「孤高の哲学者」ヤマトイワナを守れ 南アルプス源流に残る原種の命

 南アルプスの仙丈ケ岳(3033メートル)の8合目付近に源を発し、60キロの距離を大きく蛇行しながら天竜川に注ぐ三峰川には、めったにお目にかかることがなくなった原種のヤマトイワナが生息する。 標高2千メートル以上の源流部で、厳しい環境に適応して命をつないできた日本固有のイワナは学術的にも貴重な存在。そのたくましさと気高さに畏敬(いけい)の念を抱く地元の伊那谷の人々は、ヤマトイワナの保存にむけた地道な活動を続けている。国内に4種のイワナ、川ごとに80種の血統 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所によると、ほかの種類のイワナとの交雑がない原種のヤマトイワナが生息しているのは、長野県伊那市を流れる三峰川の中下流部より川上の本流と支流。 国内のイワナは、大きく分けて4種類がそれぞれの分布域に生息する。北海道と東北に生息するアメマスと、東北から関東、北陸まで広く分布するニッコウイワナ。中国地方の一部にいるゴギ、そして中部地方と紀伊半島の一部で確認されているヤマトイワナだ。 これら4種類を遺伝子レベル…この記事は有料記事です。残り1311文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

東京・府中市民球場、男女別トイレ整備へ 1万円超寄付で銘板に名前

 あなたの名前を球場に刻みませんか――。東京都府中市は、老朽化した市民球場(同市寿町2丁目)の改修工事の費用に充てるため、クラウドファンディングを始めた。1万円以上寄付した人は、先着500人で、球場に設置する銘板に名前が刻まれる。 1980年代に建設された市民球場は老朽化が進み、大規模な改修が必要となっていた。女子野球を通じた地元活性化に取り組んでいた同市が昨年5月、都内初の「女子野球タウン」に認定されたことを機に、市が改修工事を決めた。今回の改修はトイレやロッカールーム、シャワー室などが対象で、総額1億6千万円を予算化した。 工事に先立ち、球場を利用す…この記事は有料記事です。残り331文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

画家・野見山暁治さんが愛した故郷の色彩 「九州には九州の光が」

 伸びやかなタッチの作品を多く残した文化勲章受章者の洋画家・野見山暁治さんが22日、亡くなった。東京に拠点を置きつつ、故郷・福岡にもアトリエを構え、毎年夏には創作と海水浴を楽しむなど、ふるさとでの時間を晩年まで大切にした。 フランス留学や東京芸術大で教鞭(きょうべん)に立つなど国内外で慌ただしくしていた野見山さんは、1971年ごろに同郷の女性と再婚。それを機に東京・練馬に居を構えた。76年には糸島にもう一つの「家」をつくった。 福岡県穂波村(現・飯塚市)で生まれ育った野見山さん。絵描きとして戦っていかねばならない東京にはない、心の安息を故郷・福岡に求めていたのだろう。 青い海と空がそばにある糸島のアトリエで描いた作品の多くは、明るい色彩に満ちた画面に。開放的な心情から絵筆は進み、リラックスした様子は画面にもそのまま反映された。 「若い頃、パリに行った時に…この記事は有料記事です。残り853文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「サザン 45 おめでとう」 桑田佳祐さん母校で700人が人文字

足立朋子2023年6月25日 11時30分 サザンオールスターズのデビュー45周年を祝い、桑田佳祐さんの母校・神奈川県茅ケ崎市立茅ケ崎小学校で24日、人文字をつくるイベントが全国から約700人のファンを集めて開かれた。 茅ケ崎商工会議所青年部が企画した。一番乗りは朝5時半に来た中田みどりさん(53)、仁(じん)さん(34)親子。それぞれ福井県と大阪府から駆けつけた。中学時代からのファンのみどりさんと、サザンを子守歌に育った仁さん。「サザンのふるさとを知りたい」という思いから、これまでも5、6度、茅ケ崎に来ていて、知人づてに今回の企画を知った。「街の人がフレンドリーで、『人文字』という温かい企画もいい。サザンができるだけ長く続いてほしい」と語った。 茅ケ崎市の佐久間誠一郎さん(69)は小中学校で桑田さんの1年先輩だった。母校に全国から多くの人が集まる様子を見て、「うれしい、うれしい、本当にすごいな」と目を細め、「おめでとう、ここまでよくがんばったね。健康に気をつけてと伝えたい」と話した。(足立朋子)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「伊賀越あだ討ち」舞台の数馬茶屋、営業休止へ 耐震化まとまらず

 江戸時代に起きた「伊賀越(いがごえ)あだ討ち」の現場と伝わる三重県伊賀市小田町の「鍵屋の辻」で、戦前から営業する「数馬茶屋」が6月末で営業を休止する。市は「耐震補強を施したうえで茶屋を残したい」と打ち出したものの、耐震化の主体など計画は固まっておらず、再開の時期も未定だ。 数馬茶屋は1929年に建てられた木造平屋の建物で、当時から茶屋として使われていた。戦後は、疎開していた国文学者が文学研究会を開くなど文化活動の象徴的な場所だった時期もある。ドナルド・キーンさんら著名人も訪れている。現在の建物は伊賀市が所有し、運営は団体や個人が継承してきた。おかみの井上秀子さん(70)は、2016年7月に先代のおかみから引き継いだ。現在は畳の間やテーブル席などがあり縁側でもくつろげる。 市観光戦略課によると、昨年実施した耐震診断で、地震で大きな揺れに見舞われると倒壊する可能性が高いと評価された。このため市は昨年12月、半年後をめどに「いったん退去を」と井上さんに要請。建物を残すか解体するか未定だったが、今月19日の市議会本会議で市側は「建物は解体せず残したい」と表明した。 ただ、耐震化を進める主体は未定で、家賃など計画の細部も固まっていないという。市の担当者は「着工は整備の進め方や設計の方針などを固めてからになる。茶屋の再開は最短で2年はかかる」と説明する。 19日にも市から説明を受け…この記事は有料記事です。残り476文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

鳥取砂丘近くで「月面開発」 探査車などの実証拠点、7月開設へ

 鳥取県は7月、鳥取砂丘近くに、月面や建設現場の環境を想定した新技術の実証フィールドをオープンさせる。県が取り組む宇宙関連産業の創出を目指す「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の一環で、国内外の企業や研究機関の拠点として活用してもらう。 実証フィールドは、国立公園外にある鳥取大学乾燥地研究センターの敷地1ヘクタールに4500万円をかけて整備。1月に着工し、6月末に完成する。鳥取砂丘月面実証フィールド(約0・5ヘクタール)と建設技術実証フィールド(同)で構成する。 月面実証フィールドでは月面探査車など月面開発に関連する研究ができる。砂丘の砂や地形を活用し、平面や起伏のあるゾーンを備えるほか、研究テーマに応じて自由に掘削や造成ができるゾーンも設置する。 県は6月補正予算案に、同フィールドの情報発信や誘致活動などの事業費3400万円を計上。すでに企業や学生団体から利用希望が寄せられているという。 建設技術実証フィールドでは…この記事は有料記事です。残り219文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

大阪万博に「鳥取砂丘」出現? 砂は本物、鏡を使って広大な空間演出

 2025年の大阪・関西万博に向け、鳥取県は本物の鳥取砂丘の砂を敷き詰めた展示ブースを計画している。鏡も使って砂丘の広大な空間を演出しながら、観光地や特産品など県内の魅力に触れてもらう狙いだ。 万博は25年4月13日から10月13日までの184日間、大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)で開かれる。期間中、国内外から約2820万人の来場が見込まれている。 今月22日、県や関係団体による「準備推進プロジェクトチーム」会議があり、県の展示の基本計画書が示された。計画では、関西広域連合が設けるパビリオンの一角(約126平方メートル)に県のブースを出展する。 主要ゾーンには砂を敷き詰める。壁面を鏡張りにすることによって、砂丘空間をより広大に感じてもらう演出をする。砂を踏みしめる感覚や砂のにおいなど、五感にも訴える。さらに、虫眼鏡形の電子機器とAR(拡張技術)で、県内の歴史や文化を体験できる仕掛けも計画している。 期間中の県内への誘客数の目…この記事は有料記事です。残り224文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

雨にぬれ震える9歳男児 姿消して10時間後に警察犬は猛然と動いた

 雨でぬれた服が肌にぴったりと張りつき、小学4年生の男児(9)は暗闇で寒さに震えていた。姿を消してから約10時間。見つけたのは、男児の愛用品の匂いを頼りに捜索した警察犬だった。 5月23日午後10時半。男児の家族が横浜市の戸塚署を訪れた。子どもを注意したところ、家を出たまま3時間以上帰ってこないという。雨が降るなか、10人以上の署員が家の近くを捜索したものの、見つからずに不安が募った。 日付をまたいだ24日午前3時40分。降っていた雨がやみ、警察犬のジャーマンシェパードの「グロリア号」(4歳、メス)と「ムート号」(2歳、オス)に出動要請があった。手がかりの匂い消え、捜索難航 警察犬は捜索対象の衣類を嗅…この記事は有料記事です。残り727文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「聖地」のウルトラマラソン、4年ぶり開催 事前の崩落で代替コース

神村正史2023年6月25日 15時30分 北海道のオホーツク地方を舞台にした「サロマ湖100キロウルトラマラソン」が25日、4年ぶりに開かれた。大会前に、オホーツク海からの波の浸食で人気スポット「ワッカ地区」の一部が崩落していることが判明。実行委員会は急きょ、代替コースを設定していた。 この大会は、フルマラソン(42・195キロ)より長い距離を走るウルトラマラソンとしては初めて日本陸連の公認となったレース。昨年破られるまでは世界最高記録コースで、「ウルトラマラソンの聖地」と呼ばれている。10回完走したランナーには「サロマンブルー」の称号が与えられ、ウルトラランナーの憧れになっている。(神村正史)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

被爆の治療に赤チン、火葬続けた1週間 96歳が手を合わせる供養塔

 貴重な被爆建物として保存や活用が議論されている広島市南区の「旧陸軍被服支廠(ししょう)」。軍用品の製造拠点だったその施設で、ミシンの技術者を務めていた小笠原貞雄さん(96)=山口市道場門前1丁目=は、戦時下の活気と原爆による惨状を、ともに鮮明に記憶している。 小笠原さんは、被服支廠に隣接する広島市の皆実町で育った。軍属になったのは1943年春、16歳のとき。いとこが先に働いており、その紹介で入ったという。 軍服や軍靴、軍帽などの製造現場で、ミシンの設置や管理を担当した。 ひとつの生産ラインごとに、3馬力のモーター1台がミシン20台を動かし、20人の縫い子の女性が働いていた。 ひとつの作業場に生産ラインが4本あり、アイロンがけの女性や、小笠原さんたち技術者を合わせると計100人ほどが一つの班をつくっていたという。 ダッダッダッダッ――。 ミシンの音が響く作業場に待…この記事は有料記事です。残り1119文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル