76回目の「終戦の日」を前に、満蒙開拓に特化した国内初の記念館(長野県阿智村)と旧日本陸軍の毒ガス工場の遺構(広島・大久野島)を訪ねた。戦争による被害とともに、加害の側面も含めた「負の遺産」にあえて目を向け、後世に生かそうとするのはなぜか。共通する思いを探った。 27万人の開拓団、8万人が犠牲に 「拓(ひら)け満蒙! 行け満洲(まんしゅう)へ!」。国策による呼びかけに応え、海を渡った人たちがいた。中国東北部にあった日本の傀儡(かいらい)国家、旧満州国(1932~45年)への農業移民として送り出された「満蒙開拓団」だ。その数は約27万人に上る。 だが、旧ソ連の侵攻と日本の敗戦でその運命は暗転する。過酷な逃避行の中で約8万人が犠牲になり、多くの残留日本人も生じた。 都道府県別で最多の約3万3千人を送り出した長野県では2013年、満蒙開拓の展示に特化した記念館としては国内初の「満蒙開拓平和記念館」が阿智村に開館した。地元の飯田日中友好協会が母体となりつくられた同名の一般社団法人が、入館料や寄付金を主な財源として運営する。 同館では満蒙開拓の歴史や現地での生活、逃避行や残留孤児問題などを図表や写真、遺品で紹介し、集団自決など悲惨な経験をした元団員の証言に文章や動画でふれられる。 元団員の講演も月2回ある。6月中旬に語り部をした前沢節子さん(86)は逃避行中に祖母と母、弟を失った。取材に「当時は感情を失っていた。関東軍に捨てられた恨みはある」と語った。 同館は用地探しや費用の工面が難航し、構想から開館まで8年を要した。その理由を寺沢秀文館長(67)は「満蒙開拓は地元にとって『不都合な歴史』だからです」と明かす。 開拓団が送り出された当時… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1235文字/全文:1970文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「そこまで?」南極でも、南極だからこそのプロ意識
2020年1月末、前の60次越冬隊と61次夏隊が帰途へ就く日が迫る。約半世紀の歴史ある気象棟が消えた後、急ピッチで進むのは放球デッキの建設、気球で気象観測機を上げる場所だ。1日2回、ブリザードでも休まない。暴風で観測機が地面にたたきつけられそうな時は、思い切りダッシュして気球を空に放つ。滑らないよう、組み立てた鉄骨の上に木の板を張っていく。 南極に来てから「建材が足りない」では困るし、作業する隊員の多くは素人だ。まず国内で仮組みして確認し、ばらしてもって来る。記号や番号をつけた板を設計図通りに並べて、組み立てればいい。 とはいえプロの指揮は必須だ。ミサワホームグループ出身の鈴木聡さんは、壁際になる板を切って調整してはめていく。「何を手伝えば?」と聞くと、「切り口をきれいに」と紙やすりを渡された。ささくれを落として「どう?」と聞くと、「まだ」。黙々と作業を続けても「もういい」の声はかからないどころか「裏側もやって」と言われる。内心、「こき使うなぁ」と思っていた。 8月20日 南極記者サロン 動物たちはどうやって泳ぎ、獲物をとるか―。そのユニークな行動を、オンラインイベント「南極の動物たち、その驚くべき力!」で研究者が南極記者とご案内します。クイズもいろいろ、夏休みのお子さんとご一緒にお楽しみ下さい。20日(金)午後2時から、参加無料。お申し込みはサイト(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11005217)またはQRコードから。 「あんな所までやるんだ」と… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:938文字/全文:1392文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
絶滅危惧の白い花 ヒナノシャクジョウ、大阪で見つかる
小川智2021年8月4日 12時00分 森林伐採などで絶滅が危惧され、地域によっては絶滅危惧種に指定されていることもある菌従属栄養植物のヒナノシャクジョウが、大阪府河内長野市の山中で見つかった。動植物が好きで、よく同市内を散策する同市在住の熱川英明さん(71)が見つけた。 緑の葉を持たず、自分では光合成をせずに土中の菌から栄養を得て生きている。土中からわずか約3センチの茎をのぞかせ、白い花も8ミリと小さい。その姿が僧の持つ鉄の輪のついた杖「錫杖(しゃくじょう)」に見立て、全体的に小さいことから「雛(ひな)の錫杖」という和名がついている。 ヒナノシャクジョウは花の時期以外には見つからないこともあり、確認例が少なく、大阪府下での実態は十分にわかっていない。 写真からヒナノシャクジョウと確認した大阪市立自然史博物館学芸員の佐久間大輔さん(53)は「菌従属栄養植物は、土壌中の菌類を含めて生態系の豊かな場所でしか生きられない。河内長野の森の豊かさを示す貴重な発見」と話している。(小川智) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「手続きするとお金戻る」はすべて詐欺 被害なお深刻
会員記事 編集委員・吉田伸八2021年8月3日 18時30分 医療費や保険料などが戻るとうそを言い、ATMを操作させて金を振り込ませる「還付金詐欺」の被害が急増している。警察庁の3日の発表では、今年上半期(1~6月)に全国で把握された被害は1733件で昨年同期の約2・3倍、被害額は約1・9倍の約19億7千万円にのぼる。警察庁は「ATMで手続きをすると金が戻るといった話はすべて詐欺なので注意してほしい」と呼びかけている。 還付金詐欺を含む特殊詐欺全体の被害は昨年の上半期とほぼ同じ6840件、被害額は約128億8千万円で3・1%減ったもののなお深刻だ。このうち、身内などを名乗るオレオレ詐欺は1418件で昨年より3割以上増えた。 還付金詐欺は、自治体や保健所、税務署の職員などを名乗るうその電話から始まる。医療費や健康保険・介護保険の保険料、年金、税金などの過払い金や未払い金があるなどと偽り、携帯電話を持って近くのATMに行くよう仕向ける。被害者がATMに着くと、電話を通じて言葉巧みに操作させ、口座の金を犯人側の口座に振り込ませる。犯人は「期限は今日まで」などと焦らせる言葉を使うことがある。 上半期の被害のうち21件は新型コロナウイルスを名目にしたもの。「コロナの関係でお金が返ってくる」などと偽る手口という。 警察庁のまとめでは、還付金詐欺の被害者の4人に3人は女性。オレオレ詐欺の被害者は70~80代の女性が7割超と圧倒的に多く、60代は少ないのに対し、還付金詐欺は65~69歳の女性が33・5%と最多で、70代と合わせると65・5%を占める。 「居合わせた人も声かけを」 医療費や保険料が戻るなどと… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:916文字/全文:1598文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
累犯障害者支援の全国的先駆け、田島良昭さん死去
榎本瑞希2021年8月3日 18時32分 田島 良昭さん(たしま・よしあき=社会福祉法人「南高愛隣会」元理事長)2日、骨髄がん腫症で死去、76歳。葬儀は近親者で営み、後日お別れの会を開く。喪主は長男光浩さん。 77年に長崎県瑞穂町(現雲仙市)に南高愛隣会を設立。06年から同会は全国に先駆け、福祉の支援を受けられずに犯罪を繰り返す「累犯障害者」の実態調査に取り組んだ。09年には刑務所出所者らを支える「地域生活定着支援センター」を全国で初めて開設した。11年から最高検参与も務めた。(榎本瑞希) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
中央アルプスのライチョウ復活作戦、ヘリで動物園に移送
長野県の中央アルプスで絶滅したとされてきた国の特別天然記念物・ライチョウの「復活作戦」を進める環境省信越自然環境事務所(長野市)は3日、現地で自然繁殖した2家族(母鳥2羽、ヒナ9羽)を茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)にヘリコプターで移送した。 環境省は「2025年に100羽」を目標としており、来年以降、2施設で繁殖させた個体を中央アルプスで野生復帰させる。現地で繁殖した個体とともに、継続的に繁殖可能な個体群の復活をめざす。 5家族30羽をケージで保護 同省は昨年、復活作戦の一環として、生息地である北アルプスの乗鞍岳(3026メートル)から3家族計19羽(母鳥3羽、ヒナ16羽)を中央アルプスに移送。成長した若鳥たちが今年、半世紀ぶりに自然繁殖したのを確認し、木枠と金網製のケージで保護していた。 同省が中央アルプスの木曽駒ケ岳(2956メートル)周辺のケージ5カ所で保護したのは、5家族計30羽(母鳥5羽、ヒナ25羽=8月2日現在)。ヘリで移送した2家族とは別の3家族は2日までに現地で放鳥した。 一方、動物園でもライチョウ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:790文字/全文:1270文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
群馬でも過去最多、148人の新型コロナ感染確認
群馬県は3日、新たに148人の新型コロナウイルス感染が確認されたと発表した。1日当たりの新規感染者としては7月31日の136人を上回り、過去最多となった。 県内の累計の感染者数は9084人、うち死者は155人。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
シリアで出会った少年は難民になった 五輪で遂げた再会
成田空港の搭乗手続きカウンターのそばで、札幌市の教師、鈴木雄太さん(34)はある人が来るのを待っていた。7月29日夜。東京五輪の試合を終え、早くも帰国の途につく外国人選手たちが出発ロビーに入ってくる。 「あ、あれだ」。背が伸びていた。ひげをたくわえ、体つきもがっしりしている。でも、愛らしい表情は前と変わらない。 向こうも気づいたようで、笑顔になって手を振って近づいてきた。 「久しぶりだね、元気だった?」「元気、元気! ユウタは元気だった?」 アラム・マハムードさん(24)。難民選手団の一人として五輪に参加し、この日、離日することになっていた。 出会いは2009年。鈴木さんは青年海外協力隊員としてシリアに赴任し、バドミントンクラブで指導した。そこにいた身長150センチほどの11歳の少年がマハムードさんだった。 「おはようって日本語でなんて言うの」。「トヨタの車って丈夫なんでしょ」。日本人が物珍しく、鈴木さんの姿を見つけては寄ってきた。バドミントンのプレーもまだ未熟。返球が甘く、ネットに引っかかったりアウトになったりして10点以上の差がついた。 10年には、シリア人5人のチームのコーチとして、千葉県成田市であった国際大会に参加した。家電量販店に入ったマハムード少年は品ぞろえに目を丸くし、ゲームコーナーに入り浸った。バスの中では道にゴミが落ちていないことに驚き、食事の時は納豆を食べて顔をしかめていた。 内戦激化 車内で告げた「また会おう」 だが11年春にシリア情勢は一変する。内戦が始まった。炎上する車。居並ぶ戦車。マハムードさんの知人のバドミントン選手は、兵士として戦場に行き、亡くなった。鈴木さんは、日本への帰国を余儀なくされた。マハムードさんは、父が運転する車で見送りに来てくれた。車内で10分ほど過ごし、「また会おう」と言って別れた。 14年にヨルダンの難民キャ… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:674文字/全文:1492文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
猛暑や豪雨を招く気温上昇 100年に1.26度でも
数字は語る 今年も連日エアコンが恋しい季節がやってきた。この暑さ、年々増しているように感じるが、国内基準となる15地点の昨年の年平均気温は平年値を0・65度上回り、1898年の統計開始以来最も高くなった。 2位は2019年で平年値比+0・62度、3位は16年の同+0・58度と続き、近年の観測値と肌感覚はほぼ一致しているようだ。 気温や降水量などの平年値は過去30年の平均で、10年ごとに更新される。今春発表の1991~2020年の新平年値自体、1981~2010年の旧値より各地の気温が0・1~0・5度高くなった。 全国の観測地点で気象庁が1… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:658文字/全文:935文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ルミネエスト新宿、4日に臨時休館 スタッフの感染者増
商業施設を運営する「ルミネ」(東京都渋谷区)は3日、JR新宿駅東口そばの「ルミネエスト新宿」を4日に臨時休業すると発表した。新型コロナウイルスに感染したスタッフが増えたことを受け、館内を一斉消毒するという。 同社によると、7月21日以降、衣料品や飲食の店舗のスタッフら59人の感染が確認された。感染経路はスタッフの家庭や友人経由だと判明しており、「クラスターは発生していない」としている。感染者が出た店舗ごとに消毒をしてきたが、感染者の増加に伴い、対策をより徹底するという。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル