WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が、突如、安倍首相のリーダーシップを手放しで評価したことが様々な憶測を呼んでいます。WHOは当初、中国のウイルス対応を絶賛するなど、中国寄りの姿勢が目立つという指摘が出ていました。WHOとはどのような組織なのでしょうか。そして、一転して日本を賛美したことの背景には何があるのでしょうか。
各国からの拠出金や分担金で運営
WHOは国連(国際連合)の専門機関で、各国の国民が高い健康状態を達成することを目的に、国際的な情報収集や分析、災害時対策、感染症対策などを実施しています。組織としてのトップは事務局長で、テドロス氏は8代目の事務局長です。1980年代から90年代にかけては日本人も事務局長になったことがあります。
WHOは国際機関ですから各国からの拠出金や分担金で運営されていますが、2017年における日本の任意拠出金は4700万ドルで4番目に多く、分担金は4500万ドルで2番目に多い金額となっています。WHOには約60人の日本人職員が働いており、日本人が就任している幹部ポストについては多くが厚労省からの出向者もしくはOBとなっています。
ウイルス対策で約170億円を追加拠出 日本に謝意
当初、WHOのテドロス事務局長は中国を特別に高く評価するなど、一部から発言が不自然であると指摘されていました。中国は、米国や日本と比較すると拠出金や分担金はまだ少ないですが、年々金額を増やしており、WHOにとっては有力なスポンサーとなりつつあります。
どの組織も予算の獲得は至上命題となっており、今回、テドロス氏が突如、安倍氏を手放しで称賛した背景には、日本がWHOのウイルス対策に1億5500万ドル(166億円)を追加拠出したことが大きいといわれています。実際、テドロス氏は会見で安倍氏のリーダーシップを称賛すると同時に、資金拠出に対して謝意を表明するなど、その言動はある意味で非常に分かりやすいものです。一連の動きを見ると、中国に対する配慮のメカニズムもある程度は見えてくるといってよいでしょう。
日本では国連を神聖視する傾向があり、政治的な動きがあることについて嫌悪感を持つ人が多いのですが、国連職員というのは国際機関で働く公務員に過ぎませんから、文化の違いはあるにせよ、基本的に国内の状況と大きく変わるものではありません。
日本でも公務員が政治家に「忖度」する事例がたくさん見受けられますが、WHOで働く職員も公務員ですから、人によっては忖度をするケースもあるでしょう。もちろんこうした事例は原則としてあってはならないことですが、感情的になって反発しても意味がありません。日本がこうした忖度によってマイナスの影響を受けないようにするためには、国力を高め、「舐められない国」になるしかありません。
(The Capital Tribune Japan)
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