岩手県北上市が、木造家屋の固定資産税を課税する際、総務省の基準を無視し、独自のルールを適用し続けていた。そのため、補塡(ほてん)金を支払ったり、追徴したりする事態に陥っている。誤りは1991年の市町村合併前から続き、正確な課税額は算出できない。精算には少なくとも2年以上かかり、数千万円の費用が必要だという。ずさんな課税ミスのつけは、市民に回ってくる。(小幡淳一) 16日午前の市議会一般質問で、高橋孝二議員が市の対応や問題点を取り上げ、「おわびは相手に伝わってはじめて成立する。間違いを認め、市民にわかるように説明責任を果たすべきだ」と訴えた。 固定資産税の評価は、総務省が全国一律に設けた基準に従って行われる。家屋調査で資材や設備などを確認し、基準表で定めた四つの区分に分け、経年で補正する仕組みだ。 ところが、北上市は区分を分けず、自動的に特定の区分にして課税額を算出していた。その結果、余計に課税したり、低い税額で市の収入が減ったりした。 市によると、原因は合併前の旧北上市が契約していた当時の電算システムで、区分ごとに入力できる仕様になっていなかった。 誤りに気付くタイミングは過去に何度もあった。 1991年の合併前に行われた協議で、総務省の基準通りにしていた旧和賀町と旧江釣子村と差が生じるとして、新市での運用を検討。しかし、件数で全体の約7割を占める旧北上市の方式に従うことになった。 その後も、担当職員が不自然さに気付いても、問題意識が共有されず、表面化することはなかった。 合併から約20年後。市の電算システムを更新することになり、コンペで契約先を選定する際、参加業者から区分ごとに入力するのが適正な処理だと指摘され、ようやく誤りに気付いたという。 市議会で追及され やっと「改める」 誤りに気付いても、市の対応は後手に回った。 2012年に導入した新シス… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
親父狩りにけんか、その私が厨房立つまで 社会復帰阻む「前科あり」
服役による履歴書の空白に悩み、就職活動に前向きになれない。大阪府警によると、谷本盛雄容疑者(当時61)は事件の約5年前、就労相談に訪れた大阪市此花区役所でそんな姿を見せていた。「(前科が)殺人未遂だと告げると支援者の態度が変わって傷ついた」と話したという。 昨年12月17日午前、大阪市北区の雑居ビル4階のクリニックに男がガソリンをまいて火を付け、患者やスタッフら26人が犠牲となった。大阪府警は3月、通院していた谷本盛雄容疑者(当時61)を殺人や現住建造物等放火などの疑いで書類送検した(容疑者死亡で不起訴)。 九州地方に住む40代の元受刑者の男性は、「私も履歴書に事実を書く勇気がなかった」と話す。詐欺に関わり、約10年前に3年半ほど服役した。 逮捕が知られると、妻子が残る自宅に無言電話がかかってきた。妻は職場で「新聞見たよ。まだいるの」と言われ、退職の求めだと感じた。 男性は出所後も前科を知られるのが怖かった。ハローワークではどの求人も履歴書が必要だ。それが要求されない派遣農作業員として数カ月働いてしのいだ。 かつての職場の社長が「戻ってこい」と声をかけてくれた。前科を知る同僚の視線に耐える自信がなく、いったんは断った。だが、新しい仕事を覚えるのも難しく、最終的に元の職場に戻ったという。 お好み焼き店の厨房に 昨年末に出所した玉田恭兵さん(34)は今、大阪市中央区のお好み焼き店「千房」の厨房(ちゅうぼう)に立つ。 16歳で少年院に入った。成人後も仲間と「おやじ狩り」を繰り返し、25歳から5年間刑務所で過ごした。 出所後、ハローワークに行っても仕事は決まらなかった。酒とたばこにおぼれ、酔ってはけんかした。暴行事件を起こし、昨年初めに再び収監された。 刑務所内で出所後の仕事をあ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「楽団作らないか」突然のLINE 吹奏楽、コロナでは終われない
新型コロナウイルスの影響で思うように活動できないまま卒業していった吹奏楽部員たちが、楽団を結成した。出身校の枠を超えて50人あまりが集まり、今夏に故郷の茨城で演奏会を開く。突き動かしたのは、「このままでは終われない」という思いだった。 2020年3月、圓谷夏音(つむらやなおと)さん(19)=北海道大2年=は、茨城県立水戸第一高校の2年生だった。吹奏楽部ではテューバを担当し、指揮者をしていた。 全国の小中高が一斉休校になり、部活動もできなくなった。毎年3月末の定期演奏会や学校祭は開けず、5月には吹奏楽コンクールの中止が決まった。 3年生になっても、休校で友達とも会えない日々が続いた。自分たちには何ができるのか。将来どんなことができたら、面白いのか。そんなことを一日中考えていた。 当時、個々が自宅などで録画した演奏動画を編集して一つの曲に仕上げるリモート合奏が流行していた。その動画を見ながら「いいな」と思う一方で、別の思いも抱いた。 「本当にめざしたいのはこれじゃない」 コロナの前は、音楽を通じて… この記事は有料会員記事です。残り1340文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
食べログ裁判で違法とされたアルゴリズム運用 欧州では規制、日本は
月間の利用者が8千万人を超える「食べログ」。飲食店に点数をつける「アルゴリズム(計算手順)」の運用について、東京地裁が独占禁止法違反を認定した。アルゴリズムは今や様々な分野で使われ、透明性確保に向けたルールづくりが国内外で進むが、日本はまだ限定的なものにとどまる。 インターネットを使う人にとって、デジタルプラットフォーム(DPF)事業者が独自に定めるアルゴリズムは、日常生活に欠かせないものになっている。 店舗や商品、サービスをランク付けして表示するオンライン仲介サイトは、飲食店だけでなく、宿泊施設、医療施設、映画や不動産など、幅広い分野で利用されている。アルゴリズムが導き出す順位は、事業活動に大きな影響を及ぼすこともある。 今回の判決は、食べログのアルゴリズム運用が、公表した説明から踏み出していた点を問題視した。DPFの多くは不正防止や営業秘密を理由にアルゴリズムの詳細を開示していないが、不公正な運用が現にあることを示した。 国内外でルール作り、でも日本は… アルゴリズムの透明性や運用上の懸念は近年、国内外で高まっている。 公正取引委員会は19年の報… この記事は有料会員記事です。残り672文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
学校のお便りはまるで謎解き、埋もれる情報 「昭和で止まってる」
学校から保護者に配られるプリントがあまりに多く、まるで「プリント地獄」のよう――。そんな声を紹介した記事に、多くの反響が寄せられました。 どうやら、問題は「量の多さ」だけではないようです。届いた声からは、ほしい情報がバラバラの紙に書かれており、情報収集だけでも一苦労の実態が見えてきました。 分かりにくさを改善する策はないのか。学校側の実情は。取材しました。 ママ友に問い合わせ、ようやく判明 「あれは、どこに書いてあるの?」 小学3年の長男が横浜市立の小学校に通う女性(47)は、学校からのお便りの分かりにくさに頭を悩ませる。 新学期目前の4月はじめごろ。まず、「いつから登校すればいいのか」でつまずいた。 「結局、始業式って何日なのかな。これって学校便りには書いてなかったよね?」 同じ学校に通う子を持つ「ママ友」4人のグループラインに投稿した。 「クラス便りの裏に書いてあったよ」。数分後にこう返ってきた。 「裏か、見逃してたわ」とつぶやいた。 こうしたグループラインでの情報共有は必須だ。お便りは週に15枚ほど。量も多いが、必要な情報がバラバラの紙に書かれていて一元化されておらず、見つけにくいと感じる。 保護者として特に知りたいのは、持ち物や時間や場所、提出書類の締め切り日などだ。だが、それがどこに書いてあるのか探すのに一苦労だ。 記事の後半では、分かりにくいお便りになる学校側の事情や専門家の改善のためのアイディアを紹介します。 「大量のプリントから答えを… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
カラフルな落雁のグラデーション お盆の供え物に人気 福岡・福智町
福岡県福智町の工房「楽心堂」では、お盆に向けて和菓子の落雁(らくがん)を使った供え物作りに追われている。 赤やピンク、黄色に青など200色あるカラフルな落雁を、円柱や六角柱、八角柱の心棒に一つずつ丁寧に貼り付けてゆく。寺院や家庭向け用に特大からミニまで、サイズは8種類ある。 工房は2006年から供え物… この記事は有料会員記事です。残り195文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
屈辱的だった国の言い分 原発事故の責任はないのか 17日に判決
東京電力福島第一原発事故の賠償責任は国にもあるのかどうか。各地に避難した人らが起こした4件の集団訴訟について、最高裁第二小法廷が17日の判決で統一判断を示す。原告は計約3700人。一審、二審では、めまぐるしく変わる認定に翻弄(ほんろう)された。最終決着に向け、事故から11年3カ月の思いを聞いた。 「一言ひとことに責任を持つため実名で取材を受けることにした。国も原発事故の責任をとってほしい」 「実名で語る」原告の決意 福島県浪江町出身の小丸(おまる)哲也さん(92)はこれまで「家族に迷惑をかける」と実名を避けてきたが、4月に最高裁で意見陳述したことを機に考えを変えた。 自宅は福島第一原発から約11キロ離れた山あいにある。300年以上続く農家の生まれで、コメづくりや養蚕に励んだ。町議も16年務め、道路舗装や用水路整備に取り組んだ。「住みよい場所にしたいという一心だった」。地区には約30世帯が暮らし、全員の顔と名前が一致した。春や秋は神社の祭りを楽しんだ。 そんな生活は2011年3月の事故で一変した。福島県内を転々とした後、千葉県内の長女宅に避難。生きがいの農作業はできず、12年に脳梗塞(こうそく)を患った。 事故で平穏な暮らしを奪われた原告たちは、裁判で責任を否定する国の主張に怒りを募らせます。記事後半では、間もなく言い渡される最高裁判決のポイントも解説します。 土地と暮らしを奪われた悔し… この記事は有料会員記事です。残り1699文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
朝鮮人追悼碑の不許可は「問題なし」 最高裁で群馬県の勝訴確定
根岸拓朗2022年6月16日 18時00分 群馬県高崎市の県立公園にある、戦時中に労務動員されて亡くなった朝鮮人労働者の追悼碑をめぐり、県が設置期間の更新を不許可としたのは違法だとして、碑を管理する市民団体が取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(岡村和美裁判長)は団体の上告を棄却した。不許可は適法とした二審・東京高裁判決が確定した。15日付の決定で、憲法違反などがないとだけ判断した。 昨年8月の二審判決は、市民団体が開いた追悼式で「強制連行の事実を全国に訴え、正しい歴史認識を持てるようにしたい」などと述べたのは政治的発言にあたり、碑が中立的な性格を失ったと指摘。碑の存在が抗議活動の原因になり、公園にある施設としてふさわしくないと県が判断したのは正当だと結論づけた。 一審・前橋地裁は、発言は政治的だと認めつつ「公園の効用は失われていない」として、不許可を取り消していた。(根岸拓朗) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
再開した知床小型観光船に久々の乗客 ヒグマに歓声、突風も体感
知床半島沖の観光船事故から間もなく2カ月、自粛していた北海道斜里町での小型観光船の運航が16日に始まった。町を支えてきた小型観光船が再び海に出たこの日、乗客や地元関係者にとって特別な一日となった。 午前7時過ぎ。雲が空を覆っていたものの、風は弱く、船が出るウトロ漁港の海面は穏やかだった。 それから2時間ほど経つと、漁港近くにある運航業者「ドルフィン」の事務所に乗客が続々と訪れる。記者も、渡されたオレンジ色のライフジャケットを着て乗船した。 午前9時53分、船長のアナウンスとともに船が出港する。乗客は19人。万が一に備え、同業他社の観光船が後ろから着いてきた。記者のスマートフォンは出港から10分ほどで圏外になり、帰港するまで再びつながることはほとんどなかった。 午前10時半ごろ、船が海上で突如止まった。すると、操舵(そうだ)室の乗組員がデッキに移動してきた。 「あそこにクマがいるの分か… この記事は有料会員記事です。残り979文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
水陸両用作戦、16カ国指揮官が視察 日米呼びかけ、対中国連携
2022年6月16日 20時09分 太平洋と接する地域を中心とした16カ国の軍の指揮官が16日、自衛隊の基地や駐屯地を訪れ、離島防衛で重視される「水陸両用作戦」に関する訓練や装備品を視察した。日米が初めて共催した国際会議の一環で、海洋進出を強める中国を念頭に、日米の連携を示すことで各国に結束を呼びかける狙いがある。 16カ国は対中国で日本と連携を深める英仏豪、南シナ海での中国の活動に反発するフィリピンのほか、カナダやチリ、韓国などで、日米を含め66人の指揮官が参加。強い権限を持つ将官クラスが多く「島を守る作戦の重要性を改めて各軍に認識してもらう効果が見込める」(自衛隊関係者)。参加国の中には中国を脅威に感じ、有事に際して日本に積極的に協力する考えを示す国もあるという。 指揮官らは横須賀基地で揚陸艇、木更津駐屯地で陸上自衛隊と米海兵隊による訓練などを視察。陸自トップの吉田圭秀(よしひで)陸上幕僚長は記者会見で「多国間協力を進め、望ましい安全保障環境を醸成する」。ラダー米太平洋海兵隊司令官は「抑止がうまくいかなければ戦って守る」と話した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル