有料記事 光墨祥吾 西崎啓太郎 山本逸生2023年9月23日 20時00分 被告人質問 約18時間のやりとりから 「池田晶子(しょうこ)はターゲットでしたか」 アニメーターの池田(本名・寺脇)晶子さん(当時44)を失った夫(50)が、数メートル先の車いすに座った青葉真司被告(45)をまっすぐ見つめ、問いかけた。 36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件。20日の第8回公判では、遺族が初めて、直接質問する機会が設けられた。青葉被告は「京アニ全体を狙う認識で、誰か個人を狙う認識はなかった」と答えた。 「青葉さん」と呼びかけ、時折声を詰まらせて尋ねた夫。「放火殺人の対象者に家族、子どもがいることは知っていますか」と問うと、それまでよどみなく答えてきた被告は数秒間、戸惑った様子で沈黙し、言った。 「申し訳ございません。そこまで考えませんでした」 初公判で起訴内容を認め、第3回公判からの被告人質問も淡々と自身の半生を振り返ってきた。ただこの日、遺族らの代理人弁護士の質問に気色ばむ場面があった。 「被害者の立場を考えなかったのか」と聞かれた時だ。「逆にお聞きしますが、(京アニは小説を)パクった時に何か考えたか」と逆質問した。 裁判長に「いま、あなたは質… この記事は有料記事です。残り2288文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
夏の終わりに雪を見た 雪の結晶3千枚集めた「雪博士」が残した名言
夏の終わりに、雪を見たくなった。訪ねたのは、石川県加賀市の「中谷(なかや)宇吉郎 雪の科学館」。世界で初めて人工の雪をつくり、「雪は天から送られた手紙である」の名言で知られる。そんな「雪博士」の業績と素顔を紹介している。 中谷博士は1900年、市内片山津の呉服・雑貨店の長男として生まれた。金沢の第四高等学校を卒業し、東京帝国大学理学部、理化学研究所で寺田寅彦に師事し、実験物理学の道に進んだ。北海道帝国大学に赴任し、32年に教授になると雪の研究に没頭。3千枚もの雪の結晶の写真を撮り、どんな気象条件で生まれるのか、実験を続けた。 雪が「天から送られた手紙」とは何か。雪の結晶の形は上空の気象条件(気温と水蒸気量)によって決まる。だから地上に降った雪の結晶を観察すれば、上空の気象条件がわかる。そのことを「手紙」という言葉で詩的に表現した。 そして36年3月、博士は北大の実験室で人工雪の生成に成功した。米シカゴで氷の特性も研究し、アラスカやハワイなどでの調査にも赴いた。62年に61歳で亡くなった。「人には良くしてあげるんだよ」が最期の言葉だった。 科学館は94年11月に開館… この記事は有料記事です。残り1354文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「すべて失った」が「命救われた」に 甚大被害の台風15号から1年
有料記事 小山裕一 田中美保2023年9月23日 17時00分 昨年9月の台風15号で、静岡県内に甚大な被害が出てから23日で1年。土砂などが建物内に流れ込んで休業を余儀なくされた油山(ゆやま)温泉(静岡市葵区)の二つの旅館はクラウドファンディング(CF)などで資金を集め、営業再開に向けて準備を進めている。 葵区の中心部から北へ約10キロ。旅館「油山苑」では床上浸水した厨房(ちゅうぼう)の改修工事が進む。11月ごろから飲食の営業を、年明けにも宿泊客の受け入れを再開する予定だ。「以前のように、家庭的なおもてなしをしたい」。経営者の大塚祐史さん(62)はほっとした表情を見せた。 被災当時、水泳大会に参加する高校生ら26人が宿泊していた。旅館前を流れる油山川が氾濫(はんらん)し、1階の床上まで浸水し、建物内に土砂が20センチほど積もった。 土砂の撤去などが済んだ5月… この記事は有料記事です。残り2013文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
企業もハマる学生自動車レース EV化、技術者不足…業界の今も映す
静岡県袋井市と掛川市にまたがる県小笠山総合運動公園(エコパ)で今月2日まで、国内外の学生たちがレーシングカーを走らせる「学生フォーミュラ日本大会」があった。競うのは走行性能だけでなく、設計や製造などを含む「クルマづくり」。大会は、自動車産業の今も映している。(大平要) 大会最終日の今月2日。エコパの駐車場に設けられた周回コースを、大勢の観客が取り囲んでいた。電光板にラップタイムが表示されるたび会場は歓声に包まれ、マシンの不具合でリタイアしたドライバーにも、温かい拍手が送られた。一般の観戦が認められたのは、コロナ禍前の2019年以来だ。 走るのは「一瞬」 「レースを走るのは、ほんの一瞬。走らせるまで、ここに至るまでが長いんです」。主催する自動車技術会で実行委員長を務める日産自動車のエンジニア、大和田優さんは目を細めた。約10年前にボランティアで大会を手伝って以来、その魅力に「のめり込んだ」ひとりだ。 マシンづくりには約1年かか… この記事は有料記事です。残り1642文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ブドウ農家「一晩で9割やられた」 収穫期の夜、狙われやすい広い畑
茨城県内で農作物の盗難が増えている。県警が把握した8月末時点の被害総額は前年同期に比べて約2倍にのぼる。夜間に人気(ひとけ)のなくなる田畑やビニールハウスを狙う手口は、防犯対策が取りづらく農家の悩みと不安は尽きない。実りの秋を迎え、被害がさらに拡大する恐れがあり、県警は警戒を強化している。 つくば市で今月、盗難被害に遭ったブドウ農家がいる。21日、朝日新聞の取材に応じた。水田と畑が広がる郊外の農村地帯。集落からやや離れた田畑の中に、ぽつりぽつりとブドウ栽培のビニールハウスが点在する。 柔和な表情でとつとつと被害状況を説明してくれていた鴻巣義一さん(74)の顔が一瞬、険しくなった。盗難に気づいた瞬間の心境を尋ねた時だ。 「やられた。収穫の朝ですよ。悔しさしかない」 声にやるせなさと憤りがにじむ。 鴻巣さんが収穫のためビニールハウスに出向いたのは、今月12日の午前6時半ごろ。ハウス2棟の扉がともに半開きになっていた。前日午後6時ごろに閉め、取っ手を細身のロープで幾重にもくくりつけたはずなのに。 入り口からのぞくと、シャインマスカットの棟も、巨峰の棟も、一部を残してほとんどの房が切り取られていた。そばの肥料小屋も荒らされた。 警察に届けた被害はシャインマスカットが約250房、巨峰も約200房。肥料は1袋数千円する高額なものばかり約30袋が持ち去られ、肥料散布用の器具までなくなっていた。被害額は計40万円相当という。 「ブドウは9割方やられた。肥料は安い鶏ふんなどには手をつけていない」と鴻巣さん。「あれほどの量を一気に運ぶには、1人や軽トラック1台では無理ではないか。どうやって売りさばくんだろう。インターネットかね」といぶかる。 65歳で会社を退職後、本格的に農業を始めた。ブドウ栽培は、退職後の夫婦旅行で山梨県を訪れた時にプレゼントされた1本の苗が根付いたことがきっかけだ。独学で有機肥料などの使い方を試行錯誤し、5年ほど前から農協の直売所に出せるようになった。ようやく軌道に乗り、新たに3棟目のハウスで若木を育て始めたところだった。 「『おいしいのに安い』と喜んでくれていたお客さんが、がっかりしている」 自衛策はないのか。 「扉にカギをかけていたとしても、ビニールハウスですから。ビニールやネットの部分を切って侵入されたらひとたまりもない」。夜通し見張ったり見回ったりするわけにもいかない。 今後は、センサーを設置して自宅にいながらスマートフォンで確認できるシステムを導入するか、ハウスの骨組みを人が侵入できないくらい密にするか、思案を巡らせる。 「対策にはお金がかかる。うちのような小規模な栽培者にとって収支が見合うかどうか」 鴻巣さんの柔らかい顔つきが、また曇った。(中村幸基) ◇ 茨城県警によると、県内で確認された農作物の盗難被害は、8月末時点で58件と前年同期(47件)より11件増えている。被害総額も約660万円で、前年同期(約330万円)の2倍に。秋口は収穫期と重なって被害が拡大する恐れがあり、警戒が必要だ。 盗難被害があった58件のうち、県西地域が4割超の24件を占め、県南地域が12件、鹿行地域が11件と続く。防犯カメラのない広々とした畑が夜間に狙われ、農家が翌朝に被害に気づくというケースが目立つ。中にはビニールハウスを外から破って侵入するなど悪質な行為も確認されている。 予防策としては、防犯カメラのほかに熱や物の動きに反応して警報音が鳴るセンサーなどもあるが、「音が出て近所迷惑にならないか」「設置費用がかかる」といった理由で普及が進んでいないのが実態だ。 近年の被害は年間80~100件で推移し、収穫期を迎える9、10月に集中する傾向にある。被害現場には物的証拠が乏しく、現行犯以外での検挙が容易ではないという。県警は、過去に被害があった地域を中心にパトロールを強化。不審な人を見かけたらすぐに通報するよう呼びかけている。(原田悠自) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
30年越し、甲子園アルプスで見た成長 「親戚のおっちゃん」として
滋賀県立淡海(たんかい)学園(甲賀市土山町)にある夫婦寮の寮母、佐伯香菜さん(41)が、先輩として慕う人がいる。7年前までの30年間、学園で夫婦寮を運営した元職員の吉川康之さん(61)だ。 吉川さんは昨夏、学園の卒業生と阪神甲子園球場のアルプス席で、ある選手を応援していた。寮長として送り出した卒業生の息子が、甲子園に出場したのだった。 30年近く前。中学の野球チームで活躍したが、生活が荒れ、淡海学園に入所した生徒だった。その後、学園の野球部監督だった吉川さんのもと、施設の全国大会で優勝の原動力になってくれた。 卒業から月日を経ても、息子を連れて練習に来たり、息子の活躍をうれしそうに報告してくれたり。そんな卒業生たちとの縁は、かけがえのない喜びでもある。 吉川さんは、妻の正美さん(59)とともに夫婦寮を営んだ後、昨年、定年退職した。夫婦で送り出した子どもは150人を超える。 卒業後も、家族ぐるみの関係は続く。高校の卒業式や結婚式にも呼ばれる。「関係はずっと続くよ、という気持ちで送り出している。遠くにいる親戚のおっちゃん、おばちゃんのような存在として出迎えます」 フロントガラスにパチンコ玉 大学で福祉を学んだ吉川さん… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「資金繰り悪く」 詐欺の受け子の疑い、会社経営の男を現行犯逮捕
増山祐史2023年9月23日 13時27分 警視庁は、会社経営者の男(42)=東京都板橋区板橋3丁目=を詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕し、23日に発表した。特殊詐欺グループの現金を受け取る「受け子」とみられ、男は「会社の資金繰りが悪くなり、生活費のためにやった」と容疑を認めているという。 練馬署によると、男は21日、何者かと共謀し、練馬区の80代の男性宅に医師や長男になりすまして電話し、「お宅の長男ののどに喉頭(こうとう)がんが見つかった」「のどが痛くて病院にいる。病院で会社の書類を無くし、お金が200万円以上必要になった」とうそをつき、現金をだまし取ろうとした疑いがある。 同日夜に実の長男から電話があり、詐欺を見抜いた男性が翌22日に110番通報し、発覚。通報を受けて警戒していた警察官が、現金を受け取るため男性宅に現れた男を現行犯逮捕した。 同署によると、男は化粧品関係の会社経営者だという。今月、X(旧ツイッター)で「闇バイト」と検索したところ、「書類を受け取る仕事」「日当1万~5万円」との募集を見つけ、詐欺グループに加わったという。(増山祐史) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
リラックマからちいかわまで 名だたる人気キャラとコラボ電車次々
京阪神を走る私鉄の阪急電鉄が毎年、人気キャラクターとコラボした電車を走らせている。毎年のように、名だたる人気キャラとのコラボが代わる代わる実施される電車は珍しい。なぜ実現できるのか、聞いてみた。 阪急電鉄は2015年、春にリラックマとコラボしたぬいぐるみなどのグッズを発売したのを機に、夏のスタンプラリーの一環でリラックマを描いたヘッドマークを付けたり、車体側面にステッカーを張ったりした電車を走らせた。 翌年からスヌーピー、くまのがっこう、すみっコぐらし、リサとガスパール、コウペンちゃん、くまのがっこう、ミッフィーと、人気キャラとコラボした電車を毎年運行。今年8月からは、ツイッター(現X)発の漫画「ちいかわ」のキャラクターをデザインした電車を走らせている。 「様々なファン層や沿線の方に毎年楽しんでもらえるように、いろんなキャラとコラボしています」と、阪急電鉄で担当してきた前田真実さん(28)は説明する。 「一緒にぜひ、やりませんか」。コラボ電車の企画は、阪急電鉄側からキャラの権利を持つ会社に持ちかけたり、逆に提案を受けたりして実現しているという。 大切にしているのは、阪急電車の伝統の車体色である「マルーン」にあうか。そして、通勤、通学で乗る人が多い中で「ほっこりして、癒やされるか」といった点から、キャラを選んでいるという。 大きな特徴は、阪急電車とコ… この記事は有料記事です。残り1789文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
話題の高専、旅する学校…なぜ志望?何を学ぶ?在校生が語る学校生活
話題の高専、旅する学校、80カ国から生徒が集うインターナショナルスクール――。「とがった」進学先を選んだ高校生らが集い、小中学生や保護者と話し合うイベントが今月、探究の専門塾「探究学舎」(東京都三鷹市)で開かれた。なぜ志望し、何を学んでいるのか。参加した3人に聞いた。(中村瞬) 神山まるごと高専 鈴木結衣さん(16) 神山まるごと高専は全寮制で、コンビニは徒歩30分の距離に1軒あるだけ。出身地のさいたま市と全く違う環境ですが、のどかで町民との関わりも深く、毎日楽しく過ごしています。 小さい頃から、父の書斎にあったビジネス書に興味があり、物心ついた頃には「起業したい」という思いを漠然と持っていました。 小中学校は地元の公立です。自分で言うのも変ですが、中学時代は優等生タイプで、偏差値の高い高校に行き、いい大学に行くことが、いい選択と思っていました。中3の夏、母から「起業を学べる学校があるよ」と聞いて、高専の存在を知りました。 募集要項を見ると、求める生徒は「正解のない問いに対して、独自の解を出せる人」や「モノづくりに興味や関心がある人」など。受験を決めてからは、まず自己分析に取り組みました。 世界各地を旅しながら学ぶ学校、世界中から生徒が集う軽井沢のインターナショナルスクール……。記事の後半では、各校に通う生徒に、志望動機や学校生活などについて話してもらいました。 今までどんなことを考え、ど… この記事は有料記事です。残り2614文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
顧問が未経験者ばかり→地元大が学生派遣 部活の「地域移行」で実証
少子化への対応や教員の働き方改革のため、国が進める公立中学校の部活動の「地域移行」。今年度から本格的な取り組みが始まり、九州・山口でも様々な検討や実証が手探りで進んでいる。現場を訪ねた。 8月初旬、北九州市の市立穴生(あのお)中学校の体育館で、卓球部の生徒たちがラリーの練習をしていた。 「手が流れようよ、前で止めな」「ナイスボール!」。生徒たちに声を掛けて回るのは、市内にある九州共立大の3年生、原田こころさん(21)。7月から部の練習に参加し、主に女子部員8人の指導を担う。 原田さんは、市教育委員会が今年6月から同大と連携して始めた地域移行の実証事業で、穴生中に派遣された。中・高時代ともに卓球部に所属。いまは中学の体育教員をめざし、教職課程を履修している。一方、穴生中は顧問の教員が3人いるが、いずれも卓球は未経験だ。もともとは競技に詳しい顧問がいたが、今春、他校へ異動してしまい、十分な技術的な指導ができずに困っていたという。 原田さんは「教育実習を前に… この記事は有料記事です。残り1848文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル