福島県沖で漁獲されたスズキから、国の出荷基準(1キロあたり100ベクレル)は下回るものの、より厳しい県漁連の出荷基準(同50ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された。近年は県沖のほぼ全魚種で、県漁連の基準も十分に下回っていた。専門家は、このスズキが川魚を食べていた可能性を指摘。基準超えは「レアケースだろう」とみる。 スズキはクセのない白身で塩焼きや煮付け、刺し身として食されてきた。同県いわき市の沖合約9キロ、水深75メートル付近で7日にとれたスズキを検査したところ、1キロあたり85・5ベクレルの放射性セシウムが検出された。県漁連が「安心安全な魚を提供したい」と定めた国よりも厳しい基準を超え、県漁連は水揚げしたスズキを全て回収。いまも出荷を自粛している。スズキに対する国の出荷制限は2018年4月に解除され、その後、県漁連の基準を上回ることもなかった。 県沖の水産物は原発事故後、最大44魚種に国の出荷制限が出たが、魚の放射性セシウム濃度は年々下がり、20年2月にはいったん全て解除された。現在は、昨年1月に1373ベクレルが検出されたクロソイのみ国の出荷制限がかかっている。 このクロソイについては、国の水産研究・教育機構が福島第一原発の港湾から出てきた可能性が高いと分析。東京電力は昨年2月以降、既設の港湾出口の網に加え、さらに網の数を増やすなど対策を強化した。今回のスズキも、「原発の港湾内から出てきたのでは」(いわき市の60代男性漁師)とみる向きもある。 だが、福島大の和田敏裕准教… この記事は有料記事です。残り402文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「何度投げられても立ち上がる」性暴力告発の五ノ井里奈さんが歩む道
元陸上自衛官で、訓練中などに同僚から受けた性暴力を告発した五ノ井里奈さん(23)が、横浜市青葉区の小見川道場で柔道指導者としての道を歩んでいる。実名で告発し、ネットで誹謗(ひぼう)中傷を受けながら、闘いを進めてきた五ノ井さんの強さとは――。 道場で5日に開かれた初心者の女性向けの体験会には、10~70代の女性31人が参加。五ノ井さんは「今日は私をたくさん投げてストレスを発散して、元気になって帰ってください」とあいさつした。 柔道の技の動きを採り入れたエクササイズに続いて、大外刈りや背負い投げを教えた。五ノ井さんが「皆さん、上手です」と口にするたび、参加者は拍手で互いをたたえた。 「人が怖くて家から出られない」 実は、開催するか前日まで悩んでいた。1月末、性暴力の加害者らと国に対して損害賠償を求めて提訴。ネットでの誹謗中傷が、さらに勢いを増した。「人が怖くて家から出られない」と、体験会の中止も考えていた。 最終的に背中を押したのは、道場の代表で総合格闘家としても活躍する小見川道大さん(47)だった。「だって悔しいじゃないですか。中止したら、顔も見せずに中傷しているヤツらの思うつぼですから」 昨年6月、五ノ井さんが陸自を退職して被害を告発することを決めた時、「道場で働かせてもらえないか」と相談したのが小見川さんだった。宮城県の実家にいた五ノ井さんをすぐに呼んで面接した。「とにかく柔道が好きでたまらないことが伝わってきた」。その場で採用を決めた。 体験会に参加した法律事務所勤務の千葉県の女性(49)は、五ノ井さんと直接会い、「こんな若い人を闘わせてしまったのか」と胸が痛んだという。 自身もメーカーに勤めていた若い頃、宴会で一発芸を求められたり、飲み会の二次会に自分だけが残されて取引先の男性とふたりきりにさせられたり、さまざまなセクハラを経験した。「笑っていなすしかなかった。でも私たちの世代がそうしたせいでいまも若い人を苦しめてしまった」 ただ、楽しそうに柔道を指導する五ノ井さんの姿を見て、「裁判など闘いは続くかもしれないけど、人生はそれだけじゃない。切り離してこれからの人生も楽しんでほしい」と話した。 柔道から学んだことは この日、参加者の技を受けて100回以上畳にたたきつけられた五ノ井さんは、締めくくりにこう語った。「私は、何度投げられても立ち上がること、相手に向かっていくことの大切さを柔道から学んだ。だから落ち込んでも、たたかれても、また立ち上がる」 五ノ井さんは8月にある全日本実業柔道個人選手権大会への出場を予定している。就学前から柔道を始め、中高生時代に全国大会に出場。自衛隊体育学校への入学をめざして陸自に入隊したが、志半ばでその道を絶たれた。「戦う姿をもう一度見てほしい」と出場を決めたという。(伊木緑) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
昭和の基準、やったもん勝ち、人手不足 偽装フリーランスを生む背景
会社の指揮命令を受けて「社員」のように働いているのに、契約上の立場は「フリーランス(個人事業主)」で、労働者としての保護を受けられない――。こうした「偽装フリーランス」の働き方が、新たな社会問題として広がっています。その背景に何があるのでしょうか。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の呉学殊(オウハクスウ)・統括研究員(60)に聞きました。 ――フリーランスの働き方について実態調査をされています。 2020年9~12月に、業務委託契約を結んでフリーランスとして働く14職種の33人にヒアリングをしました。ウーバーイーツなどのフードデリバリーの配達員や、学習塾の講師、俳優やスタントマンら芸能従事者、インストラクター、コンサルタントといった人たちです。 フリーランスとひとくくりに言っても、その実態は多様でした。社員と働き方がほとんど変わらず、「偽装フリーランス」にあたるとみられる人もいました。 ――偽装フリーランスと疑われる事例はどの程度あったのでしょうか。 実際にその働き手が「労働者」かどうかを判断するのは行政や司法の役割です。そこは慎重な態度が必要ですが、33人のうち5人ほどが該当したと考えています。 私自身がもっとも労働者性が高いと感じたのは、漫画家のアシスタントをしていた人のケースでした。 なぜ偽装フリーランスが生まれるのでしょう。識者はその背景に、「企業のメリット」と「労働基準監督署の苦境」、さらに「時代遅れの基準」があると指摘します。 業務委託なら、月10万円不要 この方は、漫画家がいる仕事… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
偽エアバッグ、パキスタン人ら40カ国で2億8千万円売り上げか
大山稜2023年2月16日 12時25分 大手自動車メーカーのエアバッグの偽物を米国に輸出しようとしたとして、警視庁は16日、パキスタン国籍の中古車販売業者の男(36)ら4人を関税法違反の疑いで再逮捕し、発表した。同庁は、4人が米国など約40カ国に偽のエアバッグを輸出し、約2億8千万円を売り上げたとみている。 生活経済課によると、4人は昨年11月ごろ、自動車大手「ホンダ」「スバル」のエンブレムをまねた偽のエアバッグユニット12個を、成田空港(千葉県)から米国の個人宛てに輸出しようとした疑いがある。同課は4人の認否を明らかにしていない。 昨年5月に経済安全保障推進法が公布され、輸出の取り締まりを強化していた東京税関の検査員が成田空港で偽のエアバッグを見つけて事件が発覚した。商標権などの知的財産を侵害した商品の輸出行為が摘発されるのは全国で初めてという。 4人は今年1月に偽造エアバッグを販売目的で所持した疑いなどで逮捕されていた。同課は、4人が2020年6月~22年11月にトヨタ、日産など国内メーカー8社の偽造エアバッグや関連部品計約8200個を米国の通販サイト「eBay」などを使って輸出販売し、約2億8千万円を売り上げたとみている。(大山稜) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
低年齢化する英語授業、都内24区市で小1から 効果は「環境次第」
小学校でも英語を学ぶようになって10年あまり。現在は3年生から「外国語活動」として学ぶことになっているが、実際はさらに早い段階から採り入れている学校も多い。朝日新聞が東京都内の49区市に聞いたところ、約半数で1年生から英語を学んでいることがわかった。 専門家は、「英語を早くから学びさえすれば効果がでるわけではない」と指摘する。早期の英語教育にどう向き合えば良いのか。 港区では週2回、品川区では「英語科」設置 調査によると、1年生から一律に英語授業や英語に親しむ活動をしていたのは24区市。授業数は年4回程度から週2回まで幅があり、内容も様々だった。 時間数が最も多かったのは、港区の週2回。外国人講師を各校に置き、区独自のデジタル教科書を使う。週1回の品川区も独自に「英語科」を設置。授業では基本的に、英語のみ話す。中央区と荒川区も週1回程度の授業があった。 自治体ごとの授業時間数は末尾に掲載しています。 2020年度に全面実施された学習指導要領では、3、4年生は「外国語活動」、5、6年生は教科としての「外国語」を学ぶ。 英語は早くから学べば、効果が出るのか。 日本社会と英語の関係を研究する関西学院大の寺沢拓敬(たくのり)准教授によると、多くの実証研究の結果、早く始めるだけでは効果がないことはほぼ通説だという。早期教育のさまざまな意義は否定しないとした上で、「授業時間や動機付け、教員養成など他の要因のほうがより重要だ」と話す。 寺沢准教授は、英語をめぐる… この記事は有料記事です。残り1358文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
描いた迷路は3千点 小5の作品、プロの迷路絵本作家が解いてみた
大阪市に住む小学5年生の増田晃(ひかり)さん(11)が夢中になるもの。それは人気のユーチューバーの動画でも、漫画やアニメでもない。 「これです」 手渡された紙を見ると、ネコやケーキの絵の内側にスタートとゴールがついた自作の「迷路」だった。 「これはけっこう簡単。これは少し難しいかな」 大人でも解くのに苦労する入り組んだ迷路を、軽々と解いてみせる晃さんは得意げだ。 普段は自他ともに認める「人見知り」。久しぶりに会った祖父母と話すときも、両親の暁(あきら)さん(48)と純子さん(49)のそばに隠れ、照れながら話す。 ただ、話題が迷路になると事情は違う。 「このポイントを通らないと進めないよ」 紙の中の小さな世界に広がる工夫や仕掛けについて話す晃さんは、普段とは違う「おしゃべりさん」に変身する。 3歳から迷路のとりこに 晃さんは、古い民家や工場の隙間を網の目のような細い道が走る大阪の下町・西淀川区に生まれた。「ベビーカーに乗って迷路のような町の探検を楽しんでいた」と純子さんは振り返る。 図書館で偶然出会った迷路絵本のとりこになったのは、3歳のころ。 毎週たくさんの迷路絵本を借りては解いた。解く迷路がなくなると、両親に「迷路描いて!」とおねだり。簡単な迷路を描くと、「もっと書いて」とお願いされ、両親は「ネタ切れ」に困ってしまったという。 半年も経つと、解くだけでは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小1男児の手足を養生テープで縛る 児童クラブ職員「注意従わず」
上嶋紀雄2023年2月16日 9時24分 相模原市は15日、中央区の市立児童クラブ(学童保育)に勤務する会計年度任用職員の女性(47)が、小学1年の男児を養生テープで縛る事案があったと発表した。男児にけがはなかったという。 市によると、10日午後、部屋の一角で女性が男児を縛っていたところをほかの職員が発見。男児は後ろ手にした手首とひざ上、足首を縛られ、横たわって泣いていたという。部屋にはほかの児童や職員もいた。テープは事務作業などで使うため部屋にあったという。 女性は2016年から勤めていて、トラブルはなかったという。女性は縛ったことに「(男児が)注意に従わなかった」と説明。市は「処分などについて適正に対処する」としている。 市は女性とともに男児の保護者に謝罪。保護者は相模原署に通報し、署から市に「事件化する」と連絡があったという。(上嶋紀雄) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広域強盗、端末解析に壁 ロシア開発「テレグラム」の成り立ちに起因
各地で相次いだ強盗事件や60億円の被害がある特殊詐欺事件に絡み、フィリピンから送還された4人が同国収容中に使っていたとされる携帯電話やタブレット端末の解析を警視庁が進めている。ただ、フィリピン側から引き受けた約15台の中には、データがほとんどない端末もあったという。事件は匿名性の高い通信アプリで指示や報告が行われていた疑いがあり、残る端末の解析が焦点となっている。 フィリピンを拠点とした特殊詐欺や一連の強盗事件では、指示役と実行役とのやりとりが通信アプリ「テレグラム」を使って行われていたとみられている。言論弾圧を避ける目的で高い匿名性が確保されたアプリの特徴が、犯罪に悪用される形となっていた。 テレグラムの公式ページなどによると、テレグラムはロシアの実業家によって2013年にサービスが始まった。「LINE」のようにメッセージや画像などを送受信でき、世界中に7億人を超える利用者がいるとされる。ダウンロードして携帯電話番号を登録すれば誰でも無料で使うことができる。 テレグラムの秘匿性の高さについて、サイバーセキュリティーに詳しい慶応大学SFC研究所の小宮山功一朗・上席所員(44)は、「アプリが生まれた背景に起因している」と語る。 ロシア当局からの圧力 小宮山さんによると、創業者… この記事は有料記事です。残り1360文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「入札を有名無実化し…」電通幹部出席の会議資料に明記 五輪談合
東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、大会組織委員会による発注が始まる2年前の2016年、広告最大手「電通」の社内会議で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記した資料が共有されていたことが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部はこの資料を入手しており、こうした考えが、電通が談合を主導した背景にあったとみて調べている。 電通広報部は「回答は控える」とした。 事件では、組織委大会運営局の元次長・森泰夫容疑者(55)と電通スポーツ局の元局長補・逸見(へんみ)晃治容疑者(55)らが、組織委が18年5月以降に発注した各競技のテスト大会や本大会の運営業務について、会場ごとの受注予定業者を事前に決めたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕された。契約金は400億円規模だった。 関係者によると、電通から組織委に出向中の幹部職員が16年、大会運営業務の発注見通しなどについて情報共有する会議の開催を、電通本体の五輪担当者らに呼びかけた。この幹部職員が作成し、電通社内の会議で示したプレゼン資料には、発注形式が入札になる想定で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記されていた。会議には逸見元局長補を含む幹部らが出席したという。 電通への報酬、50億円の削減要求で… 一方、17年になると、電通… この記事は有料記事です。残り624文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
誤解だらけの英語教育 「グローバル化への対応」で低年齢化、でも…
「グローバル化時代に英語は必須」「英語は早くから学ぶべきだ」。こんな主張、よく耳にしませんか。日本社会と英語の関係を研究する関西学院大の寺沢拓敬准教授は、こうした英語をめぐる言説の多くは誤解だとし、それが英語教育に影響を与えてきたと指摘します。 なぜ英語には誤解があふれているのか。寺沢准教授に聞きました。 早く学べば英語が身につく? ――英語は早くから学ぶべき、ではないのですか。 英語の習得は、早くから学び始めたほうが生物学的に良いという考え方は、日本だけでなく、海外でも広がっています。ただ、この考えを裏付ける実証研究はありません。いわば「国際的な共同幻想」です。単に学習開始年齢を早めただけでは効果は望めません。 ――早くから学ぶ必要はないのですか。 早くから学び始めることで学… この記事は有料記事です。残り1716文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル