安定的な皇位継承のあり方に関する有識者会議が示した政府への報告書の骨子は、課題整理や対策の併記にとどまった。国会の付帯決議に政府が応えるために設置した会議だが、世論を二分しかねないテーマを前に結論が先送りされた。 有識者会議は今年3月に発足した。断続的に会議が開かれていた今夏、政府高官は「話を詰めていくと女性・女系天皇の話にも触れざるを得なくなり、非常に話が大きくなる」と漏らしていた。 会議では、皇族の減少にどう対応すべきかが論点となった。だが、女性天皇や母方にのみ天皇の血筋を引く「女系天皇」を認めるべきだとする意見の一方、男系男子による皇位継承の維持を重視し、女性・女系天皇には否定的な声も根強い。岸田文雄首相が9月の自民党総裁選で女系天皇に「反対」と明言するなど、皇位継承の議論が本格的に進む環境にはなかった。 政府は会議の設置にあたって、2016年に当時の天皇陛下が退位の意向を示したことを受けて設置された有識者会議とはメンバーの起用方針を大きく変えた。選ばれたのは学者や俳優ら計6人で、専門性よりも「国民の感覚を持っていること」を重視した。 現在の皇位継承順位は変えな… この記事は有料会員記事です。残り845文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ヒグマ、同性婚、北方領土…北海道の「境界」連載前、若手記者座談会
朝日新聞北海道報道センターは連載企画「ボーダー2.0」を年末年始に掲載します。 2021年、私たちは北海道を拠点に取材をするなかで、「境界」を感じさせるさまざまな出来事に出合いました。 たとえば、人間とヒグマの暮らす境界。ヒグマに襲われた死傷者数は過去最多となりました。互いに領域を侵せば被害が出ます。共存のためには適切な線引きが必要です。 差別が生んだ境界もあります。「障害者は子どもを産むべきでない」という差別思想が生んだ旧優生保護法により、かつて全国で多くの人が不妊手術を強制的に受けさせられました。その不法を問う裁判が、札幌をはじめ全国で続けられています。 そして、昨年から世界を覆い続けるコロナ禍。人と人との間に見えない壁ができてしまったように私たちには感じられます。 私たちを隔て、分断する境界。その性質は多様です。 タイトルには境界を意味する英語「ボーダー」とバージョンアップを示す「2.0」を組み合わせました。 連載を通じて、そうした境界の今を探るとともに、問題解決に何が必要か、望ましい境界の未来を模索します。 (「ボーダー2.0」は朝日新聞デジタルと北海道版に掲載する予定です) 最後に読者アンケートのお知らせがあります。お答えいただいた方から抽選で図書カード2千円分を差し上げます。 若手記者3人、狙いを話し合う 「ボーダー2.0」を企画した若手記者3人が、今年の北海道のニュースを振り返り、連載に込める狙いについて話し合った。 川村 一番印象に残っているのは、6月に札幌市東区の住宅街に現れたヒグマだ。当日の朝、先輩から「住宅街に出たから現場に向かって」と電話があり、信じられなかった。射殺の現場に居合わせ、銃声を間近で聞いた。襲われた市民もいたので「もう大丈夫」とほっとした半面、「殺してしまってごめんね」という悲しみもこみ上げた。 ヒグマを山に返すのは非現実 平岡 襲われた男性に会い、傷口を見て恐怖を感じた。それでも射殺の様子を伝えるテレビ中継にはショックを受けた。あのヒグマを殺さず山に返す方法はあるのか、大学教授らに取材したが、現状では非現実的な発想だと知った。教授らには「住宅街に来させない方法を追求すべきだ」と説かれた。 佐野 北海道で車を運転していて何度かキツネなどの動物をひきそうになった。動物たちに「ここは来ちゃだめだよ」と言えたらどんなに楽だろう。自然豊かな北海道ならではの共生の課題がある。 若手記者3人の経歴 佐野楓(25) 宮城県出身。入社3年目、今年4月に札幌赴任。札幌市政担当 平岡春人(24) 東京都出身。入社3年目、今年4月に札幌赴任。警察・司法担当 川村さくら(24) 福岡県出身。入社2年目、札幌は初任地。警察・司法、高校野球担当 北方領土、泳いで渡ってきたロシア人 平岡 8月に国後(くなしり)島からロシア人男性が泳いで渡ってきたのにはびっくりした。 佐野 北方領土は遠い存在のように感じていた。対岸の標津(しべつ)町まで約20キロと知り、そんなに近いのだと思い知らされた。 平岡 その男性は朝日新聞の取材に「日本へのビザなし交流に応募したが認められなかった」と話した。日本が領土と主張する島なのに、元島民を含め簡単に行き来できないのが現実だ。 川村 3月には同性婚訴訟の判決があった。札幌地裁が、同性どうしの婚姻を認めない民法や戸籍法の規定は違憲だと、全国で初めて判断した。地裁から出てきた原告や弁護士らが、性的少数者の運動の象徴になっている虹色の旗のもとで喜び合う光景は一生忘れない。 佐野 判決は前任地で心待ちにしていた。様々な価値観を認め合える社会に変わっていけばと期待を感じた。 川村 大学時代に「自分には同性のパートナーがいる」とふつうに話す人がいた。私たちの世代にはそういうオープンな雰囲気がある。でも長く闘ってきた当事者の話を聞くと、世の中にはまだ根深い差別が残っているのだと痛感する。 性的少数者への認識、世代間で差 平岡 性的少数者に対する認識は世代間で差があると感じる。以前、「ゲイは気持ち悪いしエイズを広めたから嫌い」と年長の知人が偏見に満ちた言葉を平然と話すのを聞いて、がくぜんとした。今年の朝日新聞の世論調査でも、同性婚を認めるべきだと答えた人は若年層ほど多かった。差別の解消に自分たちの世代ができることは大きいはずだ。 川村 いずれの出来事にも感じるのは「境界」や「壁」の存在だ。人間と動物の暮らす境界、領土の境界、結婚の壁――。 佐野 10月に町長選があった寿都町では「核のごみ」を巡って町が賛成派と反対派に分断された。北海道はアイヌ民族の土地を奪って開拓した歴史があり、アイヌ民族への差別の問題は今も根深い。 川村 コロナは最たる例だ。人と簡単に会えなくなり、「壁」が生まれた。歓楽街やライブハウスなど、いまだに偏見に苦しむ場所もある。札幌の繁華街ススキノに行くことへの偏見から「36号線を渡るな」という言葉も聞かれた。 平岡 ワクチン接種が進んで感染者が減り、人出は戻りつつあるが、多人数で集まることには今も抵抗感が残る。 ススキノで働く人々から元気もらう 佐野 常にコロナを意識せざるを得ず、閉塞(へいそく)感を感じてしまう。そんななかススキノの取材などを通じて、苦境や偏見を乗り越えようと耐えて働く人々の姿には元気をもらった。 川村 連載では「境界」や「壁」が私たちの生活にどんな影響を与え、問題解決のために何が必要かを探りたい。 平岡 自分たちの問題意識を出発点に、新聞離れが進む若者層にも響くような記事を届けたい。 佐野 新聞は情報を一方的に伝えがちだが、私たちが届ける記事が、読者にとって本当に必要なのかわからなくなることがある。記者と読者との間にギャップが生まれてはいないか。それを少しでも埋めるために、読者の考えに耳を傾けていきたい。 あなたにとっての「境界」をお聞かせください 連載企画「ボーダー2.0」を始めるにあたり、読者の皆様に「境界」に関するアンケートを実施します。お聞きしたいのは次の2問です。 ①2021年のニュースの中で「境界」の存在を感じたのは何ですか ②あなたがふだん感じる「境界」はどんなことですか。また、それはどんな時に感じますか 抽選で10人に図書カード2千円分を差し上げます。インターネットの専用ページ(http://t.asahi.com/wlab)で受け付け、朝日IDの登録(無料)が必要です。締め切りは12月22日です。 アンケート内容は記事で紹介することがあります。また、記者が取材のために連絡することがあります。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北海道にオスプレイ2機飛来、日米共同訓練中の矢臼別演習場
会員記事 岡田昇、大野正美2021年12月6日 21時30分 5日から日米共同訓練が行われている陸上自衛隊矢臼別演習場(北海道別海町など)に6日、米軍輸送機オスプレイが飛来した。北海道内での日米共同訓練にオスプレイが参加するのは2017年、20年に続き今回で3度目だが、矢臼別では初めてとなる。 矢臼別での共同訓練は、東北・北海道で17日まで行われている日米共同の実動訓練の一環で、矢臼別での訓練は9日まで。道防衛局によると、米軍三沢基地(青森県)を出発したオスプレイ「MV22」2機が6日午後1時15分ごろ、矢臼別に着陸。約15分後に三沢基地へ向けて離陸した。米側は飛来の目的を「訓練に必要な物資の輸送のため」と説明している。 道防衛局には前日5日夜に、「6日午前に飛来予定」との連絡が入ったという。矢臼別での訓練には当初、空軍用の「CV22」2機も参加する予定だったが、4日になって米側から「運用上の理由」でCV22を使った降下訓練を中止するとの連絡があったという。 日米共同訓練に反対する地元… この記事は会員記事です。残り425文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
天皇制存続には、政治が火中の栗拾って決断を 瀬畑源・龍谷大准教授
安定的な皇位継承のあり方を議論する政府の有識者会議(座長=清家篤・元慶応義塾長)が6日に示した最終報告の骨子について、象徴天皇制の歴史に詳しい瀬畑源・龍谷大准教授(日本近現代政治史)に話を聞いた。 2005年に小泉政権時代の有識者会議で議論されたときから論点はほとんど変わっていない。 結局、政府の有識者会議が示… この記事は会員記事です。残り342文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
マンションで男性殺害容疑 事件を通報した男を再逮捕 大阪府警
2021年12月6日 21時05分 大阪市中央区のマンションの一室で10月、男性が死亡しているのが見つかった事件で、大阪府警は6日、事件を通報した住居不詳の会社員、金歓喜(きんかんき)容疑者(65)を殺人容疑で再逮捕し、発表した。黙秘しているという。 府警は、死亡したのはこの部屋に住むコンピューター関連会社長の八ツ田(やつだ)和夫さん(当時67)とみているが、身元は確定できていない。金容疑者は八ツ田さんとみられる男性にけがを負わせたとして、傷害容疑で逮捕、起訴されていた。 捜査1課によると、再逮捕容疑は9月29日昼ごろ、大阪市中央区北久宝寺町1丁目のマンションで、八ツ田さんとみられる男性の頭や肩を工具のようなもので殴り、出血性ショックで死亡させたというもの。金容疑者は八ツ田さんと40年来の知人関係という。 金容疑者が10月2日午前11時ごろ、「2日前から連絡が取れない会社の人間を心配して訪れたところ、ベッド上で亡くなっている」と119番通報していた。現場が八ツ田さんの住居兼事務所だったことなどから、府警は遺体は八ツ田さんのものとみている。 府警は10月、八ツ田さんとみられる男性の顔を殴るなどしてけがをさせたなどとして金容疑者を傷害容疑で逮捕し、その後、別の傷害容疑で書類送検した。大阪地検は11月までに傷害と暴行罪で起訴した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
看板の枠組み倒れ小学生男児が下敷き 意識不明の重体 大分市
中沢絢乃、倉富竜太2021年12月6日 21時09分 6日午後5時ごろ、大分市森町で「看板が倒れ、男児が下敷きになっている」と、通行人から119番通報があった。 大分県警大分東署によると、近くの小学生の男児(7)が看板の枠組みの下敷きになり、意識不明の重体で救急搬送された。 署によれば、倒れたのは看板を設置するための枠組みで縦約3メートル、横約5メートル。 スイミングスクールの施設内にあり、男児はこのスイミングスクールに通っていて、枠組みに登って遊んでいる間に倒れたとみられるという。(中沢絢乃、倉富竜太) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
警察官かたり、約9300万円だまし取った疑い 奈良県警が男を逮捕
米田千佐子2021年12月6日 21時10分 奈良県天理市の一人暮らしの女性(81)から現金約9300万円をだまし取ったとして、奈良県警天理署は6日、大阪市東淀川区上新庄3丁目の内装業北田悟容疑者(52)を詐欺の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。県警によると、県内の特殊詐欺事件の被害では最高額という。 署によると、北田容疑者は8月16日午後1時20分ごろ、天理署の警察官を装って女性宅を訪れ、金庫にあった8659万1千円や押し入れの点検口の裏にあった600万円の計9259万1千円をだまし取った疑いがある。 約1時間前から警視庁の刑事と名乗る男が、空き巣に入って偽札に交換した犯人を捕まえたなどと女性宅に電話していた。女性宅を訪れた北田容疑者が、偽札かどうか鑑定するために持って帰る必要があるなどとたぶらかし、だまし取ったという。北田容疑者は特殊詐欺の受け子という。(米田千佐子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
男性が刺され死亡、殺人未遂容疑で知人の女を逮捕 広島県呉市
能登智彦、松尾葉奈、戸田和敬2021年12月6日 17時27分 6日午前1時半ごろ、広島県呉市八幡町のアパートの一室で「人を刺した」と110番通報があった。呉署員が駆けつけると、この部屋に住む奥村康之さん(39)が包丁で刺されて倒れており、搬送先の病院で約1時間後に死亡した。呉署は奥村さんの知人で、自ら通報した井上由利恵容疑者(36)=呉市伏原1丁目=を殺人未遂容疑で現行犯逮捕し、殺人容疑に切り替えて調べている。 発表によると、井上容疑者は6日午前1時10分ごろ、奥村さん宅で、奥村さんの背中を包丁で刺して殺害しようとした疑いがある。「刺したことは間違いない」と容疑を認め、凶器とみられる包丁は現場付近で見つかったという。捜査関係者によると、井上容疑者は以前、奥村さんから暴力を受けたという趣旨の相談を署にしていたという。 現場はJR呉駅から東に約900メートルの住宅街で、市中心部の商店街からも近い。現場のアパートの所有者によると、奥村さんは一人暮らしだったという。近くに住む男性は「昨夜、建物から男女の大きな話し声が聞こえた。まさか閑静な住宅街で殺人事件が起きるなんて」と驚いていた。(能登智彦、松尾葉奈、戸田和敬) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
法務省看板に黒い塗料、容疑の男を逮捕 「日本に不満」供述
2021年12月6日 17時46分 東京・霞が関の法務省で10月、屋外の看板に黒い塗料が吹きかけられた事件で、警視庁が建設作業員の男(45)=住所不定=を器物損壊容疑で逮捕していたことが6日、丸の内署への取材で分かった。11月15日に逮捕し、12月3日に起訴されたという。男は「あほ、と書いた」と証言し、動機について「日本のあり方や日本人に不満があった」と供述したという。 丸の内署によると、男は10月10日午後4時ごろ、千代田区霞が関1丁目の中央合同庁舎6号館前に設置された「法務省」と書かれた石看板に、黒い油性のスプレーで落書きをした疑いがある。周辺の防犯カメラの映像を分析するなどして男を特定したという。 この庁舎をめぐっては、9月にも「検察庁」と書かれた石看板に塗料がかけられ、別の男が器物損壊容疑で逮捕された。1992年には、黄色いペンキがかけられたこともあった。金丸信・元自民党副総裁が5億円の闇献金を受けた事件で、検察が金丸氏を取り調べずに略式起訴したことへの反発とされた。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
90~100歳代の入所者にわいせつ容疑 元介護職員2人を再逮捕
戸田和敬2021年12月6日 18時00分 勤務していた介護施設で90~100歳代の入所者にわいせつな行為をしたとして、広島県警庄原署は6日、いずれも元介護職員の宇津宮卓也容疑者(27)=同県三次市十日市南3丁目=と、池田瑠里子容疑者(37)=同県庄原市宮内町=を準強制わいせつ容疑で再逮捕し、発表した。宇津宮容疑者は「間違いありません」、池田容疑者は「いけないことをした」といずれも容疑を認めているという。 発表によると、宇津宮容疑者は9月27日、庄原市内の介護施設で90代の女性入所者の上半身を触った疑いがある。池田容疑者は9月29日と30日、同じ施設で100歳代の男性入所者の下半身を触った疑いがある。 庄原署は先月、別の90代の女性入所者に宇津宮容疑者の下半身を触らせたとして、2人を準強制わいせつ容疑で逮捕=6日に処分保留で釈放=していた。宇津宮容疑者は別の建造物侵入容疑で逮捕=処分保留で釈放=され、捜査関係者によると、その際に押収したスマートフォンなどの証拠品から今回の容疑が浮上したという。(戸田和敬) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル