日本の銭湯の魅力を、台湾で発信する台湾人がいる。東京下町の銭湯で常連になり、番台や清掃のアルバイト経験で興味を深めた。昨年7月には「銭湯打工仔(バイト)日記」を台湾で出版。知られざる経営者の苦楽にも触れる。 台湾出身のフリーライター黄筱雯(コウショウブン)さん(37)は今月、約1週間かけ関西の銭湯9軒を取材した。大阪市住之江区では、地元の医療法人が廃業した銭湯を引き継いで再開した「寿楽(じゅらく)温泉」を営業前に訪ねた。 「町づくりとの関わりや、経営の工夫に関心があり、直接話を聞いてみたかった」 体への負担が少ないぬる湯へのこだわりや、芸術作品やイベントを活用した集客、雰囲気作りについて聞いた。浴室や釜場などの撮影では、青い湯船の底にタイルで描かれた黄色いアヒルに声を上げた。「やっぱりアヒルちゃん、かわいいなって」。夜には再び訪れて入浴。中国語の繁体字で記事を書き、運営するフェイスブックページ「下町貴族」に載せる予定だ。 黄さんは経済誌記者や日系企… この記事は有料記事です。残り1091文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ロシア語覚え理解しようとしてくれた 会えなくても受けたプロポーズ
会話をしたのはパソコンの画面を通してだけ。 直接に一度も会ったことはなかったけれど、プロポーズを受けた。 不安はあまりなかった。ロシア語を一生懸命に覚えて理解しようとしてくれたから。その行動力にもひかれた。 新田クリスティーナさん(29)は、2年前まで、故郷のロシアを離れ、中国にいた。 母親がバレエを教える仕事をしていて、子どもの時からずっとバレエが身近にあった。ダンサーも経験したが、子どもたちにバレエやダンスを教える方が楽しかった。 ロシアの大学を卒業後、バレエ講師として経験を積むために中国・杭州市に渡った。 杭州の人口は1千万人を超える。雇われたバレエ教室の規模は大きく、一度に20人以上を教えることもあった。6年間いた中国で、優良講師として表彰され、教え子を何度も上海のコンクールで優勝させた。 そんなとき、ひとりの日本人男性と知人を介して知り合った。 中国と日本。スカイプでつな… この記事は有料記事です。残り676文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
避難所での性被害を防ぎたい ボランティアで回診する女性医師の思い
授乳中にじっと見てくる男性がいた。知らない男性が毛布の中に入ってきた――。東日本大震災の時に避難所で女性たちが見舞われたと報告された体験だ。能登半島地震で多くの女性が避難所生活をする中、新たな性被害を防ぐために活動する人たちがいる。(西晃奈) 1万4千棟以上の住家に被害が出た石川県七尾市。同市でクリニックを開く内科医の根上昌子さん(57)は診療時間が終わると、被災者に不足しがちな栄養素のサプリメントが入った段ボールを積み込み、車を走らせる。 1月7日から休日も含めほぼ毎日、市内の避難所をボランティアとして回診している。 避難所に物資を渡す際には、「避難所で生活なさる女性の皆様が健康に過ごすために工夫できること」と題した紙を配る。責任者には「こういう看板をつくってね」と促す。 文末には太字でこうつづっている。 「トイレや電気のない暗い場所には決して一人で行かず、複数で行きましょう」「夜の一人歩きも危険です。必ず複数で行動しましょう」 1日の発災後、東日本大震災で支援に携わった助産師らから「性被害が起こりやすい状態だ」と聞いて危機感を持った。ボランティアと称して外部の人が居住空間に入りやすかったり、被災者にストレスがたまったりすることで危険性が高まるという。 「医療人としてやらねば」 同市で女性の心身を総合的に… この記事は有料記事です。残り2248文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 能登半島地震 1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
手仕事が生む逸品 カナダ出身や元CAの職人が手がけるフライロッド
渓流の岩陰に潜むイワナやヤマメを、毛針を使って誘い出して釣り上げるフライフィッシング。そのロッド(さお)を手がける小さな工房が岩手県紫波町にある。宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」にちなんで「カムパネラ」と名付けられた工房は、渓流釣りの愛好家からあこがれを集める手作りの逸品を、四半世紀にわたって生み出してきた。 北上川の支流が流れる田園地帯。その一角に鮮やかなブルーの外壁が印象的な小さな建物が立つ。1999年に創業したカムパネラは2020年、工房兼店舗をこの地に移してフライロッド作りを続けてきた。 日々の始業は午前8時。工房では、創業時からロッド作りに携わり、10年に代表に就任した石川寛樹さん(53)が、細長い金属製の芯棒にガラスやカーボンのシートを巻き付けていく。 ミリ単位で整形、月産60本が限界 芯棒を約130度の高温を保… この記事は有料記事です。残り1442文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北限のカモシカとサル 「彼らの時間」に合わせ、撮り続けた15万枚
北限のカモシカ・サルを撮影し続け、自然との共生をみつめてきた磯山隆幸さん=青森県むつ市脇野沢、中山由美撮影 本州最北の青森県・下北半島は、ニホンカモシカの北限の生息地だ。厳しい冬こそ、撮影にはもってこい。木の葉が落ちた森は見通しが良くなる。新雪に残る足跡をたどると、木立の向こうに姿が見えた。 白い世界にたたずむのは「シアン」。春に10歳になるオスのカモシカだ。こちらをじっと見ている。撮ってやるぞと意気込めば気配は見破られる。磯山隆幸さん(75)はゆっくり距離を縮め、「そこまでならいいよ」という所で止まる。野生動物と向き合って半世紀。「彼らの時間」に合わせることで撮らせてもらえる間合いを知った。 津市出身。北海道や沖縄など各地を旅していた22歳のとき、青森県脇野沢村(現・むつ市)を初めて訪れた。村人は「あがさまい(お上がり下さい)」と家に招き入れると、コップに酒をつぎ、まきストーブの上に身欠きにしんを並べた。武骨だが、旅人をもてなす温かさに心をつかまれた。 過疎地ながら、泊まった脇野沢ユースホステル(YH)はサルやカモシカを調査する若者でにぎわっていた。自然保護ブームと畑を荒らす食害。野生動物との対立ではなく共生を探ろうと、YHを経営する故・高橋金三さんと旅人が熱く議論していた。 足しげく通うようになり、高橋さんの娘のりょう子さん(74)と結婚。津市のスタジオで働きながら、写真の技術を学んだ。そして1987年7月、脇野沢へ移住し、夫婦でYHの経営を受け継いだ。 見えてきた個性、見せてくれた表情 森や海岸を歩き、サルとカモ… この記事は有料記事です。残り979文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
虐待サバイバーが向き合った祖父の戦争 トラウマは「最強の殺し屋」
漫画家の尾添椿(おぞえつばき)さんは、父の太ももに残された、大きなやけどの痕を覚えている。 「子どもの時、真っ赤に焼けた火かき棒でおやじに殴られた」と、父は話していた。背中には数カ所、刺し傷があった。祖父に串や箸で刺されたのだという。 「虫の居どころが悪いとすぐ殴られた。バットや木刀もあった」。父が17歳で家を出るまで、日常的な暴力は続いた。 ところが、尾添さんの記憶の中の祖父は、まるで違った。「家族の中で唯一、私のことを守ってくれる、優しい祖父でした」 初めて祖父に会ったのは20年ほど前。尾添さんが10歳のころだった。祖母が亡くなり、独り残された祖父が、尾添さん家族と同居することになった。 祖父は心臓が悪く寝ていることが多かったが、体調がいい時は日曜大工で家具を作った。声の小さい、90歳手前のおとなしい老人だった。ただ、笑ったところはほとんど見なかった。 当時、尾添さんは転校先の学校でいじめられ、泣いて帰っても両親はまともにとりあってくれなかった。「きちんと接してくれるたった一人の大人」だった祖父の傍らが、自然と居場所になった。 ある日、父のやけど痕について祖父に聞いた。祖父はかすれ声で語り始めた。 当時9歳だった父と一緒に… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
サポーターが来た町、去った町…サンフレ新スタジアム試合に何思う?
J1サンフレッチェ広島は23日、新たな本拠地「エディオンピースウイング広島」(広島市中区)での初のシーズンマッチに臨み、ほぼ満席の2万7545人の大観衆の中、2―0で浦和レッズを破り、白星を飾った。昨シーズンまで本拠地だった「エディオンスタジアム広島」(同市安佐南区)の地元はこの日、何を思い、新本拠地の地元はどんな思いで迎えたのか。(根本快) キックオフ前の正午過ぎ、旧本拠地のエディオンスタジアム広島(Eスタ)の最寄り駅、アストラムライン広域公園前駅は静かだった。昨シーズンの今ごろは、大勢のサポーターが改札口からぞろぞろとスタジアムへの道を歩いていた。 駅はいまもサンフレのチームカラー、紫色をまとう。サンフレの歴史を振り返るパネルやユニホームが展示され、階段にはエンブレムがあしらわれている。 駅はJリーグ発足の翌年1994年に開業した。いまの装飾は、クラブ創設25周年を記念して2017年に彩られた。当時の発表資料は「駅に到着したファンは高揚感に包まれ、応援に力が入ります」と威勢がいい。路線を運営する広島高速交通の担当者によると、駅の装飾を今後どうするかは検討中という。 駅を降りたスタジアム側には、いくつかの飲食店が軒を並べている。 忘れられない男性サポーターの客 赤色の看板が目印の「焼肉 咲咲(さくさく)亭」。午後2時のキックオフ直後に訪ねると、代表の上田旨崇(よしたか)さん(40)は「試合当日のにぎわいが無くなって、寂しい気持ちはあります」と話した。Eスタでホーム戦がある日は、お客さんの3人に1人はサンフレのユニホームなどを着たサポーターだった。 忘れられない人がいる。試合… この記事は有料記事です。残り1616文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戦火のウクライナから福島へ 地元スーパーで働く留学生の「恩返し」
パンを売り場に並べながら、日本語で「いらっしゃいませー」。戦火のウクライナから避難してきて福島県いわき市の東日本国際大で学ぶ女子学生が21日から、市内のスーパー・マルトで働き始めた。将来も日本で働くため、パート勤務で経験を積むことに。来日以来、生活用品を支援をしてきたマルトに恩返しをしたいと同店を希望した。 学生は激戦地マリウポリ出身のソフィア・ビジャズさん(20)。首都キーウの大学で日本語を学んでいた。2022年秋、就学に必要な日本語を学ぶ同大の別科に入学。今年9月の修了まで、当面は週2回、マルト平尼子店のベーカリー部門で総菜パンの調理やレジ接客などをする。 ロシア軍が侵攻してきた時は… この記事は有料記事です。残り640文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「映画館の街」だった渋谷の姿とは 通りの名前にも 3月まで企画展
多くの市民にとって娯楽の代表施設だった映画館の観点から、渋谷の歴史をたどる企画展が、渋谷区郷土博物館・文学館で開かれている。区内には最も多いときで30以上の映画館があり、渋谷は「映画館の街」とも呼ばれたという。収集家から多数の資料が寄せられ、企画展が実現した。 明治のころの渋谷は、かつての大山街道の一部、道玄坂を中心に発達した。このため初期の映画館は、駅周辺というよりも当時盛り場だった道玄坂一帯に多く誕生した。 1917年(大正6年)に開館した「渋谷劇場」もその一つ。もとは明治時代にできた「豊沢亭」という芝居小屋だった。当時は芝居小屋や寄席から転身した映画館が珍しくなかった。 太平洋戦争の空襲により、区内の映画館も多くが失われたが、戦後の復興とともに再び増えた。このときは渋谷駅周辺が開発の中心となり、56年(昭和31年)に駅の東側にできた東急文化会館には「パンテオン」など四つの映画館が入り、渋谷を象徴する施設となった。 ピークの1960年(昭和35年)には区内で33館を数えた。現在の文化村通りはかつて、映画館「渋谷大映」にちなんで大映通りと呼ばれた。「それだけ、映画館は街にとって大きな存在でした」と、企画展を担当する田原光泰学芸員は話す。この場所には現在、MEGAドン・キホーテ渋谷本店がある。 収集家が多数提供 出展される資料約200点の… この記事は有料記事です。残り244文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
なお6千人、改善さぐる1次避難所 防犯や居住レイアウトに工夫
能登半島地震で、なお6200人以上が地域の1次避難所に身を寄せている。避難生活が長期化する中、子どもの夜泣きや騒ぎ声、女性の安心の確保といった問題に悩む人もいて、環境の改善が求められている。 夜泣きに「申し訳ない」 石川県能登町の町立能都中学校では、段ボールで仕切られただけの体育館で、70人ほどが避難を続けている。午後10時に消灯した後、幼い子どもの泣き声が響くことがある。全世帯の2割ほどが子育て中で、就学前の子どももいるからだ。 休職中の女性(35)は、次女(3)の夜泣きに悩む。「毎晩いつ泣き出すか、わからない。周りは『大丈夫』と言ってくれるが、迷惑をかけて申し訳ない」。夫(37)は「妻の心労は相当たまっている」と気遣う。 ホテルなど、より快適な2次… この記事は有料記事です。残り1205文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 能登半島地震 1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル