兵庫県姫路市の市街地から、車で30分以上の農村地帯。今、急速に注目を集める「映えスポット」がある。 広大な池の中に、ぽつりと小島が浮かぶ。小道を踏みしめ島に渡ると、一面の水面が広がり、静寂に包まれた。水と空の青さ、取り囲む山の緑とのコントラスト。風がない日は、水面に山が映し出される。「この世界で私一人」という気分になる。 絶景を堪能していると、一人の男性が歩いてきた。仕事の合間を利用し、週に2回は訪れるという会社員の梅本恒平さん(48)だった。 神社は田んぼや山に囲まれた池の中にあり、静かな雰囲気に包まれていた。夕暮れを待って、神社の神秘的な印象を狙った。周辺には街灯もなく、遠くに車のライトや民家の照明が少し見えるだけ。長時間シャッターを開けて光を強く露光させた。池の様子がわかるよう脚立を使い高い位置から撮影した。(小宮路勝) 仕事でのミスが続いていた時… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日大8部員の大麻疑惑知ってた 報告書「不都合な情報に目をつぶる」
日本大学のアメリカンフットボール部での違法薬物をめぐる問題で、検証を行った第三者委員会(委員長・綿引万里子弁護士)が31日、調査報告書を公表した。昨年11月時点で大麻使用を認めた部員がおり、自身のほかに7人の先輩部員の名前もあげていたことを指摘。その上で、大学側の当時の一連の対応が不適切だったと認定した。 31日に公開された報告書によると、昨年10月29日、保護者から部員の大麻使用のうわさがあるとの情報提供がアメフト部指導陣に寄せられた。だが、指導陣は部の事務を所管する「競技スポーツ部」の部長や競技スポーツを担当する沢田康広副学長に報告せず、独断で部員121人に簡易な聞き取りを実施。複数部員の大麻使用を疑わせる情報を得たにもかかわらず、名指しされた部員が否定したことから、「事実は認められない」と結論づけた。 その後11月27日になり、大麻使用を疑われていた部員1人が使用を認め、他7人の先輩部員の使用も名前をあげて部の監督に申告。これを受け、監督はアメフト部長や競技スポーツ部長に事実を報告したが、部長らは、沢田副学長らに報告しなかった。 12月には、競技スポーツ部長と沢田副学長に対し、警視庁からもアメフト部内での大麻使用を疑う情報提供を受けたが、対応を組織的に検討することもなく、薬物の講習会を実施することで対応を終えた。同11日の保護者会では、監督はこういった事実に全く触れず、「現時点で問題が発生しているわけではない」などの報告をした。 報告書は、こうした一連の対応を「不都合な情報には目をつぶり、得られた情報を自分に都合よく解釈し、自己を正当化するという姿勢」を「如実に表すもの」と指摘。「大麻使用が寮内で一定の広がりを持っている可能性があるならば、これに対して採るべき組織的な対策や措置について何ら考慮されていない」と断じた。 また、競技スポーツ部長が上… この記事は有料記事です。残り165文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「信用失墜の最大原因」は、「12日間の空白」 日大第三者委報告
日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件で、日大の対応を検証する第三者委員会(委員長・綿引万里子弁護士)が31日、調査報告書を公表した。アメフト部の学生寮で見つかった植物片を警察に提出せずに12日間学内で保管したことについて、担当の沢田康広副学長の責任を厳しく認定し、「得られた情報を自己に都合よく歪曲(わいきょく)」「誤った判断基準に基づいた対応」と指摘した。 報告書によると、沢田副学長は今年7月6日、競技スポーツ部職員とともに部員のヒアリングと荷物検査をし、1人の部員の部屋から植物片が保管された缶を見つけた。しかし、警察に報告するまで12日間、大学本部で缶を保管した。 この点を第三者委は「12日間も本部で保管を続けた対応は、世の中の常識からは乖離(かいり)した独自の判断基準の下で、得られた情報を自己に都合よく歪曲(わいきょく)し、自らの対応を正当化し続けた」と指摘。その結果、「社会から本法人の隠蔽(いんぺい)体質を疑わせ、信用を著しく失墜さた最大の原因であったといっても過言ではない」としている。 また、「大学の副学長が大麻… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
主婦の私がウナギ職人に?「焼きは一生」の職人技、習得わずか3カ月
愛知、岐阜両県でうなぎ店を展開する「うなぎ家」(本社・愛知県尾張旭市)が、女性職人の育成に力を入れている。子育てが一段落した主婦層にターゲットを絞り、串打ちから焼きの技術までを3カ月で伝授するプログラムを導入。4月には岐阜県各務原市の店舗で女性店長が初めて誕生した。 各務原市のうなぎ料理店「阡家(せんや)」の調理場。愛知県一宮市の玉腰万寿己さん(50)が黙々とウナギと向き合っていた。「『焼きは一生』と言われるように試行錯誤を続けています。家事の経験も生かすことができ、毎日が充実している」と話す。 午前8時に家を出て、9時ごろ店に到着し、串打ちなどの仕込み。午前11時に開店すると、ランチタイムは休む間もなくウナギを焼き続ける。夜の部は午後5時に始まり、閉店は午後8時半。1日平均で12キロほどのウナギを一人で焼くという。 先輩職人の技を盗むのではなく…育成プログラムを確立 玉腰さんは今年1月に入社したばかりだ。子どもが高校生になったのを機に再就職を決意し、正社員の女性店長を募集していた求人案内に目が留まった。 パートとして、飲食店での接客や物流会社で庶務などの仕事をしてきたが、飲食店での調理経験はなかった。「最初は戸惑いもあった。身と皮がはがれないように串を打つのは職人技で苦労した」と玉腰さん。それでも3カ月での研修を経て、店長に就いた。 「うなぎ家」では、協力会社の職人に講師を依頼。串打ちから焼きの技術を一から教え、反復練習を重ね、短期間で技術を習得させる育成プログラムを確立した。先輩職人の技術をまねて盗むのではなく、わかりやすく技術を継承する狙いがあるという。 子育てしながら兼業で経理・労務・総務…いまは社長 女性職人の育成に乗り出したのは、昨年秋に「うなぎ家」の社長に就任した松井智子さん(45)。うなぎ職人は男性社会のイメージが強い。その上、高齢化と後継者不足は深刻だった。 そこで「働きたい」と思って… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
柿沢法務副大臣が辞任の意向 江東区長選の有料ネット広告めぐり
2023年10月31日 10時06分 自民党衆院議員の柿沢未途(みと)・法務副大臣(52)が31日、副大臣を辞任する意向を固め、小泉龍司法相に伝えたことが、関係者への取材でわかった。柿沢氏は、地元の東京都江東区長選をめぐり、木村弥生区長(58)の陣営が違法な有料ネット広告を流したとされる事件で、自らが広告の利用を勧めたと朝日新聞の取材に証言していた。 朝日新聞が31日に柿沢氏の証言を報道したことを受け、松野博一官房長官は小泉氏に対応を指示。柿沢氏は小泉氏に対し、「違法という認識はなかったが深く反省している」と答えたという。 「ユーチューブ広告、私が勧めた」 今年4月の江東区長選をめぐっては、木村氏の陣営が、選挙期間中に投票を呼びかける有料のネット広告を流していたことが発覚。東京地検特捜部が今月24日、公職選挙法違反容疑で区役所内の区長室や木村氏の自宅を家宅捜索するなどして捜査を進めている。木村氏は任意聴取も受け、同月26日に辞職を表明した。 柿沢氏は今月、朝日新聞の取材に対し、木村氏の「陣営関係者」に「『ユーチューブ広告は効果があるからやった方がいい』と勧めた」などと明らかにした。「何がアウトかという知識がなかった」として、当時の違法性の認識は否定。選挙後の報道を受け、違法性に気づいたと説明した。 動画広告の制作や掲載への具体的な関与や、費用の負担なども否定する一方、ネット広告が掲載されたことは陣営側から報告を受けていたと証言した。ネット広告は「私が勧めなければ、やらなかっただろう」とも述べていた。 柿沢氏は2009年の衆院選にみんなの党から立候補し、初当選した。その後も野党系議員として活動してきたが、前回21年の衆院選後に自民党から追加公認された。現在5期目で、今年9月に法務副大臣に就任した。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
防衛相「言語道断」 海自セクハラ問題、対応状況の緊急点検指示
海上自衛隊の女性自衛官がセクハラを受け、その後に意に反する形で加害男性と面会させられていた問題で、木原稔防衛相は31日の閣議後の記者会見で「言語道断」と当時の対応を非難した。 木原氏は、30日付で関係機関に対し、ハラスメント案件の対応状況を緊急点検し速やかに報告するよう指示したことを明らかにした。「指示を全ての自衛隊に徹底し、ハラスメントを一切許容しない環境を構築する」と語った。 防衛省や女性への取材によると、昨年12月、先輩の男性自衛官から胸や足を触られるなどの被害を訴えていた女性自衛官が、所属部署のナンバー2である1等海佐から職場の面談室に呼ばれ、加害男性と面会するよう求められた。女性は「しゃべりたくない」と泣いて拒んだが面会で謝罪を直接聞かされた。ショックで出勤できなくなり、今年3月末に退職した。 自衛隊では昨年、陸自での性… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
自衛隊、閉鎖性ゆえの人権無視 専門家「セクハラ告発は当然の権利」
自衛隊で、セクハラを訴える女性自衛官の意図に反し、組織の上司が被害者と加害者を面会させ、加害者の謝罪を聞かせていた。対応の問題点について、被害者の心理支援に長年取り組んできた清泉女学院大学の岡本かおり教授(臨床心理学)に聞いた。 ◇ ――セクハラ被害を受けた女性が、上司から加害男性との面会を強要され、謝罪を聞くように迫られました。被害者にどのような影響を与えるのでしょうか。 「性暴力は被害者の気持ちや意思が無視され、一人の人間として認められていない状況といえます。被害者の人権は無視されたといっていいでしょう。このことに被害者は大きく傷つけられます」 「そして、謝罪を受け入れざるを得ないような状況は、『させられた』体験といえます。それは暴力を受けた時と酷似しており、性被害の後にもう一度、人権を無視されるという被害の上塗りになってしまいかねません。被害者が再度傷つくことは二次被害と呼ばれ、二次被害は被害からの回復を遅らせることが指摘されています」 「被害回復のためには、被害者の置かれた状況を想像して、被害に遭った方がどうしてほしいと考えているのか、謝罪を受けたいのかを被害者の意思を確認しながら考えるべきだったと思います」 何となく優先される組織の常識や価値観 ――被害女性は、これまで度々セクハラを受け、上司に相談してきたが対応されなかったと話しています。結果、セクハラを受けても声を上げないようになりました。性被害者がちゃんと告発できるようにするためには、どのようにするべきなのでしょうか。 「内閣府の調査(2021年… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
鏡に映った自分の顔には… 安全なはずの給食、エピペンまでの18分
小学校の給食時間中、児童が激しいアレルギー症状「アナフィラキシー」を起こし、一時入院した。体調不良を訴えてから、症状を緩和する自己注射薬「エピペン」を担任が打つまで、20分近くかかった。学校側は幾重にも発症させない対策を講じていて、「起きるはずのない事故」だったことが対応を遅らせた。(茂木克信) 食べ始めて10分 「おなかが痛い」とトイレへ 乳・乳製品にアレルギーがあるこの児童は、給食で出る牛乳の代わりに毎日自宅から豆乳を持っていく。主食がパンの日は乳成分を含まないパンも持参する。おかずは乳成分を除去した食材で作られている。色分けされた専用のトレーを使い、教職員が給食室から直接運ぶ。 だから安心して食べられる。……はずだった。 9月5日午後0時15分、新潟県上越市の市立小学校。クラス全員分の準備が整い、一斉に食べ始めた。 児童はすぐ、のどに痛みを感じた。おかずに違和感を覚えたが、安全だと信じていたのでそのまま食べ続けた。 10分後。3分の1ほど食べ進めたところで、「おなかが痛いのでトイレに行ってきます」と担任の教諭に申し出た。トイレに向かう途中、気分が悪くてフラフラした。個室の便座に座った途端、下痢を繰り返した。 児童がトイレに向かって5分ほどして、担任は配布物を取りに職員室へ行き、その行き帰りにトイレの個室に鍵がかかっているのを確認した。声はかけなかった。同35分に給食の時間が終わると、補助職員に様子を見てくるよう指示をした。 児童はまだトイレの個室にいた。扉越しに「大丈夫?」と尋ねられ、「はい」と答えた。給食を片づけていいかも聞かれ、「片づけて下さい」と返した。 たどり着いた教室 「先生、気持ち悪いです」 補助職員が離れた後、息苦しさが増した。何とか教室へ戻ろうと個室を出て、手洗い場の鏡で自分の顔を見た。湿疹で真っ赤になっていた。 「乳かもしれない」 恐怖に襲われた。以前、外食… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「犯罪被害者のためにがんばった」天国の妻と長女に報告するために
昨春発足した、犯罪被害者やその家族による「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」の中心メンバー、渡辺保さん(74)。長女の美保さん(当時22)は、23年前に殺害された。自身の経験をもとに、被害者側への補償制度の整備などを訴える。 2000年10月16日の夜、美保さんは当時勤めていた衣類レンタル会社から、横浜市瀬谷区の自宅に帰る途中に襲われ、遺体で発見された。歩いていたところを背後から車ではねられて失神し、包丁で首を刺されて死亡した。 事件は、家族の日常を奪い去った。 ナイフが…悪夢に苦しんだ末 郵便局で保険の営業をしていた保さんは、家族を養うために仕事を続けたが、以前のようには打ち込めなくなった。 傷つけられた美保さんの遺体を見てから、妻の啓子さんはナイフで切られる悪夢にうなされ、自傷行為をしたり、泣きながら家を飛び出したりするようになった。 当時大学生だった次女と必死に支えたが、「お母さんが一番大変なんだから支えてあげて」と周囲から言われ続けた次女が、「私も大変なんだけどな」とこぼした時は、いたたまれなかった。 発生から約3年が過ぎたころ、美保さんの中学時代の同級生の男が警察署に「現場の花束を見たり遺族の手記を読んだりして、自責の念にかられた」と出頭した。 その後、全面否認に転じたが、検察は殺人罪などで男を起訴した。 それでも、家族の苦しみは続いた。 当時は、被害者やその家族が… この記事は有料記事です。残り1780文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
喫茶店から考える店と客、地域の関係 コミュニティー共有の財産に
記者コラム 「多事奏論」 編集委員・長沢美津子 なるべくなら買いものや飲食は、個人店を選ぶことにしている。その方がおもしろいからだ。知らない土地では日常に一歩踏み込む好奇心、ご近所には顔のわかる安心のテリトリーがほしいのだと思う。面倒な時もあるし、失敗もする。ヒマがあるねと言われればその通りだけれど、自転車を先まで走らせてしまう。 商店街を見回してわかる通り、個人店は減った。けれど消えたわけではない。「喫茶店のディスクール」(誠光社)には、個人の「いい店」が生き残るヒントが詰まっている。小さな商いを成立させる方法論を読みながら、サービスを求める一方の消費者と、店を育てる客の違いを考えることにもなった。 著者は京都、倉敷、和歌山の白浜と三つの街で喫茶店を営む焙煎(ばいせん)家のオオヤミノルさんだ。1967年生まれ。コーヒーの世界では、ネルドリップと深煎りの技術が知られている。 ディスクールとは言説。喫茶… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル