コロナ禍の大阪市立芸術創造館の会場。座席の距離を空け、人数も制限した=2021年8月、大阪市旭区、同館提供 今月15日夜。舞台劇が上演された大阪市立芸術創造館を訪ねた。 大阪で新型コロナの緊急事態宣言が解除されて約2週間が経過していたが、主催者の意向で座席数は約7割におさえた。訪れた約25人の観客は、マスクを着用し、要請に従って一席ずつ空けて着席した。上演前には出演者が舞台に立ち、「息苦しいかもしれませんが、マスクの着用をお願いします。皆様のご協力で演劇という文化が成り立っています」と呼びかけた。 コロナ禍のいま コロナ禍を経て、観光や保育、畜産、町工場といった現場がどう変わり、何を望むのか。大阪のいまを取材した。 コロナ前の大阪市立芸術創造館の会場の様子。密を気にせず、人々が隣り合って座っていた(写真の一部を加工し、司会者の顔をぼかしています)=2016年、大阪市旭区、同館提供 「個人の尊厳、創造性、自主性が尊重されなくなるのではないかと危惧している」 今年5月下旬、17の劇団、13名の個人で構成するNPO法人「大阪現代舞台芸術協会」(大阪市)はホームページでこう訴えた。 このころ、大阪では府が確保する重症病床の使用率は80%を超え、府は音楽や演劇などのイベントについて、無観客での開催を要請していた。協会は危機的な医療体制に理解を示しつつも、「(無観客開催の要請の)根拠を十分に説明する責任がある」として、無観客開催の再考を求める要望書を府と市に提出した。 コロナ禍の文化芸術関係者への影響 協会理事長の小原延之さん(53)は「客観的な根拠というよりも、政治的なムードでその時々の政策が決められたという思いが強い」と説明する。 小原さんによると、脚本や演出、ワークショップの講師など、演劇に関わる職業を生業にしているのは大阪ではほんの一握り。他の仕事をしながら演劇に携わっている人が大多数を占める。特にコロナ禍でダメージを受けたのが大学や養成機関を経て、小劇場で活動する若者だ。公演の先行きが見えないなか、1年以上演劇活動を中止した若手劇団も相次いだという。 政治に求めるものは、と尋ねると、小原さんは「演劇の上演で、お客さんにどう潤いを与えるのかという部分は数値化できないし、見えない。その見えない部分に政治家は想像力を働かせてほしい。政治家に最も足りていないのは、そこだと思う」と答えた。 コロナの影響は、演劇だけにとどまりませんでした。音楽公演を行う楽団関係者の思いを紹介します。 コロナの影響は舞台だけでは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コロナ2年目の大学祭、リアル開催復活 予約制、「飲食禁止」も
会員記事 桑原紀彦、狩野浩平、上野創2021年10月29日 19時30分 あちこちで大学祭が行われる季節。昨年は、コロナ禍で多くが中止になったり、オンラインのみの開催になったりしたが、今秋は感染が収まっていることもあり、キャンパスに人を入れる「リアル開催」が復活しつつある。オンライン配信を組み合わせたハイブリッド型にする大学も多い。学生たちは感染対策に気を配りながら、コロナによる閉塞(へいそく)感を打ち破り、表現する場をつくろうと苦心している。 事前予約にしたらアクセス殺到 キャンパス入り口近くの屋外ステージで、華やかな衣装の学生たちが息の合ったダンスを披露する。観客が拍手を送る脇では、ビデオカメラとパソコンで動画を同時に配信――。 埼玉県所沢市の早稲田大学所沢キャンパスで10月24日にあった「所沢キャンパス祭2021」。事前予約者限定だったが、2年ぶりに、構内に人を入れる形で開催された。 屋外のステージでは来場者の前でダンスパフォーマンスが続き、ライブでの配信もあった=2021年10月24日、埼玉県所沢市の早稲田大学所沢キャンパス、上野創撮影 輪なげや射的を楽しめる部屋、高校生と保護者向けの公開体験授業などもあったほか、オンラインでは、卒業生である陸上選手の寺田明日香さんと元プロ野球選手の江尻慎太郎さんの対談や、在学生が構内を案内するツアーの動画なども配信された。 「ここまで大変でしたが、天気がよくてほっとしました」と実行委員長の尾崎篤さん。 昨年は中止の可能性もあるなか、先輩たちが中心になりオンラインで開催した。自身も委員として関わったが、事前の打ち合わせもオンラインで十分とはいえず、初めての配信に戸惑いもあった。 また、厳しい感染対策のため、当日、構内で配信作業をする実行委員の人数すら絞らざるを得なかった。参加団体からは、無観客でカメラに向かってパフォーマンスをすることについて、「やりづらい」との声も聞こえてきた。 「予算と能力が限られるなか、仕方がなかった。なんとか無事にできてよかった」と尾崎さんは話す。 今年は来場者ありの形での開… この記事は会員記事です。残り3500文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「会いたかった」があいさつになる日 安田桃寧が信じたファンとの絆
会員記事 構成・阪本輝昭2021年10月29日 17時00分 安田桃寧さん 大阪・難波を拠点とするアイドルグループ「NMB48」が10月、結成11周年を迎えた。気軽に「会いに行ける」ことをコンセプトとした活動は、この1年半あまり、コロナ禍で大きな制約を受けてきた。新たなアイドルとファンの関係性をどう築き、12年目に向けてどんな活動に力を入れていくのか。活動7年目に入ったメンバーの安田桃寧さん(20)に聞いた。「NMB48のレッツ・スタディー!」番外編としてお届けする。 ◇ コロナ下で見つけた「自分の強み」 ――「レッツ・スタディー!」で小論文(3回分)を担当していただいたのが2019年暮れから20年初めにかけてでした。 安田 その後ぐらいにコロナ禍があり、いろいろなことが激変しました。ずいぶん昔のように感じます。小論文を通じて、自分の気持ちや考えを徹底的に見つめ直す練習をしたことが、この間、「自分は何をしたいのか、どうすればいいのか」を考えるうえで役だったと思います。 大変だったことを挙げればきりがありません。例えば劇場公演やライブでのMC(トーク)。ふだんは客席からの笑いの多さや掛け声の有無などで反応を探りながら進めていました。声出しNG、お客さんもみんなマスクとなってからは、客席からの声は聞こえず、表情も見えないという状況で、本当に真っ暗な中を手探りで歩いているような日々でした。いま、ようやく感染状況も落ち着きをみせはじめていますが、緊張感は解けません。「新しい日常」のなかで、私たちアイドルの活動も新しいスタイルでの活動に挑戦し続けていきたいです。 安田桃寧さん 一方、得意の「料理」を生かした動画配信など、コロナ下だからこそ見つけられた自分の強み、自分なりのファンへの感謝の表し方というものもあります。決して全てを後ろ向きにはとらえていません。 「表情づくり」にかけてきた ――「強み」という部分を、もう少し詳しく。 安田 私は「アイドルは表情である」と思ってきました。何かを表現するときに、顔の表情で表現する、体の動きで表現する、もしくは全身で表現する――いろんな方法がありますが、私が初期からずっと心がけてきたのは「表情づくり」です。尊敬する卒業生の渡辺美優紀さんへのあこがれもありました。ファン一人ひとりへの応対が丁寧で、「神対応」と呼ばれた先輩ですが、そのなかでも視線の配り方、表情のつくり方など、表現者としての部分も抜きんでていました。 「目を奪う」という言葉があ… この記事は会員記事です。残り1880文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
今日も漁を続ける 海洋放出反対 でも現実との折り合いも考え
午前2時半過ぎ。きらめく星空の下で、福島県いわき市の刺し網漁師・新妻和夫さん(70)は久之浜漁港を出港し、30分ほど船を走らせた。漁船の照明が、自らの船体を暗闇の海に浮かび上がらせる。前日に仕掛けた網を一人、黙々と引きあげた。 31日の衆院選投票日、人々は何を託そうとしているのでしょうか。私たちの現在地を写真でお伝えします。 あの事故が起こるまで東京電力福島第一原発周辺は「いい漁場だった」。今も原発から10キロ以内の漁は行っていない。「基準を超える魚がかかるのも嫌だし、みんなできるだけ近づかないね」 福島沿岸の漁師たちは震災翌年の6月から漁を再開。検査によって安全性を証明するデータを積み上げ、水揚げできる魚種も徐々に増やしてきた。「ここまで半歩ずつ、1歩ずつそれぞれが進んできた」(新妻さん) 今年4月、政府は原発の汚染水を浄化処理して海に流す方針を決めた。「これから続く後継者も不安を持つ」と新妻さん。決定に対し風評被害を懸念し、福島県漁連だけでなく、全国漁業協同組合連合会も反対している。 新妻さんは「安全だと言われると信じるしかない。安心の担保がある程度きっちりしないのでは、反対とと言うしかないよね」。複雑な心境を漏らした。(福留庸友) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ランキング44位 かかわりのねえこって 地味でも、魅力満載の上州
東京から群馬に転勤して半年が過ぎた。ワンルームのマンションの家賃は3万9千円、駐車場8千円。赤城山が目の前にどんとそびえており、晴れた日には県北部の山々も見える。 とはいえ単身赴任なので時折、東京の自宅に帰る。朝の通勤ラッシュに出くわすことがあるが、コロナ禍で呼びかけられた「オフピーク通勤」ってどうなってしまったのだろう。リモートワークはどうなってしまったのだろうか。 車内にはつり革を握り、スマホを操作している人たちがいる。無言で窓の外を見ている人たちもいる。昨日の仕事の失敗を思い起こしているのか、嫌いな上司の顔を思い浮かべているのだろうか。 前橋の老舗居酒屋。緊急事態… この記事は会員記事です。残り1002文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
慶応、早稲田の現役学生が山形に移住 東京から300キロ離れたわけ
人口2万人余りの山形県村山市に昨年秋、現役の慶応大生が移住した。今年春には早稲田大生も。地方はどこも人が、とりわけ若者がほしい。東京から約300キロ北の雪国に、なぜ呼び寄せることができたのか。 23日夜、村山市東部、大倉地域の静かな集落。ある民家の小屋が、暖色の明かりに照らされていた。家主の慶応大経済学部4年、末永玲於(れお)さん(22)が「オクトーバーフェス」を開いていた。飲食店開業をめざす宮城県七ケ宿町の地域おこし協力隊員、三須(みす)あかりさん(24)を招き、そば粉を使った料理「ガレット」を振る舞ってもらった。 参加者は10人余り。スパイス入りのお手製コーラ、たき火であぶるソーセージ……。初対面同士も多かったが、会話ははずんだ。 民家の名前は「B.BASE(ビードットベース)」。神奈川県から昨年移住した末永さんが今夏、築約50年の空き家を改修して立ち上げた、クリエーターの拠点施設だ。自宅も兼ねる。「最初のBは、ボヘミアンのB。流浪する芸術家が集まるベースです。クリエーターは紹介もありますが、自然と会うんです」 「コロナ、ヤバイです」を受け止めてくれた住民たち 末永さんは富山県砺波市出身。3年前までは村山市の名前も知らなかった。 大学1年の夏、知人に頼まれ… この記事は会員記事です。残り1577文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
不登校の子どもと接してきた元中学教員が行きついた先は
近鉄奈良駅から徒歩5分、若草山が見える雑居ビルの4階。学校では生きづらく感じる不登校傾向の子どもたちが通う「学びのフリースペース小草(おぐさ)」で、中学2年の女子生徒(13)が勉強をしていた。 昨春、コロナ禍による一斉休校などでうまく学校生活が始められず、登校できない日が増えた。今は週1日、ここに通う。 貧困家庭の子どもたちや障害者、高齢者、外国にルーツを持つ人たちなど、生きづらさを感じている人たちの学習支援や集う場を作ってきた元教員らで立ち上げたNPO法人「市民ひろばなら小草」(田村隆幸理事長)が運営。昨年7月に開設した。 憲法26条はすべての人に普… この記事は会員記事です。残り1063文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
海底火山から噴出した軽石、鹿児島・沖縄の30港に漂着 漁船に被害
2021年10月29日 13時31分 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火でできた大量の軽石が漂着している問題で、磯崎仁彦官房副長官は29日午前の記者会見で、28日時点で鹿児島県で19港、沖縄県で11港で軽石の漂着を確認したことを明らかにした。漁船への被害なども出ているという。 8月13日に福徳岡ノ場で始まった噴火で、大量の軽石が噴出。海面を埋めた軽石が海流に乗って広がっている。会見での磯崎氏の説明によると、鹿児島県の加計呂麻島や沖縄県の久高島で港が使えず、フェリーの航行に運休が発生。両県の計16の漁港に漂着し、計40隻の漁船に被害が生じ、うち6隻が航行不能の状態になったという。 政府は関係省庁による対策会議を設置。松野博一官房長官は29日、首相官邸で記者団の取材に応じ、「政府として軽石の回収、船舶の安全確保、漁業被害への支援等、引き続き万全の対策をとっていく」と述べた。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
岡山県警の巡査を強制性交等の疑いで逮捕 SNSで知り合った少女に
2021年10月29日 9時18分 少女に性的暴行を加えたとして、岡山県警は28日、岡山南署地域課巡査の武南(たけなみ)金太郎容疑者(21)=岡山市東区西大寺松崎=を強制性交等の疑いで逮捕し発表した。「間違いありません」と容疑を認めているという。 逮捕容疑は9月19日と22日のそれぞれ未明、県南部の駐車場に止めた自家用車などで、少女が13歳未満であることを知りながら性的暴行を加えたというもの。いずれも勤務時間外だったという。 県警によると、武南容疑者はSNSで少女と知り合った。少女の相談を受けた学校側が警察に連絡し、事件が発覚。少女のスマートフォンなどから県警は武南容疑者を特定した。少女は容疑者が警察官と知らなかったという。 県警の荻野英俊首席監察官は「極めて遺憾。捜査により全容解明を図り、厳正に対処いたします」との談話を出した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
死亡事故のJR外房線、踏切幅わずか2メートル 過去にも立ち往生が
上保晃平、多田晃子2021年10月29日 9時32分 28日午前10時40分ごろ、千葉市緑区土気町のJR外房線の「土気踏切」で、上り快速列車(15両編成)と軽乗用車が衝突する事故があった。千葉南署によると、現場で女性1人の死亡が確認された。 JR東日本千葉支社によると、列車の運転士や乗客約300人に、けがはなかった。列車の運転士の説明では、現場の約100~150メートル手前で、踏切内で立ち往生していた軽乗用車に気づいたため、警笛を鳴らして非常ブレーキをかけたが間に合わず、軽乗用車に衝突したという。 現場は外房線の大網―土気駅間の踏切。事故の影響で、同線の誉田―本納駅間の上下線で約5時間40分にわたり運転を見合わせた。 ◇ 事故現場となった踏切は幅2メートル。踏切内は片側交互通行で、コンクリートで舗装されており、起伏がある。踏切の手前には「耕運機及び幅1・3メートルまでの車両しか通行できません」との看板が掲げられている。遮断機や警報器、非常ボタンはあるが、障害物の検知装置はない。 近隣からは以前から、危険性が指摘されていた。 近くに住む40代主婦は、過去にもこの踏切内で乗用車が立ち往生していたと証言する。子どもの悲鳴を聞き、主婦の夫が駆けつけると、遮断機の閉じた踏切内の車のそばで、女性と子ども3人がパニックに陥っていた。夫が非常ボタンを押して事故を回避したが、「踏切の幅が狭く、普通車がぎりぎり通れるかどうか。通過すると車が上下に大きく揺れるほど起伏もある。早く整備してほしい」。 近所の50代主婦も「もっとわかりやすく標識などで注意を促してほしい」と話す。自営業の男性(66)は散歩や買い物のためにほぼ毎日この踏切を渡るという。脳梗塞(こうそく)の後遺症で足を引きずりながら杖をついて歩くといい、「踏切内の起伏で歩きづらい。でも迂回する道は遠く、渡るにはここしかない」。(上保晃平、多田晃子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル