滋賀県の湖東記念病院で2003年に死亡した男性患者への殺人罪で服役後、再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)が国と県に計約4300万円の国家賠償を求めた訴訟で、県が無罪判決を否定する内容の主張をしていることが分かった。16日に大津地裁であった非公開の手続き後、原告側が会見で明らかにした。 昨年3月の再審の無罪判決は、西山さんの捜査段階の自白について、取り調べた県警の男性刑事が西山さんの恋愛感情などを利用して誘導したと認定。被害者が致死性不整脈で死亡した可能性があり「殺害されたという事件性が証明されていない」と結論づけた。無罪判決は翌月に確定した。 だが、県は、15日に地裁へ提出した準備書面で「取り調べ担当官に好意と信頼を寄せて虚偽の殺害を自白することなど、根本的にあり得ない」とし、捜査の違法性を否定。「被害者を心肺停止状態にさせたのは、原告である」と主張した。 再審の無罪判決で、裁判長は「取り調べや証拠開示などが一つでも適切に行われていれば、逮捕・起訴はなかったかもしれません」と説諭したが、「滋賀県警としては、承服し難い」とも反論した。 西山さんは昨年12月、捜査の違法性を明らかにするとして、国賠訴訟を起こした。国は6月、「検事が有罪と認められる嫌疑があると判断したことには十分な理由があり、起訴の判断が合理性を欠くとはいえない」とし、検事の捜査に違法性はなかったとする書面を地裁に提出している。 この日の会見で、西山さんは「県の書面の内容はうそで、怒り心頭だ」と語った。代理人の井戸謙一弁護士は「予想外で大変不当」と強調。県の準備書面について「無罪とした刑事確定判決の判断を正面から否定するもの」「美香さんを再び馬鹿にし、その名誉を甚だしく毀損(きそん)するもの」などとし、県の代理人に撤回を求めたという。 無罪判決をめぐっては、県議会で昨年6月、滝沢依子・県警本部長が代表質問に対し「結果として(西山さんに)大きなご負担をおかけし、大変申し訳ない」と謝罪していた。県警監察官室は取材に対し、準備書面について「個別の案件についてはコメントを差し控える」とした。(安藤仙一朗) ◇ 大阪市東住吉区で1995年、女児(当時11)が死亡した火災で、再審無罪となった母親の青木恵子さん(57)が国と大阪府に損害賠償を求めた訴訟が16日、大阪地裁で結審した。判決は来年3月15日。 青木さんは保険金目的で放火したなどとして殺人罪などで起訴され、無期懲役の判決を受けた。その後、大阪地裁の再審で2016年8月、自白は誘導された疑いがあるなどとして無罪判決を受け、確定した。 青木さんは、違法な取り調べで自白を強要され、精神的な苦痛を受けたとして提訴。国や府は、違法な捜査はなかったとして請求棄却を求めている。今年2月の証人尋問で、取り調べを担当した元警察官は「(青木さんを)今でも犯人だと思いますか」と問われ、「思います」と答えた。 青木さんは16日の口頭弁論で「『娘殺しの母親』の汚名を着せられたのに、国や府からは謝罪もない」と訴えた。(米田優人) 民事裁判は、刑事裁判から独立して認定できるので、国や滋賀県、大阪府がどのような主張をするかは法的に自由だ。ただ、いずれの事件も無罪判決が再審で確定し、違法な捜査があったと認めている。無罪判決を否定するような主張をするのは、「私たちは納得していない」というポーズであり、間違いを認めない姿勢の表れだ。裁判が長引くと無罪になった人の負担が増え、救済も遅れる。捜査機関側は素直に誤りを認めて謝罪し、事件を検証するべきだ。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
生きづらさ抱える人のアート展示 「北の病展」 札幌市で開催
川村さくら2021年9月16日 18時00分 精神疾患や発達障害などで生きづらさを感じながら暮らす人の作品を展示する「北の病展」(https://kitanoyamaiten.wixsite.com/kitanoyamai)が16日、札幌市中央区の「アートスペース201」で始まった。 同展は2016年に始まり、今回は高校生から50代までの46人が参加。絵画や写真、小説、人形などさまざまな表現が並ぶ。 展示会を主宰するアーティストのはなびさん(32)は「私たちは今ここにいる」をテーマにする。自身も不安障害などを持ち、就労継続支援B型事業所に通い生活している。精神科に通院し、精神安定剤と抗うつ剤を処方してもらう。今回は自傷の痕があったり、薬瓶に囲まれたりした女性の写真を出展した。「日常に突然訪れる心のなかのどろどろした感情を表現しました」と話す。 展示会を続けるのは「来年の予定を決めて、またみんなで集まれるのがうれしい」からだという。生きづらさを表現したアートを見てもらい、同じように苦しむ人たちにも仲間がいると感じて欲しいと願っている。 会場は札幌市中央区南2条西1丁目7―8の山口中央ビルの6階。21日までで、入場無料。平日は午後1時~午後8時、土日祝は午前11時~午後6時、最終日の21日は午後1~4時。(川村さくら) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪・関西万博 公式グッズお披露目 16日からネット販売スタート
添田樹紀2021年9月16日 18時00分 2025年大阪・関西万博のロゴマークをあしらった公式ライセンスグッズの発表会が16日午前、大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」であった。ポロシャツやキーホルダー、マスクなど64種類。万博はSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を掲げており、再生ポリエステル製のエコバッグや再生紙を使ったボールペンなどもある。 万博のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。ロゴマークはこのテーマに沿い、赤い円で細胞を表し、形の異なる細胞同士を連ねて「いのちの輝き」を表現する。発表会に出席した井上信治・万博担当相は「多くの皆様にグッズを身につけ、持ち歩いてもらうことで、万博をより身近に感じていただきたい」と語った。 グッズの販売は同日、近鉄百貨店あべのハルカス近鉄本店やインターネットなどで始まった。今後は関西の商業施設でも販売する。来年6月ごろまで。(添田樹紀) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
愛知で595人が新規感染 病床使用率50%を下回る
愛知県は16日、595人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。うち名古屋市は267人だった。 15日時点の入院者は前日より59人減って876人(病床使用率49・7%)で、政府の分科会の指標でステージ4(感染爆発)の基準となる病床使用率50%を下回った。重症者は前日から7人増えて87人(病床使用率47・5%)だった。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「野生のトキ」復帰の陰にブランド米 世界が認めた再生のストーリー
日本海に浮かぶ新潟県・佐渡島に、全国でも珍しいブランド米がある。その価値は国際的にも認められ、10年前、島は先進国で初めて「世界農業遺産」となった。将来が危ぶまれていた「佐渡米」の復活――。かぎは、特別天然記念物トキが握っていた。 佐渡市役所の市長応接室には「朱鷺と暮らす郷」が陳列されている 今月7日昼、東京・成城の世田谷区立明正(めいせい)小学校に給食の時間がやってきた。約860人の児童がほおばるご飯は佐渡産コシヒカリ「朱鷺(とき)と暮らす郷(さと)」だ。 校内で給食を調理している明正小では、「佐渡のお米はおいしい」と米店に薦められ、今年度から米飯給食の白米に「朱鷺と暮らす郷」を使い始めた。 この米が、トキの野生復帰に貢献してきたことはあまり知られていない。しかし、その「功績」が評価され、2011年に佐渡島は石川県の能登半島とともに、国連食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産」に認定された。「その物語に感動しました」と明正小の副校長、黒田博之は語った。 認定の3年前にあたる08年、佐渡市は「朱鷺と暮らす郷」の認証制度を始めた。環境を保全するための厳格な条件で栽培された米を、ブランド米として認める仕組みだ。 台風被害で収穫半減、市長は危機感 きっかけは、04年夏に佐渡… この記事は有料会員記事です。残り1951文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
海のないススキノにすみつくカモメ 実は海辺の崖より好条件
海のない札幌市の歓楽街ススキノや閑静な住宅街をカモメが滑るように飛んでいるのを見かける。ここは日本海の石狩湾から15キロほど離れた都市だというのに、いきなりあの大きな鳴き声を聞くと港にいるような心持ちになる。北の都会のカモメを追った。 記者は札幌に赴任してようやく半年になる。8月の終わり、山がほど近く、高級住宅街でもある札幌市中央区円山(まるやま)地区の上空を滑空する白い鳥に気づいた。さっぽろテレビ塔がある大通公園も近い場所だ。 カラスより大きい。広げた翼を時々Mの字にした。カモメに違いない。迷い込んだのだろうか。 「ススキノや大通公園近くのビルに営巣するものもいます」 市民団体「エコ・ネットワーク」(札幌市)の研究員として、5年ほど前まで札幌市などのカモメを調べていた長谷川理さん(49)が教えてくれた。 札幌にすみついているのは「オオセグロカモメ」。翼を広げると1・5メートルにもなる大型のカモメだ。体は白いが、背中と翼の上面が濃い灰色なのが特徴。日本では北海道や東北地方北部に生息し、海辺の崖に巣を作る。 いつごろから札幌にすみつくようになったのかは不明だが、日本野鳥の会札幌支部の調査だと、2001年に市中心部の二条市場近くで1個の巣が見つかったのが最初だ。それから10年ほど調査したところ、巣の確認は年々増え、09年には50個にのぼったという。 「海辺の崖よりビルのほうが、子育てに好条件なのかもしれません」と、長谷川さんは推測する。海辺では食べ物を得られるかどうかは天候に左右される。一方、都会は残飯などが多く、雑食のカモメにとって安定的に食べ物を得られる場所なのだ。 長谷川さんは09年、札幌市から30キロほどの北海道小樽市の海辺と札幌市で、オオセグロカモメの巣をそれぞれ約50個調べた。1個あたりの巣立ったヒナの数は、小樽市で0・9羽だったのに対し、札幌市では1・6羽だった。 都会ならではの危険もある… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
アプリで魚の「三枚おろし」体験 開発者は元プログラマーの町職員
藤家秀一2021年9月16日 15時00分 タブレット端末などの画面を指でなぞることで魚の「三枚おろし」を体験できるアプリケーション(応用ソフト)ができた。開発したのは、マダイやブリの養殖が盛んな愛媛県愛南町の町職員、清水貴光さん(49)だ。地元特産の養殖魚をもっとPRしたいとの思いもある。 きっかけは、新型コロナウイルスの影響で学校などでの調理実習がやりにくくなったこと。町水産課の清水さんは、調理実習ができない町内の小学生に魚のさばき方を体感してもらう方法はないかと考えた。 前職はプログラマー。その時に培った技術を生かし、町内で特に養殖が盛んなタイ、スマ、ブリの三枚おろしが疑似体験できるゲームアプリを仕立てた。 アプリはタブレット端末などでの利用を想定。グーグルの配信サービス「グーグルプレイ」からダウンロードすると、画面を指示通りに指でなぞりながら三枚おろしが体験できる。 マダイの場合、包丁やキッチンばさみなどを使いながら2~5分ほどで59の解体工程をこなしていく。終了後には、習熟度が8段階で表示される。 6月に地元の小学校で実施した体験授業では、「次は本物の魚をさばいてみたくなった」などと好評だったという。当初は子どもたち向けに開発したが、グーグルプレイに登録され、一般の人も利用できるようになった。 アプリは地元漁協などでつくる「愛南町ぎょしょく普及推進協議会」がPRする。ぎょしょくには、魚に触れる「魚触」▽魚の生態や栄養を学ぶ「魚色」▽獲(と)る漁業を学ぶ「魚職」▽育てる漁業を学ぶ「魚殖」▽伝統的な魚文化を学ぶ「魚飾」▽魚を取り巻く環境を学ぶ「魚植」▽魚の味を知る「魚食」の七つの意味があり、町内では以前から「ぎょしょく教育」が盛んだ。 清水さんは「アプリで三枚おろしのコツを覚えて、愛南町産の魚をどんどんさばいて食べてほしい。家で魚を調理する大人にも利用してほしい。町のPRにつながればうれしい」と話している。(藤家秀一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
その交通事故、詐欺かも AIが不正請求の疑い検知、保険業界が導入
知人同士でわざと交通事故を起こして保険金をだまし取ったとして、埼玉県警は16日、さいたま市緑区三室、会社員遠藤昌宏容疑者(45)ら4人を詐欺の疑いで逮捕し、発表した。認否は明らかにしていない。県警は、遠藤容疑者らがほかにも数件の事故を偽装して保険金をだまし取っていた疑いがあるとみている。 交通捜査課によると、逮捕容疑は共謀して2016年12月11日午前0時35分ごろ、さいたま市岩槻区浮谷の県道で、信号待ちの車に後ろから別の車で故意に衝突。契約する保険会社から車の修理代や通院代などの保険金計約420万円をだまし取ったというもの。保険会社が19年ごろ、「不正請求の疑いがある」と県警に相談していた。 県警は先月、遠藤容疑者ら計5人を別の事故を偽装して約560万円をだまし取ったとして逮捕。捜査関係者によると、当時の調べに遠藤容疑者は容疑を認め、「金が欲しかった」などと供述したという。 交通事故をめぐる保険金詐欺事件は後を絶たない。 警察白書によると、2015… この記事は会員記事です。残り440文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
市川市の市長室からシャワー室撤去 設置360万円、移設125万円
大嶋辰男2021年9月16日 11時20分 千葉県市川市は16日、市庁舎の市長室内にあったシャワー室を撤去したと発表した。昨年10月の設置後、「市庁舎内にシャワー室がすでにあり、市長室には不要」と批判されていた。 市によると、市長室のシャワー室はガラス張りで、新庁舎が完成した後に追加工事で設置された。約360万円かかったという。 市議会は、庁舎内にすでに三つのシャワー室があったことなどから撤去を要求。今年3月、設置費と撤去費を村越祐民市長が負担するよう求める決議を可決した。一方、村越市長は、災害時に女性職員と市長が使うことになるなどとして、撤去しない考えを繰り返し表明していた。 市はシャワー室を、市川市大町の「少年自然の家」に設置された新型コロナ対応の入院待機ステーション内に移設。「救急隊員や急変時に駆け付けた医師らのエッセンシャルワーカーが退所時に使用する」としている。移設費用は約125万円。ただ、少年自然の家にはもともと浴槽施設があるという。(大嶋辰男) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「殺せるなら誰でもよかった」容疑者の大学生供述 佐賀の女性殺害
会員記事 大村久、榎本瑞希2021年9月16日 11時20分 佐賀県鳥栖市で起きた女性殺害事件で、殺人容疑で逮捕された長崎大学4年の山口鴻志(こうし)容疑者(25)が「殺せるなら誰でもよかった」という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材でわかった。 山口容疑者は「現場には初めて訪れた」と供述しており、被害者となった大塚千種さん(79)とは面識がなかったとみられる。県警は山口容疑者の供述を慎重に調べ、犯行の動機の解明を進める。 山口容疑者は事件前日の9日は福岡市内に宿泊。10日にタクシーで鳥栖市へ向かう際、同市内の商業施設を行き先として告げたが、運転手が場所を知らず、市役所近くで降りていたことも明らかになった。降車後、徒歩でJR鳥栖駅方面へ向かったとみられる。 山口容疑者は事件後に着替えたと供述しており、県警は着替えを購入する目的で商業施設に向かおうとした可能性があるとみている。市役所付近から事件現場までは直線距離で数キロあり、県警は事件直前の足取りについてさらに調べを進める。 山口容疑者は10日午後1時… この記事は会員記事です。残り353文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル