京都市中心部の河原町通。路地を入ったところにある町家の軒先に、お座りをした小麦色の雑種犬の写真が飾られている。 「サンの店 SAN Cafe」 佐藤研二さん(70)が11年前、自宅の一角に開いた喫茶店だ。 サンは開店の直前、ここへやってきて、店の人気者になった。 正式な店名は別にあったのに、常連客たちはいつのまにか「サンの店」と呼ぶようになった。 鴨川沿いや京都御苑を通り、サンと散歩するのが佐藤さんの日課だった。サンに愛想はないのに、なぜか人や犬が寄ってくる。マイペースな性格で、他の犬にほえられても動じない。 「出会う前も、かわいがられていたんだろうな」と、佐藤さんは思う。 サンがこの世を去ってから、まもなく3年。 元の飼い主はだれだったのか。 探し出して、伝えたい。「サンは京都で楽しく生きたよ」夢中で逃げたら、ひとりぼっち 佐藤さんは昨年2月、サンが主人公の絵本をつくり、自費出版した。 物語は次のように始まる。 東北に、春の雪がふったある日、とつぜん、じめんがゴォーという音をたててゆれた。ぼくは、むちゅうでにげて、にげて、気がついたら知らない場所でひとりぼっち。ぼくは「まいご」になっていた――。 2011年3月11日の東日本大震災。 被災地で飼い主とはぐれたペ…この記事は有料会員記事です。残り1340文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル
2 ans Il y a