安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用を安倍氏側が補塡(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部は22日までに、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏本人から任意で事情聴取した。安倍氏は自らの関与を否定したとみられ、特捜部は公設秘書を立件対象とし、安倍氏については近く不起訴処分とする見通し。
夕食会は公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」が主催した。年に1回、都内のホテルに支援者らを招き、1人5千円の会費制で開いてきた。
安倍氏は国会などで「ホテル側が設定した額を参加者が払った」と安倍氏側の費用負担を否定。「事務所や後援会の収入、支出は一切ない」と述べ、政治資金収支報告書への記載は不要と説明してきた。
しかし、安倍氏周辺の関係者は11月、補塡の事実を認め、「秘書は収支報告書に記載すべきだと知っていた」と釈明。安倍氏が知ったのは11月下旬だとしたうえで、「安倍氏には虚偽の説明をしていた」と語った。関係者によると、第1秘書らは特捜部の調べにも「自分たちの判断で、慣例的に書いてこなかった」と説明したという。
補塡分の支払いを受けたホテルは安倍氏が代表の別の政治団体「晋和会」宛てに領収書を発行していたが、特捜部は契約主体は後援会だったと判断。後援会で会計処理の中心を担った第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)罪で略式起訴する方針だ。一方、安倍氏は後援会の役員ではないうえ、任意聴取に不記載の指示や了承も否定したとみられ、不起訴となる見通しだ。
特捜部は、収支報告書の提出を受けた選挙管理委員会での保管期間が切れていなかった2016年分以降、19年分までの4年分を不記載の対象とする方向で検討。不記載額は、会費として集めた約1100万円の収入と、これに補塡分の約800万円を加えた約1900万円の支出の合計約3千万円になるとみられる。
費用の負担をめぐっては、告発した弁護士らが「選挙区内での寄付を禁じた公職選挙法違反にあたる」とも訴えていた。だが、夕食会の参加者側が会費を上回る利益を受けたという認識を否定しているといい、特捜部は適用は難しいとみている模様だ。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル