10万人を超える死者・行方不明者を出した関東大震災から100年。当時の文献や絵画をもとに生成AI(人工知能)を用いて作り出した「“新”証言」を展示する企画が、批判にさらされ急きょ中止された。企画側の狙いは何だったのか。問題点はどこにあったのか。(平賀拓史)
中止に追い込まれたのは、日本赤十字社東京都支部(新宿区)が企画した特別展示「関東大震災 100年前の100人の新証言」。8月26日から今月7日まで、都内2カ所で開催予定だった。
「リアルなストーリー」演出、ネットで批判
同支部では、支部建物内に展示されている震災当時の様子を描いた油絵「関東大震災当時の宮城前本社東京支部臨時救護所の模様」(二世五姓田芳柳〈ごせだほうりゅう〉作)を参照。そこに描かれている人物の画像をAIに読み込ませ、各種文献も参照しながら、20人分の肖像を生成した。また、被災者の体験談などの各種文献をChatGPT(チャットGPT)をもとにしたAIに読み込ませ、100人分の「“新”証言」を構築するとしていた。
広報資料では、「当時を生きた人のリアルなストーリー(物語)として訴求する内容となっています」とアピール。「“新”証言」の例として、「私たちは地震が起きた瞬間、家を飛び出して逃げ出しました」「私たちは、毎日、家族を探していましたが、結局は見つかりませんでした」といった、体験談のようなテキストが示されていた。
企画に対しネット上では、疑念や批判が寄せられた。「AIで生成したテキストはフィクションであり『証言』とはいえないのでは」「歴史を捏造(ねつぞう)することになる」などと、「“新”証言」の妥当性を問う声が多かった。批判を受け8月24日、同支部は展示を中止すると発表した。
企画の動機はどのようなものだったのか。日本赤十字社東京都支部は朝日新聞の取材に対し、企画のきっかけが「もし、絵の中に描かれた人物が語るとしたら」という想像だったと説明。震災から100年が経ち、当時の記憶が薄れていることに問題意識があり、「AIという新しい技術のサポートを得ることで、当時の状況やそこから見いだせる教訓などを想像しやすくなるのではないか」と考えたという。
後半では生成AIに詳しい識者や歴史学者に、企画のどこに問題があったのか聞きました。
専門家の監修なし 識者「フィクションと説明しても…」
肖像や「“新”証言」を生成…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル