2021年8月17日 22時15分 吉本興業は17日、蛍原徹さんと宮迫博之さんのお笑いコンビ「雨上がり決死隊」が解散すると発表した。蛍原さんは同社所属のまま活動を続けるという。 宮迫さんは2019年、振り込め詐欺グループなどの集まりに出席して金銭を受け取った「闇営業」問題が発覚して同社に契約を解消され、その後は動画配信サイト「ユーチューブ」で活動。コンビでは活動していなかった。 同日夜、2人は動画配信サイトで解散の経緯などを報告。蛍原さんは、宮迫さんがユーチューブで活動するようになり「価値観、方向性(のズレ)が大きくなった」などと話した。 2人は1989年にコンビを結成し、92年にABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞を受賞。近年はテレビ朝日系のバラエティー番組「アメトーーク!」などで人気だった。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
長崎・雲仙の2人不明の土砂崩れ現場で1人の遺体発見
安斎耕一2021年8月17日 19時39分 長崎県雲仙市小浜町で13日未明に土砂崩れが起き、近くの住宅に住んでいた森文代さん(59)が亡くなった現場で17日、1人の遺体が見つかった。森さんの夫の保啓(やすひろ)さん(67)と娘の優子さん(32)が行方不明になっており、県警などは2人のどちらかの可能性があるとみて、身元の確認を進めている。 市などによると、この日は午前8時半に県警や消防、自衛隊など総勢約200人態勢で捜索を開始。天候不良などで中断を挟みながら捜索を続けたところ、午後3時55分ごろ、優子さんのものとみられる軽自動車の近くで1人を見つけた。午後4時34分、現場で医師が死亡を確認した。行方不明者がもう1人いることから、県警などは18日午前8時半から約220人態勢で捜索を再開する。 この現場では、巻き込まれた別の住宅でも男性1人が重傷を負った。(安斎耕一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
南海本線と多奈川線、一部運転見合わせ 大雨で砕石流出
2021年8月17日 19時55分 南海電鉄は大雨の影響で、17日午後7時現在、南海本線の尾崎(大阪府阪南市)―和歌山市(和歌山市)間と多奈川線(全線が大阪府岬町)で運転を見合わせている。再開のめどは立っていない。 南海本線では17日午後0時45分からみさき公園(同)―和歌山市間で運転を見合わせた。その後、みさき公園―孝子(同)間の線路に山側から雨水が流れ込み、レールを固定する砕石が流出したという。 南海は復旧をめざし、運転見合わせの区間を広げて工事を進めている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
盛り土原因か 大津の国道バイパスに土砂、通行止め
菱山出2021年8月17日 20時09分 大雨の影響で、大津市高砂町の国道161号西大津バイパスの近江神宮ランプに大量の土砂が流入し、14日午後4時半ごろから通行止めが続いている。山の斜面が崩落したためで、大津市と国土交通省は17日、崩落の起点付近にあった盛り土が原因とみられると発表した。 市によると、土砂の流入は14日午後3時ごろと午後4時ごろ、午後5時ごろの計3回起きた。福井方面に向かうバイパスの乗り口と降り口などに約5千立方メートルの土砂が流入。ランプに面する山肌が大きくえぐられており、約80メートルの高さから土砂が滑り下ったという。 崩落の起点付近の山林について、大津市の初田久徳建設部次長は「周辺の樹木とは様子が明らかに異なっており、人工的に行われた盛り土の可能性がある」と指摘する。 市不法投棄対策課などによると、付近の山林では、大津市の測量設計会社が2012~14年、管理する残土処分場に建設現場から出た土砂など計約5800平方メートルを無許可で埋め立てていたことが発覚した。 会社と当時の社長は市条例違反の罪で14年に略式起訴され、罰金刑が確定している。 市は土砂の搬出命令を出し、会社は17年4月~18年7月に搬出したとされる。、市は近く、同社から事情を聴いて調べる。(菱山出) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
クロ現問題に冷淡な世論 「企業経営の論理」専制の果て
デルタ株の感染拡大による新型コロナの「第5波」が猛威を振るう中、テレビは五輪の祝祭ムードで埋め尽くされた。中でも気になったのは、NHKが「ニュースウオッチ9」の放送時間を大幅に短縮したことだ。政府が患者の入院基準の方針転換を突如として打ち出し、社会的な不安が大きくなる中でも、五輪の中継を優先したためである。NHKの掲げる「公共性」とは、いったい何を指すのであろうか。 この7月、NHKをめぐって大きな事態が展開していた。NHKの経営委員が自局の報道のあり方を批判したとされる会議の議事録が、全面公開されたのである。 やまこし・しゅうぞう 1978年生まれ。慶応義塾大学教授(ジャーナリズム論、政治社会学)。主著に「コミュニケーションの政治社会学」。 この問題は、かんぽ生命保険の不正販売を調査報道によって明らかにした「クローズアップ現代+」に対し、日本郵政グループがNHKに抗議したことに起因する。抗議を受け、経営委員会は「ガバナンス強化」という論理によって当時のNHK会長を厳重注意した。この対応は報道現場の萎縮につながるだけでなく、経営委員による番組への干渉を禁じた放送法に抵触する可能性もある。それを検証する重要な手がかりのひとつが議事録だったが、NHKは全面公開を拒み続けていた。 2年以上たって議事録が全面公開されたのは、朝日新聞や毎日新聞などによる継続的な報道によるところが大きい。両紙は社説でNHKの対応を繰り返し批判し続けてきた。それはジャーナリズムの危機感の表れでもある。 NHKは国営放送とも民放とも異なる公共放送である。国家の圧力や市場(民間企業)の論理から独立し、「公共の利益」のために報道を行うというのが、NHKの組織原理だ。調査報道のようなジャーナリズム活動は「公共性」の中核に位置づけられる。それが、民間企業出身の経営委員が掲げる「企業経営の論理」によって不正追及の取材手法や報道の理念が否定される、という事態に至っている。 この問題への世の中の関心はあまり高くない。NHKのあり方、あるいはジャーナリズムについての関心の低さもあるかもしれない。しかし、より根深い原因は「企業経営の論理」を当然かつ最良のものと見なす風潮にあるのではないか。そして「企業経営の論理」が社会の支配的な価値になってしまっていることこそが、政治から五輪に至るまで、今日の社会のさまざまな問題の基盤を形作っている。 この風潮は1980年代ごろ… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1252文字/全文:2229文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
特急車内で車掌が喫煙 暗くした乗務員室「加熱式なら」
2021年8月17日 16時31分 名古屋鉄道は17日、走行中の列車内で車掌が加熱式たばこを吸ったと発表した。車掌は「我慢できなかった。加熱式なら煙やにおいが残らないと思った」と話し、2月ごろから車内での複数回の喫煙を認めたという。名鉄は厳正に処分する方針。 名鉄によると車掌は15日午後9時10分ごろ、名古屋線国府―本宿駅間を走行していた豊橋発新鵜沼行き快速特急(8両編成、乗客約70人)の列車最後尾にある乗務員室で、加熱式たばこを約2分間吸ったという。 乗務員室を暗くして車掌がしゃがみ込んでいる姿を見た乗客が、不審に思って名鉄に連絡した。しゃがみ込んでいたときは「肩に痛み止めの薬を塗っていた」と話したという。 名鉄は「重く受け止め、今後このようなことがないよう努めます」とのコメントを出した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「生理が辛い」女学生の困窮 相談したい母は生死不明で
「生理が本当に恨めしく、辛いと思いました」。さいたま市内の図書館で戦争体験者の文集を読んでいて、そんな一文に目がとまった。生理が、戦後に書き残すほどにつらい記憶になったのはなぜか。彼女の思いを聞きたいと、訪ねた。 軍優先、一般人の入手が難しくなった脱脂綿 下半身に湿った感じを覚え、恐る恐る下着を見た。赤い血がついていた。 「これが、そうなのか。一体、どうしたらいいの」 1943(昭和18)年、新潟県立村上高等女学校2年生で、当時14歳だった小野寺八重子さん(92)=埼玉県草加市=は、寄宿舎のくみ取り式トイレでうろたえた。女性に生理があると何となく知ってはいたが、対処法は知らなかった。 「古雑誌の紙を破って手でもんで、股の間に挟んだんじゃないかしら」 使い捨てで、血をたっぷり吸収する紙ナプキンはまだない時代。専門家や資料によると、脱脂綿などをあて「丁字帯」や「月経帯」でおさえる女性が多かったが、脱脂綿は軍隊の利用が優先され一般の人は入手しにくくなっていたという。 生理のたび使い古しの布を繰り返し洗い使ったり、紙をあてたりしてしのいだ。「ひと月に一度でもしんどかった」と繰り返す。 「せがれの嫁に…」 目の前で心ない会話 でも生理がつらかったのは、物資不足だけのせいではない。相談したかった母を含め、家族の生死が分からなくなっていたことも胸に重くのしかかっていた。 当時、家族はフィリピン・ミンダナオ島のダバオという地域にいた。 新潟の農家の次男だった父は… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:929文字/全文:1574文字 Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Pirates sign Yoshitomo Tsutsugo to major league deal
Los Angeles – The Pittsburgh Pirates announced the signing Monday of Japanese outfielder Yoshitomo Tsutsugo to a major league deal. The Pirates, currently at the bottom of the National League Central, are Tsutsugo’s third major league club since leaving Japan to join the Tampa Bay Rays on a two-year, $12 […]
熱海の製麺所に800万円 3代続く老舗、土石流で被害
植松敬2021年8月17日 11時03分 静岡県熱海市の土石流で被害をうけた老舗の製麺所が、クラウドファンディング(CF)で再建に向けた資金を募っている。自家製麺を地元のラーメン店や学校などに届けてきた。資金とともに、「おいしい麺をまた届けて」などのメッセージも寄せられている。 休業に追い込まれた両親みて…立ち上がった姉妹 製麺所は、土石流が発生した同市伊豆山で80年以上続く「コマツ屋製麺所」。3代目の中島秀人さん(52)が妻と義母の3人で切り盛りしてきた。ラーメン店など市内約40店のほか、学校給食や病院、ホテルに自家製麺を卸してきた。 だが、7月の土石流で製麺所の製麺機や大型冷蔵庫のあるフロアに土砂が流れ込んだ。 休業状態に追い込まれ、翌日から取引先への連絡に追われる両親を見て、次女の茉子(まこ)さん(24)が東京に住む姉の真唯(まゆ)さん(26)と相談し、CFで資金を募ることを思い立った。 製麺所の再開に必要なのは、大型冷蔵庫、冷水機、給湯器、配達用のバイク……。300万円を目標にスタートすると、公開から約17時間で達成した。必要な備品などを精査し直し、目標を800万円に修正した。 不明者の捜索が続く中、資金を募ることにためらいもあったため、CFサイトでは「伊豆山地域に暮らしていた人たちにとって一筋の復興の光になれたら」と説明した。 支援を申し出てくれた人は800人以上、総額は800万円を超えた。寄せられた資金のほか、姉妹2人を喜ばせたのが支援者からのメッセージだ。 「伊豆山の皆さんがまた日常に戻れることを願っています」「熱海の子どもたちの給食に、またおいしい麺が届きますように!」 茉子さんは「先の見えない日々にみんな不安を抱えている。こんな状況だからこそ、前を向いて復興の輪を広げていきたい」。 CFの受け付けは20日まで。専用サイト、CAMPFIREでコマツ屋製麺所を検索。(植松敬) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「生活困窮者を間接的に死へ…」 差別発言に感じた恐怖
「メンタリスト」DaiGo氏がYouTubeチャンネルでホームレスや生活保護利用者に対する差別発言をした問題で、生活困窮者の支援にあたる4団体が緊急声明を出した。そのひとつである「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さんは、DaiGo氏の発言に恐怖を感じた、という。強い危機感を抱く理由を稲葉さんに聞いた。 ――ユーチューバーとして活動するDaiGo氏は8月7日公開の動画で、「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい」「ホームレスの命はどうでもいい」「いないほうがよくない?」などの差別発言を繰り返しました。支援団体連名で緊急声明を出した理由を教えてください。 「私たちはコロナ禍で仕事や住まいを失って困窮した人の駆けつけ支援に取り組んでいます。新聞やテレビを見ない若い人がどうやって私たちのメール相談窓口にたどりつくかというと、ほとんどがYouTubeやTwitterの情報です。DaiGo氏はチャンネル登録者数が250万人に迫る『インフルエンサー』です。彼の発言によって差別や偏見をあおる情報が広がれば、若い世代への悪影響ははかりしれません」 「DaiGo氏は『人間は、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きているんですよ。犯罪者を殺すのだって同じですよ』などと述べ、社会からの排除、抹殺まで示唆しました。人の生きる権利を否定するような発言に対しては、社会全体でそれは許されないというメッセージを突きつける必要があります。各団体と話し合い、声明を出しました」 ――稲葉さんは、1990年代から路上生活者の支援を続け、生活保護申請同行などの支援にも取り組んでいます。支援の現場からみて、今回の発言について看過できないのはどのような点でしょうか。 「まず、ホームレス状態の人への差別を扇動していることです。もともと路上生活者への社会の偏見は根深いものがあります。90年代に初めて『炊き出し』にかかわったころ、通行人に『なんであんなやつらを支援するんだ』と言われました。バブル崩壊後にホームレスが急増すると、若者による襲撃事件が多発しました。私たちが定期的に実施している都内の『夜回り』でも通行人などに暴力をふるわれたり、若者に花火をうち込まれたり、といったホームレスの方の声を何度も聞いています。2014年に都内の支援団体が合同で実施した調査では、都内の路上生活者の4割が襲撃された経験があると答えています」 「最近でも、昨年3月には岐阜市で路上生活をしていた80代の男性が若者に襲われて命を落とし、同年11月には東京都渋谷区でバス停でホームレス状態だった60代女性が近所の男性に暴行されて亡くなっています。そういう状況下での『ホームレスの命はどうでもいい』という発言は、直接的にヘイトクライムを誘発し、さらなる犠牲者を生みかねないのです。DaiGo氏はホームレス状態の方について『じゃまだしさ、プラスになんないしさ、くさいしさ、治安悪くなるしさ』などと発言しています。過去に襲撃事件を引き起こした若者たちの多くが、同様の発言をしていたことを忘れてはいけません」 ――声明では、生活保護に対する忌避感をより強めると警鐘をならしています。 「コロナ禍で困窮して所持金数十円で路上生活に追い込まれるなど、極限の貧困状態になっても『生活保護だけは』『ほかの制度はないか』と制度の利用を拒むケースが後を絶ちません。利用するのが恥ずかしい、後ろ指を指されるというマイナスのイメージが社会に蔓延(まんえん)しています。こうしたスティグマは、2012年に一部の政治家が主導した生活保護バッシングでさらに強化されました。ただ昨年12月には厚生労働省がウェブサイトで『生活保護の申請は国民の権利です』と掲げるなど、変化の兆しもでていました」 「DaiGo氏の『生活保護の人たちに食わせる金があるなら猫を救って』などの発言は、利用者への偏見を助長するものです。生活保護制度を権利ではなく施しととらえている。その結果として、命をつなぐための『最後の安全網』である制度から確実に困窮者を遠ざけます。これは間接的に困窮者を死に追いやる発言と言うほかなく、強い危機感、恐怖を感じます」 ――DaiGo氏は13日夜の配信で一連の発言について謝罪しました。稲葉さんたちは14日に緊急声明で『謝罪は単なるポーズの域を出ていない』と批判、同じ日にDaiGo氏は「(前回は)真の意味で謝罪になっていなかった」として再び動画で謝罪しました。スーツ姿で登場し、『もし自分の母親が生活保護を受けていたらどう感じるか考えた』などと語り、自らの発言を『ヘイトスピーチ』だったと認め、何度も頭を下げました。 「謝罪はしましたが、がんばることができなくても、がんばっているように見えなくても、すべての人に生きる権利があるという大前提の理解はなおできていないのではないか、という疑念が消えません。それに、本当に深く内省して謝罪するのであれば、動画配信だけではなく、記者会見を開いたり、受け手が時間をかけて読めるような文章のかたちにまとめて表明したりするべきではないかと思っています。(2回目の謝罪時の)『昨日の謝罪を撤回致します』というタイトルのつけ方にも、私はひっかかりました。いわゆる『釣りタイトル』で、開き直るのかと思わせて、実際の内容は違う。すべては動画の再生回数のためではないかと感じてしまいます」 「インフルエンサーの芸能人だけでなく、国会議員や大学教員など、社会に大きな影響力を持つ人が人の命の価値を否定するような発言をした場合は『一発アウト』、その職を続けるべきではないと私は考えています。厳しすぎるという意見もあると思います。しかし、そういう対応を社会が積み重ねていかない限り、また同じような差別や扇動が繰り返され、いつか暴力が誘発され、社会が壊される事態になってしまうと懸念しています。ただ、本当に重要なのは、DaiGo氏が今後どうするかということよりも、こうした問題に社会がどう向き合うか、だと思います」 ――巨大な影響力を持つインフルエンサーによる差別偏見の扇動は、確かに今後も懸念されます。社会はどう向き合っていくべきでしょうか。 「DaiGo氏の発言は一線を越えたものでしたが、人の命に優劣があるという『優生思想』や、貧困についての『自己責任論』は、残念ながら私たちの社会に蔓延(まんえん)しています。今回はホームレスの人や生活保護利用者がターゲットになりましたが、障害のある人や外国人がターゲットになることもある。今回の問題を、こうした自分たちのなかにある差別意識を克服し、人権意識を更新するきっかけにできればと思います」 「生活保護などの社会保障を権利ではなく施しととらえる考えも、社会に根深くある考えです。施しなので、がんばっている人は救うべきだが、そうでない人は切り捨てていいと。生活保護は、貧困に陥った理由を問わない『無差別平等』の原理を掲げています。この理念に私たちの社会はまだ追いついていない。どんな人であっても、健康で文化的な最低限度の生活を送る権利があります。まず貧困に対するまなざしを変えることから出発しないと、同じような発言が繰り返されてしまいます」 ――インフルエンサーたちに発信の場を提供するプラットフォーム事業者のあり方についてはどのようにお考えでしょうか 「新聞やテレビの報道であれば社内で一定のチェックが入りますが、今回のDaiGo氏のような差別発言について現時点ではYouTubeは野放し状態です。運営する事業者の責任が問われるべきだし、なんらかの歯止めが必要ではないかと思います」 (※インタビューは8月15日に実施しました) 生活困窮者支援団体による緊急声明(全文) 生活困窮者支援団体が、14日に公表した緊急声明の全文は以下の通り。 【メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明】 生活保護問題対策全国会議/一般社団法人つくろい東京ファンド/新型コロナ災害緊急アクション/一般社団法人反貧困ネットワーク 1 DaiGo氏の発言内容 DaiGo氏は、本年8月7日に公開されたYouTubeの動画の中で、「僕は生活保護の人たちに、なんだろう、お金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人が生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで」、「自分にとって必要のない命は、僕にとって軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい。」と述べました。DaiGo氏が猫を大切に思う気持ちは尊重されるべきとしても、猫と生活保護利用者やホームレスの人の命を比べて、後者について「どうでもいい」と貶めることは、明らかに一人一人のかけがえのない命を冒瀆するものです。 さらに、DaiGo氏は、「どちらかというといない方がよくない、ホームレスって?」「いない方がよくない?」と繰り返し視聴者に問いかけ、「正直。邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ、ねぇ。治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。」とホームレスの人に対する差別と偏見に満ちた認識を示したうえで、「もともと人間はね、自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてきてるんですよ。犯罪者を殺すのだって同じですよ。犯罪者が社会の中にいるのは問題だしみんなに害があるでしょ、だから殺すんですよ。同じですよ」と述べて、社会からの排除や抹殺まで示唆しました。 2 DaiGo氏の発言の問題点 ホームレスの人や生活保護利用者の命は要らないとする、DaiGo氏の一連の発言は、人の命に優劣をつけ、価値のない命は抹殺してもかまわない、という「優生思想」そのものであり、断じて容認できるものではありません。これらの発言は、差別を煽動する明確な意図に基づいて行われたものであり、現に、路上生活者に対する差別に基づいた襲撃事件が後を絶たない中、さらなるヘイトクライムを誘発する危険のある、極めて悪質な発言と言わざるを得ません。 また、貧困や生活困窮に陥ることについては、社会的な要因があり、これを社会全体で支え、生存権を保障するための制度として生活保護制度があるということについて、根本的な理解を欠いた発言であると言えます。 今、コロナ禍が長期化する中、生活に困窮する人々が増えているにもかかわらず、被保護実人員は、2020年2月の206.4万人から2021年4月の204.3万人へとむしろ減っており、生活保護の利用に結び付いていません。私たちの相談活動の中でも、「生活保護だけは死んでも受けたくない」という強い忌避感を示す人が極めて多いのです。これは、2012年春、片山さつき氏らの一部自民党国会議員らが主導した“生活保護バッシング”によって、生活保護を忌避する“国民感情”が深く広く浸透していることによると考えられます。 著名なテレビタレントであり、YouTubeチャンネル登録者数が250万人にも及ぶ「インフルエンサー」であるDaiGo氏による今般の発言は、ホームレス状態の人に対する実態をみない偏見をさらに助長し、排除を誘導するものであり、さらに、生活保護に対する市民の忌避感をより一層強め、命をつなぐ制度から人々を遠ざけ、生活困窮者を間接的に死に追いやる効果を持つものです。 なお、批判を受けて、DaiGo氏は8月13日夜、今回の発言を「謝罪」する動画を配信しました。長年ホームレス支援をしているNPO抱樸の奥田知志氏と連絡をとり、近々、現地に赴いて支援者や当事者から話を聞いて学びたいとしつつも、しばしば笑顔を見せながら、「ホームレスの人とか生活保護を受けている人は働きたくても働けない人がいて、今は働けないけど、これから頑張って働くために、一生懸命、社会復帰を目指して生活保護受けながら頑張っている人、支援する人がいる。僕が猫を保護しているのとまったく同じ感覚で、助けたいと思っている人、そこから抜け出したいと思っている人に対して、さすがにあの言い方はちょっとよくなかった。差別的であるし、ちょっとこれは反省だなということで、今日はそれを謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした」と謝罪の言葉を述べたのです。 しかし、ここで示された考え方は、他者を評価する基準を「頑張っている」(と自分から見える)かどうかに変えただけであり、他者の生きる権利について自分が判定できると考える傲岸さは変わりません。しかも、貧困や生活困難を社会全体で支え、生存権を保障するために、権利としての生活保護制度があることについて、根本的な理解を欠いていることに変わりがありません。少なくとも現時点においては、DaiGo氏が、自らの発言の問題点を真に自覚していると評価することはできず、その反省と謝罪は単なるポーズの域を出ていないと言わざるを得ません。 3 私たちの提案 今回の発言では生活保護利用者とホームレスの人たちがターゲットにされていますが、生産性や自らの好みにより、他者の命に優劣をつける発言を野放しにしていると、さまざまな生活上の困難を抱えている他の人たちも、いつ攻撃の的にされ、生存を否定されてもおかしくありません。すべての人の命は等しく尊重されるべきであるという近代社会の前提を棄損する発言を私たちは絶対に許してはなりません。 DaiGo氏の発言に対しては、幅広く多様な方々が批判の声を挙げています。厚生労働省も、8月13日、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と生活保護の利用を呼び掛けるツイートをしました。これは、2012年春の“生活保護バッシング”の際にはなかった動きであり、市民の側にも、行政の側にも、「生存権」の重みを踏まえた対応が見られることに、希望が見えると評価できます。 私たちは、私たちの社会を守るため、DaiGo氏の一連の差別扇動を許さないという姿勢を、より明確に社会全体で示す必要があると考え、以下の5点を求めます。 1 DaiGo氏は、形だけの反省・謝罪にとどまらず、この動画がヘイトスピーチに該当する内容であることについて真の理解に至ったうえで、改めて発言を真摯に反省・撤回し、生活保護利用者、ホームレス状態にある人々に謝罪すること。また、「処刑」や「殺す」という言葉を用い、特定の人たちを社会から排除・抹殺することを正当化することは、ヘイトクライムやジェノサイドを誘発しかねない反社会的行為であることを認識し、この点についても明確に発言を撤回し、謝罪すること。 2 「最後は生活保護がある」と述べた菅首相は、DaiGo氏の発言が許されないものであることを明言したうえで、生活保護の申請が国民の権利であることを率先して市民に呼び掛けること。 3.厚生労働省も、公式サイトにおける「新型コロナウイルス感染症の影響により生活にお困りの皆さまへ」のページにおいて、生活保護制度の案内を大きく取り上げる等、制度利用を促す発信に力を入れること。福祉事務所が追い返しなどしないように、周知徹底をはかること。 4.マスメディアは、DaiGo氏の起用を差し控え、その発言の問題点を報道し、このような発言を許さない姿勢を明確にすること。 5.私たち市民は、今回のDaiGo氏の発言を含め、今後ともこのような発言は許されないことを共に確認し、これを許さない姿勢を示し続けること。 (編集委員・清川卓史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル