大切な人とのお別れは、だれにとってもつらいものだ。そのお別れを穏やかにする手段として、「エンバーミング」という手法がある。体を変化させることなく生前の元気な姿に近づける衛生保全、修復の技術。エンバーマー(遺体衛生保全技術者)の橋爪謙一郎さんは、日本での第一人者だ。 亡くなった人の体を変化させることなく、安らかな姿にする衛生保全・修復の技術。それが「エンバーミング」だ。 多死社会を迎えるなか、エンバーミングの役割は今後大きくなっていくとみられる。「エンバーミングを行うことで、病気や事故で亡くなってしまった方の遺体を生前の元気だったころの姿に近づけ、穏やかなお別れができるようになります」 これまで、日米で合わせて5千体以上の遺体と向き合ってきた。現在は現役をほぼ引退したが、エンバーマー(遺体衛生保全技術者)約100人の教育に関わった。 記事後半では、橋爪さんがこれまで現場で経験してきた中で印象に残っていることなども語っています。 1967年、北海道千歳市生まれ。大学卒業後、「ぴあ」に就職した。父親は葬儀会社を経営していたが、継ぐ気はなかった。ところが93年、米国の葬儀事情を視察してきた父から「アメリカにエンバーマーという職業がある。現地に行ってやってみないか?」と言われたことで、運命が変わる。 最初は戸惑った。ぴあでの仕… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
噴火から8年、にぎわい戻らぬ御嶽山 安全対策進み山頂登頂可能に
羽場正浩2022年7月15日 12時13分 戦後最悪の火山災害が発生し、13日に損害賠償請求訴訟の判決があった御嶽山。深田久弥の「日本百名山」に数えられた人気の山は、2014年の噴火で一変した。噴火後に登山道や退避施設が整備され、山頂登山もできるようになったが、かつてのにぎわいは戻っていない。 御嶽山はゴンドラリフトや車で7合目まで気軽に行けるため、大勢の登山客を集めていた。長野県の観光地利用者統計調査によると、王滝村側から訪れた人は、噴火前の13年が延べ6万5千人だった。噴火後は、噴火警戒レベルが3から2に引き下げられても登山客は戻らず、15年は8500人に激減した。以降は1万人台が続く。 16年9月、王滝口登山道は避難小屋の補強や登山道の整備が行われ、9合目まで規制が解除された。17年8月に警戒レベルが1に下がり、噴石を避けるシェルターや登山者に情報を伝えるスピーカーの設置など安全対策が進んだ。 今年2月、再び火山性地震が急増し、4年半ぶりにレベル2に引き上げられた。気象庁は火山活動が静穏に戻っているとして6月23日にレベル1に下げた。 木曽町側からは今月1日に山頂登山が可能になり、初日から登山者が頂を踏んだ。愛知県内の男性(36)は「レベルが下がったので日帰りで登りに来た。百名山で3千メートル級。噴火があったけれど、山を登る人には避けて通れない山です」と満足そうだった。今月10日には王滝村側も登れるようになった。 両町村は山頂付近のシェルターを増やし、安全性を高める方針だ。王滝村側の7合目(田の原)と木曽町側のふもと(三岳)に二つの「ビジターセンター」を長野県と建設中で、8月27日に同時開館となる。噴火災害の教訓を伝えながら、御嶽山の魅力を発信する拠点としての役割を担う。(羽場正浩) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「雷都」ってホント? 宇都宮の雷日数は全国11位、でも夏に限ると
宇都宮市は昔から「雷都」と呼ばれている。とかく社名などに使われる。落雷の被害に備え、「雷保険」に入る人もいるらしい。雷は本当に多いのか。気候変動の影響はあるのか。調べてみた。 「雷都」と言われるからには、1年間に観測される「雷日数」は全国有数の多さに違いない。しかし、宇都宮地方気象台に尋ねると、宇都宮市は10位以内に入っていなかった。 目視観測に基づく年間平年値をみると、同市は26・5日(1991年から30年間の平均)で全国11位。最多の金沢市(45・1日)に比べて20日近く少ない。上位は新潟市(34・7日)など、東北から北陸にかけた日本海沿岸が占めている。 しかし、「雷都」の称号は、夏に限れば、ふさわしいかもしれない。 同気象台によると、宇都宮市の4~9月の雷日数の平年値は24・2日で、全国で最も多い。金沢市などの日本海側は冬の雷発生数が多く、中根秀行・気象情報官は「宇都宮は冬季の気候が安定し、雨が少ない。冬に雷はほとんど観測されない」と話す。 では、なぜ夏の宇都宮は雷が多いのか。 気象台によると、地形が関係している。北側に日光連山や那須岳などの山地が連なり、南側は平野部となっている。南寄りの風が入りやすく、暖められた空気が山の斜面に沿って上昇し雷雲が発生するという。 「地震、雷、火事……」と恐れられてきたように、落雷は人の命を脅かす。直接落ちる「直撃雷」だけでなく、電線などを伝わって高電圧が住宅に入り込む「誘導雷」も電気製品に被害を及ぼす。同気象台は昨年までの10年間、保険金請求の根拠となる雷発生の気象証明書を79件発行した。 証明書の発行件数は減少傾向にあるという。だが、宇都宮の雷日数は一昨年が51日、昨年が44日で、いずれも平年値を大幅に上回っていた(2020年から自動観測)。ここ数年の増加は、気候変動の影響なのだろうか。 例えば、栃木県で滝のように雨が降る「1時間降水量50ミリ以上」の最近10年間(2011~20年)の平均年間発生回数は、統計開始当初の10年間(1979~88年)と比べ約1・3倍になっている。その一方で、宇都宮市で雨の降らない日は、この100年間で増える傾向にあるという。 中根情報官は「雨が降らなければ雷は発生しにくい。気候変動が雷発生の増減に影響しているか、していないのか、何とも言えません」と話している。(中村尚徳) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ハワイ語にウクレレも 「一人前」フラガールめざし58期生デビュー
西堀岳路2022年7月15日 12時31分 スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)で7日夜、フラガールの58期生3人がステージデビューした。今春入社後、レッスンを重ねてきた。半世紀以上前に地元の炭鉱閉山の危機から地域を救うために立ち上がり、東日本大震災では全国へ踊りに行ったフラガール。58期生の一人は「未来へ歴史をつなげる一員となる覚悟をしました」と語った。 先輩たちとともに、18曲中7曲を踊った58期生。ショーの後のお披露目では、七夕にちなみ、それぞれの目標をしたためた大判の短冊を開いて見せた。 茨城県出身の番内美咲さんの目標は「たくさんの方に笑顔や感動をお届けできる魅力溢(あふ)れるフラガール」、白河市の黒澤美弥妃さんは「お客様や周りで支えて下さる方々の心を踊らせるフラガール」だという。「歴史を継承し心に響く感動をお届けする」と記したのは千葉市の金尾陽菜さん。「フラガールの歴史を尊敬している。早くステージをわかせるダンサーになりたい」と話した。 彼女たちは再来年春に養成機関を卒業するまでは半人前で、民族舞踊や声楽のレッスン、ハワイ語、ウクレレ、メイクなどを学び、ショーに出演しながら先輩の着替えの手伝い、楽屋や舞台の掃除など下積みを続ける。(西堀岳路) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
【写真まとめ】 博多祇園山笠 「追い山」でフィナーレ
2022年7月15日 9時00分 博多の夏の風物詩、博多祇園山笠が15日早朝、フィナーレを飾る「追い山」を迎えました。新型コロナウイルスの影響で、3年ぶりの開催となった山笠を写真で振り返ります。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
近鉄の運賃値上げ、奈良県「NO!」 知事と社長、異例対決の決着は
近畿日本鉄道が運賃値上げを申請したのを受け、一般から広く意見を聴く公聴会が14日、大阪市で開かれた。利用者が多く住む奈良県の知事が自ら出席し、近鉄側の経営努力に疑問を投げかける異例の展開になった。コロナ禍で鉄道各社の運賃値上げの動きが相次ぐが、その妥当性は。 「単なる負担増なら県民の理解得られない」 「サービス水準の向上や地域に必要な投資についての約束が行われないまま、値上げによる負担だけを求めるのであれば、県民からの理解は得られない」。国の運輸審議会が14日に開いた公聴会で、奈良県の荒井正吾知事は公述人としてこう話し、近鉄の値上げ方針に疑問を投げかけた。 公聴会は国土交通相の諮問を受けて運賃値上げの妥当性を判断する運輸審議会が一般の意見を聴く手続き。国交省によると、知事の出席は極めて異例だ。 近鉄は今年4月、来年春から… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
笑顔の裏の涙と葛藤、8児の母らしくいたいけど… 選挙は地獄と四男
「がちゃ」。庭の扉が開く、小さな音が聞こえた。 「あ、お母さんだ!」。家で宿題をしたり、ユーチューブでアニメを見たりしていた3~10歳のきょうだいが、玄関に向かって走り出した。 参院選の公示2日前、午後8時前に支援者へのあいさつ回りや選挙対策会議を終えて帰宅した母・小畑仁子(きみこ)(44)に、子どもたちがまとわりついた。 スーパーの宅配サービスで玄関先に届いていた10人分の食材を母ときょうだいで手分けして運んだ。 「この時間だと夕飯は9時になっちゃうよー」。長男の使い古しの学校ジャージーに着替えた母は、手早く米をとぎ始めた。大きな土鍋で毎回炊くのは6合分だ。 8人きょうだいの母・小畑仁子さんが立候補した参院選が公示されたのは6月22日。炎天下のなかで毎日10時間以上遊説を続ける母はみるみる疲弊し、子どもたちの心配は頂点に達します。「子どもたちの前では涙を見せない」と誓う母。長男は選挙の過酷さを知り、改めてその意味を考えます。 この日のメニューはゴーヤチャンプルにサラダ、買い置きしていた総菜のコロッケなど。料理の最中も、三女の十ノ子(そのこ)(4)や四女の叶寿子(かずこ)(3)らが次々と「ねーねー」「お母さん」と話しかける。 「子どもたちも寂しくて、甘… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「おとなしかった」容疑者、重ねたトラブル 総菜店に怒鳴り込みか
「これ、あの男の人だよね」。安倍晋三元首相(67)が銃で撃たれて殺害されたテレビニュースを見て、奈良市内にあるフレンチ総菜店の経営者や店員は思わず声を上げた。そこには事件の10日ほど前に、駐車をめぐるトラブルがあった相手に似ている男が映し出されていた。 テロップには「山上徹也容疑者(41)」とあった。 安倍氏が銃で撃たれ殺害された事件から15日で1週間。逮捕、送検された山上容疑者の生い立ちから事件までを2回に分けて追う連載の初回です。職場で、自宅で、今春から山上容疑者の周辺で異変が起きていました。 6月下旬のことだった。この… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
無意識の差別、見えていますか ジェンダーギャップ指数の陰で
今年、ジェンダーギャップ指数の日本の順位は116位だった。さまざまな分野の男女格差が可視化されたが、男女を比べることは実態を映し出すのか。見えていないものはないか。 「偶然じゃいけない」足りない権利の視点 染矢明日香さん(NPO法人ピルコン理事長) ジェンダーギャップ指数を見ると、日本では「健康」が「政治」「経済」に比べて高い順位になっています。ですが、「自分の身体のことを自分で決める」という女性の健康についての権利の面で、日本はあまりにも遅れている。こうした遅れは、男女を比較しても見えてきません。 4年前から緊急避妊薬の薬局販売を求める活動をしています。この薬は90を超える国では薬局で購入できて、価格は数百円から高くても5千円程度です。ところが日本は処方箋(せん)が必要で、価格も6千~2万円。特に地方では婦人科が近くになく、入手しづらいという声もあります。性交後できるだけ早い服用が効果的で、72時間以内に飲む必要があるのに、必要な時にすぐに手に入らないのです。 WHO(世界保健機関)は、緊急避妊薬へのアクセスを含めた「性と生殖に関する健康と権利」は生まれながらにして誰もが持つ権利としています。また、入手しやすくなってもリスクの高い性行動は増えないと結論づけています。ところがグローバルスタンダードを指摘すると、「日本には日本の事情がある」と言われることがあります。でも、そのために日本の女性たちが困難を抱えていいのでしょうか。日本に生まれたことで苦しい思いを強いられるのは不条理です。 男女格差を可視化したジェンダーギャップ指数とどう向き合うか。記事後半では、「働き方の男女不平等」などの著書がある山口一男・シカゴ大教授が「統計の使い方を誤ると新たな差別を生む」と指摘します。江藤祥平・一橋大准教授は、社会における「ささいな差別」と75年前にできた憲法24条の一部には共犯関係が見られると指摘、統計に表れない差別の構造について語ります。 以前、偶然が重なって緊急避… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ほぼワンオペの4人育児 夫から「一番うれしい言葉」を言われるまで
今から7年前、関東在住の30代主婦、さと・いもこさんは、ほぼワンオペで子ども4人を育てていた。 上から小学1年、幼稚園の年少、3歳、新生児で、いずれも元気な男の子。 常に誰かにつきっきりの生活で、どうやって過ごしていたかの記憶がほとんどない。 昔の写真を見返すたびに「こんなに可愛かったのか。もっと抱きしめておけばよかった」と思う。 寝顔を眺めながら、いとおしく思う暇もない日々だった。 30代後半だった夫は、長時間のシフト勤務で、繁忙期は家にも帰ってこられなかった。 彼の両親は共働きだったが、父親は育児も家事も何もしなかったそうだ。 母親の苦労を知っていたからか、夫は自宅にいる時は洗濯を除いて、掃除や料理、おむつ替えをしていた。 そんな夫から言われて「一番うれしかった言葉」がある。 さとさんが体調を崩したと聞… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル