4月28~30日、北アルプス・穂高連峰の登山基地として知られる涸沢(からさわ)(約2300メートル)で、大型連休中の登山状況を取材した。拠点は山小屋の「涸沢ヒュッテ」。みぞれや雪が間断なく降る悪天候の中、雪崩が相次ぎ、あわや大惨事となる場面にも遭遇した。被害にあった女性から雪崩の様子を聞いた。 雪崩に半分埋まったテント、あと2メートル後ろだったら… 涸沢ヒュッテの宿泊部屋で熟睡していた2日目の4月29日午後11時半過ぎ、先輩記者にたたき起こされた。「近くで雪崩があってテントが埋まった。幸い、誰もけがはしていない」 一瞬言葉を失った。午後9時消灯の館内に電気がともっている。前日から常駐が始まった長野県警の山岳遭難救助隊や、山小屋のスタッフだろうか。走り回る足音が館内に響いていた。 30日早朝、現場を確認すると雪崩が迫った場所はヒュッテから100メートルほどの場所だった。コロナ禍以前の大型連休中は毎年、200~300張りのテントでにぎわった場所だ。まるで氷河の末端のような、高さ約2・5メートルの雪壁が放置されたテントをのみ込みかけて止まっていた。 雪崩に半分埋まったドーム形のテントから生還した女性登山者(46)=神奈川県大和市=によると、異変は29日午後10時50分ごろ起きた。 「起きていたら、『ゴォー』… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
個人情報、漏洩していたのは警察 被害者が憂う監視社会
行政や社会のデジタル化を一気に進めるとして、国会で審議されている「デジタル改革関連法案」。だが、岐阜県警大垣署に監視され、個人情報を漏らされる被害にあった男性は疑問を持っている。 利便性を旗印にした改革が監視社会を招かないだろうか。 「これで、個人が尊重される社会といえるかね」 岐阜県大垣市上石津町で養鶏業を営んでいた三輪唯夫さん(72)は、警察に監視されていると知ったときの驚きをそう振り返る。 2014年7月のことだった。地元の風力発電施設建設をめぐり、近所の住職らと勉強会をしていた。 県警大垣署が、事業者の中部… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「半沢直樹」生んだ原点へ 池井戸潤が再訪したネジ工場
作家の池井戸潤さんが仕事の現場を訪ねる企画が、朝日新聞土曜別刷り「be」で連載中です。今回は、大阪市港区の帝国製鋲(せいびょう)。代表作「半沢直樹」シリーズを生み出した原点とも言うべき工場に、カメラとペンで迫ります。デジタル版では池井戸さんが撮影した写真をたっぷりご覧いただけます。 ◇ 大阪での道の呼び名にはルールがある。南北に走る道は「筋(すじ)」、東西が「通(とおり)」だ。 半沢直樹が融資課長として勤務していた東京中央銀行大阪西支店は、「四つ橋筋」と「中央大通」が交差する場所に位置している。この辺りから大阪港にかけては鉄鋼やネジ製造業者が集結する「鉄」の街だ。いまはともかく、小説の舞台となる2000年前後は、メガバンクや地銀、信金がしのぎを削る金融激戦区であった。 高品質のネジ作る老舗 今回、撮影をお許しいただいた帝国製鋲株式会社の創業は1917(大正6)年。100年もの間、ボルトや犬くぎを製造してきた老舗である。 ネジは元来が薄利多売だが、同社は大型で高品質のネジ――つまり大型のボルトなどを作ることで差別化を図り、付加価値をつけてきた。この界隈(かいわい)のネジ業者の中で、同社ほど大きく硬い製品を主力としているところはない。 「社歴は古いですが、第2次世界大戦までの詳細な資料がないんです」 と鈴木典和社長。戦時中、高品質な同社製品は戦闘機などに採用されていたために工場が爆撃の標的とされ、ついに焼失してしまったのだとか。 大阪港の天保山運河沿いにある工場の建屋内に一歩入ると、機械の作動音と、熱で成型された大型のボルトや犬くぎが工作機械から吐き出される金属音が幾重にも迫ってきた。隣に立つ人の声も聞き取りにくいほどだ。 蛍光灯の輝き、もうもうと立ち上る白煙、油の匂い、削りくずの山。真っ赤に焼けた六角ボルトがベルトを滑ってトレーに落ちていき、やがてその赤みが鈍色(にびいろ)に変ずる様を目の前で見ることができる。 この工場の特徴は、熱を使って鉄を軟らかくして加工する「熱間鍛造(たんぞう)」と素材をそのまま成型する「冷間鍛造」のふたつの鍛造工程を両方持つことだ。 とくに赤く焼けた製品が吐き出される熱間鍛造の工程は、いくら見ても飽きないほどの魅力がある。見ていると吸い込まれそうで、産業革命以来、連綿と続く「ものづくり」の原点にふれた気になる。 手作業で形成されていく製品は、品番ごとに袋に入れられて梱包(こんぽう)され出荷されるが、その使途は、建設、大型機械、航空機など多岐にわたる。中でも多いのが鉄道用だ。 新幹線に乗るとき、ホームから覗(のぞ)き込めば、レールとそれを止めているボルトを見ることができる。 東海道新幹線が開業した1964年。時速200キロを超える高速鉄道は世界最速であったが、そのレール用ネジとして採用されたのが帝国製鋲のものであった。品質で勝ち取った大口受注だが、 「むしろ品質過剰なくらいで、10年くらいでは錆(さ)びません」 と冗談交じりに鈴木社長。しかし、いまに至る徹底した品質管理が新幹線の運営を支え、安全神話の陰の立役者となったことは間違いない。 半沢がいた支店は さて、話は半沢直樹の大阪西支店に戻る。 実は、この支店にはモデルが存在する。他ならぬ、私がかつて銀行員時代に勤務していた三菱銀行大阪西支店だ。 入行2年目、いわゆる融資課… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大輪のバラ、天に届け 熊本地震で母を亡くした娘が整備
同心円状に5列のバラが植えられている。株の一つひとつが花弁をなして、空から見ると大きな一輪のバラ。5年前の熊本地震で母を亡くした娘が、天から見えるようにとバラ園をつくった。花は見頃を迎えている。 舩瀬和美さん(62)が2018年1月から、熊本県益城町の100坪ほどの土地にバラを植えている。 母の津崎操(みさお)さんは洋裁を仕事にしていた。幼かった娘の服はほとんどが母の手作り。ひらひらのネグリジェ、ポケットに刺繡(ししゅう)の入ったグレーのウールコート。無口でおとなしい母だった。園芸に関心はなかったが、和美さんの双子の姉、冨永眞由美さん(62)が自宅の庭に植えたバラを見せると、ニコリと笑った。「これ、きれいかね」 16年4月16日未明、熊本地震で2度目の最大震度7を観測した「本震」の後、眞由美さんは寝たきりの操さんを連れて、熊本市東区の自宅から近くの家電量販店の駐車場に避難した。操さんは次第に呼吸が浅くなり、夜明けとともに病院に連れて行ったが間に合わなかった。89歳だった。 一緒に自宅に帰った。火葬場… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
教室に冷房ないなんて… 高1のネット署名、市を動かす
社会を動かそうとネットで呼びかけ、千を超える署名を集める。そんな10代が相次いでいる。地球温暖化からゲーム条例までテーマはさまざまだが、変化を起こしたいという思いは同じだ。なぜ、彼らはネット署名を選ぶのか。 「学校で地球にやさしい電力を使いたい」。神奈川県立高校2年の女子生徒(16)はこの3月、同県庁あてに、そう呼びかけるネット署名を始めた。 授業で、火力発電が地球温暖化の大きな原因だと聞いた時に、気付いた。「あ、この教室、電気もエアコンも使っているじゃん」。学校の電力は、火力発電でまかなわれていると事務室で聞いた。「地球温暖化の授業をするのに地球温暖化を進めているのは矛盾。学校が未来を壊しているなんて変だ」と感じた。 「お菓子の過剰包装をなくして」と高校生が訴えていたのを知り、ネット署名を選んだ。集めた署名は約1万4千人に上る。この夏、県庁に持っていき、要望する。「ネットなら地域を越え、想像を超える数の人々に呼びかけられる」 「ゲームは悪いものじゃない。こんな条例がつくられるなら署名を集める」。香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」の素案を読んだ渉(わたる)さん(18)は、そう思った。高3だった昨年2月、「香川県のゲーム禁止条例制定を阻止しよう」と署名を呼びかけた。 条例案は、子どものゲーム時間を「平日60分、休日90分まで」と定めていた。短期間で全国から集めたいと、ネット署名を選んだ。 集まった595人の署名は県議会に出したが、条例は可決された。その後、「憲法13条が保障する幸福追求権を侵害する」などとして、県に損害賠償を求める訴訟を9月に起こした。「ネット署名は匿名でも簡単に社会に訴えられるスタート地点だった」という。 行政が動くのを促した例もある。 「教室が暑いので小中学校に… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:744文字/全文:1508文字 【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
機動隊に投げられても 嫁ぎ先で、ダム監視小屋に20年
石木ダム(長崎県川棚町)の建設予定地で長年監視小屋に通い、ダム反対運動を続ける後進の住民たちを笑顔で励ましてきた川原(こうばる)集落の岩永サカエさん(81)が亡くなった。一緒に小屋に詰め、闘ってきた松本マツさん(94)が、その最期に居合わせた。 ふたりは月・水・木曜に朝から小屋に詰め、火・金曜は町のいきがいセンターで骨休めをした。4月20日の火曜も手づくりの弁当を携え、一緒にセンターで風呂に入った。 先に上がり着替えを終えた松本さんが「まだ?」と浴室をのぞくと、岩永さんの白い背中が湯船に浮いていた。心臓発作だった。 隣人とスクラム、畑に投げられても 水没予定地の川原に暮らす13世帯の妻たちは、全員が集落外から嫁いできた。岩永さんは20歳のころ、佐賀県から嫁いだ。21歳で娘のみゆきさん(59)を授かると、身寄りを亡くした甥(おい)と姪(めい)も引き取り、町内の工場で働きながら主婦として7人家族を支えた。 みゆきさんが生まれてほどなく、県がダム建設を目的にひそかに現地調査をし、地域に緊張が走った。10年後に改めて予備調査をする際、県は「地元の了解なしにダムは造らない」とする覚書を住民と交わしたが、建設が可能とわかると、3年後の1975年度に国の認可を得た。住民は対抗して、石木川の右岸に監視小屋をつくった。 岩永さんの子育ての期間は… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
空き家に乳児遺体、死体遺棄事件で捜査 長野県東御市
2021年5月5日 13時54分 長野県東御(とうみ)市新張の空き家で4日午後5時ごろ、庭の手入れをしていた男性から「土の中に赤ちゃんの体のようなものが見える」と110番通報があった。県警が死体遺棄事件とみて捜査している。 県警上田署によると、見つかった遺体は乳児で性別は女。生後どのぐらいかなどは不明という。発見時、土から体の一部が出ていたという。庭の手入れをしていた男性は空き家の持ち主の知人で、持ち主から頼まれてひとりで作業をしていたという。県警が遺体の身元や死因を調べている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
還付金詐欺防ぐ切り札か 都内2信金が手口逆手の新対策
医療費や税金の還付があるとうそをつき、ATMから送金させる「還付金詐欺」を防ぐため、東京都内に本店を置く城南信用金庫と多摩信用金庫が新たな対策を始めた。手口を逆手に取り、新たな「常識」を作り出すことで被害を減らそうという取り組みだ。 還付金詐欺は特殊詐欺の類型の一つ。自治体の職員などを装った犯行グループが被害者に「税金の過払いがある。そちらに送金したい」などと電話をかけ、金融機関のATMに誘導。ATMに着くと、携帯を通じて被害者に操作を指示し、指定の口座に送金させるという手口が目立つ。被害者の多くはお年寄りという。 被害を防ぐため、警察は防犯イベントを開いたり、ウェブサイトやチラシで最新の手口を紹介したりしたほか、ATMのパトロールを続けてきた。一方の金融機関側も、ATMで携帯を使う顧客への声かけを徹底してきた。コストがかかるため都内の一部のATMに限られるが、携帯の電波を遮断する機器の設置も進む。 それでも状況は依然として深刻で、昨年1年間に全国の警察が把握した被害は1806件、被害総額は約25億円に上った。 そこで、品川区に本店を置く… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
美幌の森から甘いしずく メープルシロップを召し上がれ
北海道美幌町でカエデの樹液を煮詰めてメープルシロップにする老夫婦がいる。まき釜で一昼夜かけて煮詰めた森のしずくは、あっさりした甘みが特徴だ。発売から10年余り。町のふるさと納税の返礼品にも採用され、人気商品となっている。 メープルシロップをつくっているのは平野茂夫さん(83)と妻の祥子さん(79)、そして「町樹液研究会」のメンバーだ。樹液は2月末の暖かい日から4月20日ごろまで採取できる。イタヤカエデ約1500本とカラコギカエデ約1千本の幹にパイプを刺し、樹液を4リットルのペットボトルにため、メンバーらが集める。 3台のまき釜に12個の大鍋を載せ、これに樹液を入れて炊く。あくをすくいながら40分の1ほどの量まで煮詰めて、糖度が50度になれば完成だ。祥子さんは「釜の火を絶やさないようにまきをくべるのは大変ですが、皆さんがおいしいと言ってくれるのが励みです」。これまでに1瓶120ミリリットル入りで約1300本作った。 平野さんとカエデの出会いは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
何でもすがりたい… 苦境の遊覧船「御船印」に託す誘客
寺社を巡って集める「御朱印(ごしゅいん)」ブームにあやかり、全国各地の船会社が運航する船に乗って集める「御船印(ごせんいん)」が登場した。関係者は「コロナ禍で落ち込んでいる利用客を少しでも増やすことにつながれば」と期待している。 御船印は、各船会社が独自にデザインした印を有料で発行。乗船者は旅の記録として、公式の船印帳(希望小売価格1980円)に貼り付ける。 一般社団法人「日本旅客船協会」の公認事業で、御船印めぐりプロジェクト事務局(https://gosen-in.jp/)が実施。4月28日現在、46社が参加している。 三重県内では鳥羽、志摩各市を発着するフェリーと遊覧船で発行が始まった。鳥羽と伊良湖(愛知県田原市)を約55分で結ぶ伊勢湾フェリー(鳥羽市)は、3隻あるフェリーに合わせ、「鳥羽丸」「伊勢丸」「知多丸」の御船印を作った。1枚各300円。船内での販売に限っているため、3種類のフェリーにそれぞれ乗船する必要がある。25日までの2週間で52枚売れたという。 2018年度には38万人の利用客がいたが、昨年度はコロナ禍で3分の1以下に落ち込んだ。昨年度は、時間帯割引や地元利用者の割引を実施して誘客に努めた。同社業務部の担当者は「御船印集めが船に乗る楽しみを知るきっかけになってほしい」と話す。 志摩マリンレジャー(鳥羽市)は、英虞湾で運航している賢島エスパーニャクルーズで発行。帆船タイプの遊覧船「エスペランサ」の写真をあしらった御船印で、1枚300円で販売中だ。 伊勢志摩サミットが開かれた16年度には約16万人の利用客がいたが、昨年度はコロナ禍で6万5千人にまで減った。同社業務部の担当者は「4月以降も低迷している。少しでもお客さんが来てくれることになるのなら何でもすがりたいのが現状です」と話している。(臼井昭仁) 御朱印のブームから、これま… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:856文字/全文:1648文字 【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル