社会

3・11後、生まれた防災の言葉 備えの転換「フェーズフリー」とは

 2011年の東日本大震災後、繰り返される災害から命を守ろうと、育まれてきた言葉や考え方がある。その一つが、「フェーズフリー」。備えよ、と言われてもどうすれば……。そう考える人たちへの解決のヒントが、この言葉にある。 災害にうまく備えている家がある――。そんな話を聞き、埼玉県越谷市にある1級建築士の松山千晶さん(51)の自宅を訪れた。 物置にはコメや水などの日用品がずらり。保存食はカップスープなど普段から食べるものを選んで買い置きする。手軽に手に入る食材ばかりだ。「多めに保管し、食べたり使ったりしたら買い足している」と松山さん。「家にあるモノの要否を見直して整理すれば、物置がなくてもスペースの課題はクリアできる」。庭に面したウッドデッキでカセットコンロを使って調理し食事をとることもある。庭には災害時の生活水のための雨水タンクを置き、普段は植物の水やりに使う。 「災害時にも生かせる暮らし方です」。松山さんの自宅を紹介してくれた佐藤唯行さん(50)がそう説明する。カセットコンロでの調理は普段は気分転換に採り入れるが、災害時にそのまま応用できるという意味だ。 佐藤さんは、「フェーズフリー協会」(東京都)という一般社団法人の代表理事。フェーズフリー。協会に冠したこの言葉は、佐藤さんが2014年に提唱した。フェーズとは「段階」のこと。「日常時」と「災害時」という二つの間にある境目をなくし、災害への対応力を高めようという考え方だ。 佐藤さんは学生時代、災害軽減工学を学んだ。93年の北海道南西沖地震で津波に襲われた奥尻島などを研究で訪れた。その18年後。東日本大震災で被害を受けた東北沿岸の被災地でも、かつて見たのと同じ光景が広がっていた。どうしたら備えられる? 自問の末に 相次ぎ災害に見舞われる国で…この記事は有料会員記事です。残り1339文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

帰らぬ夫、人生一変したあの日…だからこそ願う「一人で助けないで」

 そこに立ったとき、岡真裕美さん(42)の頭の中に、あだち充さんの人気漫画「タッチ」の一場面が浮かんでいた。 子どもをかばって車にはねられ、亡くなった和也の姿をみて、双子の兄・達也は霊安室で言う。 「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ」 岡さんが霊安室でみた顔は、漫画みたいに穏やかだった。 あの日から、もう10年になる。 大阪府茨木市。夫の隆司さんは、午後2時、日課のジョギングに出かけた。 2時間後には、長男を水泳教室に連れていく。 「それまでに帰るから」 そんな声を聞きながら、岡さんは睡魔に襲われていた。 日は傾いた。まだ夫はいない。携帯は自宅に起きっぱなし。電話の音が部屋で鳴っていた。 すっぽかす性格ではない。おかしい。 血圧が高めだった夫。どこかで倒れた? 不安に駆られ、消防署に電話した。 「177センチ80キロ、30代。そんな男性が運ばれていませんか?」 電話の窓口から、慌てふためく状況が伝わってきた。 「ちょっと待ってください」。何度も転送された。 何かが起きている。嫌な何か。警察署から電話、2人の子どもに告げた言葉 そして突然、告げられた…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

セミの死骸をマッチ箱に 「一生懸命さ」痛かった松ちゃん

NPO法人「抱樸」理事長 奥田知志さん 2008年夏。長年の路上生活を脱して、僕らが運営する自立支援住宅に来て3カ月が経つ松ちゃんが「仕事」を始めた。といっても会社に勤めるのではない。毎朝、わが家に新聞を届けると言い出したのだ。それも郵便受けから新聞を取って1メートル先の玄関ドアのノブに挟むだけ。果たして「ありがたいか」と問われるとわからないが、問題行動が続く松ちゃんの変化であるのは確かで、僕らにとっては驚くべきことだった。 松ちゃんは子どもが好きで、わが家の子どもたち3人ともお世話になった。そのころ末っ子は幼稚園の年長組で、セミに興味を持ち始め、松ちゃんは何とか捕ってやりたいと思ったようだ。しかし酔っ払いの68歳のオヤジに捕まるようなのんきなセミはおらず、奮闘むなしく収穫の無い日が続いた。 夏の終わり、ついに松ちゃんはセミを持ってわが家の玄関に立った。それは、なぜかマッチ箱に入って届けられた。そして、「マッチ箱ゼミ」はすでに“全員ご臨終”されていた。末っ子はなんとも言えない表情で受け取ったが、松ちゃんは「捕ってきてやったぞ!」と誇らしげだ。僕らの脳裏に“すでに召天済みのセミを拾っているのでは疑惑”が浮上するが、恐ろしくて聞けない。 我が家の玄関にはセミの死骸…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「街は我が家」から…ごみに不法看板 世代交代で変わる横浜・中華街

 コロナ禍3年目の夏休みを迎え、首都圏から日帰りで訪れることができる神奈川県内の観光地は、にぎわいを取り戻しつつある。その中のひとつ、横浜中華街(横浜市中区)は街の景観改善に本格的に乗り出している。いま取り組むわけとは。 道路に散らかるごみ、通行を妨げるほど大きな看板――。横浜中華街を歩くと、こんな光景を目にすることがある。 ごみの不適正排出や不法占用の看板は近年、中華街が頭を痛めてきた問題だ。横浜市と神奈川県警が5日、そうした行為を取り締まる合同啓発指導を行った。だが横浜中華街発展会協同組合の高橋伸昌理事長(63)が指導後に街を巡ると、撤去したはずの看板の一部は元に戻されていたという。「心底がっかりした。罰則がなければ、従うのはその場だけ。いたちごっこですよ」 集積所の違反ごみと共に食べ歩きのごみ問題も深刻だ。約250の飲食店がひしめく中華街に食べ歩き店は50~60店ほど。ごみ箱はほぼ全店が備えるが他店のごみも受け入れる店は約2割。飲料のみ扱う店ではごみ箱設置も進んでいない。 近くの山下公園のごみ箱は、中華街や近隣の飲食店の空き容器で休日は満杯になる。「汚いという苦情もある。夏場は悪臭も強まるので早急な対策が必要だ」と高橋さんは指摘する。 背景には、中華街で生きる人々の世代交代がある。戦前や戦後まもなくから暮らす老華僑から、1980年代以降に来日した新華僑、さらに次世代の新々華僑らへと主軸が移りつつある。「老華僑には日本人と共にこの街を育ててきた自負があり、街は我が家。汚れに気付けば清掃し、ごみがあれば拾ってきた」と高橋さん。一方で「新世代の一部にはそうした意識が薄い人もいる。商売繁盛はルールを守り、共存共栄あってこそだが、日本語が不自由な人もおり、徹底は難しい」と話す。 発展会の理事35人は、日本…この記事は有料会員記事です。残り395文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

阿波踊り、規模縮小せず3年ぶりに本格開催へ 事業計画が正式に確定

 新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて、8月12~15日の徳島市の阿波踊りの開催規模を検討してきた「阿波おどり未来へつなぐ実行委員会」は30日、感染対策を徹底したうえで規模は縮小せず、予定通り有料演舞場と無料演舞場を2カ所ずつ設けると発表した。これで3年ぶりの本格開催となる阿波踊りの事業計画が正式に確定した。 有料演舞場は藍場浜と南内町、無料演舞場は新町橋と両国本町に開設する。ほかにおどり広場なども設ける。有料だけで4カ所あったコロナ前と比べると縮小するものの、今夏に向けて想定したモデルの中では最大規模になる。 市などで担っている事務局は…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

家出した姉とパパの会話、2階で聞いた僕 「作文教育の出番」今こそ

 子どもが生活のありのままをつづった作文を授業で読み合う「生活綴方(つづりかた)」。これに取り組む全国の先生たちの集まりが8月6~8日、堺市で開かれます。「人と人とのつながりが薄くなりがちなコロナ禍のいまこそ、作文教育の出番」。主催者はそう呼びかけ、未経験の先生や学生の参加も歓迎しています。(宮崎亮) 作文を読み合う授業とはどのようなものなのか。7月中旬、堺市立福田小学校の5年1組を訪れた。 授業の初め、月木寛介(つきのきかんすけ)さん(11)の作文が刷られたプリントが配られた。 題は《三時間の家出(姉)》。姉が「洗い物しなさい」と言った父親に反発し家出したという内容だ。寛介さんが読み上げる。「三時間ほどさがしたがおらず」… 《三時間ほどさがしたがおらず、パパはまださがしていたときげんかんで音がした。見に行くと、外は雨がふっていたらしく、びしょびしょだった》 担任の芝池僚介先生(32)は気になる文に線を引くよう求め、寛介さんへの質問が始まった。「お姉ちゃんは何年生なんですか」「このときはまだ6年生」「雨が降っていたって、どんな雨ですか」「勢いよく降ってた。ザーッ!て」。作文を大きく刷った紙に芝池先生がやりとりを書き込む。授業中のやりとりで、寛介さんは自分でも気づかなかった「自分らしさ」に気づきます。記事後半ではコロナ禍で増す作文教育の重要性や、思想家の内田樹さんの講演など研究大会の詳細も。 《(姉は)先におふろに入っ…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

鈴木・北海道知事がコロナ感染 来月8日まで自宅療養へ

 北海道は30日、鈴木直道知事が新型コロナウイルスに感染したと発表した。29日に発熱し、PCR検査を受けたところ、30日に陽性が判明した。のどに痛みがあるものの症状は軽く、8月8日まで自宅療養するという。(岡田昇)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

大阪王将、店にナメクジ・猫の飼育も 元従業員が告発する衛生環境

 仙台市太白区にあるギョーザチェーン店「大阪王将」仙台中田店の調理場の衛生環境の悪さを、元従業員がSNS上で告発し、波紋を広げている。市保健所が店舗への立ち入り検査を行い、清掃の徹底を求める結果を公表。大阪王将(本店・大阪府枚方市)は、このフランチャイズ店が「ネコを飼っていたこと」「ナメクジや昆虫が侵入していた時もあったこと」などを認め、謝罪した。告発した元従業員を取材した。 元従業員がツイッター上で告発したのは7月24日。「ナメクジ大量にいる」「みんなろくに消毒もせずにキッチンに入って」「あまりにもゴキブリが出過ぎて誰も反応しなくなる」など衛生環境の劣悪さを指摘する内容だった。 投稿を見た複数の人から市保健所に通報が入り、保健所は25日に立ち入り検査を実施。翌26日、郡和子・仙台市長は「(ナメクジなど)書き込みされていた状況について確認されなかったが、調理場の中の清掃が十分に行き届いていなかった箇所もあり、指導した」ことを明らかにした。 同社は27日にプレスリリースを出して謝罪。2019年10月~22年6月までこの店では屋外でネコを飼育していたという。年に一度の衛生検査時にはネコを一時的に他の場所に移していたため「本部にて把握できていなかった」と説明した。 また、季節によってはナメクジや昆虫、ネズミなどが店舗内に入っていたことや、食材の盛り付けなどの調理を厨房(ちゅうぼう)外で行っていたことも明らかにした。昨年9月の人事異動後に店の食品衛生責任者が変わっても、変更届け出は今月まで出していなかった。 同社は「(インターネット上の書き込みに関して)多大なご心配・ご迷惑をおかけして、心よりおわび申し上げます」としたうえで、ナメクジへの対策として出入り口に網戸を設置することや、従業員への研修などを進めている。 告発した男性は2018年か…この記事は有料会員記事です。残り422文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

福井・岡山・広島で過去最多を更新、広島は初の3千人超 新型コロナ

 福井県は30日、県内で新たに1659人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。1日あたりの新規感染者数としては29日の1288人を上回り、3日連続で過去最多を更新した。累計の感染者数は5万5823人。     ◇ 岡山県は30日、県内で新たに2616人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。1日あたりの感染者の発表としては28日の2434人を上回り、過去最多を更新した。県内の感染者は、延べ13万4818人となった。     ◇ 広島県内で30日、新たに3270人が新型コロナウイルスに感染したと発表された。1日あたりの感染者の発表としては27日の2946人を上回り、過去最多を更新した。初めて3千人を超えた。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

1本の無線、捜査1課幹部は息をのんだ 奈良県警のいちばん長い日

 奈良県警の本部庁舎は、鹿で知られる奈良公園(奈良市)のそばにある。7月8日、金曜日の昼前。2階の捜査1課の大部屋は捜査員も出払い、ゆったりした空気が流れていた。 午前11時32分ごろ、無線が流れた。「発砲事案発生の模様」 「現場は大和(やまと)西大寺(さいだいじ)駅前」「選挙の演説中」 無線は騒がしくなった。何人かが動き出した時、無線はさらに告げた。 「銃撃を受けたのは安倍晋三元総理とみられる」 同課幹部の1人は息をのんだ。要人の来訪は、警備を担当する警備部にとっては重要事項だが、同じ県警内でも殺人などを担当する捜査1課で把握している人は少ない。この幹部は、安倍氏来県を知らなかった。 間もなく、部屋のテレビが安倍氏銃撃を伝える速報を流し始めた。「何かの間違いじゃないか」。現実の出来事とは受け止められなかった。奈良市の近鉄大和西大寺駅北側の路上で7月8日午前11時32分ごろ、参院選の街頭演説中だった安倍晋三元首相(67)が銃で撃たれて死亡しました。人員の点で大規模とは言えない奈良県警が、この前代未聞の事件の捜査にあたることになりました。 県警本部から西に約5キロの…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル