思いはあっても、日常生活でなかなか口にする機会がない「平和のこと」。もっと気軽に話せる場を増やそうと、長崎市の会社員男性が手作りの活動を続けている。カフェや居酒屋で開く座談会や、オリジナルTシャツの販売。同世代を巻き込んで、平和との向き合い方を探っている。
コーヒーの香り漂う、長崎市の小さなカフェ。20~30代の女性ら8人が、思い思いのドリンクを手に席に着いた。夜勤明けの看護師や、赤ちゃん連れも2人いた。
「疲れたら寝ちゃっても、赤ちゃん泣いちゃっても全然大丈夫ですよ」。被爆者の田中安次郎さん(81)を囲む座談会は、そんな会話からスタートした。
田中さんの講話には、笑顔が多い。被爆の記憶や被爆後の差別、他の爆弾とは違う原爆の放射線の被害も話す。でも、一番は「未来の話」。「平和とは、あなたのおうちに笑い声や歌声があること。誰でもできることがある」と語りかける。
講話が終わると、カフェには自然に会話が生まれていた。「これまで平和学習ってしてきた?」「普段、平和の話ってする?」。SNSを通じて座談会に参加した長崎市の木下祐紀子さん(23)は「大人になってから平和の話から遠ざかっていたけど久々に考えたな」とぽつり。「今の日常が幸せなんだと気づいた。周りと自分を大切にすることも平和につながる」。長崎市の福田斉実(ひとみ)さん(32)は「変に気構えずに、こんな風にフランクに平和の話ができたらいいですよね」。赤ちゃんを抱きながらそうほほえんだ。
「同年代と話したい」 手作りで活動
座談会を企画したのは長崎市の会社員男性(32)。同年代に改めて被爆者の話を聞いてもらおうと、カフェや居酒屋を会場にSNSで参加者を募り、これまで7回ほど開いた。
「大人になってから被爆者の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル