遠藤和希2023年4月10日 20時30分 長野市の善光寺から盗まれた木像「びんずる尊者像」が10日正午過ぎ、本堂にある元の台座に戻された。寺は、像の再安置にあたって防犯体制を強化。無事に戻った木像を前に僧侶たちによる法要も開かれ、集まった参拝者は親しまれてきた尊者像に次々と手を伸ばし、帰還を喜んでいた。 5日午前8時過ぎに本堂から盗まれた尊者像は、長野県松本市内で約3時間後、窃盗の疑いで緊急逮捕された容疑者の車から見つかった。 県警は6日に木像を寺に返していたが、寺は警備体制を再検討。台座周辺の防犯カメラを増やし、本堂の職員らの人員配置を見直した。また像が動かされた際の重さの変化を検知するセンサーの導入を検討する。報道陣の取材に林明晋・寺務総長は「僧侶としては人を疑うことはいかがなものかということもあるが、(尊者像を)守るためにご容赦頂きたい」と話した。 300年以上前に造られた尊者像は、具合が悪い体の部分と同じ所をなでると病気が治るとされる。この日、本堂に戻った尊者像の頭をなでていた市内の手塚明男さん(86)は「お帰りなさいと言いたい。何回もお参りに来ていたので、戻ってきてくれて本当によかった」と話した。(遠藤和希) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
袴田さん弁護団、検察の立証方針保留は「誠に心外」 出廷も焦点に
1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判に向けた検察側、弁護側、裁判所による第1回の三者協議が10日、静岡地裁で開かれた。検察側は有罪を主張するか否かの方針を決めるのに「7月10日まで3カ月必要」という考えを示した。弁護団が明らかにした。 弁護団によると、検察側の意向を地裁は了承したという。検察内には、証拠捏造(ねつぞう)の可能性にまで言及して再審を認めた東京高裁決定をそのまま受け入れられないとの考えもあり、検討に時間をかけるとみられる。 「一刻も早く死刑囚の地位から解放を」 一方、弁護団はこの日提出した意見書で、「一刻も早い無罪判決を得て死刑囚の地位から解放させる」ことが再審公判の目的だとして、検察に有罪立証しないよう求めた。審理は1日で終えるよう要請し、検察には無罪論告と謝罪も求めた。 検察が立証方針を保留したことで、公判開始の見通しが立たない状態がしばらく続く。西嶋勝彦弁護団長は三者協議後の会見で「誠に心外。有罪立証はとてもできない」と批判した。 再審開始には「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」が必要と定められており、再審開始が確定した時点で袴田さんの無罪はほぼ確実になっている。それでもなお検察が公判で有罪主張を維持するかが焦点になる。 弁護団は、再審公判での袴田さんの出廷を免除するようにも地裁に求めた。 通常の刑事裁判の一審では、被告が出廷しないと原則開廷できない。被告は起訴内容への認否を述べた上で検察側の冒頭陳述を聞き、質問を受ける。精神障害によって善悪の判断や意思決定ができない「心神喪失」状態の場合は、こうしたやり取りが難しいため、公判停止などの措置がとられる。 袴田さん、「心神喪失」と言えるか 一方、再審公判について刑事訴訟法は、「死亡者や回復の見込みがない心神喪失者」の公判は被告が出廷しなくても審理でき、停止する必要はないと定める。 袴田さんは47年超の拘禁生… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪マスコットぬいぐるみ、審査基準を緩和 検察側が公判で指摘
東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、大会マスコットのぬいぐるみの製造・販売をめぐって大会組織委員会の元理事に賄賂を渡したとして、贈賄罪に問われた「サン・アロー」前社長の関口太嗣(たいじ、50)、父親で元社長の芳弘(75)の両被告の初公判が10日、東京地裁であった。2人は「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は、元理事の指示を受けた組織委側が、審査基準を甘くするなど、様々な便宜を図ったと指摘した。 大会の公式ライセンス商品は、組織委が業者とライセンス契約を結んだ上で、商品ごとに製造・販売を承認する仕組みだった。手続きは、組織委マーケティング局の下で、広告最大手「電通」が運営する事務局が担当。事件では、電通OBで組織委理事だった高橋治之被告(79)が受託収賄罪で起訴された。 検察側の冒頭陳述によると、サン・アローは1998年開催の長野五輪で、高橋元理事の口利きにより、大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した。太嗣前社長、芳弘元社長は東京大会でも契約締結の後押しを求め、2015年以降に繰り返し依頼したという。 「キャラクターのデザインに合わない」と変更迫られ… 高橋元理事は17年、電通か… この記事は有料記事です。残り553文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
踏切付近で人身事故、女児搬送か 福岡、西鉄は一時運転見合わせ
2023年4月10日 19時19分 10日午後5時ごろ、福岡県小郡市津古の西鉄天神大牟田線の踏切内で、女性が電車にはねられた。病院に運ばれたが、約1時間15分後に死亡が確認された。 県警小郡署によると、亡くなったのは小郡市在住の中学1年の女子生徒(12)。署が事故の原因を調べている。 現場は、津古―三国が丘駅間の踏切。西鉄によると、接触したのは大善寺発西鉄福岡(天神)行きの上り普通電車で、乗客約60人にけがはなかった。筑紫―西鉄小郡間で運転を見合わせたが、約1時間半後の午後6時25分に運転を再開した。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「一家4人全員死亡の結果は重大」 被告に禁錮3年判決 福島の事故
今年1月に福島県郡山市の市道交差点で一家4人が死亡した事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)に問われた福島市泉の会社員高橋俊被告(25)に対し、地裁郡山支部は10日、禁錮3年(求刑禁錮3年6カ月)の判決を言い渡した。車を運転する際の基本的な注意義務を怠ったことによる4人死亡という悲惨な結果の重大性を鑑み、被告に実刑を科した。 判決によると、高橋被告は1月2日午後8時10分ごろ、郡山市大平町の市道を時速約60キロで乗用車で走行中、交差点で軽乗用車と出合い頭に衝突し、軽乗用車を横転させ、炎上させた。事故により、軽乗用車に乗っていた近くの会社員橋本貢さん(当時41)、妻の美和さん(同39)、長男の啓吾さん(同20)、長女の華奈さん(同16)が死亡した。 小野寺健太裁判官は量刑理由で、まず考慮すべきこととして被害者の一家4人全員が死亡した結果の重大性を挙げた。「家族でむつまじく過ごしていたのに、事故で突然激しい炎にまかれて命を落とすことになった。この結果は、過失運転致死の事案の中でも際だって重い」と指摘した。 裁判では、佐藤被告が助手席に置いたスマホを気にしながら、初めて通る道路で漫然と車を運転していたことが明らかになった。被告は事故直前まで一本道だと思い込み、交差点だと気づくのが遅れたことが、事故を招いた。 ただ、事故現場の周辺には街灯が一つしかなく暗かったうえ、交差点に警戒標識や一時停止の標識が設置されておらず、停止線も消えかかっていた。小野寺裁判官は判決で、被告が交差点を見落としやすい状況だったことは否定できないと言及。「過失の程度は重大であったとまでは言えない」とした。 一方で、道路の形状については、事故現場の約80メートル手前の位置から確認できたとして、「被告の過失の程度は小さくなく、結果の重大性も考慮すれば、執行猶予を付けることは相当ではない」と結論づけた。 スーツ姿の高橋被告は立った… この記事は有料記事です。残り402文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
黒部峡谷をパノラマで、かつてのダム工事現場も 展望ツアー販売開始
竹田和博2023年4月10日 15時24分 関西電力黒部ルートの作業用トンネルや、高低差200メートルの竪坑(たてこう)エレベーターなどを日帰りで見て回る「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」の販売が始まった。ツアーは6月16日から。黒部峡谷の自然や普段入れない関電の施設、雪の残る北アルプスの山々が広がる光景を満喫できる。 黒部峡谷鉄道(富山県黒部市)のトロッコ電車で宇奈月駅から欅平駅に移動し、工事専用の凸型機関車で竪坑エレベーターへ。エレベーターから、黒部ダムに通じる上部トンネルと約370メートルの登山道を経て、パノラマ展望台に向かう。晴れれば、青空をバックに北アルプスの山並みを望むことができる。 ツアーは11月13日までの金~月曜に1日3便運行。所要時間は約6時間。料金は大人7千円、小学生5千円(4年生以下参加不可)。2日前までに専用サイト(http://kurobe-panorama.jp/)か、黒部・宇奈月温泉観光局に電話(0765・57・2850)で申し込む。第3便については、トロッコ電車(午前11時27分宇奈月駅発)に空きがあれば当日午前9時まで受け付ける。(竹田和博) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
警視庁、捜査員約50人をカンボジアに派遣 男19人逮捕へ
2023年4月10日 15時56分 カンボジアを拠点として日本国内に特殊詐欺の電話をかけていた疑いがある25~55歳の日本人の男19人について、警視庁は10日、カンボジア当局から身柄を引き受けるため捜査員約50人を現地に派遣した。11日にも日本に移送し、逮捕する方針。 19人は同国南部の港湾都市・シアヌークビルにあるホテルを拠点に詐欺の電話をかけていたとみられ、1月下旬、日本大使館から情報提供を受けた現地当局によってこのホテルで身柄を確保されていた。 警視庁は、現場から回収されたスマートフォンや詐欺の被害者の連絡先や名前が書かれたメモ、詐欺のマニュアルなどを入手。19人が少なくとも数十件の特殊詐欺事件に関わった可能性があるとみている。 警視庁は被害者への聴取などを踏まえ、今年1月24日に東京都内に住む60代女性が「有料サイトの未払いの料金がある」とだまされて電子マネー約25万円分を詐取された事件で19人の逮捕状を今月6日に取得。11日に全員の引き渡しを受け、同庁が手配した航空機で日本へ移送する際に機内で逮捕する予定という。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「俺の気持ちなんかわからへん」 子どもに見抜かれた「上から目線」
重たい気持ちで自転車をこぎ、3日ぶりに小学校の正門をくぐった。発熱で2日間欠勤してしまった5月半ばの、休み明けのことだった。 久保敬は体がこわばるほどの緊張を感じながら、5年2組の教室の入り口に立ち、引き戸を開けた。 「なにしに来てん」 「帰れ!」 子どもたちからこんな言葉が飛んでくるのではと身構えていた。 しかし、入り口近くに座る男の子と目が合うと、彼はこう言った。 「先生、熱下がったんか。よかったな」 4月、シャツの胸ぐらをつかんだ久保を、にらみつけた子だった。 初めて一人ひとりの表情をしっかりと見た 予想もしないその言葉に久保… この記事は有料記事です。残り1784文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
私立大、人気は都市部や理系、総合型 2023年度入試を振り返る
2023年度大学入試が終わった。私立大入試では、18歳人口の減少などに伴う競争の緩和や、都市部の有名大学とそれ以外の大学との二極化が、予備校関係者らから指摘される。理系人気、総合型や学校推薦型へのシフトといった特徴は、今回入試でもみえた。(上野創) 大手予備校の河合塾によると、私立大の志願者数は全体で前年比97%。18歳人口の減少と同程度だが、大学の定員は増えており、全体としては競争が緩和された「入りやすい状態」だったという。 ただ、首都圏や近畿の都市部の大学に志願が集中し、地方はかなり厳しかった。学力面も含めて「二極化」が指摘される。 河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員は「首都圏の名の知れた私立大への志願は、一般選抜で前年比98~100%。18歳人口の減少分を考えれば堅調。地方から首都圏への移動を控える傾向が前回も少しあったが、今回の入試ではほぼ元に戻った」と話す。 一般選抜のうち、大学の個別学力試験を受ける「一般方式」の志願者が減った半面、大学入学共通テストを利用する方式は前年並みだった。前回は共通テストが例年より難しかった影響で、受験生が共通テスト利用方式を避けた結果、一般方式の志願者が増える結果となったが、今回は極端な難化などの波乱がなかったからという。 難関大では上智大が新たに3… この記事は有料記事です。残り2466文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「子どもをもたない幸せ」も感じられてこそ 少子化、専門家の提言
少子化問題を研究する柴田悠・京都大学教授(社会学)は、「日本を救うには2025年がタイムリミット」と対策の緊急性を訴えています。3月末に政府が公表した「異次元の少子化対策」の試案にも、有識者として提言した児童手当拡充や学費軽減、保育の定員拡大などが盛り込まれました。 一方で、「子どもをもたない人が幸せを感じる社会こそが、結果的に子どもを産み育てやすい社会になる」とも展望します。詳しく聞きました。 ――「少子化対策は2025年ごろまでがタイムリミット」と政府に訴えています。政府の試案でも30年代に入るまでを少子化が反転できる「ラストチャンス」としています。なぜでしょうか。 政府の統計により、25年ごろから20代の人口が急激に減ると見込まれています。 21年の日本の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと見込まれる子どもの数)は1・3でしたから、このまま低い状態が続けば、生まれてくる赤ちゃんの数も当然、急減します。 そうなる前に結婚・育児がしやすい環境を整えなければ、若い人が減り、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は4割近くになります。 働く人が減るので税収は減り、国の財政が悪化します。ロボット化が難しい医療・介護などで人手不足が深刻となり、社会が持続可能でなくなってしまいます。 希望出生率1.8 実現のためには ――どんな社会になるのでしょうか? 国の財政が行き詰まれば、道… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル