山岸玲2021年8月14日 19時59分 【動画】河川があふれ、水に覆われた福岡、佐賀の市街地=遠藤雅彦撮影 停滞する前線による西日本を中心とした記録的大雨は14日も続き、3年前に中国地方に甚大な被害をもたらした西日本豪雨の雨量を超える地域も出た。15日も前線に伴う低気圧の影響で大気の不安定な状況が続くという。気象庁は引き続き最大級の警戒を呼びかけている。 気象庁は14日早朝までに長崎県と佐賀県、福岡県に、昼すぎに広島県に大雨特別警報を出した。対象地域は午後5時時点で、4県の35自治体。 佐賀県嬉野市では降り始めからの総雨量が14日夜に1千ミリを超えた。同日の72時間雨量の最大値は午後7時10分現在、佐賀県嬉野市929・5ミリ▽長崎県雲仙市848・5ミリ▽富山県氷見市290・0ミリ▽岐阜県中津川市278・5ミリなど。九州を中心に東海や北陸、中国地方を含む46地点で観測史上最多となった。この中には死者263人を出した2018年7月の西日本豪雨で被害が出た広島県や福岡県、佐賀県などの複数の観測点も含まれている。 前線、20日ごろまで停滞の見通し 前線は15日にいったん太平洋側に南下し、雨は小康状態になる地域もあるが、20日ごろまで停滞する見通し。気象庁予報課の黒良龍太課長は14日の記者会見で、「前線はすぐに北上し、1週間程度本州付近に停滞する可能性がある。安心する状況では決してない」と話した。引き続きいつどこで災害が起きてもおかしくない状況は続くという。 15日午後6時までの24時間雨量の予想は多いところで、東海300ミリ▽関東甲信250ミリ▽九州北部と四国、中国、近畿200ミリ▽九州南部180ミリ▽北陸と東北100ミリ。16日午後6時までの24時間では、九州南部100~150ミリ▽九州北部と関東甲信50~100ミリ▽四国と中国、近畿、東海、北陸、東北約50ミリ。 「緊急安全確保」、4県142万3千人に発令 総務省消防庁によると、14日午後0時半時点で、避難情報のうち最も危険度が高い「緊急安全確保」(警戒レベル5)は福岡、佐賀、長崎、広島の4県23市町で約65万1千世帯の142万3千人に発令。避難指示(同4)は北陸から九州にかけての22府県164市町村で、約188万8千世帯に出されている。 熊本県人吉市では14日午前、男性1人が増水した球磨(くま)川に流された可能性があるとみて、警察や消防が調べている。広島県東広島市では14日午前、住民から「田んぼの様子を見に行った家族が戻らない」との通報が市消防局にあった。外出した80代の男性の行方がわかっていないという。 長崎県雲仙市で13日未明、住宅が土砂崩れに巻き込まれて住人の森文代さん(59)が死亡した現場では、行方がわからない夫の保啓(やすひろ)さん(67)と娘の優子さん(32)の捜索が14日も続いた。15日も午前7時半から県警や陸上自衛隊、消防関係者らが約200人態勢で続けるという。(山岸玲) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広島市で土砂崩れ 複数の住宅に流れ込み被害も
大久保貴裕2021年8月14日 23時06分 停滞する前線による大雨は14日も続いている。広島市では午後7時半ごろ、西区田方3丁目付近の住民から「土砂が家に流れ込んできた」と119番通報があった。市西消防署によると、付近の山で土砂崩れが起き、複数の住宅に流れ込んで被害が出た。県警によると、1軒は激しく損壊しているといい、現場の状況を確認している。 午後9時半ごろ、記者が現場周辺に到着すると、崩落現場につながる坂道の上の方から、茶色く濁った雨水や土砂とともに、流木や工事用のコーン、パイプなどがゆっくり流れてくるのが見えた。近くを流れる用水路は轟音(ごうおん)を響かせていた。 近くに住む50代の男性は知人から「山が崩れた」とLINEで知らされた。間もなく土砂の量は増え、泥の厚さは靴底1センチほどに達したという。近所で飲食店を経営する別の40代男性は「これまでも大雨はあったが、ここまで土砂が流れてきたことはない」と驚いていた。(大久保貴裕) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
避難時の持ち物は必要最小限に 大雨への備え、注意点は
2021年8月14日 20時00分 九州を中心に、出口の見えない大雨。緊急時への備えは何が必要か。 気象庁などによると、避難場所がどこにあり、どのルートを通れば安全にたどり着けるのか、事前に把握しておくことが大切だ。学校や公民館など指定された避難場所は、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)で検索できる。 避難するときの持ち物は必要最低限にしたい。飲料水や乾パンなどの食料、医薬品、健康保険証、現金、通帳、下着やタオル、懐中電灯などだ。リュックサックを使えば、両手が使えて行動しやすい。 家にとどまる場合、断水に備えて浴槽に水を張るなどして生活用水を確保することも重要だ。物が飛んでくるのに備え、カーテンは閉め、ブラインドは下ろしておいた方がよい。 日本自動車連盟(JAF)によると、道路が冠水し、水位が上がったら自動車での避難は控えたほうがよいという。車で移動中に大雨に遭遇した場合は、川沿いや急傾斜地のほか、高架下などの周囲より低い場所を避けることをJAFは勧める。 冠水した道路を走行できる水深の目安は、乗用車であれば床面がつからない程度。JAFの実験では、セダン型の自動車を水深60センチの道路で走らせたところ途中でエンジンが停止した。水深30センチでは走れたが、速度が上がると水を巻き込みやすく、時速30キロでエンジンルームに水が入り込んだ。 冠水した道路は、見た目では水深がわからない。思いのほか深いことがあるので、進入は避けた方がよいという。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
車もガードレールも流す濁流 広島・安佐南区で土砂崩れ
福冨旅史2021年8月14日 20時21分 停滞する前線による大雨で、避難情報のうち最も危険度の高い「緊急安全確保」(警戒レベル5)が14日に出された広島市安佐南区では、朝から激しい雨が途切れることなく降り続けた。 住宅街が広がる同区山本6丁目では、近くの山の斜面が土砂崩れを起こし、濁流が音をたてながら勢いよく住宅に流れ込んでいた。数本の大木が折り重なってガードレールをなぎ倒し、2台の車とともに住宅まで押し流されている場所もあった。 近くに住む50代の女性は昼ごろに「ゴゴゴー」という轟音(ごうおん)を聞き、現場を見に行ったという。「災害がすぐそこまで来ていると実感する。降りやむことを願うしかない」と話した。(福冨旅史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
気象庁HPが閲覧しにくい状態に 大雨でアクセス集中
2021年8月14日 20時26分 気象庁のウェブサイトが14日午後0時40分ごろから閲覧しにくい状態となった。西日本を中心とした記録的大雨が続く中で、アクセスが集中して負荷が大きくなったためという。午後8時現在、復旧していない。 同庁は、土砂災害や浸水害の危険度を地図上に色分けして表示する「キキクル」(危険度分布)や、各気象台発表の情報などを避難の判断の参考にするよう繰り返し呼びかけてきた。だが大雨災害のさなかに、これらのページにはほとんどアクセスできなくなった。 14日午後、広島県に大雨特別警報を発表した後の記者会見で、担当者は「大急ぎで復旧を進めています。ご利用のみなさまにはご不便をかけて申し訳ありません」と陳謝。トップページには雨の状況を確認できる国土交通省やNHKのウェブサイトのURLを表示し、「こちらもご利用ください」とした。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コロナ拡大下の避難所対策は 特別警報の九州3県
大雨特別警報が発令された福岡、佐賀、長崎の3県では、14日午後3時までに約150万世帯334万人を対象に緊急安全確保・避難指示が出た。新型コロナウイルス感染が急拡大する中での避難所設置となり、細心の注意を払いながらの市民の受け入れが続く。 長崎市の「上長崎地区ふれあいセンター」では午後4時現在、7世帯10人が身を寄せた。和室や研修室を開放し、職員ができるだけ避難者同士の間隔を空けてもらうよう呼びかけた。入り口では、手指消毒や検温、連絡先の記入などを徹底している。運営にあたる市職員の女性は「避難所で感染を広げてはいけないという緊張感がある」。 長崎県庁のホームページには、避難所の混雑状況を紹介する外部サイトへのリンクがある。利用できる避難所が地図上で示され、「空いています」「やや混雑」「混雑」など混み具合が分かる。「密」を避けるため、この市職員は「混雑してきたら、別の所を紹介します」と説明する。 福岡県久留米市では、新型コロナの陽性者と濃厚接触者が入る専用の避難所を初めて開設した。午後4時現在、陽性者1人と濃厚接触者9人が避難した。 市によると、陽性の人は宿泊療養施設に入る予定で自宅待機していた。大雨が予想され、保健所が健康観察の電話の際に事前に専用避難所の利用を案内したという。 佐賀県小城市牛津町の「牛津公民館」では、発熱患者が入る専用の部屋を準備し、残る部屋を避難者が利用する。午後4時現在、約80人が世帯別に一定の距離をとって体を休めている。 内閣府などによると、新型コロナが収束しない中でも、災害時に危険な場所にいる人は迷わず避難することが重要と呼びかけている。 備えとしては、市町村がつくるハザードマップで居場所が安全かどうかを確認。浸水や土砂崩れなど危険がある場合は、身近な避難所を利用するよう促す。ただし「密」を避けるため、安全な場所に住む親戚や知人宅、ホテルの利用も検討してほしいという。 豪雨時に屋外の移動は車も含めて危険を伴う。やむをえず車中泊する時は、浸水しない所か周りを十分確認することが大切という。 避難する場合は、マスクや消毒液、体温計など感染防止や健康状態の確認に必要な日用品、スマホの充電器などもあると便利という。(高木智子、布田一樹) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
目が見えない私、いつもと違ったバス 30分間の小旅行
浦和駅西口からバスが発車すると、運転手が最初の停車地を告げた。「次は市民会館入り口です」 あちゃー、乗り間違えちゃった。自宅に帰ろうとしていた桜井洋子さん(64)は弱った。目が見えないので、知らないバス停で降りてしまうと、ひとりでは戻れない。 バスはどこを走っていくのだろう。 日曜のこの日、友人が駅前の… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:923文字/全文:1079文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広域で浸水、病院孤立「海のようだ」 不安募らせる住民
2021年8月14日 21時01分 大雨の影響で佐賀県内の各地で浸水し、武雄市や大町町で被害が相次いだ。朝日新聞の電話取材に住民らは「海のようだ」「心配」。大雨被害の大きさに驚き、不安をのぞかせた。 六角川が氾濫(はんらん)した武雄市では、市内を通る国道が通行止めになり、2年前の記録的な豪雨と同様に水につかった。 同市朝日町の60代男性は、激しい雨音で午前1時ごろに起きた。自宅2階にあがった後、6時ごろには1階の床上まで水が押し寄せたという。同市北方町の梅林寺の住職の妻、山中京子さん(64)は「(寺の)周辺は家が全て浸水し、海のようになっている」と話した。13日夜は警報を知らせるスマートフォンのアラームで眠れなかったといい、「寺から出ることができず、食料がなくなるのが不安」と心配し、「水につかった様子を見て、また(2年前と同じ)かと思った」と話した。 同市武雄町に住む県立武雄高校の北村敬校長は13日夜、雨が気になって何度も目が覚めた。翌日夕には自宅近くも冠水して外に出られなくなったといい、「予報では夜遅くまで大雨が続くと聞いている。今夜が心配」と話した。 同市でサイクルショップを営む山口富弘さん(78)によると、店舗1階が床上浸水。「展示車が何台か泥だらけになった。使い物にならない」と語った。 佐賀・大町町 病院が「孤立」 一方、武雄市に隣接する大町町では、同町福母の順天堂病院の周辺が2年前の大雨の被害と同様に冠水し、孤立するなどした。 同町のJR佐世保線沿いで建材店を営む男性によると、線路がかろうじて見えるほどまで増水した。順天堂病院などがある地域も一面水につかっていたのが見えたという。 「このまま降り続けば、うちも浸水するかもしれない」。男性はそう不安がった。男性によれば、順天堂病院に勤める看護師から、自宅近くに車をとめさせてほしいと頼まれたといい、その看護師は地元消防団が用意したとみられるボートに乗り、病院に向かったという。 同町の理美容店の男性店長は、前夜から大雨を警戒し、夜通しテレビをつけて情報収集に努めた。「雨音がひどくて、テレビもずっと警報を流していた。不安でなかなか寝られなかった」と語った。店舗前の国道34号は通行止めになっており、客から「今日は行けない」などと予約のキャンセルが相次いだという。 【動画】佐賀県大町町でゴムボートで救助される人たち=長沢幹城撮影、住民提供 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
靖国神社前、沖縄基地問題でハンスト 遺骨収集団体代表
小雨の中、遺骨問題でハンストをする具志堅隆松さん=8月14日、東京・九段北の靖国神社前 先の戦争で日米の激戦地となった沖縄県で遺骨収集を続ける市民団体代表の具志堅隆松さん(67)が14日、東京の靖国神社前でハンガーストライキを始めた。政府が名護市辺野古に造る米軍基地用の土砂調達先候補に、今も遺骨が見つかる沖縄本島南部を加えたことに抗議した。 具志堅さんはこの問題で沖縄戦の「慰霊の日」を迎えた6月に沖縄でハンストをしたが、「日本中の人が戦争を考える終戦の日に広く訴えたい」とこの日、東京へ。「戦没者の境遇に比べればたいしたことはない」と夜も路上で過ごし、15日夕まで続けるという。 靖国神社には英霊として明治維新以降の戦没者が主にまつられ、沖縄県民の4人に1人が犠牲になった先の戦争の指導者も含まれる。具志堅さんは「戦没者への思いは(靖国に)参拝する人たちと同じです。国が戦没者の尊厳を冒すこの問題を一緒に考えてほしい」と話した。(藤田直央) 小雨の中、遺骨問題でハンストをする具志堅隆松さん=8月14日、東京・九段北の靖国神社前 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
知事「今が避難の最後のチャンス」 広島豪雨で緊急会見
大久保貴裕2021年8月14日 15時24分 前線の停滞で降り続く大雨を受け、広島県の湯崎英彦知事は14日午後1時半、緊急の記者会見を開いた。深刻な災害が起きる危険性が高いとし、自治体から指示のあった住民は、夕方までに急いで避難するように求めた。平成最悪の豪雨災害となった3年前の西日本豪雨と同様の被害が出る恐れがあるとして「今が(避難の)最後のチャンス」と訴えた。 湯崎氏は、土砂崩落の危険度を示す「土壌雨量指数」が、県内の多くの観測点で西日本豪雨の発災直前と同レベルの数値を記録していると指摘。「どの地域で災害が起きてもおかしくない。可能性が極めて高くなっている」と述べた。 湯崎氏は会見に先立ち、県内全23市町長、広島地方気象台などをオンラインでつないだ対策会議も開いた。気象台の担当者は「14日は特に夕方から夜にかけて降水が強まる。土砂災害の可能性は時間とともに高まる」と指摘。湯崎氏は各市町長に対して、「一部の地区を除いて、まだ避難されていないと思う」とした上で、「いま避難をしていただく。今日中というよりも、この2、3時間が勝負であるとの認識を強くもっていただきたい」と語気を強めた。 気象庁によると、広島県内では14日午後2時現在、安芸高田市、北広島町、広島市安佐北区、佐伯区の4カ所の観測点の48時間雨量が観測史上最大を記録した。(大久保貴裕) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル