有料記事 聞き手・高重治香2023年11月1日 11時00分 書店の減少で、近所で本を買えない地域も増えています。利益が出にくい現状の書店ビジネスの問題点とその打開策は。出版流通に詳しいフリーライターの永江朗さんに聞きました。 ◇ 本の出版流通は、百年ぶりの大転換期にあります。 書籍と雑誌が同じ運送便で全国の書店に届く現在の配本の仕組みは、関東大震災後に原型ができました。雑誌は、出版社にとっては販売と広告で二重に利益が出るビジネス。書店も大半は雑誌の販売で成り立ってきました。しかし人口減とデジタル化で雑誌という経済的基盤が崩れ、雑誌にうまく乗っかってきた書籍も苦境に立たされています。 現在の出版流通の仕組みは、書店が利益を出しにくいものです。新刊は1日平均200点も出るので、多くの書店が、配本を担う出版取次会社に仕入れる本の選定も頼っています。しかし取次は、規模や立地に応じて機械的に選んだ本を送るので、各店の客層に合わない本も多い。その結果、平均で雑誌40%、書籍30%ほどが返品されます。60冊を売るために100冊を動かすという、一般的な産業ではあり得ない無駄が起きているのです。無料で返品できる委託販売制度を利用する書店が多いですが、リスクを負わない分、取り分は価格の2割ほどと少ない。日本には、紙の書籍は定価販売するという再販制度があり、戦略的な値引きもできません。 その店では売れにくい本が届くだけでなく、人気の本は注文しても入ってこないという問題もあります。村上春樹さんの新刊など売れそうな本は、確実に一定数販売できる都市部の大型書店には何千冊と入る一方、小さな書店には入っても数冊ということが起きます。取次と出版社も、後から大量に返品されるリスクは負いたくないですから。 雑誌が売れなくなり、こうした非効率な仕組みでは回らなくなりました。利益率の低さは書店員の生活を直撃します。大手書店でも正社員は一握り。正社員でも、生活に不安がある、子どもに自分と同じ教育を受けさせてやれない、と転職する方もいます。 書店自ら本選び 今までも、書店が売りたい本… この記事は有料記事です。残り1167文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
立てこもりから一夜 「ほっとした」けど…児童は保護者と手をつなぎ
朝日新聞デジタルに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。Copyright © The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
部員の「怒りと失望」招いた日大の対応 崩れた「個人の犯罪」の根拠
その文面に込められていたのは、リーグ戦出場がかなわなかった4年生部員の悲痛な思いだった。 「大麻をやっていない部員がなぜ活動停止処分を受け、リーグ戦参加が許されないのか。怒りと失望しかない」。取材に応じた部員は、記者に宛てたショートメールにそうつづった。 部員から活躍の場を奪った重い処分の決定は本来、大学側の明確な意思決定のもとで判断されるべきものだ。事実を積み上げ、更生に向けた教育的配慮も行き届かせなければならない。 ところが、二転三転したアメフト部の処分からは、配慮が感じられなかった。第三者委は「連帯責任」を科した活動停止処分やその解除の判断について、「学生・部員の心身の健康という視点や倫理観の向上という視点で対応に当たってこなかった」と断じた。 8月5日に大麻取締法違反容疑などで部員1人が逮捕された事件について、日大は当初、「個人の犯罪」と断定し、部全体に科した活動停止処分をわずか5日で解除した。「競技に真剣に取り組んできた多くの学生の努力を無に帰することになる」として、連帯責任を問わない姿勢を示した。だが、前提としていた根拠はすぐに覆る。 同22日に学生寮で2度目の家宅捜索が行われ、複数の部員が任意で取り調べを受けた。日大は「もはや個人の犯罪にとどまるところではない」とし、再び活動停止処分に。10月には2人目の部員が逮捕された。 朝日新聞が入手した8月下旬… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
古代からワンちゃんとふか~い縁「運命かも」 市の若手職員で新事業
職場を超えて若手職員が集い、まちおこしのアイデアを出し合う。そんな取り組みが京都府亀岡市で始まっている。まず手始めに注目したのは、古代から亀岡とふか~いつながりのある、あの動物だ。 まちおこしを考える若手の分科会は2020年、コロナ禍のさなかに立ち上がった。環境政策課の乾芽衣さん(34)は「歴史資源」をテーマにした分科会に所属。ある時は会議室で、またある時はオンラインで、部署が異なるメンバー10人ほどと議論を重ねた。普段は二酸化炭素削減に向けた計画立案を担当している。 亀岡を代表する歴史資源と言えば、明智光秀だ。市中心部には光秀が築城した丹波亀山城跡がある。「でも、大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』も終わって随分経つしなあ」 郷土の偉人には、江戸時代に商人の役割や庶民の倫理を説いた「石門心学」の開祖・石田梅岩もいるが、若年層にはピンと来ないかも。源平合戦で活躍した那須与一が立ち寄ったというお堂もあり、市民の手でミュージカルも上演されているけれど……。 「これ、意外といけるんちゃう?」 そんな時、美術好きの乾さんの頭にふと浮かんだのが、亀岡生まれの江戸時代の絵師、円山応挙。「足がない幽霊」を描いた元祖とも言われるが、もふもふの毛、まるまる太った子犬の絵をたくさん描いている。 「犬と暮らしやすいまち・亀岡」のキャッチコピーを思いついた。「これ、意外といけるんちゃう?」 リサーチが始まった。 ペット市場はいまや1・7兆… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「それ詐欺ですから!」と10分説得 4度被害防いだ店長の声かけ術
「そのパソコンは壊れているので修理にお金が……」「市役所から還付金があるので……」。一本の電話で始まる特殊詐欺事件。被害を未然に防いだとして警察から4度、感謝状を贈られたコンビニエンスストアの店長がいる。こつや、こだわりとは……。 「スマホ切って、かかってきても出ないで」男性を説得 「あと15万円、下ろしたかったんだけど」。店の角にあるATMでそう漏らした70代の男性。手にはスマートフォンで落ち着かない様子。店長の新美由美子さん(49)はピンときた。 愛知県東浦町緒川の幹線道路沿いにあるローソン東浦鰻池(うなぎいけ)店。8月24日午後10時すぎ。高額の買い物をするには遅い時間だ。 新美さんが話を聞くと、男性は40万円を必要としていたが、すでに1日の引き出し限度額を超えていた。他のコンビニで電子マネー(プリペイドカード)を購入していて、さらに買うつもりだったとも。 「それ、詐欺ですから」と新美さんは声を上げた。警察を呼ぶことを伝えると男性は戸惑った表情を見せた。「振り込んでしまったら、お金は戻ってきませんよ」「(通話状態の)スマホは切って。かかってきても出ないで」。署員が駆けつけるまでの約10分間、同様の詐欺事件が相次いでいることも説明し、購入を断念させた。 半田署によると、男性がパソコンを使用中に警告画面が現れた。表示された番号に電話したところ、犯人側から修理代名目として、コンビニで電子マネーを買うよう迫られたという。電子マネーを買ってカード番号を伝えても、「これは使えない」とそのたびに要求を繰り返す。結果、四つのコンビニで購入した電子マネー計75万円分をだまし取られた。 電子マネーには「使い方、大丈夫ですか」 新美さんによると、男性は他の4軒の店でも「詐欺ではないか」と注意されたが聞かなかったという。 この件で新美さんは9月14日、半田署長から被害の拡大を防いだとして感謝状を贈られた。通算4度目。過去3度は、2017年5月に50万円、18年2月に2万円、21年2月に4万9千円の各架空請求詐欺による被害を防いだ功績だった。 16年に夫(55)と現在の店を開業したときから特殊詐欺事件が社会問題になっていた。少しでも被害を減らせるよう考え、お客に「どうしましたか」と声をかけるようにしてきた。 例えば架空請求詐欺でよく使われる電子マネー。「使い方、大丈夫ですか」と聞くようにしている。 高齢者が高額の電子マネーを買おうとしている▽電子マネーを「どこに売っているのか」と聞いてくる▽通話状態の携帯電話を持っている……。これまでの経験で分かった被害者の様子だ。 苦労もあるけれど…「詐欺がなくならない以上、ずっと続けていく」 気苦労も少なくない。 今年8月、40万円分の電子… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
柿沢氏、区長本人に提案か 選挙中に有料ネット広告 法務副大臣辞任
4月の東京都江東区長選で初当選した木村弥生区長(58)の陣営が、選挙中に投票を呼びかける有料のインターネット広告を掲載したとされる事件で、地元選出の自民党衆院議員の柿沢未途(みと)・法務副大臣(52)が、木村氏本人にネット広告の利用を提案したとみられることが、関係者への取材でわかった。柿沢氏は31日、問題の責任を取って法務副大臣を辞任した。 9月の岸田内閣改造後、政務三役の辞任は、女性問題が発覚した山田太郎・前文部科学兼復興政務官に続き2人目。岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で「法務副大臣は法の執行により厳密でなければならない立場だ」とし、「任命権者としての責任を重く受け止めている」と述べた。 柿沢氏は10月の朝日新聞の取材に対し、自身が木村氏の「陣営関係者」に「『ユーチューブ広告は効果があるからやった方がいい』と勧めた」などと証言し、「私が勧めなければ、やらなかっただろう」と語った。「陣営関係者」が誰かは明らかにしなかった。 朝日新聞が31日にこうした証言を報道したことを受け、岸田氏らの指示で、小泉龍司法相が柿沢氏に事実関係を確認した。その上で、柿沢氏は辞表を提出し、持ち回り閣議で承認された。後任には門山宏哲衆院議員(自民)を充てる。 江東区長、会見で虚偽説明の可能性 公職選挙法違反容疑で捜査し… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「フォートナイト」申告漏れ、調査はウェブ面談で 「氷山の一角」か
世界的な人気オンラインゲーム「フォートナイト」の課金収入をめぐり、米エピックゲームズの海外子会社が東京国税局の税務調査を受け、2020年12月期までの3年間で約30億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。 人気ゲームをめぐり、高額の申告漏れが明らかになった。ネット上のサービスやコンテンツを配信する海外事業者の実態把握は難しく、「氷山の一角」との見方もある。 海外企業の調査は1年以上かかることも多い。今回、東京国税局は海外にいるエピックゲームズ社側の担当者とウェブ会議で面談するなどし、比較的短期間で修正申告に至った模様だ。元国税庁国際業務課長でEY税理士法人の角田伸広会長は「税務を含むコンプライアンスの重視は国際的な風潮で、有名企業としてイメージダウンは避けたいはず。調査官がその『弱み』を理解し、協力的姿勢を引き出した面があるのではないか。ウェブ会議の活用も、コロナ禍を経験したことによる調査手法の向上といえる」と話す。 ゲーム・アプリ・音楽の配信… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ゲーム「フォートナイト」海外の配信会社、課金収入30億円申告漏れ
世界的な人気オンラインゲーム「フォートナイト」の課金収入をめぐり、米エピックゲームズの海外子会社が東京国税局の税務調査を受け、2020年12月期までの3年間で約30億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。日本のユーザーが支払った、ゲームのアイテム購入代金などの一部にかかる消費税が計上されていなかったという。追徴税額は過少申告加算税を含め約35億円とみられる。 フォートナイトはスマートフォンやパソコン、ゲーム専用端末などで遊べるゲーム。国内外の企業が運営する複数のプラットフォームを通じて基本的に無料で配信されているが、ゲーム内で使えるアイテムを購入した際などに課金される。 関係者によると、国税局はエピック社のルクセンブルクにある子会社が、日本のユーザーにフォートナイトを配信、課金していることを把握。一部のプラットフォームを通じた課金収入約300億円について、この子会社に消費税の申告納税義務があるのに計上されていないとして、約30億円の申告漏れを指摘したという。 エピック社は取材に「日本の税務当局による定期的な調査の中で、弊社側の不注意により一部の消費税が未払いの状態にあることを認識しました。指摘を受けてすでに納付を完了しています」とコメントした。 国税庁は世界各国の税務当局と租税条約に基づく情報交換をし、日本と関係する海外企業の資金の流れについても注視している。ただ、海外企業の税務調査は困難を伴い、今回のような数十億円規模の追徴課税は異例とみられる。(花野雄太) ユーザー数億人 いわゆる「課金ゲー」と違う魅力? 「フォートナイト」は銃を中… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「拳銃を下ろせ」と大声 郵便局に立てこもり8時間、深夜に警官突入
【動画】=埼玉県戸田市の病院で発砲事件。付近では火災も=依知川和大撮影 埼玉県の隣接する市で31日午後、相次いで発砲音が響いた。戸田市の病院で拳銃が撃たれ、蕨(わらび)市の郵便局に男が立てこもった事件。小中学校では子どもたちが待機を強いられ、帰宅できない住民向けに避難所も開設された。事態が動いたのは、深夜だった。 立てこもってから8時間後の午後10時20分。蕨郵便局前に止まっていた警察車両の周辺が慌ただしくなった。警察官数人が、郵便局内に入っていく。警察官はフェースガードや防護衣を身につけており、周辺には緊張が走った。 容疑者確保が報道陣に伝えられたのは、その直後だった。 県警によると、郵便局から約1・5キロ離れた戸田中央総合病院病院近くで、午後1時13分ごろ、「拳銃のようなものを持った人がバイクで走り去った」と通報があった。 病院に勤務する女性は、「パン」という乾いた音を聞いた。初めは車いすのタイヤのパンクかと思ったが、すぐに「今いる部屋から出ないで」と院内放送が流れ、外来患者へ早めの帰宅が呼びかけられたという。 その後、男は蕨郵便局に立てこもった。 午後2時半ごろ。蕨市の防災無線が次々と流れた。「バイクに乗った犯人が銃を持って逃走しています」「蕨市に逃げてきて、郵便局内で立てこもっています」 現場は旧中山道沿いの住宅街。郵便局の向かい側に実家がある40代の女性は、郵便局前の路上にパトカーとミニバンが止まり、車両の後ろに2人ずつ警察官が身を隠して郵便局の方をうかがっていたのを見た。 郵便局の中では、窓口のカウンターの前を行ったり来たりしている男の姿がガラス越しに見えた。「拳銃を下ろせ」「手を挙げろ」。警察官らしき大声が何度か聞こえ、叫び声も響く。 午後3時前後、「バーン」という発砲音が1発聞こえた。「大きな爆竹みたいな音だった」と言う。 近くで米店を営む70代女性は、午後3時前に警察官から戸締まりを呼びかけられ、事件を知った。付近には防護盾を持った警察官が行き来するなど、騒然とした様子だったと言う。 容疑者が立てこもる郵便局の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ジュラ紀のヤツメウナギの化石発見 肉食う鋭い歯、「殺し屋」と命名
獲物に吸い付く「グロテスクな口」が化石としてはっきり残っていた――。最も原始的な脊椎(せきつい)動物と言われる「ヤツメウナギ」の化石が、中国にある約1億6千万年前のジュラ紀の地層から発見された。獲物にかみつくことができる歯の構造を持っており、その肉食性から「殺し屋」などの学名が与えられた。 ヤツメウナギは「あご」がない珍しい動物だ。脊椎動物は、あごのあるヒトなどの顎口(がっこう)類と、あごのない円口(えんこう)類に大別され、円口類はヤツメウナギとヌタウナギしか現存しない。5億年ほど前に脊椎動物の祖先から最初に枝分かれし、「生きた化石」として進化を知る上で重要視されている。 今回、中国遼寧省の地層から発見されたのは、ヤツメウナギの化石4点。中国科学院などの研究チームが調べると、体長は60センチを超えた。特徴的だったのは、口がきれいに残っていたことだ。 あごなくてもかみつける歯の構造 丸い吸盤のような口には、ゴロゴロとした角ばった歯が密集。口の中心には、鋭い歯のついた軟骨がついていた。この軟骨がピストンのように前後運動することで、上の歯とうまくかみ合うようになっており、獲物の肉を切り落とす捕食性があったとみられる。 研究チームによると、ヤツメウナギの最古の化石は3億6千万年前のものが残っているが、当時の体長は数センチと小さく、口もあまり発達していなかった。 今回の発見により、恐竜が繁栄したジュラ紀には体格が大きくなり、発達した口で獲物を捕食していたようだ。 化石は2種に分類され、「殺… この記事は有料記事です。残り551文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル