定年退職は男性にとっては「ロマン」でも、女性は「フマン」を抱いている――。キャリアコンサルタントでシニアライフアドバイザーの原沢修一さん(72)=埼玉県=の言葉です。夫婦関係を円滑にするためのヒントを聞きました。
――定年を機に右往左往する男性と、ぎくしゃくしがちな夫婦関係を見つめてきました。
夫の定年を機に、うつ状態になった2人の女性を知っています。1人は外出しようとする度、夫から「どこへいくんだ」「おれの夕飯は」と質問攻めに遭っていました。もう1人は「時計が遅れている」「トイレの紙がない」と夫から延々ダメ出しをされました。でも、夫は自分では何もしないのです。
そうした言動が女性たちを「亭主在宅ストレス症候群」に追い込むのだと思います。特にサラリーマンと専業主婦の世帯の場合、夫が定年で在宅することは、妻の心に雑音をもたらします。
――男性はなぜそのような言動に及ぶのでしょうか。
外で働いてきた男性たちは、家事や育児の大変さを理解せず、妻を長く下に見てきたと思います。
特に象徴的なのは「ありがとう」「ごめんなさい」を妻や家族に素直に言えないことです。上司には抵抗なく謝罪できても、妻にはプライドが許さないのです。
男性は「見え・意地・プライド・嫉妬」の「心の4大生活習慣病」を患いがち。シニア男性はこの病のために何かを犠牲にしていないか、よくよく考えてみましょう。
――どうすればよいのでしょうか。
私は妻とは良い距離感を保ち、食器洗い、洗面所とお風呂の掃除は毎日しています。トイレットペーパーの交換など、「名もなき家事」は気付いたらなるべくやっています。
人生100年時代、夫婦関係を定年後もサステイナブルなものにしていくには関係性のリフォームが必要です。
定年退職は社会だけでなく家庭からも居場所をなくす危機になりかねません。必要なのは男性の自覚と変革です。(聞き手・机美鈴)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル