有料記事 黒田早織、森直由2022年12月12日 12時00分 集団生活を送る男女が不審な死を遂げた「尼崎連続変死事件」が表面化して10年が過ぎた。死者が8人に上る異様さに加えて当時クローズアップされたのが、警察の相談対応の不備だった。虐待やSNSでの脅迫など犯罪の態様が変わりゆく中で、警察はあの教訓をどういかしてきたか。 「事件はもう風化した」 尼崎市南東部の住宅街。現場となったマンションは今も変わらず残り、周辺の景色も当時のままだ。 「10年前は事件の話で持ちきりだったけど、近所で話題にのぼることはなくなった。すでに風化している」。近くで事業所を営む男性(56)は言う。 男性は、のちに留置場で自殺した角田美代子元被告(当時64)や関係者の顔を事件前から覚えていた。車から多くの人が降りて、様々な人がマンションに出入りする様子を不審に思っていたという。 12月12日、元被告の死亡から丸10年 2011年11月、尼崎市の貸倉庫でドラム缶詰めの女性の遺体が見つかった。翌12年以降、民家の床下や海中などでも男女の遺体が次々と発見。死体遺棄などの罪に問われた角田美代子元被告(当時64)の周辺で、計8人の死亡が確認された。元被告は25年以上にわたり、血縁関係のない男女を多数集めて疑似家族のように共同生活し、暴力や脅しで財産を奪うなどしたとされる。 事件の兆候は見えていた。県警は、元被告に巻き込まれた人の家族や知人から何度も相談・通報を受けていた。 不手際認めた県警 たとえば1999年に死亡し… この記事は有料記事です。残り1101文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
街に溶け込み15年 満員電車でスリ被害に遭いかけた捜査員の自戒
11月下旬、福岡市の繁華街・天神はきらびやかな飾りで彩られていた。平日の昼間。ニットにジーンズ姿の男性が人混みをかき分けてスーパーに入り、買い物カゴを手に総菜や鮮魚コーナーを眺めていた。 実は、男性は福岡県警捜査3課の倉崎直紀警部補(50)。本当に探しているのはスリ犯だ。 県内では今年、11月までに220件以上のスリや寝込んだ人を狙った盗みの被害があった。クリスマスや年末年始に向けてにぎわうこの時期は、1年の中でもスリが多い。懐を温かくして年を越したい犯人の思惑を阻止すべく、街に溶け込み、捜査をしているのだ。 倉崎さんはスリ犯を追い続けて約15年。この4月、県内外の後輩らに技術と経験を伝える警察庁の「広域技能指導官」に指定された。スリ捜査では全国で4人目だ。 高校卒業後、警察官になった。北九州市の署にいるとき、窃盗犯の捜査に応援で入った。マンションに忍び込んで盗みをする瞬間を確認するため、近くのプレハブ小屋の窓を数センチ開け、ベランダを見張った。 夜から朝まで3日間張り込ん… この記事は有料記事です。残り953文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
消防士の服ダメでポンプ車はOK?自治体クラファン、明暗分けたのは
ふるさと納税の仕組みを使ったガバメントクラウドファンディング(GCF)で寄付を募る自治体が増えている。大阪府内では今年、消防士の服の購入に寄付を募った堺市がSNSで批判され、八尾市ではポンプ車などの購入に充てる寄付が目標額の2倍以上も集まった。同じ消防行政に対する寄付なのに、どうして差が出たのだろうか。 堺市が10月3日に始めたGCFの使い道は、新人消防士の服などの購入費用。目標額は100万円で、12月末まで募集している。 開始3日後の10月6日、永藤英機・堺市長はツイッターでこうつぶやいた。 「堺市消防局では新人消防士の育成のためのクラウドファンディングも実施中。毎年収支不足が見込まれる厳しい財政状況の中、知恵を絞って取組を実施しています。応援お願いします」(以下、ツイート文は原文ママ) この市長のツイートが、多くの意見を呼び込むことになった。 「赤字でも大事なことはやれ」 「消防や警察、医療など、市民の安全、命に直結するものは税金で充分な予算を組むのが当たり前」 一方で、趣旨に賛同した寄付も集まりつつある。 寄付には、傘や包丁などの地場産品の返礼品や消防士になりきって消防車に乗れる特典ツアーを用意した。12月8日現在、57万5千円が集まった。 財政問題とは関係ないという なぜ新人消防士の服を寄付で買おうとしたのか。 堺市がなぜ寄付を募り、八尾市にはなぜ寄付が集まったのか。記事後半では「成功」をたぐり寄せるコツを専門家に聞きました。 堺市と近隣市をカバーする堺… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
オンライン会議「顔出し」はすべき? 企業研修の講師が考えるマナー
コロナ禍で、オンライン会議が増えました。遠方の多人数とコミュニケーションがとれる便利さがある一方、新たな「オンラインマナー」を気にする声もあがります。やりとりをスムーズに進めるための、「オンラインマナー」を取材しました。(石田貴子) 画面に上座がある?退出は上司の後? 「オンライン会議で上座、下座は設定できる?」。東海地方の地方公務員の女性(27)は、上司からの問い合わせに驚いた。2年ほど前のことだ。 「それは本当に必要ですか?と。結局、できないと答えました」。その後も、オンライン会議のたびに、「上司が会議画面から退出するまで、ほかの参加者は退出しないのはなぜだろう」と疑問に思っている。自分自身も、様子を見て、皆が抜け始めてから退出しているのだけれど。 コロナ禍で在宅勤務などの新… この記事は有料記事です。残り1022文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 #ニュース4U 「#N4U」取材班が読者の皆さんから身近な疑問や困りごとを募集し、SNSで情報交換しながら深掘り取材します。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
チョウのサナギで作ったクリスマスツリー 金、銀、緑の光沢が彩る
津布楽洋一2022年12月11日 9時00分 【動画】チョウのサナギを飾った「黄金のクリスマスツリー」=津布楽洋一撮影 金色に輝くチョウのサナギをクリスマスツリーの飾りに使った「黄金のサナギツリー」の展示が、栃木県真岡市の井頭公園「花ちょう遊館」で始まった。25日まで。 サナギツリーは、様々な気候帯に生息する植物やチョウなどを展示している花ちょう遊館の冬の恒例行事だ。外の気温はひとけたに下がっても、館内の温度はチョウが活動しやすい23~24度に保たれている。 沖縄の県のチョウ・オオゴマダラや、ツマムラサキマダラ、リュウキュウアサギマダラなどが飛びまわり、それぞれの金色、銀色、緑色のサナギ計100個以上が、高さ約2メートルのモミの木のツリーに生きた状態で取り付けられている。 サナギには人工の着色などは施していない。自然の色のままだ。館によると、オオゴマダラの金色は「警告色」で、鳥に食べられないようにする効果がある。 ツマムラサキマダラの銀色は「鏡面光沢」で、周りの風景に溶け込んで存在を分かりにくくし、敵の目を欺いている。 クリスマスの時期には羽化 サナギはクリスマスの時期に羽化する見込みで、訪れる時期によってはチョウになる姿が見られるという。 担当する主任専門員の西舘良平さんは「きれいな光沢をしているサナギをぜひ見ていただきたい」と話している。 入館料は大人440円など。火曜日休館。(津布楽洋一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
食材は「命をいただくもの」 アイルランド留学で農業の尊さに開眼
亡き妻の舘野真知子(5月に他界、享年48)は28歳でアイルランドの料理学校へ留学しました。僕と知り合う、ずっと前の話です。 そこはバスが1日に1本だけの田舎町で、最初の授業は「みじん切り」でした。日本にいたころは病院の管理栄養士として毎日大量の野菜を切り刻み、両親の反対を振り切って海外にやってきた。しかし数日経っても「基本のき」のような指導が続き、とても戸惑ったそうです。もっと高度な技術を教えてほしいと先生に訴えたところ、こんな答えが返ってきました。 「料理は80%が素材で決まります。ここはそれを学ぶところ」 学校の敷地は160ヘクター… この記事は有料記事です。残り1236文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
被爆2世、苦しみずっと 遺伝的影響の可能性は 長崎地裁12日判決
被爆2世に対する援護策について国の責任を問う訴訟の判決が12日、長崎地裁である。原爆で被爆した親を持つ2世への遺伝的影響の可能性、援護の必要性を司法がどう判断するのかが注目される。 「あなたにも影響があるかもしれない」 小学校高学年の頃、両親からそう言われたことを、箕田(みのだ)秀美さん(65)=長崎県長与町=は覚えている。 原爆が投下された時に福岡県内にいた父は、長崎市内のかつての勤務先に向かい、入市被爆した。母は、長崎市に隣接する現・長与町の自宅で被爆。2人とも被爆者援護法に基づく被爆者として認定されている。 父は、70歳で前立腺がんの診断を受け、5年ほど前に亡くなった。「あんたたちに危害がないといいけど……」と子どもへの影響を気にしていた。母は80歳で膀胱(ぼうこう)がんになり、いまも治療を続けている。 「2世」であることの不安をはっきりと自覚したのは23歳の時。第1子の長女を妊娠したが、切迫流産で3カ月入院した。原因はわからなかった。 生まれてきた娘は5歳の時… この記事は有料記事です。残り1866文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
庁舎移転「そんな単純な話じゃ……」 最大級の津波にどう備える
有料記事 根津弥、西晃奈2022年12月11日 9時30分 東日本大震災の教訓をふまえて採り入れられた「最大級」の津波への備えは、「次」の被災を見据えて復旧・復興に取り組んできた被災地の一部地域に、再考を促すことになった。ハード整備は無尽蔵にできず、住民の理解なしに防災・減災は進まない。震災から来年3月11日で12年。被災地が新たに向き合う課題は、日本の沿岸各地が向き合う課題でもある。(根津弥、西晃奈) 「訓練を開始します。高台に避難してください」。11月6日午前、宮城県石巻市立鹿妻(かづま)小学校。大津波警報が出たと想定し、校外に逃げる訓練を初めて行った。 サイレンが鳴ると、防災ずきんをかぶった250人の児童が校庭に整列。教諭の先導で、約800メートル離れた鹿妻山のふもとまで歩いた。6年の日野拳聖(けんせい)さん(11)は震災当時は生まれたばかりで、津波の記憶はない。「映像を見ると怖い。焦らず避難できたらいいなと思う」 宮城・石巻市の学校が忘れてはいけない教訓 同校は海岸線から約1キロにあり、標高2メートル。震災時の浸水は13センチで、住民の避難所になった。震災後の市の想定は1メートル未満で、津波が来ても、3階建て校舎の2階以上に逃げる「垂直避難」で十分と考えてきた。 だが、宮城県が5月に公表し… この記事は有料記事です。残り2089文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
性被害の元自衛官が初講演「何とかなる精神で、一歩踏み出してみて」
佐藤美千代2022年12月11日 10時00分 【石川】陸上自衛隊での性被害を告発した、元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が3日、金沢市内で講演した。講演は初めてだといい、苦悩しながら手探りで行動を起こし、加害者の謝罪を実現した経緯を振り返り、「自衛隊が変わることを信じたい。男女に関係なく働きやすい環境になってほしい」と語った。 五ノ井さんは宮城県東松島市出身。小学5年で東日本大震災に遭い、避難生活を支える自衛隊員に憧れた。通っていた柔道場が、震災を機に金沢市の道場と交流し、行き来を続けた縁で今回、講演に訪れた。 自衛隊では男性隊員による性被害を上司に訴え、調査されたものの事実と認められなかった。休職中の今年3月、死を選ぼうとした瞬間に地震が起き、「はっと気づかされた。震災で生きられなかった人がいる。闘わなければと思った」。 在職し続け、柔道で五輪を目指す道もあったが、「自分の夢をとるより、後輩たちを同じ目に遭わせたくない」。事実の認定や謝罪、再発防止を目的に、どうすれば思いが世間に伝わるか考え、行動に移した。 退官後、ユーチューブの番組に出演し、顔と名前を公にして被害を訴えた。ウェブ上で10万人以上の署名や同じ被害者の声を集め、8月に防衛省に提出。全隊員を対象にした特別防衛監察、加害者からの謝罪といった対応を引き出した。 五ノ井さんは「皆さんのおかげで変わろうとしている」と賛同や励ましへの感謝を述べ、「何かをされたらずっと黙っていた、弱い、普通の人間。ただ、変えたいという思いは誰よりある」。 県内外から集まった約100人の聴衆に「行動は小さなことでいい。壁にぶち当たるけど、何とかなる精神で一歩踏み出してみては」と呼びかけた。(佐藤美千代) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
無戸籍の我が子、再婚しないと救われず 「命の危険」抱えた母の悲痛
有料記事 村上友里、田内康介2022年12月11日 10時00分 「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する――。血縁関係を科学的に証明できなかった明治時代にできた民法の「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」規定が見直された。しかし、再婚していない母親には引き続き規定が適用され、子どもの無戸籍状態は解消されない。価値観が多様化し、DNA型鑑定の技術も進んだ現代に、規定を残す意味はあるのか。(村上友里、田内康介) ある女性は夫(当時)の家庭内暴力(DV)から逃れて別居中、別の男性との間に子どもを授かった。夫との離婚が成立してから二百数十日で出産。嫡出推定が適用されて前夫の子になるのを避けるため、出生届を出せなかった。 男性からも暴力を受け… 子の実父である男性からも暴… この記事は有料記事です。残り1441文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル