が12日、初めて一般公開された。ただ、新型コロナの再拡大で公開は3日間限定で、動物園はまたも休園に入る。盛り上がりに期待した地元関係者の落胆は大きい。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
統計不正、修正指示後も書き換え データ二重計上、国会答弁と矛盾
国土交通省による基幹統計の書き換え問題で、政府が国会で「修正済み」と説明してきた2020年1月以降の統計にも、複数の自治体で書き換えられたデータが含まれ、二重計上になっていた疑いがあることがわかった。同省は会計検査院の指摘後、都道府県に書き換えをやめるよう指示したが、徹底されていなかった。同省はこうした経緯を把握しながら放置し、事実と異なる答弁をしていた可能性がある。 同省は先月の臨時国会で、自治体に書き換えの取りやめを指示した後は、本省職員が昨年3月まで書き換えをしていた一方で、並行して適切な方法でも集計していたと説明。これを踏まえて政府は、統計は正しく修正されているため、補正予算の審議には影響しないと説明していた。 この統計は「建設工事受注動態統計」。業者から数カ月分の受注額が記された調査票がまとめて提出された場合、国交省の指示を受けた自治体がその数カ月分を全て合算し、最新1カ月の受注額のように書き換えていた。13年4月からは、未提出の月はほかの業者の平均値も計上するようになったため、受注実績の二重計上が生じていた。 検査院から19年11月に問題を指摘され、同省は20年1月8日、書き換えをやめるよう都道府県にメールで指示した。しかし、朝日新聞の取材に対し、複数の県が20年1月以降も数カ月にわたり書き換えを続けていたことを認めた。国交省の指示がメールだけで、文書が出されていなかったため、指示があったことに気づかなかったり、伝わらなかったりしたという。 複数の自治体職員によると、国交省は今月に入り、書き換え問題が明らかになったことを踏まえ、全都道府県の担当者を対象に説明する場を設けた。その際、20年1月以降も都道府県で書き換えが行われていた疑いについて、改めて調査する旨が伝えられたという。 指示後も一部の自治体が書き換えを続けていた疑いについて、同省建設経済統計調査室は昨年8月から12月にかけての複数回の取材に「情報は把握している」と回答していた。同調査室に11日に改めて尋ねたところ、都道府県向けの説明会を今月実施したと認めたうえで、内容については「検証委員会において検証が進められているため差し控える」と回答した。 統計不正をめぐっては、政府の検証委員会が調査中で、1月中旬に報告書をまとめるとしている。(伊藤嘉孝、柴田秀並、岡戸佑樹) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
国交省の統計不正問題、いま分かっていること 仕組みや影響を解説
国交省の統計不正問題、いま分かっていること 国土交通省の統計不正が昨年12月15日に朝日新聞の報道で発覚した。政府は問題を認め謝罪したが、疑問は山積みのままだ。データの書き換えは、だれが、いつ、なぜ始めたのか。二重計上が生じて統計が過大になっていることに気づきながら、なぜすぐに是正しなかったのか――。現時点でわかっていること、わかっていないことをQ&A形式でまとめました。新たな情報が明らかになるのにあわせて随時、更新していきます。 問題となった統計と不正の仕組みは Q 不正が行われていた統計とはどんなものなのか? A 建設業者が公的機関や民間から受注した工事実績を集計する、国交省所管の「建設工事受注動態統計」だ。国が特に重要だと位置づける基幹統計の一つで、2020年度は総額79兆5988億円だった。国内総生産(GDP)の算出に使われるほか、月例経済報告や中小企業支援などの基礎資料にもなっている。調査は、全国の約1万2千社を抽出して行われ、受注実績の報告を国交省が毎月受けて集計、公表している。 Q 不正の内容は? A 国交省が、業者から提出された統計データの内容を無断で書き換えていた。書き換えていたのは、業者が受注実績を毎月記し提出する調査票だ。同省が、回収を担う都道府県の担当者に指示し、遅くとも10年代前半から書き換え作業をさせていた。 具体的には、業者が受注実績の提出期限に間に合わず、数カ月分をまとめて提出した場合に、この数カ月分全てを最新1カ月の受注実績のように合算していた。作業は、この数カ月分の調査票の受注実績を都道府県の職員らが消しゴムで消し、合算した値を鉛筆で記入するという流れで行われていた。年間1万件ほど行われていたという。 昨年末の臨時国会では、野党からは「原票を消しゴムで消したらまずい。子どもにも恥ずかしくて言えない」などと批判が噴出した。 二重計上、統計への影響は Q 書き換え行為は統計にどう影響した? A 同じ業者の受注実績を2回集計する「二重計上」が生じて、公表される統計が過大なものになってしまっていた。毎月の集計では、調査票を未提出の業者の受注実績もゼロとはせず、同じ月の提出業者の平均を計上するルールがある。それに加えて後からもう一度、同じ月の受注実績を計上する形になってしまっていた。 昨年末の臨時国会では、斉藤鉄夫・国土交通相が「不適切な処理があったことについておわび申し上げる」と陳謝したが、だれが、いつ、なんのために書き換え行為を始めたのかは、わかっていない。統計がどのくらい過大になっていたかも、明らかにされないままだ。 真相は、昨年末に立ち上がった統計や法律の専門家からなる検証委員会が調べている。1月中旬までに報告書をまとめるとしており、GDPに修正が必要なのかどうかなども明らかになる可能性があるが、「調査期間が短すぎる」との懸念も出ている。 統計不正はなぜ見過ごされたのか Q 18年末に発覚した「毎月勤労統計」の不正を受けて行われた一斉点検でなぜ見過ごされたのか? A 政府は19年1月、基幹統計が適切に調査されているか点検した。ただ、調査は各省庁の自己申告で、国交省からの報告はなかった。斉藤国交相は当時の対応について「ピックアップできなかった」と釈明している。 勤労統計をめぐっては、総務省統計委員会が、調査方法を担当職員以外が理解しづらくなり、「ブラックボックス化」していたと指摘。政府は再発防止策として、19年7月から内閣官房に「分析的審査担当」の職員を配置した。ベテラン統計職員らが国交省を含む省庁に常駐し、公表の前後に統計の点検にあたるなど「監視機能の強化」を図った。 だが、「身内」による監視には第三者性を疑問視する声があった。結果的に今回の不正も見抜けなかった。 問題を認識した時期は Q 国交省は書き換え行為が問題だといつ認識したのか? A 国交省の説明によると、会計検査院が19年11月に書き換えに気づき、同省に問題だと指摘していた。それを受けて同省は20年1月、作業を担わせていた都道府県に対し、書き換えをやめるよう指示した。 それにもかかわらず、以降は同省の本省職員らが21年3月まで書き換えを続けていた。外部から問題だと指摘を受けた後も、1年3カ月にわたって「二重計上」につながる不正な作業を続けていたことになる。 斉藤国交相が昨年末の臨時国会でこの事実を認め、「決して正当化しているわけではない」と断ったうえで、「一時的に必要な作業は国交省において行わざるを得なかった」と釈明。「統計の連続性」を確保するためだったとして、「対前年度の比較というのは統計の非常に大きな要素となる」と主張した。 Q 不適切だとわかっていても、やらざるを得なかったという主張なのか? A 主張を疑問視する声は少なくない。 野党からは「間違った統計同士を比較する理由がわからない。これまでの統計を正当化するため大きく激変させないようごまかすためでは」との批判が出た。専門家の間には「統計は正しいデータをもとにするのが大前提で、間違った数字で比較すること自体が統計学上、論外。データが実態と違うことを把握しながら是正せず放置していたことは問題だ」との声もある。 さらに、現職官僚の間にも「矛盾だ」との声がある。国交省は20年1月の前後で、二重計上する量を変更したからだ。 具体的には、業者からまとめて提出された数カ月分の受注額を合算し、最新1カ月の受注額のように書き換える際の合算量を、「全ての月」から「2カ月」に減らした。経済官庁の幹部は「比較のためと言うのなら、前提が同じでなければ」と疑問視し、身内である国交省内からですら「論理破綻(はたん)だ」との声が漏れている。 なぜ公表しなかったのか Q なぜ問題を認識した時点で公表しなかったのか? A 二重計上の量を意図的に減らし、公表することなく不正な作業を続けていたことについて、統計が不自然に見えぬよう調整していた可能性を指摘する声も出ているが、真相は見えていない。 国交省は、20年1月~21年3月に本省職員がデータを書き換えていたことを認めたうえで、並行して適切な集計方法も行っていたと主張している。ただ、適切に集計した統計を公表したのは21年6月になってから。それまでは、問題だと認識しながら二重計上が生じた統計だけを、何のことわりもないまま公表し続けていた。 21年6月に適切に集計した統計を公表した際も、「集計方法の変更があったためあらためて公表した」という趣旨の説明が添えられただけ。書き換えによる二重計上が生じた過大な統計を公表してきたことについては、触れぬままだった。 首相が「大変遺憾」だと問題視するような不正にもかかわらず、国交省はなぜ、昨年末に朝日新聞が報じるまで公表せぬままにしていたのか。その経緯や理由も、なお明らかになっていない。 不正の影響はどこまで Q 国は書き換えの影響を過去にさかのぼって全て調べるのか? A 書き換えによる二重計上が生じたのは13年度からだ。それ以降に公表されてきた統計はいずれも、二重計上により過大になっていたことになり、調査して正しい統計に訂正する必要がある。 ただ、業者が提出した調査票を、国交省は消しゴムで消してしまっているため、正しいデータをあらためて入手するのは難しい。国交省内に書き換え前のデータが残っている20年1月以降は訂正が可能とみられるが、それより前の期間の訂正をどうするか、政府は難しい判断を迫られることになりそうだ。場合によっては、過去の統計の数年間分が、不正な数値しか存在しないという異常事態になってしまう恐れもある。 Q 書き換えによってGDPや政策への影響は出ているのか? A 政府は書き換えによるGDPへの影響は限定的だとしている。山際大志郎・経済再生相は昨年末の臨時国会で、「間接的にGDP統計にも影響が及ぶ可能性はあるが、その影響の程度は仮にあったとしても現時点では軽微と考えている」と答弁した。 ただ、識者からは「GDP全体に占める内訳としてはそこまで大きくないものの、GDPの成長率への寄与という点では無視できない影響を与えた可能性がある」(平田英明・法政大教授)といった声も上がっている。 中小企業支援の政策には影響が出ている。昨年12月28日、経済産業省の中小企業向けの支援策で、対象業種を選ぶ判断ができなくなっていることを国交省が公表した。本来受けられるはずの支援を受けられない企業が出てくる可能性があり、政府は金融機関への要請など対応に追われている。 Q 今後の動きは? A 17日召集の通常国会でも、論戦が交わされるとみられ、この問題に関する集中審議も開かれる見通しだ。検証委員会や総務省統計委員会による調査と併せて、経緯や影響、責任の所在などが検証される。政府としては、実効性のある再発防止策の打ち出しを迫られることになる。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル