福冨旅史、菅野みゆき2022年11月11日 20時00分 2019年の参院選をめぐる買収事件で、河井克行元法相(59)=実刑確定=から現金30万円を受け取ったとして公職選挙法違反(被買収)の罪に問われた元広島県議、平本英司被告(49)の判決が11日、広島地裁福山支部であった。松田克之裁判長は求刑通り罰金15万円、追徴金30万円を言い渡した。 平本被告は公民権停止期間を5年とする略式命令を不服として短縮を求めていたが、判決は「選挙の公正を著しく害した」などとして認めなかった。現金を受け取った側で正式裁判が予定される地方議員ら12人のうち、判決が言い渡されたのは初めて。 判決によると平本被告は19年4月、自身の後援会事務所で、河井元法相から妻の案里氏(49)=有罪確定=の当選に向けた選挙運動の報酬と知りながら、封筒入りの現金を受け取った。 被告側は買収を認めた上で、次々回の27年の県議選にも立候補できないことは「公民権停止の趣旨や市民感覚にも反する」として停止期間の短縮を求めた。判決は「公職につく者として、いかなる立場の者からでも毅然(きぜん)とした態度で(現金を)拒否することが期待されていた」と退けた。 平本被告は判決後、報道陣の取材に「(控訴は)検討します」と述べた。 この事件で、検察は当初、現金を受け取った議員ら100人全員を不起訴処分とした。だが、うち35人を「起訴相当」とする検察審査会の議決を踏まえ、25人が略式起訴され、平本被告ら3人が正式裁判を求めた。また、現職議員9人は正式起訴され、買収の成立を争うなど無罪を訴える見通し。公判前に証拠や争点を整理する手続きが続いている。(福冨旅史、菅野みゆき) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「3期まで」と掲げたのに4選へ マニフェスト大賞の愛知県小牧市長
日本最大の政策コンテスト「マニフェスト大賞」の優秀賞に選ばれた愛知県小牧市の山下史守朗(しずお)市長(47)=3期目=が受賞発表後、「任期は3期12年」としていたマニフェストに反して4選への立候補の意向を示している。賞を贈った側は「非常に残念」としている。 地方自治の優れた取り組みを紹介するマニフェスト大賞は、早稲田大学マニフェスト研究所(マニ研)などで作る実行委員会が主催。審査委員長は元三重県知事の北川正恭早大名誉教授。17回目の今年は首長や議員など8分野が設けられ、全国から計3133件の応募があった。 受賞発表は10月7日。選ばれた40件のうち、山下市長には新設されたローカル・マニフェスト大賞の首長の部で優秀賞が贈られた。「計画策定における市長の権限と責任を明確にし、マニフェストを市の計画に反映させる仕組みを構築した」などと評価された。 山下市長は2011年、「任期は3期12年」をマニフェストの重点項目に掲げ、5選をめざした現職の多選を再三批判して初当選した。当選後は議会で否決されたものの、多選自粛条例案まで提案していた。 だが来年2月投開票の市長選に向け、11月5日付の地元紙で「立候補の意向を固めた」と報じられた。朝日新聞の取材にも立候補の意向を認め、「市政に責任がある。会見ですべて話す」などと話し、月内に出馬会見を開く考えを示した。 マニ研の中村健事務局長は11日の表彰式を前に取材に応じ、「マニフェストを市長ご自身が破って4期目に立候補されることは非常に残念。市民への説明責任は十分に果たされなければならないと考える」などと回答した。賞の選考では3期目までの取り組みを審査対象としたとして「賞の取り下げはない」としている。(土井良典) ■元三重県知事の北川正恭審査… この記事は有料記事です。残り144文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「子どもの空を守りたい」 動かずにいられなかった親たちの5年
5年前の12月。園児が遊ぶ保育園の屋根で、重さ213グラムの米軍ヘリの部品が見つかった。300メートル先には米軍基地があるが、何が起きたのか、真相がわからないなか、せめて保育園や学校の上は飛ばないで、飛ばせないでと声をあげてきた親たちがいる。今月、初めてネットでの署名集めも始めた。「どうか力を貸して欲しい」。さらなる危機感が背景にあるという。 園の庭では2~6歳の園児たちが遊んでいた。2017年12月7日午前10時20分過ぎ。園のトタン屋根で、円筒型のプラスチック製の物体が見つかった。当時の報道によると、高さ9・5センチ、直径7・5センチ、厚さ8ミリ、重さ213グラム。赤いラベルに「飛行前に外すこと」と英語で印字されていた。米国を表す「U・S」のアルファベットも書かれていた。 幸い、けが人はいなかったが、保護者らに不安が広がった。 翌8日、米軍は、面会をした自治体幹部に、保育園で見つかった部品は米軍の大型ヘリコプターCH53Eに使われているものだ、と認めた。回転翼の根本付近にある機器を粉じんから守る部品とも説明した。 この大型ヘリは、保育園から約300メートル南西にある米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)で離着陸しているものと同じ機種だった。大型バスほどの大きさがあり、2004年には近くの沖縄国際大に墜落・炎上したものと同型機でもあった。 5日後、さらに衝撃的な出来事が起きる。 児童約30人が体育の授業中… この記事は有料記事です。残り1112文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ないものを考えても…」 部員5人の吹奏楽部が深めた絆で全国へ
部員は5人、足りないパートは分担して演奏する。青森県のつがる市立森田中学校の吹奏楽部は、少人数のハンディをチームワークで補い、13日に東京で開かれる全国大会への出場権をつかんだ。「少人数でもここまでできる、という演奏をみせたい」。本番を間近にして、練習にはいよいよ熱が入っている。 ホルンにコルネット、ユーフォニアム、バスクラリネット、そして、フルート。5人が吹くのはこれらの楽器だが、音に厚みを出すため、本来は別の楽器で演奏するパートを分担して奏でる。 例えば、アルトサックスでメロディーを吹くパートをホルンなどで代用。その時はホルンのパートをコルネットで演奏して、ハーモニーが崩れないようにする。5人は複数パートの楽譜を覚え、全員がほとんど休みなく演奏を続ける。 全員の力を最大限引き出せる… この記事は有料記事です。残り858文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
サメなのに柔和な「えびす顔」 全国2館だけ展示で御利益あるかも
西堀岳路2022年11月11日 17時30分 捕獲例が少なく珍しいエビスザメの展示が、福島県いわき市の環境水族館「アクアマリンふくしま」で今月始まった。北海道の標津サーモン科学館から譲り受け、活魚トラックで28時間かけ運んできた。現在、国内で飼育展示しているのはこの2館だけという。サメなのに「えびす顔」なのも珍しく、この名が付いた。 つぶらな目と厚い下あごのため、柔和に笑っているように見える。昨年、北海道標津町沖で捕獲された3匹のうちの1匹で、体長は約1・6メートルのメス。さらに成長すると3メートルほどになるという。多くのサメは5対のえら穴が、7対あり、背びれも後ろの方に1枚しかない原始的なサメの特徴を残している。科学館では、大きくなりすぎたうえ、同じ水槽内のサケなどを食べてしまうため手を焼いていたという。 北海道オホーツク海沿岸、相模灘~土佐湾、山口県西方沖などで捕獲例があり、水深50~600メートルあたりに生息しているとみられるが、詳しい生態は不明だ。アクアマリンの飼育担当者は「エビちゃん」の愛称で呼んでいる。 だいたい同じ目線の高さで見た斜め前向きが、最も笑って見える。エビちゃんは深海をイメージした薄暗い水槽内をゆったりと泳ぎ回っているが、意外にこの条件で「笑顔」をばっちり見られるチャンスは多くない。えびす様といえば、商売や漁業の福神。飼育担当者は「笑顔に出会えたら何か御利益があるかもしれません」。(西堀岳路) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
世界規模で進むニュース離れ、その理由 「強い感情」依存の副作用
去る10月15日から21日は「新聞週間」であった。「報道の使命と責任に対する自覚を新たにし、報道の役割について広く理解を求める機会」とされる。読者や幅広い社会に向けて、新聞が手がけるニュースの魅力をアピールする期間というわけである。 各紙は紙面でこの1年の自社の報道の成果を示した。例えば、各種のスクープやデジタル技術を駆使した社会課題の解決に役立つニュースの発信といった、新たな取り組みの紹介である。また、インターネット上に虚実入り交じった情報があふれる中で、現場の取材に基づいた新聞の情報の信頼性や正確性も強調された。 毎年、新聞週間に合わせて世論調査を実施している読売は、今年の調査結果に関して「新聞報道を信頼し、新聞が事実を正確に伝えていると考える人が7割を超えた」と評価した。その一方で、気になるデータもある。18~39歳では新聞を「全く読まない」割合が57%に達したという。10年前の同社の調査を調べてみると、「全く読まない」割合は20代で18%、30代で11%だった。この間に「新聞離れ」が急速に拡大したことがうかがえる。 ただし、これを単なる「新聞離れ」とまとめてしまうと、全体を見誤ることになる。現在、さらに深刻な「ニュース離れ」が世界規模で進んでいる点に注目する必要がある。 英国のロイタージャーナリズ… この記事は有料記事です。残り1730文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
早く去りたい場からインスタ映えへ 丸の内を変えた「もったいない」
東京駅の目の前。今年で開業20年を迎えた「丸ビル」など丸の内エリアで10日、クリスマスに向けたイルミネーションが始まった。 帰宅途中に立ち止まるスーツ姿の男性、ベンチに座って寄り添う恋人、ポーズを決めて写真を撮り合う若い女性たち。街路樹に瞬く光を誰もが見上げている。 神奈川県に住む里中愛理さん(25)は2年前からこの街で働く。おしゃれで、きれいで、「どこを撮ってもインスタ映え」。就職先が決まったときうれしくて、友だちにも自慢した。 ただ、母親から聞く「丸の内」はまったく異なっていた。 同居する母親の洋子さん(60)は35年前まで、この街で働いていた。長野県出身。大学卒業後、一般職で採用された。就業時間は午前8時から午後5時。入社当時は「東京の中心で働くことに誇りを持っていた」。それでも、次第につまらなくなっていく。 「遊ぶ所なんてなかった。夕方以降は『ゴーストタウン』と言われていて、同僚と競い合うように、帰っていました」 丸の内が、「インスタ映えタウン」に生まれ変わったのは20年前、丸ビルの建て替えがきっかけだ。 1890年。陸軍の練兵場だった荒れ果てた草むらを、三菱社(現・三菱グループ)の岩崎弥之助氏が買い上げて以来、丸の内は「オフィス街」の先頭を走り続けてきた。 「トラでも飼うさ」 草むらだった丸の内 当時、岩崎氏は「竹を植えて… この記事は有料記事です。残り1718文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
SOGIハラ「厳しい処分で本気度示せ」 恋愛話も、自分からはNG
有料記事 聞き手・平井恵美2022年11月11日 14時00分 性自認や性的指向について侮辱される「SOGI(ソジ)ハラ」を職場で受けてうつ病を発症した40代の会社員が、神奈川県内の労働基準監督署から労災認定されたことが分かった。ハラスメントに詳しい神奈川県立保健福祉大の津野香奈美准教授(社会疫学)に、SOGIハラをめぐる実態や被害を防ぐための対策について話を聞いた。 ――SOGIハラだけで労災認定されることは珍しいのでしょうか。 「知る限りでは非常に珍しいと思います。2020年施行の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の指針で、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動に加え、本人の許可を得ずに本人の性的指向や性自認を言いふらす『アウティング』などの行為はパワハラにあたると明記されました」 「ただ、SOGIハラをパワハラと理解している管理職らはまだ少ない。今回の労災認定で、SOGIハラもパワハラで、SOGIハラだけでも労災認定されると認知されるのは社会的インパクトが大きいと思います」 ――法改正で企業側に防止措置も義務づけられましたが、状況は改善していますか。 「実効性のある対策ができて… この記事は有料記事です。残り1216文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
霞が関、丸の内などの官公庁19施設に侵入か 偽バッジ、スーツ姿で
岩田恵実2022年11月11日 14時13分 東京・霞が関や丸の内の官公庁施設に侵入したとして逮捕、起訴された藤本叶人容疑者(22)=東京都品川区=が、今年4~8月に官公庁の計19施設に侵入していた疑いがあることが、警視庁の調べでわかった。同庁はこのうち3施設への侵入容疑などで藤本容疑者を先月までに3回逮捕。残りの16施設への侵入容疑についても書類送検し、捜査を終結したと11日明らかにした。 捜査1課によると、藤本容疑者は8月24日に東京都千代田区の外務省に侵入したとして同月30日に逮捕された。他の官公庁への侵入も認める供述をしたため、同庁が裏付けを進めたところ、千代田区にある厚生労働省が入る庁舎と警視庁丸の内庁舎、港区にある警視庁愛宕署や同庁新橋庁舎などにも侵入した疑いがあることが判明。丸の内庁舎では更衣室から捜査用の腕章2個盗んだとする窃盗罪でも起訴されている。 藤本容疑者は官公庁に入る際はインターネットで購入した偽の議員バッジを付け、警視庁の施設にはスーツ姿で別の警察官の後について侵入するなどしていた。調べに対し、「自分が国会議員や警察官として見てもらえることで承認欲求を満たしていた」などと供述したという。(岩田恵実) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
世界初のサンゴ人工産卵 成功に欠かせなかったある「天才」の技
「天才」「日本で十指に入る」と感じた職人技を人工知能(AI)に学ばせたい。その思いが世界初の功績につながる。ベンチャー企業「イノカ」は沖縄の海を水槽内に再現し、季節をずらしたサンゴの人工産卵に成功した。創業したCEO(最高経営責任者)の高倉葉太さん(28)は、サンゴのみならず海の保護、そして潜在力を活用して生活を豊かにする未来図を描く。 「サンゴが認めてくれた」 サンゴの表面に並ぶ無数の突起が、抱えていた小さな球体を手放す。あちこちから、ひとつ、またひとつ。水面に向かって浮かんでいく。水槽内での人工産卵。しかも本来6月なのを真冬にずらした。イノカが今年2月、世界で初めて成功。水質、水温、光量などの要素を自動的に制御し、沖縄の夏の海とサンゴ礁を再現した成果だ。「私たちの技術をサンゴが認めてくれたのかな」 出発点は、東京大学大学院でAIを研究していた2018年。かつて工場の鋳型職人だった増田直記さん(32)との出会いだ。趣味は同じアクアリウム。観賞にも堪えうるように水槽内を美しく整える。訪ねた自宅で巨大な水槽に圧倒された。10年育てたサンゴで、はち切れんばかり。「多くの水族館でも不可能だろう。日本で十指に入る職人技だ」。この知識と経験をAIに学ばせ、自動制御できたら――。大学院を修了して19年4月、イノカを立ち上げた。増田さんがCAO(最高アクアリウム責任者)に就く。 それまでは世界を変える家電をつくりたかった。東大在学中の16年、産業用機器を開発するベンチャー企業の創業に参加したが、夢は実現しそうにない。ほどなく限界を感じた。 次にめざしたのが中学2年から親しむアクアリウムの事業だった。サンゴ礁には多種の生き物がすむ。一方で気温が上がれば危機に直面する。単にサンゴの水槽を売るのではなく、この状況を広く伝え、サンゴをはじめ海を守る。この二つを使命と定めた。 世界初の成功にどうたどりついたのか。記事後半で詳しく紹介しています。 伝える対象は小学生が中心… この記事は有料記事です。残り2616文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル