車いすに乗った母と、車いすを押す娘がレッドカーペットの上を歩いていた。約1万人の大歓声に包まれるなか、病気で目が見えない母は懸命に手を振って応える。娘の目には涙が浮かんでいた。 母とは、在日朝鮮人2世の映画監督、朴壽南(パクスナム)さん(88)=神奈川県茅ケ崎市。娘は、長女の麻衣さん(55)だ。 10月、韓国・釜山で開かれたアジア最大級の「釜山国際映画祭」の最終日。2人が監督を務めた新作映画「よみがえる声」が、ドキュメンタリー競争部門で最優秀賞を受賞した。 「この作品を見た瞬間、ある存在を破壊する力を感じた」 映画「ゆきゆきて、神軍」などの代表作があり、映画祭で審査委員を務めた原一男監督は授賞の発表でこう述べた。 「よみがえる声」は、壽南さんがかつて撮影した在日1世らの証言映像をデジタル化し、その過程をまとめた映画だ。 壽南さんの自宅には、16ミリフィルムで約40年前から撮りためてきた約50時間に及ぶ膨大な映像が保管されていた。 広島と長崎で原爆被害に遭った朝鮮人、徴用工、朝鮮人元軍属、日本軍の「慰安婦」にされた女性……。 12歳の時に広島で被爆し… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
住宅火災で焼け跡から2人の遺体、3人が救急搬送 神奈川・南足柄
5日午前6時ごろ、神奈川県南足柄市千津島で、「隣の家から火が出ている」と近隣の住民から119番通報があった。松田署や小田原市消防本部によると、志村孝治さん(48)方木造2階建て住宅が全焼し、焼け跡から志村さんの妻の恵美さん(45)と、性別年齢不詳の2人の遺体が見つかった。このほか、志村さんと次男(16)、長女(11)の3人がけがをして病院に救急搬送されているという。3人は命に別条はない。 署によると、住宅には家族5人が住んでおり、10代の長男と連絡が取れていないという。署は遺体の身元の確認を進めている。 現場は、小田急線開成駅から約2・5キロの住宅と田畑が入り交じった地域。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「なんで置いていくの」学習帳ちぎった手紙、30年後の母の「返信」
ガサッ。 関西地方にある古びた木造アパートのドアノブに、ポリ袋が引っかけられた音が聞こえる。 お母さんが週に一度、帰ってきた合図だ。 周りの大人に聞くと、仕事以外の時間は男性の家にいるらしい。 袋の中にはわずかな食料。食べ盛りの子ども3人にとって、おなかがいっぱいになる量じゃない。 だから、小学3年の長女は小学1年の弟と一緒に、部屋に落ちている小銭を何度も探し集めた。 15円を握りしめて、近くのパン屋さんへ。パンの耳を買い、4歳の妹と3人で分け合った。 薄暗い6畳2間には、似つかわしくないほど立派な仏壇があった。 本当におなかがすいた時、引き出しにあるお布施用の現金にも手を付けた。お母さんに気付かれると、ひどく叱られた。 少し前に離婚したお父さんにお金をもらいに行ったり、公園でベンチに座るおっちゃんたちの話し相手になって、飲み物を買ってもらったりもした。 こんなにひもじいのに、お母さんはなんで帰ってこないんだろう。 国語の授業で書いた詩を、お母さんが褒めてくれた時は、うれしかったな。 字なら気持ちが伝わるかも。 学習帳をちぎった切れ端をたたんで、手紙を書いた。 『なんでお母さんは私らを置いていっても平気なの?』 『(宗教の)教えとはちがうことをしているんじゃないの?』 20通以上、お母さんが必ず確認する仏壇の引き出しに入れた。 手紙は毎回なくなっていた。でも、返事は一度もなかった。 そんな暮らしが1年近く続いたあるとき、妹が「パンの耳、あきた」と泣き出した。 たたかれたドア、その先にいた人は パン屋に並ぶ色とりどりのジ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「子どもの選択肢とチャンス増える」元旭丘高校長が見る公立中高一貫
これまで公立の中高一貫校(連携型を除く)がなかった愛知県で2025年度から、県立高校4校に付属中学が設けられることになった。4校はいずれも伝統校で、児童や保護者の関心は高い。公立校で中高一貫教育をする意義や選考方法の特徴について、県教育委員会教職員課管理主事や旭丘などの県立高校長を歴任し、愛知の教育事情に詳しい杉山賢純(まさずみ)さん(佐鳴予備校最高顧問)に聞いた。 内申点争いにもまれないで…と思っている保護者に朗報 ――愛知県で新しく中高一貫教育が始まろうとしています。この動きをどう見ますか。 やはり日本が長年停滞するなかで、未来を切り開いていく人材を公教育を通して責任を持って育てていこうということではないかと思います。 愛知では、旭丘が尾張地方の、岡崎が三河地方の雄として堂々と構えており、明和、津島、半田、刈谷もレベルの高い学校です。いまアクションを起こして、トップ校に追いつき、追い越せという意気込みがあるのでしょう。 ――公教育で中高一貫教育を導入する意義は何でしょう。 選択肢が増える、ということだと思います。 これまではその学区の公立中… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
欠員増加に募る危機感…「出る杭を伸ばす」愛知で始まる公立中高一貫
愛知県で初めての併設型公立中高一貫校が2025年度から始まろうとしている。導入の背景や狙い、課題を探った。 10月29日。県立明和高校(名古屋市東区)に新設される付属中学の説明会が、ポートメッセなごや(同市港区)で開かれた。午前9時の開場直後から保護者や児童が続々と集まった。 県教育委員会によると、想定を超える申し込みがあり、当初2回の予定を3回に増やしたという。 県内初の併設型の公立中高一貫校とあって、保護者や児童の関心は高い。導入の背景に何があったのか。 時は2021年。県立高校長や公立中学校長らが集まり「県立高校再編将来構想」が話し合われた。 当時、県教委の教育長として議論の中心にいた長谷川洋さん(県労働協会理事長)は、背景に危機感があったことを明かす。 「県立高校が選んでもらえないという深刻な状況のなか、県立高校の在り方を根本的に見直す必要があった」 県立高校の欠員は16年度から徐々に増え、21年度には2600人を超えた。 「生徒に合わせて、学校も変わる必要がある」 どうしたら県立高校の魅力を高めることができるのか。 議論で浮かび上がったのは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
私たちがシイラを有名にする 湘南のシェフを動かした小学生のはがき
シイラの竜田揚げ、シイラのポアレ、シイラのカレー……。 神奈川県平塚市の飲食店で、「シイラ」を使ったメニューが、同時多発的に登場している。仕掛けたのは小学6年生の子どもたちだ。聞き慣れない魚をマグロやサーモンのようにメジャーな存在に。そんな願いを込めたプロジェクトだ。 「私たちはシイラを食べたときのおいしいという感動と笑顔を広めたいです」「そちらで扱っていただきたく、お手紙を送らせていただきました」 フランス料理店「H×M(アッシュエム)」のシェフ幸野真也さん(36)は昨冬、こんなはがきを受け取った。 差出人は、近くにある市立港小学校の子どもたち。はがきに印刷されたQRコードを読み取るとメールアドレスが表示された。 「協力できるかもしれない」と返信すると、先生と子どもたちが店にやってきた。 シイラはスズキ目シイラ科に分類される大型魚だ。ハワイでは「マヒマヒ」の名で親しまれている。 店を訪れた子どもたちが訴えたことは 子どもたちは、地元・相模湾… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
10グラムの模型飛行機に夢乗せて 子どもたちに伝えたい、この魅力
わずか10グラムの機体に夢を乗せて、大空へ飛ばす。模型飛行機の世界に魅せられた人たちが、兵庫県伊丹市で活動している。 その名は「スカイフライヤーズ」。尼崎市や西宮市、川西市などの愛好家約10人でつくる。規則や会費はない。「今いてるか」「寄るわ」。そんな感じでゆるやかにつながる。 集まるのは中心メンバー、村木彦志さん(76)の伊丹市内の自宅。3階の一室に自作の100機ほどが並び、仲間を迎える。 いずれも両翼の幅約33センチ(13インチ)の規格で作ったゴム動力の模型飛行機だ。ピーナッツスケール機と呼ばれ、軽量で工作用に適した木材のバルサ材とスチレンペーパーという発泡スチロールに似た素材を使う。 重量は10グラムまでと自分… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
生成AI、大学の授業で活用法探る 試験対策やキャリアデザインにも
対話型AI(人工知能)を、リポート作成などとは違う形で活用しようという授業が大学で行われ始めている。試験対策や就職への活用も視野に、様々な模索が進む。 公務員試験の時事問題対策、教育で活用も 武蔵野大の「AI活用エキスパートコース」の1期生約70人の成果発表会が9月、同大有明キャンパス(東京都江東区)で開かれた。AI時代に求められる人材の育成をめざし、2021年度に開設されたコース。どの学部の学生も受講でき、対話型AIの活用法を研究した学生も多くいた。 法学部のある学生は、公務員試験対策として、過去の出題形式を対話型AI「チャットGPT」に示した上で、時事問題を作成させる方法を検証した。別の学生は、英語能力試験「TOEIC」の模擬問題などの作成を模索。教育学部の学生は、児童生徒に作問させ、チャットGPTに解答させることで、児童生徒の学びを深める方法を考えた。学生の一人は「おもしろかった。新しいツールなので、もっといろんな使い方を考えたい」。指導した林浩一教授は「学生らしい発想があって興味深い。積極的に使いながら学んでもらいたい」と話す。 キャリアカウンセラーになれる? 法政大キャリアデザイン学部では、授業で対話型AIをキャリアデザインに生かす方法を探る試みが行われた。 チャットGPTに「キャリア… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「核兵器をなくすか、人類滅亡か」 障害者団体が憲法考えるシンポ
核兵器禁止条約の第2回締約国会議が27日から米ニューヨークで始まるのを前に、「『核兵器のない世界』をめざして! いま、私たちにできること」と題したシンポジウムが2日、東京都内の会場とオンラインで開かれた。約300人が参加し、核兵器や戦争が一人ひとりの人生を犠牲にする悲惨さを語り合った。 主催は、障害者やその家族らでつくる全国組織「日本障害者協議会」(東京都新宿区)。2015年から毎年、日本国憲法の公布日前後に、憲法と障害者について考えるシンポジウムを開いてきた。核兵器廃絶をテーマにしたのは今回が初めて。 「核兵器をなくして人類の歴史を続けていくか。核戦争が起こって人類が滅亡するか」 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局長の木戸季市(すえいち)さん(83)が、記念講演で問いかけた。 木戸さんは5歳のとき長崎で… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ルヴァン杯、アビスパの「ふく」願う 苦境支えた福岡名物の会社長
苦しい時も支えてきた。大一番で勝つ姿を――。サッカーJ1アビスパ福岡が4日、東京・国立競技場であるルヴァン杯決勝で浦和レッズと戦う。初タイトルをかけた一戦を、特別な思いで見守る人がいる。 「『バイバイ福岡』とか『J2福岡』とかヤジが飛んだんです。当時はどのチームもサポーターが容赦なくて。福岡の街のブランド価値が落ちた瞬間でした」 川原武浩さん(51)は振り返る。2001年、J1残留をかけたアウェー戦でガンバ大阪に敗れる姿を現地で見た。降格が決まり、九州からJ1チームが消滅。元サッカー少年の川原さんは、危機感から応援にのめり込むようになった。 「雪の降る山形で震えながら応援したこともありました」 だが、アビスパは経営も成績もふるわず、数年後にはユニホームの胸や背中のスポンサーロゴがなく、「パジャマ」と揶揄(やゆ)される状態にもなった。 11年のシーズン途中、ユニ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル