子ども向けの「切手教室」が東京都町田市で静かな人気を集めている。SNSなどで連絡を取るのが当たり前となり、切手の使い方を知らない子どもたちには、カラフルな紙片が新鮮に映るようだ。 同市相原町にある大型の児童館「子どもセンターぱお」で18日、昨年から毎月開催している切手教室があった。子どもたちは、地域住民から寄せられた使用済み切手を水に浸してはがし、カラフルな記念切手を選んで乾かしている。好きな切手を貼って作るしおり作りが人気で、この日も2時間ほどの教室に十数人が次々と訪れた。 隣の神奈川県相模原市から来た近藤月桜(りら)さん(10)は「この教室に来るまで、切手に触ったことがなかった」と笑う。この日は友人の八木心愛(ここあ)さん(10)を誘い、スヌーピーなどお気に入りのキャラクターの切手でしおりを作った。「スマホじゃなく、手紙で連絡するのも楽しそう」 教室には、切手収集家らで作る公益財団法人「日本郵趣協会」が理事らを派遣して協力している。子どもたちと一緒に楽しそうに切手はがしをしていた同協会副理事長の金川博史さん(70)によると、子ども向けの切手教室が継続して開かれることは珍しいという。「収集家は高齢化しており、文化としての切手を後生に伝える意味でも有意義な教室だ」と語る。 町田市によると、切手教室は2019年6月、市内の切手収集家の提案で別の子どもセンターで始まり、昨年から2カ所に増えた。指導役で「ぱお」の児童厚生員、岡本徹平さん(36)は、市内の23カ所の郵便局で押してもらえる風景印を集め、教室に飾っている。「郵便ポストに切手を貼って出すと届く、ということも今の子どもたちはよく知らない。切手を触って楽しそうで、いい学びになると思う」と話す。(前川浩之) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
捨てられない「ひとつ前」の搭乗券 あの日123便に乗らなかった私
あれから36回目の夏が終わろうとしている。思い出すのは、手荷物検査場にいた夫婦と子どもたち。いつしか自分は傘寿を過ぎ、81歳になった。そのことへの申し訳なさがふと、よぎる。 1985年8月12日。書道家の村尾清一さんは東京都内であった書道展の表彰式を終え、羽田空港にいた。思ったより早く着いたな。キャンセルが出たひとつ前の便に変えて、手荷物検査の列に並んだ。 列の前には若い夫婦と小学生ぐらいの子どもが2人。子どもは水槽を抱えていた。夏休みに捕まえた魚でも入っているのかもしれない。「次の便にしたらどうですか」という係員の声が聞こえる。機内に持ち込めるかどうか、調べるのに時間がかかるのだという。その家族を追い越し、ゲートをくぐった。 その日夜。大阪府箕面市の自… この記事は有料会員記事です。残り649文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「琵琶湖と瓜二つ」 ある国のつぶやきから始まった 思わぬ交流
「琵琶湖とオーストリアは瓜(うり)二つ」。中欧オーストリアの政府観光局(東京)がツイッターに投稿した一文に、いつも以上に多くの好意的なコメントが寄せられた。琵琶湖の地元、滋賀県も反応し、思わぬ進展をみせている。 8月6日。東京・日本橋にある滋賀の情報発信拠点「ここ滋賀」に、政府観光局の職員が招待された。 富家(ふけ)信次・県東京本部長からオーストリア側に手渡されたのは、自転車に乗るたぬきをかたどった信楽焼の置物だ。 ■なぜ滋賀県がお祝いするのか… この記事は会員記事です。残り846文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
遺品たちに呼ばれて私は写す 写真家・石内都、広島で撮る過去と未来
首や背中の辺りに茶色い染みのある立て襟のワイシャツ。細いしま模様が入った生地で、袖口にはカフスボタンが光る。 7月下旬。広島平和記念資料館(広島市中区)を訪れた写真家の石内都さん(74)は、中庭に面した会議室の窓側に被爆者の遺品を広げ、撮影していった。 遺品のシャツのカフスボタン部分をアップで撮る石内都さん=2021年7月20日午前10時27分、広島市中区の広島平和記念資料館、柳沼広幸撮影 トレーシングペーパーを重ねて敷いた上にシャツを載せ、丁寧に広げて形を整える。長年愛用する一眼レフカメラ「ニコンF3」を構え、居住まいを正して呼吸を整えると、シャッターを切った。 「真裸でまっ赤に染まった躰(からだ、マーキロと血とで)に私はこのワイシャツを着せてやった」。荷札に書かれたメモが遺品に添えられていた。 残されたものは「歴史の塊」 76年前の1945年8月6日。広島市立中学2年生の檜垣浩さん(当時15)は建物疎開の動員中に被爆し、全身に大やけどを負った。なんとか父親の職場までたどり着いたが、衣服は熱線で焼けて裸同然の姿。父親がシャツを着せた。その夜、「お父ちゃん、胸が苦しい」と言って亡くなったという。シャツの茶色い染みは血と消毒液の痕だ。 フィルムを交換する石内都さん=2021年7月20日午前10時20分、広島市中区の広島平和記念資料館、柳沼広幸撮影 被爆時にはいていたズボンも広げられた。左側は股下から裾がない。右の裾には焼けて大きな穴が開いている。残っていた布のベルトをめくると、きれいな字で名前が書かれていた。 「熱線を浴びた方向によって、衣類の焼け方に違いがある」と、撮影に立ち会った下村真理学芸員。 6歳の男の子がはいていた焼け焦げがある半ズボン、高等女学校3年生が持っていた財布、背中に焦げ痕がある婦人服……。この日は被爆者の遺品計7点を撮影した。ライティングはせず、窓側の明かりで自然に撮る。36枚撮りカラーフィルム計5本で終了した。 「残されたものたちは歴史の塊。被爆から76年を経て目の前に現れた。未来へつなげないといけない」 こだわるのは被爆者が身につけていたもの。洋服、靴、手袋、眼鏡、入れ歯。「肌に触れていたものがその人に一番近い。生身の肉体はなくなっても、ものは長く存在する」 遺品の撮影を終えた石内都さん=2021年7月20日午前11時53分、広島市中区の平和記念公園、柳沼広幸撮影 2007年に初めて広島を訪れ、被爆者の遺品を撮影。写真集「ひろしま」(08年)を出した。花柄や格子柄、水玉模様のカラフルなワンピースやスカート、丁寧に補修した手袋などの写真が並ぶ。掲載したワンピースの写真などに「きれいすぎる」と批判の声も上がった。 いしうち・みやこ 1947年、群馬県桐生市生まれ、小学校から高校まで神奈川県横須賀市で暮らす。写真は独学で27歳で撮り始める。育った基地の街、横須賀を撮った「絶唱、横須賀ストーリー」で77年にデビュー。79年に女性では初となる木村伊兵衛写真賞受賞。写真集に、旧遊郭や赤線跡の「連夜の街」、被爆者の遺品の「ひろしま」など。東京国立近代美術館、ニューヨーク近代美術館など国内外の美術館に作品が収蔵されている。2014年にハッセルブラッド国際写真賞受賞。 「戦時中だって若い女の子は… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
森友公文書改ざん「新政権は再調査を」 赤木雅子さん講演で訴え
町田正聡2021年9月26日 13時05分 学校法人森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自死した同省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(50)が25日、鹿児島市内で開かれたセミナーで経緯や現状を語った。赤木さんは一連の問題について「一人でも多くの人が関心をもってほしい」と訴えた。 赤木さんは昨年3月、国などを相手取り損害賠償を求めて提訴。決意した理由を「大好きな夫がなぜこうなったのか、知りたい一心だった」と明かした。 改ざんの経緯を俊夫さんが記したとされる「赤木ファイル」が訴訟で開示されたことについて「世論の力が大きかった」と語った。一方で、黒塗りの部分もあり、不十分だと指摘した。 まもなく誕生する新政権に対しては「真相を明らかにするために再調査を行い、前の政権がやった間違いや失敗をただしてほしい」と訴えた。(町田正聡) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ギターに合わせて「ガオー、ガオー♪」 クマ被害防止、ロックで啓発
奈良美里2021年9月26日 13時26分 岩手県は秋のクマ被害防止キャンペーンを始めた。キノコ採りなどで山に入る機会が多くなることから、クマと遭遇し、被害に遭うのを防ぐ狙いがある。 新しいチラシの配布に加え、県職員で音楽家の登堂かほるさん(本名・舘洞嗣雄さん)(61)が作詞・作曲した「ツキノワグマのRock’n’Roll」を啓発活動に使う。 「子熊を可愛いと 思うかい? 甘い考え 捨てちまいなよ」 「突然アンタに 襲いかかる ガオー、ガオー、ガオー、ガオー、ガオー、ガオー」 ギターの軽快なリズムに合わせてクマ対策のメッセージを込めた。盛岡市在住のシンガー・ソングライター田口友善さん(69)が歌い、県のホームページでも公開している。 県自然保護課によると、今年度の県内でのクマの目撃件数は2188件(8月末時点)、これまでに13人の人身被害もあった。同課は山に入る際には、▽複数で行動する▽クマスプレーを携帯する――といった対策をとり、出合ってしまった場合は、▽走って逃げない▽目を離さず静かにゆっくり後退する――などと注意喚起している。(奈良美里) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コロナ「第5波」子どもの感染急増 どんな対策すれば…悩む保育現場
新型コロナウイルスの「第5波」では、子どもの感染増が顕著となっている。特に10歳未満の増え方が大きく、福岡県では累計感染者が「第4波」の4倍超の3千人余りに達した。親が働く家庭の子どもを預かる学童保育(放課後児童クラブ)や保育園などの現場は、大きな影響を受けている。 「週明けに臨時休所してください」。9月上旬の土曜夜、福岡県内の学童保育の事務局長は、自治体の担当者から電話でそう告げられた。利用する児童のコロナ感染が判明したという。発症日などの詳しい情報は、この時点では知らされなかった。 翌日の日曜、主任支援員と出勤し、保護者への連絡や消毒などにあたった。「うちの子は濃厚接触者になるんでしょうか」「学校には行けるんでしょうか」。保護者から問い合わせを受けたが、「詳しいことはわからないんです」としか答えられなかった。 この学童保育で感染者が見つかったのは初めて。昨年初めからずっと緊張しながら対策を講じてきた。消毒や手洗い、マスク着用、パーティションの設置、黙食や密回避の徹底……。その時々の知見や状況に合わせ、できることは採り入れてきた。 結局、利用者や職員に濃厚接触者はいないと判明し、臨時休所は1日で済んだ。「ほっとした。でも、ここで感染が拡大していたら、これ以上どんな対策をすればいいのか」。主任支援員の今後の不安は尽きない。 小学校でも学級閉鎖が相次ぎ、学童保育で児童らが「あのクラス、コロナが出たらしい」という話をするようになったという。子どもの活動を制限することで心身の発達に影響があることも心配だという。主任支援員は「対策を徹底する一方、誰にでも感染する可能性があるということを教える必要もある。バランスが難しい」と話す。 「大事なのは周囲の大人の感染対策」 福岡県の10歳未満の感染者… この記事は会員記事です。残り869文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
緩和ケア、自殺幇助を追って欧州を巡った そこで感じたこととは
僧侶・高橋卓志さん 「終わりましたよ」 今年4月上旬、手術室のベッド上にいた僕は、看護師さんの声で目覚めました。ついさっき「麻酔、入ります」と言われたばかり。実感としてはわずか数秒。実際は4時間半も意識を失っていました。完全なブラックアウトで、夢も見なかった。これは「疑似的な死」といえるのではないか、と僕は考えています。 それより1カ月前に、S状結腸がんが見つかりました。告知後に「どんな病状か」「治療はどうなる?」と想像する時間は、正直ものすごく苦しかった。これまで多くの末期がん患者さんの支援にかかわり、迷いや葛藤、不安、恐怖、悔い、あきらめの言葉に耳を傾けてきました。完治を見込めないなかで手術や治療に臨む姿にも触れ、死に至るまでの厳しさを見せてもらってきた面もあります。 これから僕も同じ道をたどる… この記事は有料会員記事です。残り1190文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
障害ある子ザルを抱いたオス、専門家も驚いた リーダーの条件とは
自民党の総裁選が佳境を迎え、次期衆院選も近づいてきた。リーダーの条件とは何か。淡路島モンキーセンター(兵庫県洲本市)では、約350匹のニホンザルの群れのリーダーが昨年末、約4年ぶりに交代した。40年以上、群れを観察してきたセンター長の延原利和さん(67)は「群れを最優先に考えて行動するのがリーダーの共通点。人間にも、当てはまるのではないか」と分析する。 センターは1967年に開園。サルは朝に山から下りてきて、夕方には山に帰る。全国から見てもらおうと、2017年に園内に定点カメラを設置し、ユーチューブの24時間無料ライブ配信が人気を集めている。 淡路島のサルは、全国でも珍しいほど寛容性が高い。専門家らの間でも、仲が良く、優しい性格の集団として知られている。群れでは長い間、平均3年ほどで、平和的にオスのサルの序列1位(リーダー)が代わってきた。 大きな変化の前兆があったのは1988年の冬。延原さんは驚くべき光景を目にした。あるオスのサルが、母を亡くした両手足に障害がある生後約6カ月の子ザルを、片腕で抱いて移動するようになった。延原さんは、初めて見た行動だったという。そのオスのサルが、後に93年から「7代目」のリーダーになるマッキーだった。 まるで母のように子ザルの面倒を見るマッキーは、次第にほかのサルたちから信頼を得ていった。序列を上げ、リーダーに昇格。体の不自由なサルでも追いつけるように、山から山へ移動する群れのスピードを落としたり、行動範囲を以前よりも狭くしたりする工夫をして、約15年間にわたる異例の「長期政権」を築き上げた。 延原さんは「序列関係が厳しいサル社会の中で、マッキーには『かばう』『許す』『助け合う』といった優しさがあった」と指摘。「弱いサルでも、群れの一員として暮らせるように配慮をしてきた。『マッキー政権』の15年間で、これまで以上に優しいサルの群れの基礎が築かれた」とみている。 「サルたちは力や争いではなく、共に助け合う社会のスタイルを選択した」 淡路島のサルの寿命は、平均… この記事は会員記事です。残り990文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
東大合格者も増えた 日比谷高校の英語4技能伸ばす授業とは
大学入試改革でも話題になった「読む・書く・聞く・話す」の英語4技能。各大学の個別試験や総合型、学校推薦型の選抜では、4技能の総合的な評価の推進や民間試験の活用を文部科学省の有識者会議が提言しており、高校や中学では4技能育成に向けた授業改革が進んでいる。現場を訪ねた。(編集委員・宮坂麻子) 耳を慣れさせ どんどん発話 緊急事態宣言下の9月中旬、東京都立日比谷高校(千代田区)で、高1の「コミュニケーション英語Ⅰ」のオンライン授業があった。新学習指導要領で「話す」が「やりとり」と「発表」に分かれることも踏まえた、4技能5領域統合型の授業だ。誰もいない教室の教壇からパソコンに向かって、英語科主任の中村隆道・主幹教諭が問いかけた。 What is your favorite music?(あなたのお気に入りの音楽は?) 理由や経験も交え、即興でで… この記事は有料会員記事です。残り2351文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル