困ったことになった。 大勢のソ連(当時)の兵隊を乗せたトラックが迫ってきた。 「ウラー(万歳) ウラー」 16歳の斉藤三郎さんは一緒に歩いていた友人らとともに、トラックに向かって両手を上げて叫んだ。 ソ連兵たちも手を上げて応えてくれ、何事もなく過ぎ去っていった。 しばらく歩くと、突然銃声が聞こえた。 「パーン」「パーン」 振り返ると、1人のソ連兵が自転車に乗ってこっちに向かってきた。 みんなの顔色が変わった。ソ連兵は自動小銃の筒先をこちらに向けている。 「ヤポン(日本人)?」 鋭く叫んでいる。何も言わずに口の前で手を振った。ソ連兵の口調は怒気を増す。 「ヤポン?」 「カリャンスキ(朝鮮人)?」 朝鮮半島の最北端に暮らしていた16歳の少年・斉藤三郎さんは、ある日を境に両親と離ればなれになってしまいました。飢えや病気に苦しみながら、ひたすら祖国・日本を目指して南下しました。記事の後半では、そんな苦難の日々を描くとともに、俳優になった三郎さんの娘の人生を紹介します。 言葉を発すれば日本人だということがバレてしまう。 「皆殺される……」。そう覚悟した。 1945年8月… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「盗撮ハンター」3人逮捕 「バレたらクビ」迫り100万円恐喝容疑
長妻昭明2023年8月1日 9時30分 女性を盗撮したと指摘して男性から現金100万円を脅し取ったとして、警視庁池袋署は、いずれも東京都内に住む26~34歳の男3人を恐喝と営利略取の両容疑で逮捕し、1日に発表した。警視庁は3人の認否を明らかにしていない。 盗撮行為を見つけて脅し、現金を脅し取る犯罪は「盗撮ハンター」と呼ばれる。池袋署は3人が他にも同様の行為を繰り返していたとみている。 同署によると、3人は共謀して昨年8月18日午後5時35分~9時ごろ、東京都豊島区のJR池袋駅近くの路上で、女性を盗撮していたとみられる男性に対して「盗撮してたでしょ、認めなかったら警察に連れて行く」などと脅迫したり、付近を連れ回したりして「示談金」を要求し、現金100万円を脅し取った疑いがある。 3人のうち1人が男性に声をかけ、付近に待機していた別の1人が盗撮された女性の代理人を名乗り、「最低100万円は欲しい」「会社にバレたらクビだよ、人生台無しになるよ」などと支払いを迫ったという。別の1人は見張り役をしていたとみられる。 署は他にも脅迫行為に関与した人物がいるとみている。被害者の男性が同年8月末に署に相談して発覚した。 「盗撮ハンター」は、繁華街や駅など人通りが多い場所で盗撮行為を見張っているという。盗撮行為をしたやましさから、脅迫の被害者が警察に相談しないことが多く、表面化しにくい傾向にあるという。(長妻昭明) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
台風6号で沖縄に暴風警報 航空便欠航、2日にかけ沖縄・奄美に接近
大型で非常に強い台風6号は1日午前8時、暴風域を伴ったまま日本の南を時速15キロの速さで西北西に進んでいる。気象庁によると、台風は発達しながら2日にかけて沖縄本島や鹿児島・奄美地方に接近する見通しで、航空各社は沖縄方面を発着するすべての便の欠航を決めた。 同庁によると、台風の中心気圧は935ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は65メートルで、中心から半径220キロ以内では風速25メートル以上の暴風となっている。同庁は1日午前、沖縄本島などに暴風警報などを発表した。 空の便では欠航が相次ぎ、日本航空は那覇、鹿児島などを発着する95便の全便を欠航。2日も97便すべてを欠航する。全日空も1~2日に沖縄本島や宮古島、石垣島を発着する124便全便を欠航する。 台風は発達しながら沖縄、奄… この記事は有料記事です。残り157文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
イノシシへのワクチン散布を演習 畜産王国九州、「豚熱」侵入に備え
豚やイノシシの伝染病「豚熱」の感染が全国で広がっている。九州ではまだ例がないが、全国屈指の畜産地帯として警戒が強まる。宮崎県は7月26日、農林水産省や大分、鹿児島、熊本各県の担当者も招き、野生のイノシシに対するワクチン散布演習を九州で初めて実施した。 農水省などによると、豚熱は感染した豚などに高熱や下痢などの症状が表れ、高い確率で死ぬため、家畜伝染病に指定されている。 2018年9月に国内で26年ぶりに発生。以来、7月26日現在で19都県の農場や34都府県の野生イノシシで感染が確認されている。22日には兵庫県南あわじ市の農場で感染が確認され、豚約650頭が殺処分されることになった。 糞尿(ふんにょう)や唾液(だえき)からウイルスが排出され、接触などで感染が広がる。感染拡大の原因に考えられるのが、人や車などの移動と野生のイノシシだ。 家畜の豚は殺処分でウイルスの排出が止まるが、野生のイノシシを探し出して完全に駆除することはできない。 そのため、イノシシに食べさ… この記事は有料記事です。残り638文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
名前を取り戻す闘いの始まり ビジュアル系バンドは法廷に向かった
「FEST VAINQUEUR(フェスト ヴァンクール)事件」――。近年出た知的財産法の解説書にこんな名前の裁判が紹介されている。事件名になったのはビジュアル系ロックバンド。所属事務所からの独立を機に、長年使ってきたバンド名を名乗れなくなった。彼らが法律を武器に名前を取り戻すまでのストーリーを追った。 発端は契約解除 2019年4月、メンバー4人は、バンドとして約9年間所属した事務所に、専属契約の解除を求めた。 後に裁判所で言い渡された判決によると、ほどなくして、メンバーの1人は、代表の男性にこう言われたという。 「やり方がおかしいんじゃないか。全て契約違反に触れる」 「エゴでくるんだったら俺もエゴでつぶすぞって話」 「俺が回答するんだったら『つぶす』で終わる」 長い戦いはここから始まった。 芸能事務所と所属アーティストらが独立や移籍をめぐって対立した裁判で、アーティスト側を保護する内容の司法判断が相次いでいます。第1~3回では、ビジュアル系バンドが起こした裁判をバンド側の視点から追い、元事務所側の受け止めや詳しい主張は第4回で紹介します。第5回はその他の裁判例、第6回は芸能専門弁護士の見方を紹介します。 2010年結成のビジュアル系バンド フェスト ヴァンクールは、10年に大阪で結成した。現在は、リーダーでベースのHIRO(ヒロ)、ボーカルのHAL(ハル)、ギターのGAKU(ガク)、I’LL(アイル)の4人で活動する。 ルーツは「X JAPAN」や「LUNA SEA」に代表される1980~90年代のビジュアル系ロック(V系ロック)だ。ステージでは、あでやかな衣装とメイクをまとう。 4人は全員がソングライター。洋楽のヘビーメタルや日本のポップスにも影響を受け、持ち曲は130曲以上に上る。 強みにしてきたのはライブパフォーマンスだ。会場には熱烈なファンが列をなし、曲に合わせてヘッドバンギングなどの「振り」で一体になる。 ダークな雰囲気を演出するバンドも多いVロック界において、ポップスに根ざした明るい曲調も多い。時にはサンバのリズムまで採り入れ、曲間は関西弁のトークで笑いを誘う。 ドイツ語とフランス語を組み合わせ、「勝利者の宴」との意味が込められたバンド名は、そんなポジティブ路線の象徴だ。 「事務所と契約」にメリット メンバーによると、事務所の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
天然サケ回帰予報は震災前の1% 資源保護のカギは稚魚の「強靱化」
岩手県水産技術センターは31日、今年度の県内沿岸への秋サケ回帰予報を発表した。重量と匹数は、それぞれ東日本大震災前5年間の平均値の約1%まで落ち込むと予測する。 発表によると、予測される重量は前年度実績の約67%の298トン、匹数も同59%の10万匹。前年度のサケの回帰率を年齢別に調べ、最も回帰する4歳魚は1年前の3歳魚の回帰率を参考にするなどした。いずれも稚魚放流が本格化する前の1960年代並みという。 同センターによると、岩手県のサケの資源保護は江戸時代から始まり、明治時代には人工孵化(ふか)場が設けられた。昭和中・後期からはそれぞれの漁協が稚魚の放流数を急増させ、震災前までは4億匹に及んだ。 しかし、最近は水温や海流の変化などで回帰するサケが激減。今秋回帰してくる4歳魚は、稚魚として放流した時期の水温が特に高く、成長に適した水温期間も短かったため、生存率が低いとみている。この傾向は数年続くという。 同センターでは、生存率を高めるため、昨年度から稚魚を大きくさせたり、速い流れにも進んでいけるトレーニングをしたりして「強靱(きょうじん)化」に取り組んでおり、研究員は「2025年度ごろから成果が出るのでは」と期待している。 一方、県内のサケ・マス類の海面養殖事業は、毎年拡大している。現時点で養殖している沿岸5カ所の地元自治体や漁協に朝日新聞社が取材したところ、今年の養殖の水揚げ量は7月末現在で計約1800トンと過去最高を記録。各漁協や水産会社はさらに増産を予定する。天然サケが減り、養殖サケが増える状況は、今後も続きそうだ。(東野真和) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
関東大震災での朝鮮人虐殺 追悼式典主催者が小池都知事に追悼文要請
土舘聡一2023年7月31日 20時00分 9月1日で100年となる関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典の主催者が7月31日、追悼文を送るよう小池百合子知事あてに要請した。小池知事は就任翌年の2017年以降、それまでの都知事が続けていた追悼文の送付をやめている。要請に対し、都の担当者は「結論が出たら(主催者に)伝える」としている。 式典は1974年から例年、9月1日に都慰霊堂がある横網町公園(墨田区)で開催。震災で「暴動を起こした」というデマを信じた住民らに虐殺された朝鮮人らを追悼している。 小池知事は2017年以降、「犠牲となったすべての方々に哀悼の意を表しており、個々の行事への送付は控える」として同式典に追悼文を送っていない。今年2月の都議会でも姿勢を変えない考えを述べていた。 要請した式典実行委員会の宮川泰彦委員長(82)は31日に記者会見し、「個々の追悼文は控えるという説明は理解出来ない。二度手間といっているように映る。歴史的事実を認めたくないという姿勢なのか」と批判した。 小池知事は虐殺の有無について、これまで「歴史家がひもとくもの」として認識を明言していない。宮川氏は「触れたくない、答えたくないという政治家が使う言葉。小池知事も逃げ回る政治家と同じなのかと思ってしまう」とも話した。 関東大震災での朝鮮人虐殺を巡っては、昨年、人権施策担当の都職員が、都が委託した外郭団体の人権企画展で朝鮮人虐殺を事実として述べた場面がある映像の上映に難色を示すメールを団体側に送った問題が発覚。その際、知事が追悼文を送っていないことに触れ、上映について「都知事がこうした立場をとっているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画を使用することに懸念があります」などと伝えていた。都は、メールについて「必要のない表現だった」と釈明している。 宮川氏は「行政職員が忖度(そんたく)する形で影響が出ている。一般市民も、追悼文が送られない式典というのはそのくらいのものでしかないと思ってしまう」と指摘し、「過去の歴史を見つめて二度と同じ間違いを繰り返さないと語り継いでいくことが大切。100年という年になぜ虐殺が起きたかを考えてほしい」と語った。(土舘聡一) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
1億円超横領、FXや株に使ったか 大阪地検特捜部が派遣社員を起訴
浪間新太2023年7月31日 20時09分 勤務した大阪市内の2社から計約1億1千万円を着服したとして、大阪地検特捜部は31日、同市西淀川区の派遣社員石渡昌芳容疑者(42)を業務上横領罪で起訴し、発表した。特捜部は認否を明らかにしていない。関係者によると、石渡容疑者は着服した金の大半をFX(外国為替証拠金取引)や株の取引に使っていたという。 発表によると、石渡容疑者はインターネットバンキングを利用。勤務先名義の預金口座から自身の預金口座に送金する手口を繰り返し、電機部品製造会社の経理課長だった2021年7~11月に計15回で計約8千万円、プラスチック製品販売会社の経理担当事務員だった22年6~7月に計6回で計約3千万円を横領したとされる。(浪間新太) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ビッグモーターの相談 10年間で5倍以上に増加 国民生活センター
寺田実穂子2023年7月31日 20時20分 全国の消費生活センターに寄せられたビッグモーターに関する相談件数が、10年間で5倍以上に増加していることが国民生活センターへの取材で31日、分かった。中古車売買の解約や返金、説明不足に関する相談が多い傾向にあるという。 国民生活センターによると、2013年度は260件、14年度は313件と年々増加。19年度には千件をこえ、22年度は1491件で、10年間で5・7倍となった。 また、ビッグモーターの保険金水増し請求問題の報道を受けて、「車検で不要な整備をされたのではないか」という相談も寄せられているという。(寺田実穂子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
元上司「笑って見過ごした」と証言 五ノ井さん、法廷内で倒れて搬送
村上友里2023年7月31日 21時00分 陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)に勤務していた元自衛官、五ノ井里奈さん(23)への強制わいせつ罪に問われた元自衛官3人=懲戒免職=の公判は31日、福島地裁で元上司=同=の証人尋問があった。元上司は、うち2人が「腰を振っているのを見た」と証言した。この尋問中、被害者として公判を見守っていた五ノ井さんが法廷内で倒れ、救急搬送された。 元自衛官の渋谷修太郎(30)、関根亮斗(29)、木目沢佑輔(29)の3被告は2021年8月、北海道の陸自演習場建物内で五ノ井さんを押し倒し、何度も腰を動かして接触させるなどしたとして、今年3月に起訴された。3人は初公判で「腰を振るような行為はしていない」などと述べ、無罪を主張した。 元上司はこの日の尋問で、事件翌月の内部調査に対し、腰を振るような行為を「見ていない」とうそをついたが、五ノ井さんが実名で被害を告発したことなどから、正直に話そうと考え直したと述べた。3人を守るためにうそをついたが「罪悪感があった」と振り返った。 事件時は「周囲が笑いに包まれており、(自分も)ただ笑って見過ごした」と説明。「真実を述べていたら(五ノ井さんが)長い間苦しまず、解決できたのかなと後悔している」とも述べた。 五ノ井さんは、弁護側が元上司に事件時の状況を聞いていた際、呼吸が苦しそうな状態となり、いすから床に倒れた。弁護士によると、体調は回復したという。(村上友里) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル