歴史的建造物のミニチュア模型を目の不自由な人に触ってもらい、その素晴らしさを実感してもらいたい――。そんなプロジェクトを、神奈川県葉山町に住む大下利栄子さん(63)が進めている。いま制作しているのは鎌倉五山の一つ建長寺(鎌倉市)の仏殿。実物の前に設置し、最終的には視覚障害者だけでなく誰でも触って思いを分かち合えるようにしたいという。 大下さんは視覚障害者も楽しめる透明の点字シートの付いた絵本を手作りする私設図書館「ユニリーフ」(葉山町)の代表を務めている。 次女(27)が幼いころに病気で失明。一緒に旅行しても観光地では感動をその場で共有するのが難しく、一抹の寂しさを感じていたという。 きっかけは「ベレンの塔」の模型 2014年、大下さんはたま… この記事は有料記事です。残り976文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ダイビング客ら20人乗せた船が転覆、全員救助 沖縄・下地島沖
棚橋咲月2023年8月16日 16時08分 16日午後0時40分ごろ、沖縄県宮古島市の下地島の沖合で「船が転覆している」と第11管区海上保安本部に118番通報があった。 宮古島海上保安部によると、ダイビング客ら20人(男性13人、女性7人)を乗せた「クリスタルM」(4・8トン)が転覆。午後1時20分ごろ、宮古島海上保安部の巡視船などが全員を救助した。うち1人が体調不良を訴えて病院に搬送された。意識はあるという。 宮古島海上保安部が転覆の原因などを調べている。(棚橋咲月) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
初めて知った支援学級の濃密な世界 先生たちが舞台に「理屈でなく」
神奈川県茅ケ崎市と寒川町の小学校の先生らでつくる演劇サークル「茅小演」が19、20日、同市民文化会館で4年ぶりに公演する。教えるばかりでなく、学び続けたいと願う先生たちの体当たりの舞台で、今回は小学校の特別支援学級がテーマだ。 茅小演は1988年、演劇の手法を授業に採り入れようと有志の研究会として発足。やがて「子どもにやらせるだけでなく、自分たちもやってみて、失敗しながら成長しよう」と、長期休みなどを利用して稽古を重ね、数年に一度のペースで公演をしている。 今回の演目は「なかよし~支援級の一年~」。メンバーの馬場健秀さん(61)が、2年前の異動で初めて担当した支援級での日々をオリジナルの脚本に書き下ろした。 「同じ校舎にいながら、初めて知る世界があった。子どもたちとの関わりが濃密で、目を見開かされた毎日の一端を共有できれば」と話す。 定年を迎えた教員コクブは、異動先で初めて支援級を担当し、話すのが苦手な小6のトオルと、ひたすらサッカーボールを蹴り合うことで心を通わせる。 トオルは学校が大好きで、毎日「明日、学校?」と聞き、喜ぶ。子どもたちの純真さに心打たれるコクブだが、一方で、複雑な家庭環境や、ストレスを抱える現実も見えてくる。 通常級の授業や給食に「交流」として参加する際、ほかの子どもたちの言葉に傷ついたり、遠慮したりする支援級の子たちの様子も描かれ、コクブがはっとさせられる。 コクブは「通常級の担任だった頃は、交流に来る子たちがこんなに緊張して、こんなに勇気を振り絞って来ているなんて考えもしませんでした」と吐露する。 コクブを演じるのは、茅ケ崎市立香川小学校で「通知表をやめた校長」として知られる国分一哉さん(61)。実は国分さんも今春の定年後に非常勤となり、初の支援級を担当している。「馬場さんは、この年になって新鮮に感じたことを純粋に見てもらい、支援級の日々を理屈でなく体験してほしいのだと思う」と話す。 メンバーも議論を重ね、模索しながら臨む舞台だが、「教え子たちが見て楽しめるように」と笑いあふれる演出になっている。 19日は午後2時と6時、20日は午前10時と午後2時からの各日2回公演。入場無料。問い合わせは府川さん(080・3176・7308)。(足立朋子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大空襲「二度と」 あれから78年、88歳語り部のバトンは渡された
78年前の1945年8月2日、富山大空襲は終戦の2週前だった。その語り部で富山市の佐藤進さん(88)の娘と孫が今年、活動を受け継ぐ準備を始めた。戦争の体験者が減るなか、3世代でバトンをつなぐ。 空襲の時、佐藤さんは10歳。父は兵隊に取られ、一家は母と兄、妹。警報で自宅庭の防空壕(ごう)に入ったが、「危ない」と田んぼへ。さらに近くの小川に兄と飛び込んだ。母と妹も続いた直後、焼夷(しょうい)弾で辺りは火の海に。「数秒遅れたら助からなかった」。焦土の街で、黒こげの犠牲者や無残な光景を多く見た。 2001年、近所の中学生に頼まれて体験を語った。以後、学校などでの出前講座は約260回。聞いた人は、今月で延べ2万人に達する。 バトン受け継ぐきっかけは…… 佐藤さんがバトンを託すのは、次女の西田亜希代さん(53)と孫娘の七虹(ななこ)さん(15)=富山市立芝園中学3年=だ。 富山大空襲 1945年8月2日未明、米軍のB29爆撃機170機以上が約2時間にわたり、大量の焼夷弾を富山市に投下。一夜にして目標の99.5%を破壊した。死者は推定3千人。同じ時期に新潟県長岡市、東京都八王子市、水戸市も空襲された。 きっかけは、佐藤さんが数年… この記事は有料記事です。残り1499文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「うまみが凝縮」特別なコビレゴンドウ 町とクジラ肉の深い付き合い
太地町の人たちにとって特別なクジラがある。 コビレゴンドウだ。 漁師たちは、とれると漁期のはじめにお神酒などをくれた地元の人におすそわけに向かう。 「とれたら町の人が喜んでくれるし、とれんかったら『ないの』と言われるし」とある漁師は言う。 太地の追い込み漁で対象になっているクジラやイルカの半分は、「ゴンドウクジラ」と呼ばれる種だ。くちばしのような「吻(ふん)」がなく、ずんぐりした頭をしている。 太地で古式捕鯨が栄えた江戸時代、漁師たちは数百人で船団を組んで大型のセミクジラやザトウクジラをとっていた。大型クジラの回遊が減った江戸末期ごろには、「副業」として小型のゴンドウクジラを突きとるようになったという。 ハナゴンドウにカズハゴンドウ。この町との縁が深いゴンドウクジラだが、町の人たちが「ゴンド」と言うとそれは1種類、コビレゴンドウを指す。 ゴンドが特別なのは、脂がの… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戦争なんて想像できなかった私 遺族代表の13歳が受け継いだ誓い
終戦の日の15日、戦争体験者やその思いを受け継ごうとする小さな遺族らが、慰霊とともに平和への誓いをあらたにした。 父は言った「戦争がもう少し長引いたら」 共立女子中2年の松原早織さん(13)=北区=は、大伯父をマリアナ群島で亡くしている。祖父は特攻隊に志願したが、出撃命令が出る前に終戦を迎えた。父からはこう伝えられてきた。 「戦争がもう少し長引いておじいさんが特攻隊で出撃していたら、お父さんも君もこの世に生まれてきていないのだよ」 15日に文京区内で開かれた東京都戦没者追悼式。10~100歳の遺族ら441人が参列するなか、松原さんは遺族を代表して「追悼のことば」を述べた。 13歳の松原さんはこの後、「『戦争』をこれまでよりも『現実』に捉えるようになった」と述べます。その理由とは。後半では幼少期に戦争を体験した82歳の女性が、自身の戦争の記憶と思いを語ります。 「父が祖父の思いを引き継い… この記事は有料記事です。残り969文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「300体を生体解剖」細菌戦部隊の証言 市の施設で展示見送り
有料記事 三井新 後藤遼太2023年8月16日 9時00分 加害の歴史を伝えるパネルの展示が、1年以上宙に浮いている。 戦争や平和について学ぶ施設として、長野県飯田市が昨年5月に開設した平和祈念館。日章旗や特攻隊員の手紙など、市民から寄せられた太平洋戦争にまつわる約120点が展示されている。 旧日本軍の「731部隊」の元隊員らの証言を含むパネル8枚も掲げられるはずだった。 731部隊は正式名称「関東軍防疫給水部」。旧満州のハルビンに広大な施設を設け、細菌兵器の開発を目的に、「マルタ(丸太)」と呼ぶ捕虜に様々な人体実験を行った。細菌兵器を実戦で使う「細菌戦」にも関わった。 こうした事実は、2002年に中国人遺族らが日本政府に賠償を求めた訴訟で、東京地裁が、元隊員や研究者らの証言をもとに判決で認定した。一方、政府は03年に「外務省、防衛庁等の文書において、細菌戦を行ったことを示す資料は現時点まで確認されていない」との答弁書を出した。 終戦直前、施設は軍によって破壊され、文書も焼かれた。隊員は口外を禁じられたとされる。 「過激にならないように」との意見も 「クロロホルムを注射し、生きている人間をパタッとやった」「300体もの生体解剖をした」「逃げ出したマルタを車でつぶした」。部隊での行為を本に書いたり、講演で話したりしていた元隊員らの証言を、名前や顔写真とともに展示する準備が進んでいた。 見送った理由について、祈念… この記事は有料記事です。残り1502文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
東海道新幹線、三島―静岡間で運転見合わせ 雨量計が規制値を超える
2023年8月16日 9時19分 東海道新幹線が、三島―静岡間の上下線で運転を見合わせている。JR東海が16日午前8時45分に発表した。運転再開までしばらく時間がかかる見込みとしている。 同社によると、8時半ごろに、新富士―静岡駅間に設置している雨量計が規制値を超えたためだという。同社ホームページでは、8時55分現在の参考雨量として、過去1時間の雨量75ミリとしている。東海道新幹線は遅れが発生しているという。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
台風7号が近畿地方を縦断、日本海へ抜ける 40人以上が負傷
宮野拓也 細沢礼輝 小早川遥平2023年8月16日 5時00分 台風7号は15日午前5時前に和歌山県・潮岬付近に上陸して近畿地方を縦断し、日本海に抜けた。岡山、鳥取両県で線状降水帯が発生したほか、気象庁は同日夕から夜にかけ、経験したことのない大雨になっているとして鳥取市に大雨特別警報を出した。 各府県などによると、和歌山市の男性(60)が壊れた外壁のそばで意識不明の状態で見つかるなど、東海、近畿で少なくとも44人が負傷。各地で停電や河川の氾濫(はんらん)が相次ぎ、交通機関も大きく乱れた。 同日午後6時40分時点の24時間降水量は、鳥取市で491・5ミリ、岡山県鏡野町で476・5ミリを記録し、いずれも観測史上1位を更新。このほか三重県大台町で605・0ミリ、和歌山県那智勝浦町で521・0ミリを観測した。 台風7号は午後8時時点で兵庫県豊岡市の北北西約40キロにあって時速約15キロで北に進んでいる。中心気圧は990ヘクトパスカル。最大風速は25メートル、最大瞬間風速は35メートル。 16~17日に日本海を北上する見通しで、東海では16日午前中にかけて線状降水帯が発生する可能性がある。同日午後6時までに予想される24時間降水量は多い所で、東海200ミリ▽北陸、中国150ミリ▽関東甲信120ミリ▽近畿100ミリ。 JR東海と西日本によると、16日の東海道・山陽新幹線は始発から通常通りに運転予定だが、設備の被害が確認されれば一部で運転見合わせの可能性もある。空の便では大阪(伊丹)、徳島、神戸、小松の各空港で一部の便が欠航する。(宮野拓也、細沢礼輝、小早川遥平) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「問題児なんていない」 遊び場に立ち続ける「第3の大人」の気づき
日差しが降り注ぐ8月初旬、東京・新宿の戸山公園の一角で開催されている「新宿・戸山プレイパーク」では、子どもたちのはしゃぐ声が響いていた。水で全身びしょぬれの子、泥を気持ちよさそうに触る子、身長の倍以上ある木の上のデッキによじ登る子――。思い思いに遊びを楽しんでいた。 「自分の責任で自由に遊ぶ!」がモットー。木漏れ日が気持ちいい広場に既製の遊具は存在せず、あるのは木製の手作りやぐらや木に結ばれたロープなど。誰でも無料で自由に遊べ、公園にありがちな禁止事項もほぼない。ルールはみんなで考え、大人は見守りに徹するのがお約束だ。 「ナオ、俺こっから登ったんだよ!」 「ナオ、見てて!」 「ナオ」と呼ばれ、子どもたちから親しまれていたのがプレイリーダー橋川尚尭(なおたか)さん(31)だ。多くは語らず、つかず離れずの距離感で子どもと接する。特別なことをしなくても、橋川さんのもとには自然と子どもたちが集まってくる。 運営する「新宿・戸山プレイパークの会」は1998年、地元の母親有志によって作られた。今は新宿区の助成金を受けてプレイリーダーを雇い、週4、5日、パークを開催。泥遊び、木登り、火遊びなどが日常的にでき、乳幼児の親子連れから小中高校生まで、幅広い年齢層の子どもが遊びに来る。1人で来ても、そこにいるみんなが友達となり、交ざり合って遊ぶ。 プレイリーダーは遊びの環境を整え、時には一緒に遊び、子どもを見守るのが仕事だ。毎日、やぐらやロープなど敷地内の安全を点検。けが対応や大事故を想定したシミュレーションも行い、多少のリスクは恐れずに、安心して遊べる場を提供する。 全国には様々なプレイパークが存在し、多くの場所で複数のプレイリーダーが常駐する。日本では特に資格は必要ないが、「子どもをコントロールしない心、子どもをありのまま受け入れるマインドが必要」と橋川さんは言う。 学校や街角、自然の中……様々な場所で、多様な大人たちが日々、子どもの育ちをみつめています。子どもや若者と関わる人たちを訪ね、「学びの今」「子どもの今」を紹介します。 「問題児」は大人が作り上げた 橋川さんは大学卒業直後から… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル