映画館で旅をしよう。スマートフォンの電源を切り、真っ暗な空間で大きな画面だけを見つめる。日々のくらしを離れ、映画の世界に入り込む。配信サービスで誰もがいつでも家にいながら映画を楽しめるようになっても、やはり映画館に行って没頭することはやめられない。群馬県内でも、そんな旅を提供し続ける小さな映画館3館がある。 今月10日、この3館をはしごしてみた。 朝、向かったのは「シネマテークたかさき」(同県高崎市あら町)だ。元銀行だという建物に入ると、壁一面に直接書かれたたくさんのサインが広がっていた。訪れた監督や俳優が残していくのだという。 2004年に高崎映画祭メンバーを中心として市民の出資で立ち上がり、NPO法人「たかさきコミュニティシネマ」が運営する。「県内ロケなど県にゆかりのある作品のほか、若手監督の作品を積極的に選んでいます」と話すのは支配人の小林栄子さん(45)。 この日見たのは、「勝手にしやがれ」などの映画を作ったゴダールを描いた作品「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」(2022年、フランス)。いかに難解でいとおしい人物だったかを関係者たちが語る姿に、高齢男性や夫婦を中心に20人ほどが見入っていた。 シネマテークはフランス語で… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
明治時代のケーキはどんなもの? 京の和菓子店が再現してみると……
街の洋菓子店でクリスマスケーキのカタログが目立ち始めた。京都市の老舗和菓子店は、店に眠っていた「見本帳」から明治時代のデコレーションケーキを再現した。SNSで公開すると「おしゃれ」「ハイカラ!」と話題に。どのようなケーキなのか。 明治時代のケーキを再現したのは創業1803年の老舗和菓子店「亀屋良長」(本店・京都市下京区)の菓子職人ら。創業220周年を迎え、記念事業として、店の戸棚の奥に眠る「見本帳」にのっているお菓子の再現に挑戦した。 8代目当主の吉村良和さん(50)が木箱に入った「見本帳」を見せてくれた。見本帳はお菓子のカタログのようなもので、店には江戸時代から戦後のものまで保管されているという。 当時は砂糖が高価だったため、客は実物ではなく、見本帳からお菓子を選び、店は注文を受けてから作ることも多かったという。 ケーキの真ん中に茶色いかたまり 吉村さんによると、見本帳のデコレーションケーキは、明治時代後半から昭和初期に作られていたもの。複数の絞り口を使ったと思われるクリームの模様が緻密(ちみつ)に描かれている。絵は「友禅の絵師がアルバイトのような感じで描いていたものかもしれません」。 絵のケーキは、お菓子のトッ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
楽天モバイル元部長と下請け会社、18億円差し押さえ 国税局
楽天モバイルの携帯電話基地局整備事業をめぐる巨額詐欺事件で、東京国税局が、同社元部長の佐藤友紀被告(47)=詐欺罪で起訴=と、下請けの物流会社「TRAIL」(東京都港区)の計約18億円相当の資産を差し押さえていたことがわかった。 佐藤被告は、楽天モバイルの委託先の役員らと共謀し、楽天モバイルに費用を水増し請求して計約98億円をだまし取ったとして逮捕・起訴されている。関係者によると、同国税局は佐藤被告の所得税とTRAILの法人税など計約40億円を追徴課税したが、納税の見通しが立たないとして、佐藤被告の所有する不動産や同社の現金など計約18億円相当を差し押さえたという。資産の差し押さえにより10億円超が徴収されるのは異例とみられる。(花野雄太) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
検察側「証拠捏造は非現実的で不可能」 袴田さん再審第3回公判
1966年に静岡県で一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審の第3回公判が20日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。犯行時の着衣とされた「5点の衣類」について、検察側が改めて袴田さんのものだと主張。再審開始を決めた東京高裁は捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性を指摘したが、「非現実的で不可能だ」と訴えた。 「5点の衣類」は、袴田さんの逮捕から約1年後に勤務先のみそ工場のみそタンクから見つかったズボン、パンツ、シャツなどで、赤みが残る血痕が付いていた。 68年の確定判決は袴田さんの犯行着衣と認め、有罪を導く最大の根拠とした。弁護側はかねて「1年以上みそに漬かれば血痕は黒褐色になる」として、捜査機関が後から投入した捏造証拠だと主張。今年3月、東京高裁はこれを認めて再審開始を決めた。 「公になるリスクも高い」 検察側はこの日、改めて「衣… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
疑わしきは…の原則どこに 周防正行監督が司法に抱いた三つの驚き
取り調べの立ち会いも議論の対象になった法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で、法曹ではない、民間出身の委員として問題提起を続けた映画監督・周防正行さん。裁判員裁判事件などに限り取り調べの全過程を録音録画(可視化)することを求めるなどの答申案がまとまってから間もなく10年、いまの刑事司法はどう映るのか。 ――2011年に始まった特別部会では、村木厚子さんらとともに取り調べの録音録画の対象を「全事件・全過程にすべきだ」などと主張されていました。 逮捕前の取り調べや、被害者や参考人も含めた全ての取り調べを対象にすべきだと考えました。逮捕後だけ可視化すれば、逮捕前に自白をとろうとするだけです。参考人らの供述でも、きちんととられたものか検証するには可視化は必要です。 ――しかし、捜査機関側からの反発もあり、実現しませんでした。 大阪地検の証拠改ざん事件(10年発覚)で、法務省側は「特捜部がなくなってしまうかもしれない」という危機感を本当に持っていたようです。一方、警察は「なぜ検察の失敗の肩代わりをしなければならないのか」くらいの感覚だったと感じます。法務省にとっても、可視化の対象を裁判員裁判と検察の独自捜査事件に絞るのは、現実的な落としどころだったのではないでしょうか。 私たちは、可視化の導入後、取り調べが適正に行われているかなどの運用状況を検証し、対象事件を全事件に拡大する方向で進めることを法務省側に確認した上で、対象を絞る案にとりあえず賛成しました。 法務省の協議会メンバー、今回は「さらにひどい」 ――その検証は22年7月から、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」で行われています。議論は注視していますか。 もちろんです。ただ、協議会メンバー10人のうち、弁護士が2人、マスコミ関係者が1人で、あとは学者2人と捜査機関や裁判所の人間。特別部会も多勢に無勢でしたが、今回はさらにひどい。 また、特別部会の議論はほぼ公開でしたが、協議会は非公開で、議事録が遅れて公開されるだけ。マスコミの注目度も低い。法務省は、人知れず終えてしまうつもりではないでしょうか。 ――特別部会で議論していた当時、全事件で取り調べが可視化されれば、取り調べの問題は一掃されると考えていましたか? 「可視化」に注力したかつての議論 そうではなく、可視化によって取り調べのやり方を変えざるを得なくなるだろうと考えていました。多くの人は、「やっていないことはやっていないと言えば済む」と思っているかもしれませんが、そうではない。 布川事件で強盗殺人罪が確定した後、再審無罪となった桜井昌司さん(今年8月に死去)は、取り調べの際、事件があったとされる日のことを何とか思い出して、「兄の勤めるバーに行った」と話したところ、刑事から「バーの人間は『来ていない』と言っている」とアリバイを否定されました。警察官がウソをつくと思っていなかった桜井さんは気持ちが折れ、自白につながった。可視化すれば、こういった取り調べをすることはできなくなると考えていました。 記事の後段では、無罪を主張して黙秘する女性に対し、警察官が自白を迫り続ける様子の音声動画を紹介しています。 ――可視化に一定の効果はあ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大学施設に広がる「ZEB」って? 光熱費を抑え、環境にも優しく
大学施設を新しく造ったり改築したりする際、エネルギー消費の収支ゼロを目指す「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB(ゼブ))」と呼ばれる建物にする動きが広がっている。エネルギー消費を削減して環境負荷を減らすとともに、近年上がり続ける光熱費の削減も狙う。(高嶋将之、編集委員・増谷文生) 「空調設備の見直しをするだけでも省エネが期待できます」 そう話すのは省エネ・脱炭素化を進めるため、2020年に大手空調メーカー「ダイキン工業」から大阪大に招かれた鈴木智博准教授だ。 「ひらく 日本の大学」 朝日新聞と河合塾が共同で、2011年から全国の大学(大学院大学、通信制のみの大学はのぞく)を対象に実施。今年の調査は6~8月に778大学に行い、643大学(83%)から回答を得た。 着任時、新築予定だった大学院薬学研究科の研究棟(4階建て、約3400平方メートル)の基本設計はできていた。だが、空調のプロの目線で見ると、空調設備の能力が余剰だと気づいた。設備を部屋の規模や使用目的など実態に適した性能に変更すると、新築の研究棟では、国立大初の「ZEBレディ」(省エネで50%以上エネルギー消費を削減)を達成することができた。 ZEBは、従来型の建物と比… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
角幡唯介さんは冒険の計画を立てない ジャーナリストと語る不確実性
有料記事 コーディネーター・高橋末菜2023年11月20日 22時00分 計画を立て、効率よく目標を達成する――。ビジネスでも教育の場でも日常的に求められることだが、それは本当の「豊かさ」につながるのだろうか。探検家でノンフィクション作家の角幡唯介さんと、「限りある時間の使い方」の著者でジャーナリストのオリバー・バークマンさんが、朝日地球会議2023で「『限りある時間』と冒険 不確実性を生きる」をテーマに語り合った。 角幡さんは、太陽が昇らない真冬の北極を犬ぞりで狩りをしながら旅してきた。綿密な計画をたてるのではなく、その日の天候や氷の状況などで行動を変える「漂泊」というスタイルが特徴。現在地などを確認するための全地球測位システム(GPS)も持ち込まない。効率性とは逆の考え方を実践する。 こうした「不確実」な旅をするのはなぜなのか。角幡さんは「目標地点に計画的に効率的に進もうとすると、一日の行動距離などのノルマに従うようになる」と話す。「以前そうした旅をしたが、北極の表面しか歩いていない感じだった。目の前の事象を真に経験するには、計画を捨て、状況に反応できるようにしなければならない」 「あらゆるものの制御不能性と、どうつきあうか。不安に耐え、死も含めて、どう折り合いをつけるか。その負荷を受け入れることで『本物』を感じることができる」とも話した。 こうした考え方は、バークマンさんと重なる。以前は時間管理や生産性向上を重視していたというバークマンさん。「でも、心に平穏はもたらされず、人生をコントロールできている感覚もなかった」と話す。 著書で「確かさを追求すると、物事の真意を探究できなくなる。不確実な中にあるからこそ、人はその実力を発揮することができる」と書く。 対談でバークマンさんは、角… この記事は有料記事です。残り1217文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
郵便局の立てこもり 拳銃は真正と判明 警官への発砲容疑で再逮捕へ
有元愛美子 野口駿 仁村秀一2023年11月21日 0時00分 埼玉県蕨(わらび)市の蕨郵便局で10月にあった人質立てこもり事件で、県警は、人質強要処罰法違反容疑で逮捕した無職鈴木常雄容疑者(87)を、現場で警察官を殺害しようとしたとして、殺人未遂や銃刀法違反(加重所持、発射)などの疑いで21日に再逮捕する方針を固めた。その後の捜査で、目撃証言などから警察官に向けて発砲したことや、鑑定で拳銃に殺傷能力があることが判明した。捜査関係者への取材でわかった。 再逮捕容疑は10月31日午後、立てこもった際に局内外にいた警察官に向けて拳銃を2回発砲し、殺害しようとしたというもの。うち1発は弾がパトカーのタイヤを貫通し、近くの住宅の壁が壊れるなどした。もう1発は局内の壁にあたった。発砲の意図は詳しく供述していないというが、県警は、警察官が死んでも構わないとの未必の殺意があったとみている。 鈴木容疑者は当時、局内に複数のポリタンク入りの液体も持ち込んでいた。「ガソリン」「火を付ける」などと警察官らを脅したとされるが、県警の鑑定で、液体がガソリンだったことが確認されたという。 鈴木容疑者が局員2人を人質に立てこもったのは、同日午後2時過ぎから約8時間。昨年10月に自身のバイクと蕨郵便局のバイクが衝突し、物損事故で処理されたことに不満があり、局長や担当の警察官を呼ぶよう求めた。途中で人質1人を解放。もう1人は、警察官が突入する直前に自力で外に避難した。 一方、事件の直前には、郵便局から約1・5キロ離れた戸田中央総合病院(埼玉県戸田市)でも発砲事件が発生。1階の診察室の曇りガラスが割れ、室内の医師と患者がけがをした。病院から約1・5キロほど離れた鈴木容疑者の自宅アパートでは、建物が全焼する火災が起きた。鈴木容疑者は両事件への関与も認めており、県警は医師らへの殺人未遂や現住建造物等放火などの容疑でも調べている。(有元愛美子、野口駿、仁村秀一) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【紙面ビューアー機能も使える】プレミアムコースが2カ月間無料!お得なキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
住宅が全焼、焼け跡から2人の遺体発見 愛知県清須市
20日午後7時半ごろ、愛知県清須市清洲の無職石川和夫さん(95)方から火が出ていると、近所の住民から119番があった。木造2階建て住宅が全焼し、焼け跡から性別不明の2人の遺体が見つかった。 西枇杷島署によると、この住宅は2人暮らしで、石川さんと長男の博嗣(ひろし)さん(66)の2人と連絡が取れていないという。署は遺体の身元確認を進めるとともに、出火原因を調べている。現場はJR清洲駅の南東約1・4キロの住宅などの密集地。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
財前直見さんらが守りたい里山の暮らし 息子と脱穀した米が並ぶ食卓
棚田、ため池、かやぶき民家、農村歌舞伎――。日本の原風景と言われる里山が、担い手不足などで危機に直面している。その再生について、神戸市長の久元喜造さん、俳優の財前直見さん、東京都立大国際センター准教授の佐々木リディアさん、NPO法人「よこはま里山研究所(NORA)」理事長の松村正治さんが朝日地球会議2023で語り合った。 財前さんは、3世代での故郷・大分の里山暮らしを始めて17年目になる。その魅力について「息子と一緒に脱穀したお米や、自生するミョウガなどが食卓に並ぶ。愛着が持てる暮らしです」と話した。一方、課題については「高齢化と相続手続きが進まない空き家問題だ」と指摘した。 神戸市長の久元さんは、神戸市郊外の里山で育ち、その魅力を伝えるファンタジー小説も出版している。「人の手が入り続けることで維持されてきた自然環境が、担い手不足や耕作放棄で荒れて光が差し込まない暗い森になり、耕作放棄されている」と現状を訴えた。 里山保全のためのNPO法人を立ち上げ、農業体験事業などを行ってきた松村さんは、担い手不足について「食やクラフト体験をとり入れると、女性や子どもも関わることができる」と話し、ビジネスにつなげる取り組みとして、自然保育などの好事例を挙げた。 日本や欧州の里山を研究する… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル