黒田早織2023年9月4日 21時30分 兵庫県伊丹市立伊丹病院の男性研修医(当時25)が2018年、長時間労働などで精神障害を発症し自殺したとして、両親が病院側に約1億3千万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴していたことがわかった。 提訴は7月3日付。訴状によると、男性は18年4月に同病院に採用され、外科などで業務に従事したが、7月12日に寮の自室で死亡していた。同年5月に99時間、6月に96時間の法定外労働時間があったと主張している。 両親は、男性は医療機関を受診していなかったものの、当直勤務を含む長時間労働に加え、担当患者33人のうち4人が死亡するなど強い心理的負荷があり、「業務と死亡の関連性は強い」と主張。「病院側は安全配慮義務に違反している」として賠償を求めた。 今年3月に伊丹労働基準監督署に労災認定を受け、死亡時までにうつ病の症状がみられたことや、死亡までの2カ月間にそれぞれ70時間と79時間の時間外労働があったことが認められたという。 病院は4日、「係争中であるためお答えは控えるが、(労働基準法違反となる)80時間超の時間外労働は認定されていない」などとするコメントを出した。(黒田早織) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
復活した裏路地酒場、魅力は怪しさか距離感か 探究会会長と歩く
徳島市の歓楽街・秋田町周辺にある裏路地には趣深い酒場が多い。全国の夜の街と同様、新型コロナ禍で一時は沈んだが、コロナの5類移行から3カ月を経て、活気を取り戻しつつある。8月のある日、「とくしま裏路地酒場探究会」会長の大西弘真(ひろまさ)さん(49)と路地を歩いた。 秋田町周辺には小料理屋やバー、居酒屋が密集する狭い路地が5カ所ほどある。阿波踊り開幕前日の11日夜に落ち合った大西さんは、こう語った。 「入り組んでいて不思議な怪しさもある。知り合いを連れてきて、さっと店に入ったら『こんなディープな店を知っているんだ』と株が上がるでしょうね」 お薦めの裏路地のうち、通りの看板があるのは「茶柱通り」と「レンガ横町」だ。他の路地の名は、地元自治会に尋ねたり相談したりして探究会がつけた。「通りの名がないとわかりづらいから」という。 まず茶柱通りへ。栄町と鷹匠町の間に、幅2メートルもない狭い路地が50メートルほど続く。小料理屋やバー、イタリアン、タイ料理などの店が密集している。 通りの入り口で、年季の入った通り名の看板が目に入る。通り名の下に掲示されている店舗は5店だが、すでに移転した店が多い。 午後6時。この通りで出店して30年以上の小料理屋「まわり道」が開店したので、のれんをくぐった。ふだんは1階のカウンター8席で営業し、宴会が入れば2階を使ってもらう。 迎えてくれたのは2代目おか… この記事は有料記事です。残り1659文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コロナ患者の人工呼吸器を2分止めた疑い 医師を書類送検
新型コロナ患者の人工呼吸器を2分間止めたとして、大阪府警は4日、府立中河内救命救急センターに勤務していた医師の男(50)を暴行の疑いで書類送検し、発表した。府警は検察に判断を委ねる「相当処分」の意見を付けたという。 捜査1課によると、医師は2021年3月29日、入院していた当時60代の男性患者の人工呼吸器を2分間止める暴行を加えた疑いがある。男性は呼吸の状態が悪化したが、回復したという。 同課によると、医師と男性は人工呼吸器の装着方法をめぐってトラブルとなった。医師が筆談で「呼吸器がないと無理やから、呼吸器止めてみます?」と投げかけると、男性が「止めてみろ」と応じたという。府警の調べに医師は「それ以外の選択肢がなかった」などと供述したという。 センターの運営法人は21年12月、「故意に苦痛を与える行為で重大な倫理違反がある」として、医師を戒告の懲戒処分にした。一方、医師は処分の無効などを求めて大阪地裁に提訴しており、係争中という。(甲斐江里子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日本の水産物禁輸 危機を「希望」に変えたホヤの魅力の再発見
記者コラム 「多事奏論」 編集委員・長沢美津子 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が始まった8月24日の翌朝、東京の豊洲市場を歩いた。というか、放出をめぐる受け止め方の違いや、中国による日本の水産物の全面禁輸をめぐってネット上に飛び交う言葉のとげとげしさに、たまらず飛び出してきた。 議論される「科学」や「政治」、個々の「感情」とは異なる「営み」の現場とでも言おうか。私にとって豊洲は魚の先生。産地と消費地の間に立って働く目から、何を見ているか聞きたかった。 豊洲の水産仲卸で作る東京魚市場卸協同組合理事長の早山豊さん(73)は、市場への影響を聞きに次々と来るメディアに、こうくり返していた。 「産地から安全性が担保され… この記事は有料記事です。残り1085文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
リアルな幼虫「ぷくぷく標本」、作りませんか? きっかけは「ミス」
表皮のやわらかい幼虫などをリアルな姿で標本に――。そんな「ぷくぷく標本」と呼ばれるワザがある。虫の生き生きとした姿やからだの仕組みを詳しく観察でき、その魅力を教えてくれる。虫の音が聞こえる季節に、大人も、子どもも、本格的な自由研究に挑んでみては? 特に、ゲンゴロウなどコウチュウ目の幼虫は標本にする時に悩みがある。表皮が柔らかく、乾燥させるとしぼんでしまう。それを防ぐため、標本をエタノールを満たした容器に入れて展示することが多いが、観察しづらく、時間が経つと脱色して見た目も悪くなり、「もやし標本」と言われることも。 そこに一石を投じたのがぷくぷく標本だ。石川県ふれあい昆虫館(白山市)の学芸員、渡部晃平さん(37)が開発した。 きっかけは「ミス」だった。 記事後半では、家庭でもできるぷくぷく標本の作り方を紹介します ゴミムシを標本にしようと衣… この記事は有料記事です。残り1288文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「大変やけど、もう慣れた」 宅配業者が来ない離島、届けるのは住民
滋賀県近江八幡市の琵琶湖に浮かぶ島「沖島」。約240人が暮らす湖内唯一の有人離島で、対岸までの約1・5キロを1日12便の定期船が10分で結ぶ。この島宛ての荷物を運んでいるのは、宅配業者ではなく、島民だ。 午後5時、島の対岸にある「山甚水産」で働く北村さよみさん(65)は仕事が終わると、ヤマト運輸が店に届けた荷物を台車にのせ、慌ただしく店を出る。湖岸にある堀切港発の定期船は、乗り遅れると、1時間以上待つこともあるからだ。緩やかな坂をぐいぐいと上りながら、船着き場へ急ぐ。「これを平日は毎日よ。大変やけど、もう慣れたわ」 ヤマト運輸の荷物を陸から島へ運び続ける北村さん。配達に同行しながら、荷物の量の変化や離島の物流を支える苦労について聞きました。 この日の荷物は、砂糖が入っ… この記事は有料記事です。残り798文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
辺野古訴訟、沖縄県の敗訴確定 設計変更の承認求める国の指示は適法
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐる県と国の訴訟で、最高裁第一小法廷(岡正晶裁判長)は4日、県の敗訴が確定する判決を言い渡した。軟弱地盤の発覚に伴って防衛省が申請した設計変更を不承認とした県に対し、国土交通相が申請を承認するよう「是正指示」を出したのは適法と判断し、県側の上告を棄却した。 この判決で、玉城デニー知事は設計変更を承認する法的義務が確定した。玉城氏が承認を拒んだ場合は、国が県に代わって承認する「代執行」の手続きを取る可能性もあり、埋め立てが始まっていない北側の区域での工事着手に向けて重大な局面を迎える。 防衛省は2020年4月、辺野古沖の北側の海底で見つかった軟弱地盤を改良するため、水深70メートルの海底に7万本以上の杭を打ち込むなどの追加工事が必要だとして、設計変更を県に申請した。県は21年11月、「地盤の安定性の検討が不十分」などとして不承認とした。 これに対し、埋め立てに関する法律を所管する国交相は22年4月、地方自治法に基づき、不承認を取り消す「裁決」をするとともに、県に「是正指示」を出して申請を承認するよう求めた。 県は、総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会に不服を申し立てたが退けられた。このため同年8月、国交相の判断は違法として福岡高裁那覇支部に提訴した。 高裁は今年3月の判決で、「県の不承認処分は考慮すべきでない事項を過剰に考慮しており、裁量権の逸脱・乱用があった」などとして是正指示は適法と判断し、県の請求を棄却した。 上告した県は「設計変更の許可は知事に広い裁量があるのに、高裁は法律の解釈を誤った」などと訴えたが、第一小法廷はこの日、こうした主張を退けた。 県は、国交相が不承認を取り消した「裁決」についても別の訴訟で争ったが、最高裁は8月の決定で上告を退け、既に敗訴が確定している。 県は、国の対抗措置の取り消しを求める訴訟をもう1件、別の形で起こしているが、過去の判例から勝訴するハードルは高いとみられる。(遠藤隆史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「大麻、やらなければよかった」 城西国際大生がVR動画で呼びかけ
宮坂奈津2023年9月4日 11時30分 大麻なんて、やらなければよかった――。主人公が後悔したときには、すでに遅かった。 若者を中心とした大麻乱用の広まりを受け、城西国際大(千葉県東金市)メディア学部の学生が大麻の危険性を訴える映像を作成した。県警の公式ユーチューブチャンネルで公開されている。 タイトルは「香澄と大麻」。主人公の香澄は入学したばかりの大学1年生。期待に胸を躍らせていたが、共通の歌手が好きで親しくなった仲間内でいきなり大麻を勧められた。違法と知りながらも断れず、おそるおそる大麻の吸引パイプを口にした。以来、やめられなくなった。 約20分間の映像は360度を見回すことができるバーチャルリアリティー(VR)の技術を使って作成。専用のゴーグルを着けると、映像の中にいるような臨場感のなか、大麻を勧められるという体験ができる。ゴーグルがなくても映像の視聴はできる。 県警からの依頼を受けてメディア学部の学生25人が脚本、撮影、編集に関わり、約9カ月で完成させた。同世代の大麻乱用経験者に取材して台本を考えたといい、主人公らのせりふには取材を通して印象に残った言葉を使ったという。 県警刑事部は8月30日、薬物乱用防止に貢献したとして学生らに感謝状を贈った。監督を務めた程逸帆(ていいつはん)さん(22)は「大麻は遠い存在だと思っていたが、実は若者の身近に潜む危険だと感じた。どう誘いを断り、使用しないか、映像を通して伝えたい」と話した。 映像は以下のURL(https://youtu.be/jdZ1D2L_s1o)やQRコードから視聴できる。(宮坂奈津) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
紙の本が持てない 足先で繰る電子書籍 読書バリアフリーが必要な訳
「読みたい本を読めないのは権利侵害」――。7月に芥川賞に選ばれた「ハンチバック」の著者、市川沙央さんは受賞会見でそう述べ、「読書バリアフリー」の推進を訴えた。障害にかかわらず、誰もが読書できる環境をめざす「読書バリアフリー法」が施行されたのは4年前。取り組みはどこまで進んでいるのか。 マウスに乗せた足の指先をわずかに動かし、パソコンの電子書籍のページをめくる。東京都江戸川区の日永(ひなが)由紀子さん(56)の読書の方法だ。読んでいるのは、カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」。 25歳で筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患った。筋肉が徐々に衰える難病で、現在は腕や胴体、足、頭を自力で動かすことができない。 まぶたを動かしたり、パソコンに文字を記したりして意思を示す。数十分ごとにたんの吸引が必要なため、24時間ヘルパーが付き添っている。 福岡県久留米市出身。子どもの頃は「赤毛のアン」や「若草物語」を愛読した。 読書をあきらめたくない 看護師になって7年目の25歳の時、手に持つ物を落とすようになった。結婚し妊娠した直後にALSを発症。長女を出産したが、少しずつ筋肉が動かなくなった。 「絶望でした」… この記事は有料記事です。残り1276文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「神経質」で注意深い性格でも陥ったワナ 一瞬で奪われた1千万円
1千万円をだまし取られた千葉県北部に住む50代の男性は、力なく笑った。「墓参りに行こうと思ったけど、さすがに行けないですよ。何を言えばいいんだろうって」。亡くなった母親から、死亡保険金として相続したお金だった。 7月中旬の金曜日。床屋に行った後、自宅に戻ってパソコンを開くと1通のメールが届いていた。 《重要:【A銀行】お取引目的等の確認のお願い》 本文を読むと、「直近の取引について、いくつかの質問がございます。下記のリンクをアクセスし、ご回答ください」とあった。 他の銀行からネット銀行のA銀行の口座に1千万円を移したばかりだった。「だから(連絡が)来たのかな」。疑問は抱かなかった。 指定されたリンクをクリックすると、A銀行のいつもと同じログイン画面が表示された。パスワードを入力し、アンケートに答えた。そのまま、1回ごとに使い捨てる「ワンタイムパスワード」も打ち込んだ。 約20分後、新たなメールが届いた。 「いつもA銀行をご利用いただき、ありがとうございます。下記のお振り込みを受け付けいたしました」 そこには、1千万円の振り込みを受け付けたと書かれていた。「何をやっているんだ」。1通目はA銀行をかたったフィッシングメールだったと気がついた。2通目は本物のA銀行からで、自分の口座から1千万円が消えたことを意味していた。 「被害者ではない」 急いでA銀行に電話をしたが… この記事は有料記事です。残り1387文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル