2019年の夏、曇りの日だった。福島県田村市の移(うつし)地区の閉校した中学校の体育館で、地区の除染を請け負う住民団体「移再生プロジェクトチーム」の7年ぶりの総会が開かれた。262人が参加し、受付では1人5千円の交通費と、総会の記念として5千円分の商品券が配られた。会ではチームの解散が円満に了承される予定だった。 壇上に上がった会長の男性(78)は「除染事業の金額は、最終的に26億5千万円。大変大きな数字で、これも皆様のご協力のたまものです」とあいさつ。約2年で除染には約450人の住民が参加し、すでに増額された日当約3万5千円も支払われていた。 地域にもたらされた巨額の除染マネー。その功罪を伝える3回の連載です。 会が中盤に差しかかった頃だっ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福岡の小学校いじめで報告書 学校などの対応「不十分」
福岡市立小学校であったいじめ事案をめぐり、学校側が設けた大学教授らでつくるいじめ防止対策委員会が、学校や市教育委員会の対応に不十分な点があったとする調査報告書をまとめた。市教委はこの報告書の概要を公表し、全ての市立小学校に再発防止を徹底するよう通知した。 報告書によると、児童と保護者は、児童が4年生だった2018年に複数の児童からいじめを受けたと学校側に申告。対策委は、学校が行ったアンケートや聞き取り調査をもとに計3件のいじめ事案を認定した。 児童は体操服入れをほうきで掃かれたり、休み時間中に遊んでいる時にミスを責められたりした。報告書では、関係した児童それぞれから丁寧な聞き取りができていないなど、児童間の関係改善をめざした対応が取れていないとし、「被害児童に不安が残る結果となった。学校の対応は不十分」だったとした。 いじめを受けた児童は翌19年4~9月末、計30日以上欠席し、不登校になった。この点についても「学校と市教委は、事案発生直後と同等の危機感で改善に取り組む必要があった」と指摘した。市教委は取材に「提言を真摯(しんし)に受け止め、いじめの再発防止に努めていきたい」としている。(横川結香) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
開祖崇める孔子廟は公共施設か 最高裁が違憲とした根拠
儒教の開祖・孔子を崇(あが)める「孔子廟(びょう)」に公有地を無償で使わせた行為は、憲法の政教分離に反する――。24日の最高裁大法廷判決は、儒教そのものが宗教かどうかに関わらず、その運営の実態をみて違憲と判断した。 大法廷が重視したのが、施設の運営の在り方とその設立の経緯だ。 「久米至聖(しせい)廟」は17世紀に建てられたが、第2次世界大戦で焼失。那覇市内に再建され、2013年に松山公園内に移された。「ゆかりの地に回帰させたい」というのが、管理する一般社団法人「久米崇聖会(そうせいかい)」の要望だった。設置許可を議論した市の会議では、当初から「コンセプトに儒教的精神が出過ぎている」と懸念が示されていた。 「公共施設」として敷地の使用料が免除されたものの、実態としての趣は異なった。一般公開されないほこらがあり、孔子廟に続く門の中央扉は「孔子の霊のための扉」とされて年1度の祭礼日しか開かない。崇聖会の正会員を、14世紀以降に中国から渡来した人たちの子孫に限るという伝統も特徴だった。 大法廷はこうした議論の経過や… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
農水次官ら数人、25日にも処分 鶏卵大手との会食同席
贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛・元農林水産相と鶏卵大手「アキタフーズ」の前代表の会食に農林水産省の幹部職員らが飲食代を負担せずに同席していた問題で、同省は国家公務員倫理規程に違反したとして、25日にも枝元真徹(まさあき)事務次官ら幹部数人を処分する方針を固めた。 会食は吉川氏の農水相就任直後の2018年10月と退任直後の19年9月の2回あり、畜産部門担当の生産局長や畜産部長、畜産振興課長ら7人が参加した。当時生産局長だった枝元次官らは「吉川大臣に誘われて行ったら前代表がいた」「費用は大臣の負担だと思っていた」などと説明している。 倫理規程では利害関係者の負担による会食を禁じている。第三者が費用を負担する場合の会食は認めているが、飲食代が1万円を超える時は事前の届け出を義務づけている。会食に行った後にその場に利害関係者がいると気づいた場合でも、事後に速やかに届け出なければならないと定めている。だが、幹部らは事後の届け出もしていなかった。 農水省はこれまでの調査結果と処分案を人事院の国家公務員倫理審査会に示し、了承が得られ次第、処分を公表する。(高木真也、兼田徳幸) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「歓送迎会や宴会など避けるような発信必要」専門家組織
新型コロナウイルス対策を厚生労働省に助言する専門家組織は24日、会合を開いた。全国の新規感染者数は減少傾向にあるが、最近はその減少幅が鈍化していると指摘。医療提供体制への負荷、変異ウイルスのリスクなどの不安材料もあげたうえで、「緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することへの懸念に留意が必要」とした。 首都圏を除く地域で宣言の解除が検討されていることについて、脇田隆字座長は「総合的に判断して解除にはなるのだろう」との考えを示す一方、その場合はリバウンドしないように注視していく必要があると強調した。参加者によると、「(解除した場合に)医療への影響は大丈夫なのか」などと懸念する意見も多く出たという。 直近1週間(17~23日)の全国の10万人あたりの新規感染者数は6・63人で、前週と比べ15%減った。前々週(11・31人)と前週(7・81人)の比は31%減で、減少幅が鈍ってきているのがわかる。 1人が何人に感染させるかを表す実効再生産数は、宣言が続く10都府県は8日時点で0・79と1を下回る水準が続いている。新規感染者数だけでなく入院者数なども減少。ただし、感染すると重症化のリスクが高い60歳以上の新規感染者の割合が3割を超えており、重症者や死亡者数の減少には一定の時間を要するとの見方を示した。 23日時点の内閣官房のまとめでは、政府の分科会が示す新規感染者数などの6指標は全体として改善傾向が続いている。感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」やそれを下回るところが大半を占めるようになってきた。 一方、医療提供体制の状況を示す病床使用率と療養者数(10万人あたり)の2指標はまだ厳しい地域もある。東京など首都圏では、最も深刻な「ステージ4」の指標がまだ残る。関西3府県は数値が減少しているものの、大阪と兵庫では病床使用率が依然として高く、「ステージ3」の20%を下回るにはまだ開きがある。 鈍化の理由ははっきりしていないが、会合では、夜間の人出が再び増えていることが一因としてあげられた。ソフトバンクの子会社アグープのデータを分析すると、夜間の繁華街での増加が目立つ。 19~21日の週末の繁華街のある主要駅周辺の人出は多くの地点で増えた。今回の宣言後、午後9時台で最も少なかった週末の人出と比べると、梅田(大阪)で30%増、横浜25%増、天神(福岡)24%増、京都22%増だった。 専門家組織は、宣言が解除されたとしても、「ステージ2」以下をめざし、「飲食の場面など引き続き感染を減少させるとりくみを行う必要がある」と指摘。年度末と年度初めに増える歓送迎会や謝恩会、卒業旅行、花見の宴会などを避けるよう効果的なメッセージの発信が必要だ、とした。(石塚広志、姫野直行) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
栃木の山火事、4日目でも衰えず 177世帯に避難勧告
栃木県足利市の両崖山(りょうがいさん)(標高251メートル)周辺で21日午後に出火した山火事は、消防や自衛隊が地上と空から消火活動を続けているが、4日目となった24日夜になっても火勢が衰えていない。焼失面積は午後6時現在で約76・5ヘクタールに広がった。民家近くまで迫ったところもあり、同市は周辺の5カ所177世帯に避難勧告を出した。高校2校、中学1校が休校になった。 また、同日午後10時20分から、近くの北関東自動車道の足利IC―太田桐生IC(群馬)の上下線が通行止めになった。火が迫ってきたためという。 足利市の消防職員や消防団員が、近隣の佐野市や群馬県桐生、館林、太田各市からも応援を得て消火活動に当たっているが、鎮火の見通しは立っていない。空からは陸上自衛隊のヘリ7機のほか、埼玉や茨城、山梨各県や横浜市のヘリが消火にあたった。 山火事は21日午後3時半ごろ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
吉村知事「時短は大阪市内、午後9時まで」 宣言解除後
大阪府の吉村洋文知事は24日、新型コロナウイルスに対応する緊急事態宣言を政府が解除した場合の新しい感染防止策を公表した。大阪市内に絞って酒類を出す飲食店を対象に午後9時までの営業を求める。府内全域の飲食店すべてに午後8時までの営業を求めている現状より緩和させる。 時短営業をいつまで求めるかは未定。具体的な内容は26日にも開く府の対策本部会議で決める。 時短営業を要請する地域について、吉村知事は当初、大阪市内の繁華街に限定する考えを示していたが、市内全域に広げる方針に修正した。吉村知事は「(繁華街を抱える)北区や中央区に絞っても、(他にも)似たエリアがある」と説明。宣言解除後も国による財政支援が見込めるとして、協力金の支給に関連して「財源も気にしなくて良くなった」と話した。(久保田侑暉) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日産・西川氏「中身確認せず署名」 ゴーン被告報酬文書
日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(66)が巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件の公判で、西川(さいかわ)広人・前社長が24日、証人として東京地裁に出廷し、開示を免れた「未払い報酬」について「当時は全く認識していなかった」と証言した。未払い報酬を退任後に払う方法を記したと検察側が主張する契約書に関しては「協力を求められ、中身を確認せずサインした」と述べた。 西川氏が出廷したのは、金融商品取引法違反罪の共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)の公判。2010~17年度の元会長の報酬のうち約91億円を退任後に払う未払い報酬とし、各年度の有価証券報告書に記載しなかったとして起訴された。西川氏は11、13、15年、退任した元会長に顧問料などを支払う契約書に署名したとされ、検察側はこの契約書を未払い報酬の支払い方法を記した文書と位置づけている。 西川氏は検察側の尋問に対し、11年にケリー元役員から「ゴーンCEOの報酬がグローバル水準と比べて低く、他社に引き抜かれないためには退職後の処遇を手厚くするべきだ」と言われたと証言した。「ゴーンCEOが日産を去ることは脅威だったので協力した」とし、元会長の部屋で契約書に署名したという。 署名はケリー元役員を「サポートする」という意味だったとし、「中身は確認せず、ケリーを信用してサインした」などと述べた。 弁護側は、代表取締役にもかかわらず契約内容を確認せずに署名した点を追及した。西川氏は「ケリーの考え方に賛同していた。彼はこの分野のプロで、私は受け身の姿勢だった」と釈明。未払い報酬の存在は知らず、契約書がその補塡(ほてん)目的という認識もなかったと説明した。契約書の有効性については「ゴーンCEOの退職が現実の問題となったら、専門部署の確認を受け、取締役会に諮ることになる。そのようなことは起きなかった」と語った。 検察は違法性の認識が不十分だったとして西川氏を不起訴処分にしている。 西川氏は経営者としての元会長の当時の評価を聞かれると、「日産の業績を回復させたことはもちろん、日産を真の国際企業にする変革をしていただいた。世界でも超一流の経営者だと思っていた」と話した。(根津弥) 「イエスマン」から決別 西川広人・前社長は2005年にゴーン元会長(当時は社長)の下で副社長となり、16年に元会長との共同最高経営責任者(CEO)に就任。周囲からは元会長の忠実な「イエスマン」と受け止められ、17年に社長の座を引き継いだ。 元監査役らが主導した社内調査… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
孔子廟の土地使用料免除は違憲 政教分離訴訟で最高裁
中国の思想家で儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟(びょう)」がある敷地の使用料を那覇市が徴収しなかったことの是非が争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、「特定の宗教を援助したと評価されてもやむを得ない」とし、無償で公有地を使わせるのは政教分離を定めた憲法に反するとの判決を出した。裁判官15人のうち14人の多数意見。1人は「合憲」とする反対意見を付けた。 戦前の反省を受け、国や自治体は宗教と結びついてはならないとする政教分離をめぐり、大法廷が違憲判決を出したのは3件目。これまで神社との関わりが問題になったが、儒教施設に関する判断は初めて。 裁判の対象になったのは、那覇市の松山公園にある「久米至聖(くめしせい)廟」。1335平方メートルの敷地に、孔子像を置く建物や儒学と沖縄の歴史を学べる施設などがある。一般社団法人「久米崇聖(そうせい)会」が2013年に建て、市が公益性を認めて敷地の使用料(年576万円)を免除したため、市民運動家の女性が政教分離に反すると市を訴えた。 大法廷は、孔子の霊を迎える年に1度の祭礼は宗教的意義を持ち、祭礼を行う目的で施設の建物が配置されていると指摘。儒教が宗教かどうかには言及せず、崇聖会が「祭礼の観光化」を拒む姿勢を示す閉鎖性や免除額の大きさを踏まえ、市が使用料を免除したのは「宗教的活動」に当たると判断した。 その上で使用料については、市に決めさせるべきだとした二審・福岡高裁那覇支部判決を破棄。「市に裁量はない」とし、全額を徴収すべきだとした一審・那覇地裁判決を確定させた。 訴訟をめぐっては、18年の那覇地裁判決、19年の福岡高裁那覇支部判決も違憲と判断。高裁が徴収額を示さなかったため、女性と市の双方が上告していた。 この日の判決は、今年2月に最高裁判事に就任した長嶺安政氏が審理に加わらず、前任の林景一氏が判断した。 那覇市の城間幹子市長は「判決文を読んで市として改善すべき点を検討して対応したい」とした。(阿部峻介) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
南極観測船しらせ帰国 コロナ禍、無補給・無寄港の往復
南極観測船しらせ(基準排水量1万2650トン)が22日、神奈川県横須賀市の海上自衛隊基地の横須賀港に帰国した。新型コロナウイルス感染予防のため、日本と南極間の往復2万9千キロを無補給・無寄港で往復。1956年11月の1次隊出発以降初めてだった。 1月19日に昭和基地沖を離れ、61次観測隊越冬隊28人と62次夏隊13人と乗員、総勢220人が初めて一緒に赤道を越えて帰国した。初の感染が確認される前の一昨年11月に出発し、1年余り南極で暮らした61次越冬隊にとって新型コロナのある世界は初めて。数日前から船内でマスクを着けて慣れる準備をした。 コロナ禍で異例づくし 今季の62次隊は、コロナ禍で異例づくしだった。観測計画を縮小し、隊員は半数以下に。出発前は2週間の隔離期間も設けた。例年は隊員は日本と豪州間は空路で、しらせは先に出発し、豪州で燃料や食料を補給する。無寄港で最も大変なのは燃料だ。万一に備え、出発前に日本近海で洋上補給の訓練もした。いかに燃料消費を抑えるかが課題で、昨年11月の出港から行程は95日間と、例年のしらせ行動日数の6割に短縮した。 海氷が厚い所は船をバックさせ、勢いをつけて前進し体当たりする。この砕氷航行「ラミング」は通常の何倍も燃料を使う。船体が「ゴン、ガガガ」と大きな音をたてて氷をかき分けるが、進めないことや押し戻されることもある。衛星画像や気象のデータを見て航路を選び、燃料を綿密に計算したが、岩瀬剛航海長は「実際の氷の厚さや硬さはその場でないとわからない」。竹内周作艦長は艦橋で細かい指示を出し続けた。「燃料を無駄にできない。1メートルでも進まなければ」との思いだった。「氷海を抜けた瞬間は心の中でガッツポーズしました」 観測の継続は死守 観測隊は夏隊を減らしたが、越冬隊の態勢は維持した。「長年続けている観測データの継続や国際観測網の一翼を担う観測を優先した」と橋田元(げん)62次隊長は語る。 注目されるのが、温暖化による南極大陸の氷床や海の変化だ。氷床の融解が懸念される一方、湿った大気の流入で降雪が増える可能性もあり、昭和基地で降雪の観測を始める。大陸沿岸など各地で位置や重力も測り続けている。重しになっている氷床の質量が変われば大陸も動くからだ。 氷がとければ海に淡水が入り、塩分や海洋循環にも変化は及ぶ。温かい海水が氷河末端をとかし、氷流失を加速している可能性もうかがえる。氷床の変化と地球規模の海洋循環の連動がみえてきたが、メカニズムは複雑だ。地球環境の将来を予測するため、南極観測は重要性を増している。(中山由美) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル