アメリカのトランプ大統領は26日、日本と原則合意したと話す貿易交渉をめぐり、日本からの輸入車への追加関税について「現段階ではかけない」と述べた。一方で「いずれ課すかもしれない」と牽制し、日本に対して貿易赤字の解消を求めた。 【映像】トウモロコシ250万t購入 実はトランプ氏への貢物? また、アメリカの飼料用トウモロコシ約250万トンを日本が追加輸入することでも合意。トランプ大統領は「中国が約束を果たさずに余っていたトウモロコシを安倍総理が買ってくれることになった」と述べた一方、安倍総理は「害虫対策の観点から購入を必要としている」という。 日本の飼料用トウモロコシ(濃厚飼料)は99.9%(総量1131万トン)を輸入に頼っており、その内の約95%(1075万トン)はアメリカから輸入している。そこに今回、約250万トンを追加輸入することになるため、「必要なのか」「余らないのか」という意見がある。さらに、害虫被害を受けているという日本産のトウモロコシはアメリカ産のものとは別の種類であるため、代替にはならない。 トウモロコシを大量購入する日本にはどのような思惑があるのか。テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は「トウモロコシの購入は本筋の牛肉や豚肉、自動車の交渉を日本にとってプラスにするためのお土産のような、下手に出てアメリカのご機嫌を取るためのもの。TPP交渉時、アメリカは乗用車の関税を撤廃するところまで譲歩していて、この撤廃見送りというのは日本からしたら許しがたいこと。本来は大問題だが、そういった交渉をうまくいかせるためにトウモロコシを持ち出した」と指摘する。 また、これは2020年の米大統領選を見据えた戦略だとし、「トランプ大統領が中国などへの関税を引き上げたことで、アメリカの農家は売れなくなり苦しんでいる。トウモロコシの一番の産地であるアイオワ州の農家も、トランプ大統領に対して不満を持っている。アイオワ州では来年2月に大統領選の予備選挙があるので、民主党の候補はアイオワを狙って選挙運動をやっている。大統領もここで負けるわけにはいかないわけで、日本がトウモロコシを買ってくれたということが加点になる。日本はトランプ大統領に最大の助け舟を出した」と説明した。 なぜ、日本はこうした低姿勢外交を続けるのか。名村氏は「日米貿易交渉の歴史の中で、アメリカは理不尽なことも強く言ってくるが、日本にとってはいかに頭を下げて風をやり過ごすかということが重要。今までそうしてきたことを、今回トウモロコシでやっている」とし、今後の展開については「今回の交渉も完全にまとまったわけではなく、トランプ大統領のことなので1カ月後に何があるかはわからない。気をつけて見ていかないといけない」と注意を促した。(AbemaTV/『けやきヒルズ』より) 【関連記事】 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
「天声人語 2019年8月28日」(朝日新聞デジタル)
英語の言い回しに「陶磁器店に闖入(ちんにゅう)した雄牛」というのがある。棚に並べられたカップやお皿は大丈夫か。危なっかしいこと、この上ない。「何でもぶち壊すような、はた迷惑な人」の意味で使われるこの言葉を欧州メディアで目にした▼言うまでもなく、仏ビアリッツの主要国首脳会議(G7サミット)でのトランプ米大統領のことだ。乱暴な雄牛をキレさせない、暴れさせない。それができればサミットは成功らしい。会議が終わり、トランプ氏はそれなりに気分よさそうに帰った▼議長役のマクロン仏大統領の頭には、昨年のカナダG7の悲劇があったのだろう。…… 本文:615文字 この記事の続きをお読みいただくには、朝日新聞デジタルselect on Yahoo!ニュースの購入が必要です。 朝日新聞社 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
(社説)年金財政検証―不安に応える改革を(朝日新聞デジタル)
将来の年金はどうなるのか。人口推計や経済見通しをもとに5年ごとに点検する、年金の財政検証の結果が公表された。 高齢化と人口減少が進み、受け取れる年金の水準低下は避けられない。厳しい現実を改めて突きつける内容だ。痛みを和らげるために何ができるのか。結果をもとに、改革の議論を深めなければならない。 年金の水準は、現役世代の平均手取り収入の何割か(所得代替率)で示される。今年度は61・7%だが、経済成長などを見込むケースでも約30年後には51・9~50・8%に低下する。 特に基礎年金は給付を抑えるための調整期間が長く、約3割低下する見通しだ。…… 本文:1,006文字 この記事の続きをお読みいただくには、朝日新聞デジタルselect on Yahoo!ニュースの購入が必要です。 朝日新聞社 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
(社説)G7サミット―多国間協調の理念守れ(朝日新聞デジタル)
大戦後の国際秩序を主導してきた米国が、自国の利益のみを優先する行動を繰り返す。この難局をどう乗り越えて、多国間協調の未来をつなぐか。 ことしの主要7カ国首脳会議(G7サミット)の主題は、そこにあったといえる。議長国フランスのマクロン大統領は、会議の決裂を食い止める責任の重さに悩んだことだろう。 異例に短い「首脳宣言」が、難渋ぶりを映し出した。G7が世界に促してきた「自由貿易」は、言葉すらない。米政府が背を向ける気候変動対策は、最初から文書の枠外だった。 問題の核心であるトランプ大統領と、マクロン氏はあえて共同会見を開き、会議を締めくくった。…… 本文:1,019文字 この記事の続きをお読みいただくには、朝日新聞デジタルselect on Yahoo!ニュースの購入が必要です。 朝日新聞社 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
沖縄の若者は保守化? 初当選の高良氏が考える「現実逃避」の実像 参院選で「もったいない」連発した理由(withnews)
7月21日に行われた参院選沖縄選挙区(改選数1)で、高良鉄美氏が米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の支援を受けて初当選しました。出口調査では、20代と30代がともに半数以上が自民候補に投票したと回答するなど、沖縄県内における世代間の違いも浮かび上がりました。若者は選挙、基地についてどう思っているのか。調査から見えた課題を高良氏に聞きました。(朝日新聞世論調査部・小野智美) 【画像】沖縄にあった「幻の市場」今はもう基地の中……戦前の写真をカラー化して見えたもの 「移設費は全国民の税金」 ――高良氏が選挙戦で前面に掲げたのは、辺野古移設反対。その際によく使った言葉は「もったいない」でした。 「もったいない」はずいぶん使いましたね。 防衛費について税金との関係で「もったいない」と話しました。消費税を増税したら、買い控えとか消費不況が起きる。税金を上げなければいけないというほどの必要性があって上げるのなら、まだわかるけれど、そうじゃない。防衛費で無駄遣いしているのだから。 沖縄県が試算した辺野古の移設費2兆5500億円は、税金です。それも沖縄だけではなく日本国中の税金を使うわけだから、沖縄に限った問題ではなく、全国の問題です。全国民の税金がなんで辺野古移設に使われるの、と。お金の使い方の問題なんです。試算通りにおさまらず、3兆円、それより増えて倍になるかもしれない。 老後の生活費が夫婦1組で2千万円不足するという話も出ましたね。3兆円もの税金があれば、それで老後の資金も賄えるはず。「納税者として、どっちをとりますか」と話しました。 【2兆5500億円の埋め立て工事費】沖縄県が政府との協議に備えて独自試算した辺野古の埋め立て工事費。飛行場建設費は含まない。当初、防衛省の計画書では「2405億円」と見積もっていた。県の試算では改良工事に2万本の杭を想定。一方、「マヨネーズ並み」と呼ばれる軟弱地盤のため、防衛省は7万6699本の杭を打ち込む大規模工事を検討していることが明らかになっている。政府は埋め立て工事費総額について「確たることは言えない」としている。 次ページは:「若い人の関心は自分の生活にある」 【関連記事】 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
居場所がない女の子へ 千人以上の悩みに向き合う支援団体代表の答え「新しい関係を作るために踏みだそう」(withnews)
【#withyou ~きみとともに~】 これまで何千人もの女性の生きづらさに向き合ってきたNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさん(48)は、多くの悩みの背景には「居場所を求める」不安があると言います。自分の居場所がないと感じる女の子に、橘さんは「新しい関係を作るために踏みだそう」と語りかけます。自分の居場所にどうやってたどり着くのか。困難にあい、橘さんの元で居場所を探す18歳の女性(Aさん)とともに、話を聞きました。(朝日新聞大阪社会部記者・山根久美子) 【マンガ】「こころ」がしんどい時、逃げ込める場所は…夜廻り猫が描く「居場所」 <橘ジュン(たちばな・じゅん)> 1971年生まれ。ルポライター。2009年、NPO法人BONDプロジェクトを設立。繁華街の「夜回り」やメール、ライン、電話で少女たちの話を聞き、必要に応じて一時的に保護したり、医療機関や警察、行政につないだりする活動を続ける。 繁華街、居場所求めて集まる子たち ――BONDプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。 橘さん:元々ライターとして夜の繁華街にいる女の子たちの声を取材していました。死にたい、消えたい、寂しい。そんな生きづらさを抱える彼女たちの声をありのままに伝えることで、何かが動けばという気持ちからです。でも取材で彼女たちの話に耳を傾けるうち、聞いて終わりにできなくなってきて。それが今の活動につながっています。 ――女の子たちの生きづらさの根底に共通するものはありますか。 橘さん:どこにも居場所がないという思いじゃないかな。家や学校、職場で何かトラブルがあって、居場所がないと感じる。だから寂しい。そんな時、夜の繁華街はいつまでも明るくて寂しくない感じがする。だから居場所を求めて集まる子が多いんだろうね。 ――「居場所がない」という女の子へのアドバイスは? 橘さん:居場所は自分の作る人間関係から生まれるものだと私は思っています。人間関係は与えられるものでなくて作るもの。だから今の人間関係に不満があるなら、新しい関係を作るために行動するしかない。親がひどい、周囲が変わってくれない、だから居場所がない。本当にひどいんだと思う。でもそう感じるなら、自分で居場所を探して行動してみるのはどうかな。自分の力で新しい居場所にたどり着けるかもしれないよ。 ――自分の力では解決できない深刻なケースの場合はどうすれば? 橘さん:自分だけで動けない時は児童相談所や周囲の大人を頼ってほしい。ただし大人の選び方には気をつけて。夜の街やSNS、あちこちに女の子を利用しようとする大人もいる。大人の選び方で、人生が180度変わることもあるんだから。 次ページは:繁華街、疲れるけど寂しくなかった 【関連記事】 Source : 国内 – Yahoo!ニュース
表現の不自由展「自分なら開催認めない」 神奈川県知事
愛知県で開かれている「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題をめぐり、神奈川県の黒岩祐治知事は27日、「ああいう慰安婦像は事実を歪曲(わいきょく)したような極めて政治的なメッセージ」「(自分なら)開催を認めなかった」と述べた。 企画展では、慰安婦を表現した少女像など、各地の美術展で撤去されるなどした二十数点を展示。テロ予告や脅迫を含む抗議を受け、開幕3日で中止に追い込まれた。 元フジテレビキャスターの黒岩知事は会見で「私もメディアにいた人間として表現の自由は大事と思う」としつつ、慰安婦像は「政治的メッセージ」であり、「公金を使って後押しすることは県民のご理解を得られない」と語った。 慰安婦問題をめぐり「韓国の主張はある種一方的」「強制的に連行してきたように伝えられている」とも述べた。強制連行について追加の質問を受けると「今日深く踏み込む話じゃない」といらだった様子を見せた。(吉野慶祐) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「夢を叶えた子だった」遺族や友人が語るアニメへの情熱
アニメ制作に情熱を注いできた35人の命が奪われた京都アニメーション放火殺人事件。残る25人の犠牲者の身元が27日公表された。「夢と感動を残してくれた」「誇りに思う」。悲しみを胸に、遺族や友人らが思いを語った。 アニメに「誰よりも強い情熱」 丸子達就さん 京都アニメーション放火殺人事件で27日に死亡が公表された丸子達就(たつなり)さん(31)=京都市東山区=は札幌市出身。「中二病でも恋がしたい!」「たまこまーけっと」で原画を担当。さらに「小林さんちのメイドラゴン」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で作画監督を務めるなど、数々の人気作で活躍した。 丸子さんは10年ほど前、札幌市の専門学校に通っていた。学生時代を知る男性は「優秀な人材が育った同級生の中でも、頭一つ抜けた才能の持ち主だった」。 丸子さんは、2008年に開校した専門学校の1期生。目立つタイプではなく、旅先で写真を撮るときも「笑って」と促され、ようやくはにかむようなシャイな人柄だった。ただ、アニメには「誰よりも強い情熱を秘めていた」。休み時間も教室で机に向かって黙々と絵を描いていた。 画力が高く、同級生から技術的な相談を受けることも多かったが、一つ一つに熱心に答えていたという。 特に難関とされる京アニの入社試験に合格したと聞き、男性は「彼は自分の力だけで夢をつかんだ」と感心したという。 専門学校の卒業制作には京アニへの思いがにじみ出ていた。同級生と作った7分半の短編アニメ「スイートレモネード」。うれしいと身体が宙に浮き上がり、悲しいと身体が地面にめり込んでしまう「浮き沈みが激しい」ヒロインをめぐるラブコメディーだ。日常の中に非日常的な光景が繰り広げられるストーリーや、キャラクターの造形……。作品の端々から「京アニっぽさ」を感じたという男性はこう惜しんだ。 「これから京アニでたくさん素晴らしい作品をつくり、アニメ界を背負うはずだったのに、夢半ばで命を奪われた。ただただ、残念でならない」(武田啓亮) 昨年、京アニに入社 大野萌さん 京都アニメーション放火殺人事件で27日に死亡が公表された大野萌(めぐむ)さん(21)=京都府木津川市=は昨年、京アニに入社したばかり。姉の楓(かえで)さん(22)によると、高校生のころから自室の壁に「25歳で作画監督になる!!」という貼り紙を飾っていた。 アニメの仕事にかける萌さんの努力を近くで見てきた楓さんは事件直後、妹への思いをSNSのメッセージで朝日新聞に寄せた。 「入社したては、自分は絵の学校に行ってなかったから、全然やって怒られたらしく、人一倍絵を描いて、毎日毎日夜寝る前に絵を描いて頑張ってました。どれだけやっても、家族が褒めてもまだまだだって」 楓さんにとって萌さんは「姉妹であって友だちのような一番の存在」だったという。「妹が、めぐが良い子だったって、努力家で夢を叶(かな)えた子だったって、多くの方に伝えたいんです。家族に、周りの方にとても愛されてたって」 京アニ第1スタジオ近くの献花台には萌さんの友人たちも訪れていた。 かつて同じマンションに住んでいたという京都大3年の女子学生(20)は「頑張ってたのを知っているから、こんな形で将来がなくなることが悔しい」。 萌さんが就職前にアルバイトをしていたスーパー店長の高田光男さん(45)は27日、朝日新聞の取材に「(萌さんが)こんな事件の被害者になるなんて、現実として受け止められていない。事件から1カ月以上が経つが、1日たりとも萌さんのことを忘れることはない」と語った。(大部俊哉、山崎琢也、高木智也) ■「涼宮ハルヒの憂鬱」で色彩設… 980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
炉端焼き店で客ら7人救急搬送、一酸化炭素中毒か 岐阜
27日午後10時10分ごろ、岐阜市長住町4丁目の雑居ビル5階にある炉端焼き店の客から「会社の同僚の意識がなくなった」と119番通報があった。個室で飲食をしていた30~47歳の会社員の男女6人とアルバイトの女性店員(19)の計7人が次々とめまいや吐き気などの症状を訴え、市内の病院で治療を受けたが、いずれも命に別条はないという。岐阜県警は一酸化炭素中毒とみて、店の換気状況などを調べている。 岐阜中署によると、会社員らがいた個室にはいろりがあり、一酸化炭素の濃度が高かったという。現場はJR岐阜駅と名鉄岐阜駅近くの繁華街。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「『石田敦志』をどうか忘れないで」京アニ遺族が会見
【動画】京アニ放火事件 遺族が会見=遠藤真梨、金子元希撮影 「人生にこんなにも理不尽で悔しくて苦しくて悲しいことがあるとは思ってもいませんでした。胸が張り裂けそうです」 事件で亡くなり、27日に身元が公表された石田敦志(あつし)さん(31)の父、基志(もとし)さん(66)が同日夜、京都府警伏見署で会見した。事前に用意していた文書を読み上げ、無念を訴えた。 敦志さんは幼い頃からアニメに興味を持ち、「大きくなったらアニメの仕事がしたい」と語っていたという。ただ基志さんはアニメ業界を取り巻く労働環境を調べ、不安を覚えたことから当初は反対していた。 だが夢をあきらめない敦志さんは福岡県内の大学に通いながら、夜間にアニメーションの専門学校で学ぶなどした。基志さんが課した最後の「ハードル」が、京都アニメーションへの就職。それを乗り越えた敦志さんについて、「採用通知を見たときは、正直びっくりしました」と語った。 敦志さんは入社後、アニメーターとして、バンドを組む女子高校生を描いた「けいおん」シリーズの劇場版(2011年)や、高校の吹奏楽部を舞台とした「響け!ユーフォニアム」(15年)シリーズ、大ヒットした映画「聲(こえ)の形」(16年)など、数多くの作品で動画(原画と原画の間をつなぐ絵)を担当していた。 入社間もないころ、先輩から「原画を目指すべきだ」とアドバイスを受けたというが、敦志さんは絵を美しくなめらかに動かすことに魅力を感じ、動画にこだわった。例えば登場人物が振り向くシーン。「人間の動作そのものを表現しないといけない」と、実家に帰省するとうれしそうに語っていたという。 京アニでのキャリアは約10年に及んだ。主力アニメーターとして知られ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(18年)で監督を務めた石立太一さんからは、厳しい意見が飛び交う中「雰囲気をやわらげてくれたのは石田君」と評された。「みなさんにかわいがっていただいていたんだな」と会見で目を細めた。 「エンドロールに『石田敦志』の名前を見るのが家族一同楽しみだった」と語り、「親孝行だけをして逝ってしまった。私は彼には何もしてやっていない」と声を震わせた。 事件が起きた7月18日、一報を聞いた基志さんは福岡県内の実家から車を走らせ、その夜に京都へ到着。関係者の家族が待機する部屋に入ると、すでに救助された人の名前が張り出されていた。だが、そこに敦志さんの名前はなく、京都府警からDNA型鑑定を実施すると告げられた。 身元が判明したのは同24日。それから1カ月以上たつが、いまだに実感はないという。「遺影をうちに飾ってあるんですが、はにかんだいつもの笑顔がこの世にないのがどうしてものみ込めない。いまだに本当だろうかというのが正直なところです」と胸の内を明かした。「やっと円熟期にさしかかった、これから磨きがかかるのを楽しみにしていたのに、志半ばで逝ってしまいました」 会見を開いた理由について基志さんは35人の犠牲者のことに触れ、「決して『35分の1』ではない。ちゃんと名前があって毎日頑張っていた」とした上で、「残った我々ができることは、記憶して忘れないでいただく。そういったことしかできない。だからこの場にいる」と説明。京アニの本社や、現場となった第1スタジオがある京都府宇治市や京都市について「特別なところが、悲惨なところになった」とし、慰霊碑の必要性を訴えた。 「うまくしゃべれるかどうか」といって文書を用意した基志さん。末尾を読み上げるとき、力をこめた。 「才能と想像力にあふれた多くの人材が亡くなり傷ついたことは、遺族や被害者のみならず、日本の大きな損失です。どうかみなさま、これからも敦志が愛した京都アニメーションを応援してあげて下さい。そして、『石田敦志』というアニメーターが確かにいたということを、どうか、どうか忘れないで下さい」(山本孝興、波多野大介) 父・基志さんが読み上げた言葉 京都アニメーション第1スタジオで起きた放火殺人事件で亡くなり、身元が公表された石田敦志(あつし)さん(31)の父、基志(もとし)さん(66)が27日の会見で読み上げた文書の内容は次の通り。 ◇ 私どもの敦志は、私にとっては、できすぎた息子でありました。温厚で人と争うことが嫌いな、優しい子でした。 夢を追いかけ、高いハードルを何度も自力で飛び越え、夢をかなえました。そして、数々のアニメ作品に参加し、私たちに多くの夢と感動を残してくれました。本当に素晴らしい子でした。 小さいころからアニメに興味を持ち、「大きくなったらアニメの仕事がしたい」とよく言っておりました。最初は、子どもがプロスポーツに憧れるようなものだ、と私は思っていました。しかし、長ずるにつれ、これは本気だな、と思うようになりました。けれども、私の知る限りでは、アニメ業界のクリエーターの環境は決して恵まれた環境ではないと、調べれば調べるほど不安になり、アニメ業界に入ることを私は最初、反対しました。それでも敦志は決して諦めず、私が与えた課題を拒否することもなく、きっと私ども親を苦しめたくなかったんでしょう。アニメの勉強と学業を両立させ、自力で次々とクリアしていきました。そして、この最後の課題、私が与えた最後の課題が京都アニメーションでした。 クリエーターたちにとって、過酷な環境が多いアニメ業界において、京都アニメーションは、唯一といっていいと思います。クリエーターの生活保障がしっかりしていて、クリエーターを大事にする会社と知ったからです。もしここに入ることができるのなら、私も心から応援できると思いました。しかし今思えば、ずいぶん遠回りをさせてしまったと反省しています。 それからこんなエピソードもございます。入社間もないころ、先輩から「アニメーターはやはり、原画を目指すべき」というアドバイスを頂いたそうです。そのことは、本人も納得しつつも、ここが敦志らしいと思いました。しかしながら、動画を自然にしかも美しく動かすことも非常に魅力を感じると、私に言っておりました。実に敦志らしいな、とその時思ったものです。自然にしかも美しく動かす。ここにこだわった10年間であったように思います。やっと円熟期にさしかかった、これから彼が本当に磨きがかかる、これから彼が本当に表現したかった「自然にしかも美しく」に磨きがかかるのを楽しみにしていたのに、31歳の志半ばで逝ってしまいました。 この悲しみと怒りは筆舌に尽くしがたいものがあります。人生の過酷さは知っているつもりではありましたが、人生にこんなにも理不尽で、悔しくて、苦しくて、悲しいことがあるとは思ってもいませんでした。胸が張り裂けそうであります。 入社が決まり、敦志の引っ越しの時、京都アニメーション本社にごあいさつに行った時の話です。わざわざ専務と、当時の総務部長がわざわざ対応されて、その専務の言われるには「この業界に息子さんを送り出すのにはさぞご心配でしょう。でもお父さんご安心ください。弊社で3年頑張れば、この業界、どこにいっても通用する人材になることは間違いありません。そういう人材しか採用していません。どうか応援してやってください」とのことでした。 私はそのころにはすでに京アニファンになっておりましたから、素晴らしい作品を生み出した京都アニメーションで我が息子がお手伝いできるのは大変光栄です、と私が応じると、専務は「そうではありません。お父さん。手伝うのではなく、一緒に作るんです」。まだ入社もしていない息子を一人前として処遇する専務のお言葉に大変感激したのを今でも鮮明に覚えています。その後、今回被害に遭った第1スタジオに案内してくださり、有名な監督を直接ご紹介していただき、感激もひとしおでした。最後に玄関口でごあいさつをと思った時に、その壁に私が京アニ作品の素晴らしさに出会った最初の作品である「AIR(エアー)」のポスターが目に入ったので、私が別れのごあいさつのつもりで、「こんなに素晴らしい作品のお手伝いを……」と言い終わらないうちに、今度は総務部長が「いえ違います。お父さん。一緒に作るんです」とのことでした。私はその言葉で、これは単なる外交辞令ではないなと感じ、ここなら大丈夫。と確信したことを昨日のように覚えております。 京都アニメーションの経営理念はクリエーターと作品を大事にする素晴らしい会社です。この度、たった1人の卑劣な犯罪者のために、まだまだ多くの素晴らしい作品を輩出したであろう、才能と想像力にあふれた多くの人材が亡くなり傷ついたことは、私ども遺族や被害者家族のみならず、日本の大きな損失です。なくしてはならない存在です。このような人材は決して一朝一夕にできるものではありません。残念でなりません。 どうか皆さま、これからも敦志が愛した京都アニメーションを応援してあげて下さい。そして、石田敦志というアニメーターが、この京都アニメーションに確かにいたということを、どうか、どうか忘れないで下さい。心よりお願い致します。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル