生活に困っている人やその支援団体に食料品を配る「フードバンク」で、レトルト食品などのおかずが不足している。食料品が値上がりし、一般家庭などからの寄贈が集まりにくくなっているからだ。コロナ禍に続く物価高で食料支援を待つ人たちは増えており、フードバンクは余った食料品の寄贈を呼びかけている。 NPO法人「フードバンクふじのくに」(静岡市)は8月いっぱい、家庭で余っている食品などを寄贈してもらう「フードドライブ」を開催した。県内の約300カ所に食品回収ボックスを置き、「フードバンクが腹ペコだ!」と寄贈を呼びかけた。 ふじのくには2014年度に活動を始めた。企業・団体や一般家庭から寄贈された食料品を、県内の自治体、支援団体、社会福祉協議会などを通じて生活に困っている人たちに提供している。 事務局によると、提供した食料品の出庫重量は、14年度の約14トンからコロナ禍の20年度には約90トンに増え、22年度も約80トンあった。寄贈された重量も増え、20年度は約107トン、22年度は約90トンだった。 しかし、今年は寄贈の動きが鈍いという。フードドライブは毎年夏と冬に開いてきたが、生協の店舗に置いた回収ボックスの状況を途中で確認したところ、例年は40~50箱の寄贈があるのに、今年は20箱ほどしか集まっていなかったという。「寄贈する人も物価高の影響を受けているのではないか」と望月健次事務局長は話す。 とりわけ深刻なのが、レトルト食品のようなおかずになる「副食」だ。1世帯あたり2週間分の食料品として10~20キロほどを提供するうち、主食(コメやパンなど)が半分、副食(レトルト食品や缶詰などのおかず)が3割、しこう品(お菓子や調味料など)が2割ほどになる。ところが、寄贈される食料品は主食やしこう品がそれぞれ4~5割を占め、副食は1~2割ほどしかないという。 背景には、カレーのレトルトや缶詰などは賞味期限が長かったり保存がきいたりするため、食品メーカーやスーパーなどで余りが出にくい事情がある。一般家庭でも保存食として取り置きができる。また、物価高で食料品が値上がりし、一般の人もレトルト食品などを簡単に寄贈しにくい環境になっているという。 ふじのくにではフードドライブ終了後も、静岡市や島田市といった自治体、しずてつストア、富士屋、こくみん共済coopの協力店舗などに回収ボックスを常設している。鈴木和樹事務局次長は「シングルマザーの家庭や貧困に苦しむ人など、物価高で食料品を待つ人が増えている。寄贈する人も余裕がなくなっているなかで、副食の確保が課題になっている」と話す。 副食不足に直面するフードバンクは静岡に限らない。京都市内などで食料品を提供しているセカンドハーベスト京都では7月、夏休みで給食がない子育て家庭約900世帯に15キロの食料品を送った。レトルトカレーやパックごはんを2食分入れたが、ほぼ1食分しか確保できず、寄付金で購入したという。パスタソースも2食分まで確保できず、購入してまかなった。 全国フードバンク推進協議会の米山廣明代表理事は「食料品不足に悩むフードバンクもあり、食料品をどう確保するかが問題。公的資金を投入するといった支援をしないと根本的な解決にならないのではないか」と話している。(大海英史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
JR赤字ローカル線「地元が金出せば存続、おかしい」鳥塚亮氏は語る
国鉄がJRに分割民営化されて36年。国鉄時代から採算が取れないと言われてきた地方ローカル線は、JRに移ったほか、第三セクターの運営で存続したり、廃止してバスに転換されたりと、様々な道を歩みました。残ったところもいま再び、存続させるかの議論が高まっています。 千葉県の第三セクター「いすみ鉄道」で立て直しに取り組み、いまは、北陸新幹線の新潟県内の並行在来線を抱える県の第三セクター「えちごトキめき鉄道」(新潟県上越市)で社長を務める鳥塚亮さん(63)に、地方ローカル線の今後について聞きました。 連載 線路は続くか ローカル鉄道が廃線の危機を迎えています。線路は続くよ どこまでも――。希望を込めて歌うことはできないのか。現場からの報告です。 ――JR東日本や西日本などが、輸送密度が1日2千人未満の地方路線の収支を公表しました。 「『赤字だからやめたいので、地元で金を出してくれたら存続するよ』。JRがそのようなことを言うこと自体、鉄道会社として許されるのでしょうか。そもそも民営化して以来、JR東日本などは33年間連続黒字だった会社です。コロナでたかだか2年赤字になっただけでもうできませんっていうのはおかしい。じゃあ内部留保はどこへ行っているんですか、何が株主還元ですか」 「都会でバリアフリーのために値上げしているのだから、同じように新幹線の特急料金から100円をローカル線にあてればいい。新幹線で出た利益をちゃんとシェアする仕組みをつくって、ローカル鉄道やJR北海道とJR四国に振り分ければいいのではないでしょうか」 「沿線にも『無関心』のつけ」 ――とはいえ「年間何億円もの赤字」と言われると、そのような路線を残すのは難しいなと思ってしまいます。 「ただ、JRが言う赤字額の根拠はなんですかと言ってもブラックボックスなんです。鉄道運賃収入しかカウントせず、沿線の広告やグッズ収入も何も入らない。新型車両を投入しておいて、減価償却費で赤字が増えました、なんていうのもおかしい」 「一方で、沿線の側にも問題はあります。国鉄からJRに承継されて存続したところでは、沿線の自治体もJRに任せっきりで、この路線ならいくらぐらいの赤字になるのか、ということすら分かりません」 「だからJRに『何億円赤字… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
父親を刺殺しようとした疑い 28歳息子を殺人未遂容疑で逮捕 神戸
森直由2023年9月3日 7時55分 同居する父親を包丁で刺して殺害しようとしたとして、兵庫県警神戸西署は2日、神戸市西区学園東町4丁目の職業不詳、大井拓弥容疑者(28)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕し、発表した。父親は意識不明の状態で病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。 同署によると、大井容疑者は2日午後10時35分ごろ、同居する父の無職松一さん(64)の上半身を包丁で刺して殺害しようとした疑いがある。2日午後10時40分ごろ、同居する松一さんの長女から「父と弟がけんかをして、父が1階のリビングで血まみれで倒れている」と110番通報があった。大井容疑者は松一さんの長男で、姉、母と4人暮らし。当時は酒に酔っており、「弁護士が来るまでは話さない」と供述しているという。 松一さんは3日午前0時40分ごろ、搬送先の病院で死亡が確認された。同署は容疑を殺人に切り替え、動機などを調べる。(森直由) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
京都・嵐山の目抜き通り「松並木の復活を」 観光の課題解決へ地元案
京都・嵐山で最もにぎわう「長辻通」に松並木を復活させようと、地元の嵐山まちづくり協議会が動き始めた。高度経済成長期に失われた歴史的景観をよみがえらせ、そぞろ歩きを楽しめる街をめざす。 松並木の復活をめざすのは、渡月橋北詰からJR山陰線までの約600メートル。片側1車線の車道の両側に土産物店などが軒を連ね、路線バスや観光人力車も走る。世界遺産・天龍寺などの寺社や「竹林の小径(こみち)」を訪れる観光客が往来する。 京都市道路明示課によると、渡月橋北詰からしばらくは両側に歩道があるものの、渡月橋から離れるにつれて歩道は次第に狭くなっていく。行楽シーズンの週末などには観光客が車道へあふれ、危険な状態が慢性化している。車の通行量を減らしたうえでの松並木の復活は、こうした安全面の課題解決と観光客の満足度を上げる「一石二鳥」を狙うプロジェクトだ。 松並木のある嵐山の景観は葛… この記事は有料記事です。残り850文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
慰霊祭と遺族つないだ映画監督 「子孫は語り継がなければならない」
関東大震災でデマにあおられた住民らが、群馬県藤岡町(現藤岡市)で朝鮮人17人を虐殺した藤岡事件から100年。9月9日に犠牲者が埋葬されたという成道寺(じょうどうじ)である慰霊祭には、韓国の遺族も来日して出席する予定だ。慰霊祭と遺族とを結びつけたのは、在日朝鮮人2世のドキュメンタリー映画監督の尽力だった。 茨城県に住む呉充功(オチュンゴン)さん(68)。呉さんは横浜の映画専門学校で学び、関東大震災の朝鮮人虐殺をテーマにした映画を制作している。 在日朝鮮人2世 大震災と虐殺がテーマ 呉さんは1982年、東京の荒川河川敷で虐殺された朝鮮人の遺骨発掘調査が行われたのをきっかけに撮影を始めた。生き延びた朝鮮人の証言なども取材して、「隠された爪痕」(83年)を制作。千葉県で軍が習志野収容所に集めた朝鮮人の一部を自警団などに引き渡し、民間人が殺害したという事件の証言などをまとめた「払い下げられた朝鮮人」(86年)も発表した。 追悼式や慰霊祭などを撮影する中で、違和感があった。「追悼式なのに遺族の姿が見えない。追悼するなら遺族がいるべきなのに……。犠牲者には帰りを待っていた家族もいたはずだ」 呉さんは、2012年から韓… この記事は有料記事です。残り715文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
情報保障でSDGsを後押し 色や文字の見え方は人それぞれ
有料記事 編集委員・北郷美由紀2023年9月2日 10時30分 2030 SDGsで変える 色づかいや文字の形などを工夫して、情報をわかりやすく伝える「メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)」の取り組みが広がっています。視覚に障害のある人や高齢者、外国人ら、多様な人々の特性をふまえながら、進められています。「誰ひとり取り残されない」というSDGsの理念を具体化する実践です。(編集委員・北郷美由紀) カラフルなイラスト? 人によってはそう見えない 東京・浜松町のイベント会場で18日から3日間、「伝えるためのユニバーサルデザインフェア」が開かれた。色とりどりの明るいイラストが、人によっては暗くて色も少なく見える。赤と緑、水色とピンクなどの組み合わせが見分けにくい人がいる。老眼や白内障で、文字や数字がにじんだり、ぼやけたりすることもある。多様な見え方を説明したパネル展示を前に、訪れた人からは「知らなかった」との感想が漏れた。 催しを開いたのは、全日本印刷工業組合連合会と組合員有志が運営するNPO「メディア・ユニバーサル・デザイン協会」。誰でも情報を正確に受け取ることができる「情報保障」への業界の取り組みを紹介しようと、初めて企画された。 「男性の20人に1人は、色覚の特徴により、違った見え方をしている。こうした人たちにも見やすい印刷物を作ることが、製造者としての責任を果たすことだと思った」。展示と並行して開かれたセミナーで活動のきっかけを話したのは、和歌山県で印刷会社を営む白子欽也さんだ。 白子さんは仲間の会社とともに、同県海南市から発注を受けた約2千枚の「海抜表示看板」を、協会のMUD認証に沿って作った。大きな波のイラストに「うみからのたかさ」という説明。耐久性を高めつつ、夜でも見やすいようにした。 協会がかかわった製品には、避難所の設営に使うシールセットもある。受付やトイレの場所、ゴミの分別が一目でわかる。掲示板に貼り出される情報を「医療」「食料」「伝言」などに整理できる。イラスト付きで、簡単にはがせる。 避難所では、駆けつけたスタ… この記事は有料記事です。残り1292文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
鈴木宗男氏の元秘書ムルアカさん死去 航空機内で体調急変 62歳
2023年9月2日 10時31分 鈴木宗男参院議員(日本維新の会)の元秘書、ジョン・ムウェテ・ムルアカさんが急死していたことが分かった。62歳だった。 関係者によると、ムルアカさんは8月30日、羽田空港からイスタンブールに向かう航空機内で、搭乗から数時間後に体調が急変。心肺停止が確認され、急死した。詳しい死因は明らかになっていない。 鈴木氏は同31日のブログに出発前にムルアカさんと連絡を取ったとつづり、「これが最後の会話となってしまった。何という世の無常かと、ただただ涙が流れた」などと悼んだ。 ムルアカさんはコンゴ民主共和国(旧ザイール)出身。1985年に来日し、タレントとして活動した後、鈴木氏の私設秘書を務めた。研究者としても日本の大学で勤務していた。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旧統一教会への解散命令、請求の方針 10月中旬で調整 過料も検討
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐって政府は、宗教法人法の「報告徴収・質問権」に基づく調査を終え、10月中旬にも教団への解散命令を東京地裁に請求する方向で調整に入った。政府関係者への取材でわかった。これまでの質問権行使に対して回答のない項目が多数あったとして、同法の罰則を適用して教団側に過料を科すよう、9月上旬に地裁に申し立てる方針であることも判明した。 岸田文雄首相は、請求に踏み切ることで政権として教団側と決別する姿勢を示したい考えだ。政権内での調整によっては、請求の時期が変わる可能性もある。 質問権による調査は、昨年7月に安倍晋三元首相が殺害された銃撃事件を機に、教団をめぐる高額献金問題が改めて注目されたことで始まった。教団と自民党議員の関係に批判が集まっていた昨年10月、首相が質問権行使に向けた手続きを進める考えを国会で表明。文部科学省が昨年11月から今年7月まで7回にわたって行使し、献金▽予算・決算・財産▽組織運営などについて報告を求めてきた。 直近の7回目の行使への回答は8月下旬に届いた。政府関係者によると、これで質問権の行使を終えるという。 一方、質問への回答がない項目が多数あったとして、9月上旬に教団の代表役員に過料を科すよう地裁に申し立てる方向で検討している。有識者で構成される宗教法人審議会を開いたうえで決定するという。過料は同法が規定する罰則で、上限は10万円。質問権に関して過料を求めた事例はこれまでない。 さらに政府は、この申し立ての後、10月中旬にも解散命令を請求する方向で検討。改めて同審議会を開いた後に請求する日程で調整しているという。 同法は「法令に違反して、著… この記事は有料記事です。残り998文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 旧統一教会問題 2022年7月8日に起きた安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、旧統一教会の問題に注目が集まっています。特集ページはこちら。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
【マンガ動画】夏の風物詩ラムネのひみつ ビー玉の役割とは
2023年9月2日 11時00分 【マンガ動画】ラムネの清涼感を支える知恵が詰まったびんです まだまだ暑い日が続いています。キンキンに冷えたラムネがおいしい季節ですね。ラムネと言えばびんの中にビー玉が入っていることが特徴ですが、ビー玉には実は役割があるのをご存じでしょうか? ラムネのびんにはいろいろなおもしろいひみつがあります。詳しくは動画の中で紹介しています。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪を夢見た柔道家、いま立つ畳は教場 「私だからこそできるやろ」
五輪を夢見た柔道家は大阪府警で競技を続けた。妻となり、母となった。警察官として現場の経験を積み、いま再び、畳の上に立つ。そこは「教場」だ。 緑と赤の畳が敷かれた柔道場に汗の臭いが漂う。 「昼ご飯、食べたやろ。元気、出そう」 「はい」 大阪府田尻町の警察学校で6月中旬、巡査部長の吉山綾乃さん(48)が声を上げ、約50人の初任科生を指導していた。 岐阜県各務原市の出身。木に登り、山道を自転車で下って遊ぶ。身軽で元気な子だった。交番のお巡りさんに「はよ、帰りな」「気をつけてなー」と優しく声をかけられていた。 「警察官になりたいな」 転機は中学生の時だ。新任の男性教諭が柔道部をつくる。12歳、柔道着に初めて袖を通した。強くなれば警察官になれる――。そう信じて五輪をめざした。 女子柔道が盛んになる前。高校では男子部員と稽古した。3年生で全日本柔道連盟の強化選手に。筋力も技も上がり、大学生の全国大会で準優勝するまでになった。 府警には1997年4月に採用され、柔道は2000年3月まで現役として続けた。 選手引退。五輪をめざした柔道着から、警察官の制服に着替え、現場へ出た。殺人未遂事件の現場に駆けつけ、刃物を持つ容疑者を取り押さえた。喫煙や万引きをした少年たちと向き合い、立ち直りを支える係も経験した。 昨春、警察学校の指導者に起用された。背景には女性に対する期待と重要性の高まりがある。入校生のうち女性の割合は08年度の11%から昨年度は21・6%に増えた。 この人事に「私だからこそできるやろ」。出産や育休、育児と仕事の両立に苦労したこともある。女性だからこその悩みも知る。 「卒業した瞬間に直面するのは厳しい現場です。覚悟を持って来て欲しい。全力でサポートします」。大学生の長男や長女と重なる年頃の、警察学校での教え子たちへの思いだ。 退職する入校生も 「教場」の現実 警察学校は長岡弘樹の小説「教場」や木村拓哉の主演ドラマの舞台で、「ふるい」に例えられる。警察官に適した人材を選び抜く、過酷で閉ざされた空間として描かれる。 府警幹部は「一般的な会社員… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル