東京都の人権啓発活動の拠点となる施設で、関東大震災直後の朝鮮人虐殺に触れた映像作品の上映が中止されました。確定した歴史の事実が根拠もなく否定される風潮が、人権行政を担う部署の判断にも影響を及ぼしているのでしょうか。在日朝鮮人の歴史に詳しく、この映像作品にも出演した外村大(とのむら・まさる)東京大学大学院教授は「事態は深刻だ」と語ります。
人権企画展での作品上映中止をめぐる問題
東京都の外郭団体が運営する人権プラザの企画展で、8月予定だった関東大震災の朝鮮人虐殺を作中で扱った美術家飯山由貴さんの作品が上映中止となった。都は企画展の趣旨「障害者と人権」からそれているとするが、都人権部職員は、研究者が作品中で「日本人が朝鮮人を虐殺したのは事実」とする趣旨の発言に関し「都ではこの歴史認識について言及していない」とのメールを外郭団体に送っていた。飯山さんらは、歴史の事実を認めず、表現の自由に介入する都の姿勢を強く批判。都はメールの表現は「稚拙だった」と釈明した。
――関東大震災(1923年)では東京、神奈川など関東一円で住民による自警団や警察、軍隊が、何ら罪のない朝鮮人らを虐殺しました。
「これは個人の主義主張などとは関係なく、認めるほかない揺るぎない歴史の事実です。虐殺を見聞きした人の証言や日記、絵などが多く残っており、迫害した側の日本人の記録もあります。第2次大戦後にも学者の調査のみならず、手弁当の市民が証言や史料を集めて事実を掘り起こし、追悼碑も建てました。悲惨な出来事を後世に伝えなければという思いからで、虐殺の否定は、純粋な心を持った先人への冒瀆(ぼうとく)です」
――東京都や政府の文書にも虐殺の事実は明記されています。
「都が70年代初めに刊行し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル