社会

記者の弁護団「判決、社会的意義大きい」 長崎・性暴力訴訟

 報道機関の女性が取材相手の長崎市職員(故人)から性暴力を受けたとして、市を訴えた訴訟は、長崎地裁が原告の訴えを認め、市に1975万円の支払いを命じた。 判決のポイントはどこなのか。原告の中野麻美弁護士と角田由紀子弁護士が地裁前で取材に応じた。一問一答は以下の通り。――判決を受けて 主文は、長崎市が取材中の記者に対して職権を乱用して暴力をふるったことを基本的に認めた。 それを封印・隠蔽(いんぺい)するため風説を流したことについて、虚偽であると認め、長崎市は虚偽の風説を流さないよう注意する義務があったことも認めた。 その結果、記者が長年にわたり活動できない状況におかれ、その分の損害も認めた。慰謝料については500万円を認めた。 ただ、残念ながら長崎市の名…この記事は有料会員記事です。残り561文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

知床の語り部は言った 自然への畏怖、後世に残すのが使命と

 自然は人間が「消費」するだけのものではない。本質には人間を「畏怖(いふ)」させる何かがある――。そのことを示し続けた人が、知床の地にいる。 「知床の自然がなかったら、私の人生はすさんだものだっただろうね」 斜里町長として、2005年に知床の世界自然遺産登録を実現させた午来昌(ごらいさかえ)さん(85)は振り返る。 07年の町長退任後は、羅臼岳を望む自宅近くの畑で農作業にいそしむ。いまは土を相手に独りごちる日々を過ごすが、その足跡は、知床の自然保護活動の「闘士」というべき半生だ。積み上げた知床の信頼、失われた 知床の原生林を乱開発から守…この記事は有料会員記事です。残り1123文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

武蔵野市住民投票条例、廃案から再起へ 「お任せだめ」市民が学習会

 外国籍の住民に日本国籍と同じ条件で投票資格を認める内容が注目を集めた東京都武蔵野市の住民投票条例案。賛否が割れ、昨年12月に市議会で否決され廃案となった。あれから5カ月。市民たちの間で住民投票制度について改めて学ぼうという取り組みが始まった。(井上恵一朗) JR武蔵境駅前のビル多目的室に21日夜、約130人が集まった。条例案に賛成していた市民を中心にできた「住民投票条例の制定をめざす武蔵野市民の会」が主催した学習会だ。 会の代表を務める高木一彦弁護士は冒頭、条例案をめぐって右派勢力が排外的な言説を繰り返したことへの憤りを口にした。市議会の否決理由が市民への周知不足だったことに触れ、「市民全体での合意形成が必要とされるなら、市役所にお任せでよいということはない。私たちもこの課題に取り組まなければ」と学習会の趣旨を述べた。 第1回のテーマは、「なぜ住民投票制度は必要なのか」。最初の講演者は、哲学者の國分功一郎さんで、2013年に小平市の都道建設の見直しを問う住民投票に関わった経験から、その意義を語った。 「行政や議会が、民衆の望むところからかけ離れた決定を下すことはありうる。それに対して公的に、自分たちの望むところを表明する一つの手段。議会制民主主義を補完する制度として機能する」 あらかじめ住民投票条例を設けていない自治体の場合、住民から実施を求めるには有権者の50分の1以上の署名が必要となる。國分さんは、署名が集まっても大半は議会で否決されてきた現実を示し、制度設計で重要なのは「一定数の署名が集まれば、必ず住民投票が実施される制度にすること」とした。■「厳しすぎる」國分さん指摘…この記事は有料会員記事です。残り726文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

2人を照らす電車のライト、生死を分けた5秒 「考えるよりも体が」

 4月13日の午後7時ごろだった。神戸朝日病院(神戸市長田区)の理学療法士、西園龍馬さん(38)は、その日の勤務を終えて帰途についた。 仕事が立て込んで、いつもより30分ほど遅い退勤。結果的に、これが一人の人生を救うことになった。 病院前の坂を下り、神戸電鉄有馬線の踏切前まで来たときだった。 線路の上で80代の男性がうつぶせに倒れていた。遮断機はすでに下りていた。 とっさに遮断機をくぐって踏切の中へ。男性に近づくと、平日にリハビリへやってくる病院の患者だと気づいた。線路の溝につまずき、動けなくなっている様子だった。 「大丈夫ですか」。肩をたたきながら声をかけたが、男性はぐったりとして会話もままならない。 直後、ふたりを光が照らした。カーブを曲がってきた、電車のライトだった。急ブレーキの甲高い音が響く。 「このままだと死んじゃう」。男性のズボン付近をぐっとにぎり、手前に引き寄せて線路からずらした。 目の前を電車が通過した。体を移動させてから、体感で5秒ほどだった。 3両目が自分たちの前に止まった。そのとき初めて、自分も危なかったと気がついた。 乗員が駆け寄ってくるまでに男性は問いかけに応じるようになり、興奮と混乱が入り交じった表情で「ありがとう。ありがとう」と言った。 大きなブレーキ音に気がつき、近所の人や病院の事務のスタッフが集まってきた。スタッフと2人で遮断機の外に運び出した。 ちょうど1カ月がたった今月13日、人命救助への貢献をたたえる「のじぎく賞」が長田署で西園さんに贈られた。西園さんは「考えるよりも体が動いた。たまたま帰りが遅れたことが人助けにつながって良かったです」。(宮島昌英)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

勤続2年8カ月、教員免許は偽造だった 「先生」が法廷で語った挫折

 障害のある生徒らが学ぶ福井市内の特別支援学校で、2年8カ月の間、無資格の男性(27)が講師として勤務していた。男性の教員免許は偽造されていた。男性は「罪の意識は常にあった」というが、自ら誰かに打ち明けることはなかった。なぜ引き返すことができなかったのか。 男性は被告として福井地裁で裁判を受けている。問われているのは有印公文書偽造・同行使の罪だ。 起訴状によると、男性は2018年11月、パソコンや用意した角印を使って小学校教諭2種、中学校教諭1種、特別支援学校教諭1種の3通の免許を偽造。特別支援学校の当時の教頭に提出したとされる。 5月10日の初公判で被告人質問があった。そこで語られた、事件へのいきさつは次のようなものだった。 男性は14年に京都の私立大学の社会福祉学部に進学した。高校1年から福井県で自然学校のボランティアをしていた男性は、子どもとの触れ合いに楽しさを感じ、教員への夢を語る大学生の先輩の話を聞いて、教員に興味を持ったという。教員免許を持っていないのに、なぜ講師として働き続けてしまったのか。男性は法廷で経緯を説明していきました。判決は5月31日に言い渡されます。 進学先も教員になることを目指して選び、小学校教諭の免許を取ろうと通信教育の受講も始めた。両親に打ち明けられなかったこと 最初のつまずきは音楽の単位…この記事は有料会員記事です。残り1110文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

見過ごしたら「絶対に、後悔する」 高校生が振り絞った2度の勇気

 ふと前を見ると、男の子の小さな後ろ姿が見えた。もう暗いのに、ひとりで歩いている。 4月20日の午後7時ごろ。群馬県立前橋南高校3年の川岸花琴(かのん)さん(17)は、学習塾へ向かおうと前橋市中心部を自転車で走っていた。 行き交う自転車や車は、男の子を気にとめず、過ぎ去っていく。 「変な人と思われるかも……」。川岸さんは迷った。 でも、勇気を出して声をかけた。 「お母さんは近くにいるの?」 だが、7歳の男の子の返事は、要領を得ない。「大丈夫?」と問うとうなずいたので、川岸さんは塾へ向かおうと自転車を進めた。 ペダルをこぐにつれ、後方の男の子の姿はさらに小さくなっていく。このまま見過ごすのは簡単だ。だけど、やっぱり心配が募る。 この子が事故にあったりしたら絶対後悔する――。川岸さんは男の子の元へ戻った。 そして、2度目の勇気を振り絞った。 「一緒に行こう」 連れ添って歩く間、川岸さんは男の子が不安にならないように自己紹介をしたりして、話しかけた。男の子に笑顔は見られなかったが、手に持ったぬいぐるみや自分で摘んだ花をみせてくれた。 そうして10分ほど歩いていると、2人に気づいた女性が走ってきて、男の子の名前を呼んだ。 女性は男の子が通う小学校の教師で、その直後に前橋署員も駆けつけた。母親から「息子がいなくなった」と110番通報を受け、県警と学校関係者らは午後5時過ぎから市内を捜し続けていた。 「バイバイ」。先生に会えて安心したのか、男の子は笑顔で川岸さんに手を振った。 元気なその姿を見て、小さな背中を見過ごさず「もう一度声をかけて良かった」と、心から思った。 前橋署は19日、川岸さんに感謝状を贈った。津田征一生活安全課長は「素晴らしい行動。川岸さんの気遣いと勇気に感謝したい」と話した。(杉浦達朗)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

茨城で何が? 県立中高一貫校が続々 教育現場に飛び込む元官僚も

 全国で公立中高一貫校が増え続けている。特に茨城県では、この3年間で県立中高一貫校が10校誕生して計13校になり、注目を集めている。県のねらいは何か。(編集委員・宮坂麻子)茨城県立水戸第一高校付属中2年生の数学の授業。それぞれの生徒が端末をフル活用している。授業のオンライン配信も行われている=2022年5月10日午前10時55分、水戸市、宮坂麻子撮影 茨城県では今春、中高一貫の県立2校が開校した。県内にある県立中高一貫校は、全員が6年間学ぶ「中等教育学校」が3校、同じ設置者が中学・高校を併設する「併設型」が10校。このほかに、市立中と県立高の「連携型」も1校ある。 その中で、今年度入試の志願倍率が最高だった水戸第一高校付属中学校。今月、中2の教室を訪ねると、習熟度別の数学の授業が行われていた。 生徒は1人1台のノートパソコンを机の上に置き、教科書は開かず画面に表示された問題に取り組む生徒もいれば、自分や友達のノートの画像などを見ながら教員の解説を聞く生徒もいる。 水戸城本丸跡にある伝統校に付属中学が開校したのは、昨春のことだ。1期生の志願倍率は4・5倍、2期生は4・9倍だった。60分授業で数学と英語は先取り学習し、定期試験の代わりに単元テストを実施。探究活動、プロジェクト学習、海外研修などを通し、グローバルな世界へはばたく生徒を育てるという。記事後半では、校長応募者1700人から選ばれた、ひとり親家庭で育った元文科官僚の公立中高一貫校にかける思いを紹介します。東大や医学部合格者が急増した学校も 国立の茨城大教育学部付属中…この記事は有料会員記事です。残り2352文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

竪穴住居に「ただいま~」弥生人そっくりさん、決戦一夜明け集落跡へ

【動画】弥生人になりきって火起こしやEXILE風ダンス=大久保直樹撮影 国史跡・青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡(鳥取市)で出土した頭蓋骨(ずがいこつ)から復元した顔のそっくりさん10人が29日、国内最大級の弥生時代の集落跡がある妻木晩田(むきばんだ)遺跡(鳥取県米子市、大山町)を訪れ、火起こし体験や竪穴住居の見学などを満喫した。仲良くダンスに挑戦するなど、弥生人がつないだ縁を深め合った。 鳥取県の「そっくりさん大集合ツアー」の一環。鳥取市で前日に開かれたそっくりさんグランプリを終えた参加者たちは、復元された竪穴住居や高床倉庫を目にして、「懐かしい」「ただいま~っ!」などと弥生人になりきって見学した。 火起こしは木の棒を十字に合わせて使う「舞ぎり法」で挑戦。強い日差しの下、汗をかきながらも慣れた手つきで棒を上下に動かし、次々と火だねを起こしていった。そっくりさんグランプリで優勝した大阪府柏原市の吉田昌弘さん(35)は最後まで苦戦し、ほかの参加者から「グランプリっ! がんばれっ」とエールを送られていた。「長老」も誕生、強まる団結 グランプリの緊張から解放さ…この記事は有料会員記事です。残り393文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

8mの巨大ねぷたが回る、縮む、折り畳む こんぴら歌舞伎の町に出張

多知川節子2022年5月29日 17時00分【動画】四国金毘羅ねぷた祭り 初運行=紙谷あかり、多知川節子撮影 青森県弘前市とのコラボで、香川県琴平町で27日から初めて開催された「四国金毘羅ねぷた祭り」。28日夜には、ライトアップされた勇壮なねぷたが、「こんぴらさん」の愛称で知られる金刀比羅宮(ことひらぐう)の門前町を練り歩いた。 現存する日本最古の芝居小屋・旧金毘羅大芝居(金丸座)=琴平町=を舞台に毎春開かれていた「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が、コロナ禍などのため3年連続で開催できなかった代替のイベントだ。 2020年春に上演するはずだった演目「義賢(よしかた)最期(さいご)」を題材に新たに描き下ろした大型のねぷたなど、3台が登場。レトロ駅舎として人気のJR琴平駅前のほか、金刀比羅宮参道近くの土産店の通りなどを約2時間かけて巡った。 笛や太鼓のおはやしにあわせ、回転などのダイナミックな動きを見せると、沿道の地元住民や観光客からは大きな歓声が上がり、「観光の町」に光と活気を呼び戻した。 電線を避けるため、ねぷたが電動で縮んだり、絵を折り畳んだりする場面も。高さ約8メートルもあるねぷたが、半分ほどに小さくなる姿に感嘆の声も上がった。土産物店で働く小野綾子さん(74)は「あんなに大きなねぷたがくるくる回ってね。本当に感動した。町に活気が戻ってうれしい」と話した。(多知川節子)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

ヒグマ潜む森抜け、断崖絶壁へ あの日見たカズワン最後の姿

【動画】自然ガイドが見た「KAZUⅠ」最後の航海=戸田拓、佐野楓撮影 自然を相手にすることのリスクとは――。事故前の船を目撃した自然ガイドは、改めて思う。事故があったあの日、出航直後の観光船を目撃した自然ガイドがいました。船を見たのは、高さ約120メートルの断崖絶壁。ガイドとその場所に向かうと、事故当時の様子や知床の自然がより見えてきました。 枝葉をのばす白樺(しらかば)の木々の隙間から、やわらかな木漏れ日が差し込む。耳をすませると、森の奥から、鳥のさえずりやエゾハルゼミの鳴き声が聞こえてくる。 観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故から、1カ月を目前にした5月19日。事故当日、出航後のカズワンとみられる船を見た自然ガイドの綾野雄次さん(62)とともに、知床国立公園内の目撃地点を目指した。 野生動物との遭遇率が高い約1キロのけもの道を、およそ3時間かけて歩く。ヒグマに遭遇した際の行動の取り方の説明を受けて臨んだ。 案内されたのは、ガイドがいなければ立ち入れないエリア。100年以上前に開墾された開拓跡地を抜け、新緑が深まる原生林へと進んでいくと、すぐにヒグマの痕跡に出会った。 木の幹に、鋭い三本の傷が縦…この記事は有料会員記事です。残り1125文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル