独自の調査と実った執念 息子を事故で失って7年、異例の3度目公判

 2015年3月に長野県佐久市の市道で中学3年生の和田樹生(みきお)さん(当時15)が車にはねられて死亡した事故で、道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた被告の初公判が15日、長野地裁であった。被告は同じ事故をめぐり、これまでに2度の刑事裁判で判決を受け確定しており、異例の3度目の裁判となる。再捜査を求めてきた遺族 事故から7年。樹生さんの両親は、事故について独自に調査し、民事でも提訴。まだ起訴されていないひき逃げについて検察に再捜査を求めてきた。家族の中心だったみっきー(樹生さん)が事故の直前にくれたロックバンドのCDを聴き、勇気をもらってきた。天国からいつも見てくれている。そんな思いで、毎日を過ごしてきた。 憲法は判決が確定した同じ「事件」を再び裁判で審理することを禁じている。起訴された会社員の池田忠正被告(49)=同県御代田町=は、この事故について15年に過失運転致死の罪で禁錮3年執行猶予5年の有罪判決を受けた後、道交法違反(速度超過)などの罪で起訴され、19年に公訴棄却の判決を受けた。20年3月には民事訴訟で、被告が救護せず、事故を申告しなかったことが判決で認められた。検察は今年1月、過去の公判で審理されていない罪状のひき逃げで池田被告を起訴した。 今回の起訴状によると、池田被告は15年3月23日夜、佐久市の市道で車を運転し、横断歩道を渡っていた樹生さんを44・6メートルはね飛ばした後、適切な救護をせず事故の通報も怠ったとされる。樹生さんは約1時間半後に死亡した。検察側、飲酒運転を指摘 弁護側、「免訴」を主張 検察側の冒頭陳述によると、池田被告は飲酒運転し、事故後、警察や消防に通報せず、近くのコンビニでアルコール臭を隠そうと口臭防止用の商品を買って口に含み、事故現場に戻った。倒れている樹生さんを見た通行人が警察に通報。現場に駆けつけた被告の友人が119番通報したとされる。検察側は「犯行は身勝手で悪質」と指摘した。 池田被告は眼鏡に前髪がかかる髪形、黒スーツ、グレーのネクタイ姿で入廷。起訴状読み上げの後、裁判官から起訴内容に間違いがないかを問われ、「ございません」とかすれた声で答えた。だが、その後、弁護側の求めで検察側の冒頭陳述後に改めて罪状認否を実施。弁護側が「犯罪に該当するか分からない?」と尋ねると、被告は「はい」と答え、その後の弁護側の質問に答える中で否認した。 弁護側は「同じ事件で被告を二重に処罰することになる」として一事不再理を理由に裁判を打ち切る「免訴」を主張。さらに、事故後の被告の行動について「コンビニで物品を購入したが、被害者発見後は救護している」とし、救護義務違反は成立しないと無罪を求めた。「長い長い時間だった」 被告側の姿勢に遺族は「反省…この記事は有料会員記事です。残り1417文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

本当の飼い主はだれ 東北の迷子犬、京都の喫茶店主が伝えたいこと

高井里佳子2022年6月16日 9時00分 東日本大震災で飼い主とはぐれた迷子犬を引き取り、「サン」と名付けて育てた京都の喫茶店主が、その思い出を絵本「まいごのサン」(北斗書房)として出版した。サンがこの世を去って3年。本当の飼い主は誰だったのか。さがして伝えたいことがある。 店主は京都市中京区の佐藤研二さん(70)。2011年3月の東日本大震災で飼い主とはぐれたペットが多いと知り、「何とかしたい」と思った。同年8月、宮城県富谷市の被災動物保護センターで出会ったのがサンだ。 小麦色の雑種犬で、当時、推定7歳ぐらい。自分にとって息子や太陽のような存在になれば、とサンと名付けた。サンの人気のおかげで店はにぎわい、本当の店名は別にあったのに、常連客は「サンの店」と呼ぶようになった。 ただ、佐藤さんは元の飼い主のことが気がかりだった。被災地を訪ね歩いたが手がかりはつかめず、サンは19年8月、体調を崩して息を引き取った。 絵本は昨年2月に出版した。被災地に贈ると、有力な情報も寄せられ、「希望が見えてきた」と佐藤さんは言う。「サンは京都で楽しく生きたよ」。元の飼い主に伝えられる日を心待ちにしている。(高井里佳子)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

飼料価格、1年で14%上昇 ウクライナ危機で露呈した輸入リスク

 6月は「牛乳月間」。新しい草が伸び、牛たちが青草を食べる時期だ。ただ、牛乳や乳製品の原料となる生乳はコロナ下で需要が低迷し、何度も大量廃棄の瀬戸際に立たされた。さらにウクライナ情勢や円安で飼料や燃料が高騰し、各地の酪農家は苦境が続く。生乳余りで「可能な限りの生産抑制を」 「生産抑制を求められ、費用は増えて……。これでは酪農がますます先細る」 生乳生産量が市町村別で全国1位の北海道別海町。町内で牧場を営む梅澤大輔さん(41)が肩を落とす。手にした通知文書では、ホクレン農業協同組合連合会などが「可能な限りの抑制を」と求めていた。 梅澤さんは2017年から妻…この記事は有料会員記事です。残り1443文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

痴漢容疑で男逮捕 被害の女子高校生が警察に状況伝えながら追跡

藤原慎一2022年6月16日 4時30分 福岡県警は15日、女子高校生の胸を触ったとして、男を県迷惑行為防止条例違反(痴漢)の疑いで現行犯逮捕し、発表した。被害に遭った高校生が携帯電話で警察に状況を伝えながら、男を追いかけたという。 逮捕されたのは、福岡県水巻町の警備員、肘井徹容疑者(56)。調べに「間違いありません」と容疑を認めているという。 県警によると、肘井容疑者は15日午後6時半ごろ、JR古賀駅(同県古賀市)で、向かいから階段を上ってきた高校生(15)の胸を、すれ違いざまに制服の上から触った疑いがある。 高校生はすぐに携帯電話で110番通報し、その場から離れる肘井容疑者を、一緒にいた友人2人と追跡。電話をつないだまま警察に場所を伝え続けた。肘井容疑者が駅から約500メートル先の工場に逃げ込んだところで、粕屋署員が駆けつけ現行犯逮捕したという。 警察は高校生に対して、電話越しに「男に近づきすぎないように」と注意を促しながら追跡をサポート。署の担当者は「無理に追いかければ反撃されるおそれもあるが、彼女の冷静な追跡のおかげで逮捕することができた」と話している。(藤原慎一)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

不合格続き「重圧あった」 昇任試験でカンニングの巡査長を処分

2022年6月16日 5時00分 福岡県警の警察署に勤務する30代の男性巡査長が4月、昇任試験でカンニングをしたとして、県警が本部長訓戒処分としていたことが、関係者への取材でわかった。処分は5月12日付。 関係者によると、巡査長は長年、昇任試験の不合格が続いていたといい、カンニングを認め「試験へのプレッシャーがあった」と、動機を説明しているという。 巡査長は4月26日、県内の警察施設内で行われた、巡査部長に昇任するための論文試験を受けた。その際、会場に答案を書いた自作のメモを服の中に隠して複数枚持ち込んでいた。この会場では当日、数十人が受験していた。 試験中、巡査長が服からメモを取り出し盗み見ているのを、監督役の担当者が見とがめて発覚した。巡査長は会場から即時退場となった。巡査長は「多大な迷惑をかけて深く反省している」と話しているという。 県警監察官室は「引き続き、部内試験を厳正に実施する」としている。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「秋葉原を安心安全に」 メイド40人が駅前でちかん防止を呼びかけ

 数多くのメイドカフェが立ち並ぶ東京・秋葉原で15日、カフェに勤務するメイド約40人が痴漢撲滅などを訴えるチラシやティッシュを配った。警視庁のキャンペーン最終日にあわせた企画で、約20店舗が協力した。 参加した「めいどりーみん」のえりぃさんは「老若男女が秋葉原を安心安全に楽しめるように、との思いを込めて配った」と振り返った。秋葉原観光親善大使を務める「あっとほぉーむカフェ」のhitomiさんは、「コロナが落ち着いたら、外国や地方から観光に来る方もまた増えると思う。そういう方に秋葉原を好きになってもらいたいので、街の安全、美化も意識していきたい」と話した。 万世橋署の椿原一徳署長は「…この記事は有料会員記事です。残り58文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

2億超の現金、貸金庫に隠していたケースも 昨年度の大阪国税局査察

堀之内健史2022年6月15日 18時38分 大阪国税局は15日、2021年度に管内2府4県で査察部が調査を終えた事件が29件だったと発表した。新型コロナの影響で過去最少だった昨年度に続く少なさ。調査した29件の脱税総額は約17億円、悪質性が高いという理由で検察庁に告発した事件は21件だった。 税目別では法人税が11件と最多。消費税が7件、無申告と国際事案がいずれも4件だった。業種別では、不動産業の脱税が11件で最多だった。脱税した金は預金しているケースが目立ったが、高級腕時計の購入や、貸金庫に現金計2億4900万円を隠していた事件もあったという。(堀之内健史)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「投資家だと言えば…」 給付金詐欺、多くの若者を誘った誘い文句

 投資グループ主導の不正申請でコロナ給付金約2億円が給付された事件で、警視庁が摘発した17人は全員が当時20歳代以下の若者だった。申請名義人だった容疑者の中には、大学生や高校生も含まれていたとされる。若者を中心に広がった背景には、グループによる巧みな誘い文句があった。 2020年8月。東京都豊島区の目白署に、少年が父親に連れられてやってきた。「息子が給付金を虚偽申請していたようです」。父親は、自宅に届いた少年宛ての持続化給付金の給付通知書を見つけたという。コロナ禍で売り上げが前年から減少した事業者向けの制度なのに、大学1年生の息子が対象のはずがない、と考えたようだ。 この少年の自首を受け、少年犯罪を担当する同庁少年事件課が捜査を進めた。「同い年のバイト仲間に誘われた」という少年の話を元に、勧誘元の人物をたどっていくと、複数の若者が同じように虚偽申請をしていた疑いが芋づる式に発覚した。そしてその背後に「マイニングエクスプレス」と呼ばれる仮想通貨(暗号資産)の関連事業への投資グループの存在が浮かび上がった。1人の少年の自首であらわになった巨額詐欺事件。なぜ大量の若者が加担したのか。記事の後半では、「若者が詐欺に乗ってしまう条件がそろっていた」と指摘する専門家の分析も紹介します。 グループはLINEを活用し…この記事は有料会員記事です。残り1146文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで「安易に加担」

 新型コロナウイルス対策で国が事業者などに支給する「持続化給付金」を詐取する事件で、警察が摘発した容疑者のうち68%を20歳代以下の若者が占めていることが、警察庁のまとめでわかった。 全国の警察は2020年7月から今年5月末までに、3315件、3770人を摘発した(うち逮捕が1041人)。立件した詐取額は計約32億8500万円にのぼる。 警察庁は、最近、大規模な事件の摘発が相次ぎ、社会的関心も高まっているため、初めて容疑者を年代別で集計した。 それによると、3770人のうち、10代が6・0%(226人)、20代が62・0%(2337人)で、合わせて68・0%を占めた。30代が14・4%、40代が8・4%、50代が5・1%で、60代以上が4・1%。年代が高くなるほど低くなっていた。最年少は17歳で、平均年齢は29・7歳という。 警察庁幹部は、摘発された若い世代について「申請名義人として使われたケースが多いと思われる」と説明。「若者がSNSなどを通じて、安易に犯罪に加担している状況がうかがえる」と指摘する。 これまで摘発した事件からは…この記事は有料会員記事です。残り292文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

神社にわら人形、プーチン大統領の写真付きで 器物損壊の疑いで逮捕

宮坂奈津2022年6月15日 19時55分 千葉県松戸市内の神社に正当な理由なく侵入し、境内のご神木にわら人形を釘で打ち付けたとして、千葉県警松戸東署は15日、松戸市五香西1丁目の自称無職、日野充信容疑者(72)を建造物侵入と器物損壊の疑いで逮捕し、発表した。日野容疑者は動機や認否について黙秘しているという。 署によると、日野容疑者は5月19日午後2時10分ごろ、松戸市三ケ月の三日月神社に侵入し、わら人形をご神木に釘で打ち付け、ご神木に穴をあけて損壊させた疑いがある。 神社近くの複数の防犯カメラに日野容疑者とみられる男が映り込んでいたことから特定したという。松戸市内の神社では5月中旬から同様の事例が少なくとも10件以上発生しており、署は関連を調べている。 わら人形は、各神社の樹木に五寸釘で打ち付けられ、ロシアのプーチン大統領とみられる人物の顔写真が貼られており、顔写真のおでこに当たる部分には「凶」の文字が書かれていたという。(宮坂奈津)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル